インフィニット・ストラトス 鋼鉄の銀龍    作:ユウキ003

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今回は一夏の誕生パーティーの話です。
※ 小説の話であるキャノンボール・ファストはカットしました。



インフィニット・ストラトス 鋼鉄の銀龍 第16話

――前回までのあらすじ――

学園祭の演劇の最中に現れた謎の組織、『ファントムタスク』の刺客、

『オータム』。彼女は一夏の白式と、(表面上は)束が新造した第3.5世代

ISの銀狼を狙って現れた。だが、逆に彼女の殺意が機龍の内なるゴジラを

目覚めさせてしまい、オータムは黒龍と化したゴジラによって一方的に

蹂躙されてしまった。そして、その場には更なる刺客として

謎の少女、『M』がイギリスで強奪されたBT兵器の二号機、

『サイレント・ゼフィルス』を駆って現れた。しかし、彼女をもってしても

一瞬の油断でゴジラの腕力に掴まってしまった。だが、その最中ゴジラは、

M、マドカが織斑千冬のクローンであることを知り、彼女を解放し、

彼女がオータムと彼女のISのコアを回収し撤退したことで、事件は

一応の終息となった。

 

数日後。夕方。今、一夏と機龍は真耶に頼まれた資料をある場所へと

運んでいた。

一夏「……で、こりゃ完全に迷ったな」

機龍「そうだね。…えっと、貰った地図だと。……ここが多分ここ

   だから。あっちじゃないかな?」

一夏「そうだな。行ってみるか」

と、色々と歩き回っている内にすっかり日は落ちて、夜になってしまった。

  「は~。やっとたどり着いたぜ~。疲れたな機龍」

機龍「う、うん。そうだね」

と、言いながらケータイを取り出して時間を確認する機龍。

  『うん。予定の時間まで『時間稼ぎ』はできたし、そろそろ…』

  「ねぇお兄ちゃん。学食に行かない?そろそろ時間も時間だし」

一夏「と、そうだな。行くか」

というわけで二人で一緒に食堂を目指して移動したのだが、

その入り口まで来た時、機龍が…。

機龍「ねぇ、お兄ちゃん。ちょっとだけ目を瞑ってもらって良いかな?」

一夏「へ?何で?」

機龍「良いから良いから。早く」

一夏「お、おう?」

と、目を瞑った一夏の手を引いて歩く機龍。

  『な、何で機龍はこんなことを?何でだ?』 

と、≪大事な事≫を忘れている一夏だった。

 

やがて、機龍と一夏が立ち止まった。

機龍「お兄ちゃん、もう目を開けていいよ」

一夏「そうか?」

と疑問符を漏らした一夏が目を開けた瞬間。

   ≪パン!パン!パパン!≫

盛大にクラッカーが鳴り響いた。そして……。

女子「「「「「「「織斑一夏君!お誕生日おめでと~~~!」」」」」」」

と、大勢の女子たちが集まってそう叫んだ。

ポカーンとしている一夏だが、近くにあった垂れ幕を見てすぐにある事に気づいた。

一夏「あ、そっか。今日俺の誕生日だった」

そう、今日、9月27日は一夏の誕生日だったのだ。

  「で、でも何でみんな集まってるんだ?」

今、一夏の前には、箒、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラ、簪、

千冬、真耶。さらに大勢の女子たちが集まっていた。

シャル「箒から聞いたよ?一夏ってば自分の誕生日忘れがちだって」

一夏「う!?そ、それは……。それより、このパーティーってだれが

考えたんだ?箒なのか?」

鈴「違うわよ。発案者は機龍よ」

一夏「え?」

機龍「えへへ」

と、疑問符を漏らした一夏は、自分の横で顔を赤くしながらも笑って居る機龍の

方を向いた。

  「折角のお兄ちゃんのお誕生日だから、みんなでお祝いしようって

   僕が言い出したんだ。…最初は箒お姉ちゃん達や僕だけで話し始めた

   んだけど、何時の間にかクラスみんなに広まっちゃって……」

そう言われて見回す一夏。確かに周りで集まっている女子の中には2年や3年、

鈴の2組や簪の4組の生徒の姿があった。

  「その、迷惑、だったかな?」

そう言って、一夏は見上げる機龍。それを見て一夏は、笑みを浮かべてから

機龍の頭を撫でた。

一夏「そんな事ねえって。スゲ~嬉しいよ。ありがとな、機龍」

機龍「えへへ////」

撫でられ、頬を赤くしながらも喜ぶ機龍。

真耶「それでは皆さん。今日はパーティーという事で、ちょっとだけ

   無礼講ですよ♪」

女子「「「「「「「「は~~い!!!」」」」」」」」

と、言うわけで、楽しいパーティーが始まった。

 

一夏は箒や鈴、シャルロットからプレゼントを受け取っていた。そこへ……。

機龍「一夏、お誕生日おめでとう」

と、機龍がワンホールの苺が乗ったケーキを運んできた。

一夏「おぉ!旨そうなケーキだな」

機龍「ありがとうお兄ちゃん。これでも頑張って作ったんだよ」

一夏「へ~。これ、機龍が作ってくれたのか」

機龍「うん。山田先生と一緒に町で食材を買ってきて、それから

   箒お姉ちゃん達に手伝ってもらってみんなで作ったんだ」

そう言いながらケーキを切り分けて一夏や箒達、他の生徒達に配る機龍。

女子「う~ん!機龍のケーキ美味しい~!」

   「え~!私にも頂戴~!」 「あ、でも、そろそろケーキが……」

機龍「大丈夫ですよ。まだケーキはありますから。ちょっと待っていて

   ください」

と、笑顔で厨房へと歩いて行き、ケーキを取って来る機龍。その後も

他の生徒達と談笑したり、料理の仕方などを教えている機龍。

そんな彼の表情は終始笑顔だった。

それを微笑ましそうに見守る一夏達8人と真耶、千冬。

一夏「機龍、楽しそうだな」

モーラ「はい。機龍は本当に人を祝福するのが好きなのです。

    そして、誰かの御祝い事を自分の事のように喜び、その人の

    ために何かをしてあげたいと考えるようになって、本当に立派に

育ちました。これも、皆さんのおかげなのでしょう」

一夏「俺達は何もしてねえって。ただ友達として、一緒にあいつと

   笑ったりしてただけさ」

一夏の言葉に頷く箒や簪たち。その姿に、モーラは笑みを漏らした。

モーラ『いつか、この絆が世界中に広まりますように。

    そして、この世界に命の祝福があらん事を』

この世界に生きる一人として。守護の獣として、静かに祈るのだった。

 

やがて、パーティーも終わりに向かっていた。しかし……。

食べ終わったお皿を機龍が片付けていた時だった。一夏に手を引かれ、

集まっている生徒達の中央に立つ機龍。

機龍「お兄ちゃん、これは……」

一夏「良いから」

と言っていると、周りに居る生徒達がクラッカーを取り出した。そして…。

   ≪パン!パン!パパン!≫

女子「「「「「「「篠ノ之機龍君!お誕生日おめでと~~~!」」」」」」」

機龍「え?」

驚く機龍を後目に、天井にあった文字が瞬く間に一夏から機龍のそれに

切り替わった。

驚いてばかりで状況が飲み込めない機龍。

  「こ、これは、どういう事、なの?」

一夏「ほら、機龍は束さんに保護される前の記憶がないって

   言ってただろ?だったら、今日を誕生日にしちまおうって

   さっき箒から聞いたんだ」

そう、機龍は名目上、過去の事を覚えていない事になっていて、

周囲の生徒には、≪最近になってモーラと出会い、過去を知った。≫

という話が伝わっているのだ。もちろん記憶喪失というのが

嘘なのは一夏達や真耶、千冬は知って居るが、どのようにしてこの世界に

来たかもわからない機龍にとっては、誕生日は無いような物だったのだ。

 

それに気づいた簪が密かに他の者達に伝えて、それを決行したのだった。

機龍「今日が、僕の、誕生、日?」

まじまじと、液晶式ディスプレイに描かれた文字を見つめる機龍。

 

本音「よかったね~リュウ君♪」

と、機龍の背中をポンポンと叩く本音。しかし、次の瞬間、

機龍の瞳から一筋の涙が溢れ出した。

  「あ、あれ!?そんなに痛かった!?」

と、自分が泣かせたのかもと勘違いして、慌てる本音。

 

しかし、機龍は泣きながらも首を横に振った。

機龍「ううん、違うの。…今まで、誕生日なんて、なかったから」

服の袖で涙を拭いながらも静かに告げる機龍。

  「初めて、誰かに、お祝いしてもらった、気がして、それで」

涙で頬を腫らしながらも顔を上げる機龍。

  「みんな。ありがとう」

瞳に涙を溜めながらも笑顔でそう言うのだった。

その後、簪や他の生徒達からもプレゼントをもらった機龍。

 

※ちなみに、機龍の涙&スマイルで大勢の女生徒がクラッとなったのだった。

 

そして、パーティーはお開きとなり、片づけをしてから、機龍と一夏達、9人

で寮への夜道を歩いていた。そんな帰り道での事だった。

 

不意に一夏達と並んで歩いていた機龍が足を止めて振り返った。

一夏「ん?どうした機龍?」

その声に答えず、機龍は道の脇にある街灯の方を見つめていた。

機龍「……姿を見せてくれない?」

街灯の方に向き直りながらそうつぶやく機龍。すると、街灯の

影から、光の下に一人の黒い服装の少女が現れた。それは……。

ラウラ「貴様は!?」

その少女と言うのが、マドカ。千冬のクローンの少女だったのだ。

 

咄嗟に機龍を庇う一夏達。

  「お前、どうしてこんな所に居る?」

機龍を自身の背に庇いながらISを展開しようとする一夏達。

マドカ「……貴様に用はない。織斑一夏。もはや、貴様も、貴様の姉である

    織斑千冬にも興味はない。私が用があるのは」

そう言いながら機龍の方に視線を移すマドカ。

   「お前だ。篠ノ之機龍」

と、機龍を指さすマドカ。と、その時、機龍の中では……。

 

ゴジラ≪おいお前。俺と変われ≫

機龍≪……ゴジラ≫

ゴジラ≪そいつが用があるのは俺だ。今すぐ俺に肉体の主導権を渡せ≫

機龍≪……わかった。でももし、少しでも変な事をすれば、僕が

   全力でお前を止める≫

ゴジラ≪わ~ってるようるせえな≫

機龍≪それじゃ、変えるよ≫

 

と、次の瞬間、機龍の銀髪が黒髪へと変わり、瞳も赤く変色した。

そして、肉体を手に入れたゴジラは一夏達の前に出た。

一夏「その髪の色!ゴジラ!」

彼の変化に気づいて驚く一夏達。だがゴジラはそんな彼らを無視して

マドカと向き合った。

 

ゴジラ「よう。あの時の戦い以来だな。用があるのは俺だろ?」

マドカ「そうだ。お前に用があったんだ。黒髪の男」

ゴジラ「成程。だが俺の名前はそんなんじゃねえ。俺はゴジラだ。

    勝手にそんなので呼ぶんじゃねえ」

マドカ「ほう?それが貴様の名前か?ゴジラ」

ゴジラ「そうだ。…それより、こっちが名前教えたんだ。テメエも

    名くらい名乗ったらどうだ?」

マドカ「……マドカ。それが名前だ」

ゴジラ「成程。ならマドカ。今日は俺に用があってきたんだろ?

    要件を言えよ。戦いてえってんなら、相手になってやるぜ?」

そう言ってパキパキと腕の骨を鳴らすゴジラ。しかし。

マドカ「生憎、今日は戦いに来たのではない。宣戦布告だ」

ゴジラ「何?」

マドカ「舐めてもらっては困る。今の私では貴様に≪勝てない≫のは

    わかっている」

ゴジラ「ほう?それでも宣戦布告か?」

マドカ「そうだ。……私にとって、これまでの獲物は、織斑一夏とその姉、

    ブリュンヒルデの織斑千冬だけだった。だがそれももう過去の

    話だ。…お前だ。お前は何者よりも強い。全てを否定するその力。

    私がそれを超えた時、私自身が世界を破壊する絶望になる」

笑いながらそう語るマドカ。それに対してゴジラは……。

 

ゴジラ「く、ククク、クハハハハハハ!やっぱりお前は当たりだよ!

    そうだ!それでいい!全部ぶっ壊しちまえば良いんだ!」

頭を押さえて笑い出すゴジラ。

   「ククク、皮肉な話だな。人間に生み出された俺達が人間を

    滅ぼす絶望になるだなんてな」

そう言って笑って居るゴジラに同調するように笑みを浮かべるマドカ

   「そうだ。人間ってのは何時だって身勝手だ。何がモラルだ。

    何が道徳だ!それを真っ先に破っているのはそれを掲げる人間だ!

    そうだろう?そして、人間とはあまりにも欲深い。だから

    自分達のやりたいようにやる。他者も何もかもを気にせず、

    ただひたすら、罪を犯し続える。……だったら俺達も

    やってやろうじゃないか!俺達だって暴れてやるさ!

    他人がどうなろうと知ったこっちゃない!モラルだ何だと

    叫ぶ人間がどうした!お前達が身勝手をするなら、俺達だって

    身勝手に暴れるだけだ!誰も俺達を裁く権利など欠片もないの

    だからな!法律だと!?バカバカしい!そんなのを護る奴が

    一体何人いる!理性だ何だとぬかしても、結局人間が優先するのは

    自身の欲望だけだ!!だったら俺達も欲望を全開にするだけだ!

    殺したい奴を殺して!喰いたい物を食う!下等生物に俺達を

    縛ることなどできない!」

そう叫ぶゴジラに、マドカは狂気に満ちた笑みを浮かべながら魅入っていた。

   「良いぜ。その宣戦布告、乗ってやる。俺を超えたけりゃ、超えて見な。

    或いは、俺がお前を認めるくらい強くなりやがれ。そうすれば、

    お前の力になってやる」

マドカ「ほう?なぜだ?」

ゴジラ「同じ、同類だからだよ。俺もお前も、人間って奴が大っ嫌いだ。

    壊したくて壊したくて仕方がない。そうだろう?」

マドカ「そうだ!私は人間が憎い!身勝手な理由で私を作り出し、

    その上私をあっさりと捨てた人間共が憎い!だから復讐するのさ!」

その言葉に、黙り込んでいる一夏達。

ゴジラ「クハハハ!ますます気に入ったぜ!強くなって戻ってこい。

    その時は相手をしてやるぜ」

マドカ「ふ、元からそのつもりだ」

そう言うと、マドカはサイレント・ゼフィルスを展開して何処かへと

飛び去って行った。ゴジラはそれを見送ると、狂気に満ちた笑みを浮かべて

から、主導権を機龍へと戻した。

 

ただ、黙っている機龍に、静かに近づく一夏達。

機龍「……あの子は、かつての僕と同じなんだ」

彼の言葉を、ただ黙って聞き入っている一夏達。

  「…自分以外の全てが憎くて、全てを壊したがってる」

静かに語りながら俯く機龍。だが……。

  「……でも、僕も決めた」

一夏「え?」

機龍「僕は諦めない。あの子が闇の底に居るって言うなら、僕が

   引き上げる。引き上げてみせる。……僕が、みんなと出会って、

   笑顔を貰ったように。あの子を、笑顔にしたいから」

そう宣言する機龍だった。それに対して、一夏達は……。

一夏「そっか。んじゃ、俺達もやるしかないな!」

モーラ「私達にできる事があったら、何でも言ってくださいね、機龍」

簪「機龍は、一人じゃないからね」

機龍「みんな……!…うん!」

 

こうして、機龍は誓った。…Mを、マドカを闇から救って見せると。

 




読者様からの意見で、真耶と機龍の絡みが見たい、という事でしたので、
この16話の中で語られていた、機龍と真耶の街での買い物の話を
別で投稿しようと思っています。

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