インフィニット・ストラトス 鋼鉄の銀龍    作:ユウキ003

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今回は福音との闘いです。


インフィニット・ストラトス 鋼鉄の銀龍 第11話

――前回までのあらすじ――

臨海学校で海へとやって来た一夏と機龍たち1年生

楽しい海を満喫した翌日、箒の姉であり、事実上の機龍の保護者である

『篠ノ之束』が現れた そして、箒に託された第四世代IS『紅椿』と

束が機龍専用に開発していた『銀狼』が渡された

しかし、そんな矢先に軍事IS『銀の福音』が暴走したとの連絡が入り、

それを一夏、箒、そして機龍の3人で撃破する事になってしまった

 

沿岸部に出て、並んで立つ一夏、箒、機龍

一夏「来い。白式。」

箒「行くぞ。紅椿。」

機龍「行くよ。銀狼≪シルバーウルフ≫」

それぞれのISを展開し浮かび上がる3人 その彼らの通信機を通して通信が入った

千冬『では、作戦をもう一度確認する。織斑を現地まで運ぶのが、篠ノ乃。

   機龍は会敵後の織斑の援護だ。そして、一番重要なのは織斑、お前だ。

   油断するなよ?』

一夏「は、はい!」

千冬『よし……作戦開始だ。』

箒の紅椿の背中に乗った形の白式 紅椿が浮き上がり、加速を始めた

その横を、ハイスピードブースターを展開した機龍の銀狼が追従している

 

機龍『大丈夫。きっとできるはず。束がくれた、この子と一緒なら。』

そして、空中を疾走していた時だった

箒「………見つけたぞ!あれだ!」

その声に機龍が考えを振り切る そして前方を見つめると

銀の福音≪シルバリオ・ゴスペル≫がこちらに背を向けながら飛翔しているのが見えた

機龍「一夏、僕があのISの足を止める。最後は任せた。」

一夏「あぁ!無茶するなよ!」

機龍「うん。…行くよ!」

機龍は並んでいた紅椿を追い越すように飛翔し、銀の福音の上空…背中を取り、

少しでもスピードを落とさせるために両手に備え付けられたレールガンが

福音目がけて乱射された

 

危機を感じ取ったのか、急に体を傾けて機龍のレールガンを回避する福音

その体を傾けた所に、一夏達が迫り、攻撃した

しかし―――外れた

 

福音はまるで泳ぐように体を傾けた状態のままさらに横にローリングして一夏の零落白夜を回避したのだった 

さらに体勢を立て直し、水面を蹴って機龍や一夏よりも高い位置に浮かぶ福音

≪敵機確認……これより、迎撃モードに移行します。≫

オープンの回線を通して、まるで宣戦布告をするように機械の声が3人に向かって告げた

一夏「ッ!…機龍!箒!援護してくれ!」

箒「任せろ!」

機龍「うん!」

一夏の声で散開する3人 

  「僕が相手の注意を引く!その間に!」

機龍の背中に背負われていたハイスピードブースターの先端部分のロックが外れ、

上部を向いていた円筒形の物体4つ、それらが45度回転し機龍の前方に向いた

 

そこから稲妻のように黄色いメーサーが発射され、福音に襲い掛かった

その攻撃を、まるで踊るようにしながら回避し続ける福音 

  「クッ!速い!」

4門もメーサーが福音を捉えようと動くも、当たるどころか掠りもしなかった

一夏と箒も、斬撃とエネルギーの刃の攻撃を仕掛けるが、簡単に回避された

 

すると、今度はこっちの番だ、ともいうように甲高い歌声のような物が

福音から流れた 次の瞬間、福音の頭部から生えていた一対のスラスターが

開き、≪銀の鐘≫と言う兵器の砲口が現れた その数は36

 

そしてそこから、爆発性を持つ大量の光弾が辺り一帯にふりまかれた

その姿は、光を振りまく天使のようにも見えた だが、その光は一撃で

相手を消し去るほどの力を持った凶暴な物だった

 

その時、箒の攻撃が福音に命中し、隙を作った だがその時、一夏は

福音では無く海面に向かって加速し、海上に向かっていた光弾の一つを

かき消した 

 

その一夏の後ろにある物 それは……

機龍「船!?どうして!この辺は先生たちが封鎖してるはずじゃ!」

箒「くっ!密漁船か!一夏!そいつらはただの密猟者だ!捨て置け!」

そう言ったが、その言葉に今度は一夏が反論し、動揺する箒 だが……

   ≪ガタガタとガキが抜かすなよ。アイツらはそこいらに居る羽虫の一匹……

    殺したところで誰が悲しむ?生きてるからって何の役に立つ?≫

まるで、その場の者全員を凍り付かせるような声が響いた

その主は―――機龍だ

 

そして、当の機龍は両手で頭を抑えている

機龍「や、やめろ!お前は出て来るな!出て来るなぁ!」

両手で頭を抑えたまま、何かを振り払うように頭を振る機龍

   ≪あいつらは警告を無視してここに居る。ちんけな金のためにな。

    そして無視した結果死んだ。だから何だ。お前ら人間に言わせれば―――

    自業自得、って奴だろう?≫

機龍「やめろぉ!出て来るなぁ!やめろぉぉぉぉぉ!」

涙を流しながら、自身の内なる破壊神≪ゴジラ≫の声を必死にかき消そうとする機龍

 

しかし、今は実戦 同様する機龍の後ろに、銀の福音が迫っていた

一夏「ッ!?機龍!後ろだ!よけろ!」

警告の声が機龍に届いた、が、今の機龍は動けなかった

そして、まるで抱きしめるように後ろから機龍を羽交い絞めにする銀の福音

次の瞬間

機龍「ううぅぅぅぅ……うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

まるで、機龍から何かを吸い出すように、銀の福音が機龍の体から

光を吸収し始めた

  「あ!あぁぁぁぁぁぁ!ぐ!が!あ、うあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

体を左右に揺らすも、その地獄の抱擁は離れない

 

その光景に、さしもの一夏達も呆然としたまま、動けなかった

衝撃な事の連続で、思考が追い付いていなかったのだ

 

やがて、機龍は叫ぶことさえ止めた時、福音は機龍を空中に捨てた

重力に任せ、海面へと落下していく機龍に、まるでもう要は無いと

言うように光弾を発射した福音 その光の粒が、機龍の体を抉っていく 

一夏「機、機龍ゥゥゥゥ!」

その時、ようやく声を上げる一夏 

二人が呆然としている中、福音は箒に狙いを定め、光弾を発射した

そして―――一夏が箒の盾となって、撃墜された

箒「い、一夏ぁぁぁぁぁぁ!」

 

機龍と同じように、海面へと吸い込まれていく一夏

――――――作戦は、失敗した

 

一夏は、箒が抱え、機龍は、外からの束によるリモートコントロールで

旅館の近くの浜辺へと、運ばれてきた

一夏が担架で運ばれていく中……機龍の方は、

砂浜が見えた時点で銀狼の装着が解除され、砂浜に打ち付けられるように落下し

転がった 慌てて簪やセシリア、救護班の生徒たちが近づいて機龍を起こし、絶句した

 

露出していたのだ 機龍の体の内部が  皮膚を抉られ、血があふれ出た腕の下に

―――機械が見えていたのだった

さらに、右のこめかみをかすった光弾も機龍の皮膚を消し去り、目元からもみあげの

辺りの内部……機械を露出させていたのだった

 

全員が驚愕する中、ゆっくりと目を覚ます機龍 

ぼんやりと瞳を開いた機龍だったが、すぐに自分の体がどうなっているのか、

何が見られているのかを理解した機龍は、抱き起した簪の腕を振りはらって―――

―――逃げた

もはや力も無く、無様に砂浜を四つん這いで逃げようとするが、すぐに砂に手足を

取られ、砂浜に顔を埋めた

その機龍に近づこうとするセシリア達だったが……

機龍「来ないで!」

その声に足を止めるセシリア達

  「来ないで……ヒグッ……こんな僕を見ないで……お願いだから、来ないで……

   僕を……見ないで……」

大粒の涙を流しながら、消えそうな声でそう訴える機龍だった

 

その後、機龍は駆け付けた束によって特殊なカプセルへと入れられ、

旅館の一室に安置された

その頃、箒を除いた全員が一つの部屋に集まっていた

しかし、作戦の失敗、昏睡状態の一夏、そして機龍の体の事を見てしまったため、

驚愕と心配とが重なり合い彼女達の口を重くしていたのだった

誰もが口を開かったが、その時……

鈴「……あんた達……機龍のあれ…見えたの?」

その問いに、誰もが沈黙した

シャル「………機械…だよね。あれって……

    ひょっとして……機龍って……サイボーグ、なのかな。それとも……」

ラウラ「……何が言いたいんだ。」

シャル「……完全な人造生命……アンドロイドなんじゃないの?」

それはつまり――機龍は『人』ではないと言っているような物だった

簪「そんなの違う!!」

その時、ずっと部屋の隅に居た簪が声を荒らげた

 「機龍は……機龍は人間だよ!機龍には心があるんだもん!

  絶対に人間だよ!」

叫び、涙を流しながら訴える簪

シャル「……ゴメン。僕も無神経過ぎたよ。」

ラウラ「……篠ノ之博士なら、何か知っているだろうが……」

セシリア「あの方は、ずっと機龍の傍らにいらっしゃるそうです。

     あの部屋も立ち入り禁止と言う事で……」

鈴「……後悔してるんじゃない?」

ラウラ「何?」

鈴「もし、あの人があのISを持ってこなかったら、機龍が出撃する事だって

  無かったんじゃない?」

セシリア「それは……」

ラウラ「……とにかく、今は待機するしかないだろう。

    お互い、出来る事をしながら待つとしよう。」

そう言って立ち上がったラウラは、何処かへと出て行こうとした

セシリア「どこへ行かれるのですか?今は待機中ですわよ。」

ラウラ「……姉として…軍人として……家族を傷つけられたまま黙っているのは、

    私個人のプライドも、軍人としての誇りも、許さないのさ。」

そう言うと、何処かへと出て行ったラウラだった

 

その頃―――機龍は自身の殻の中に籠っていた

 

真っ暗な精神世界で、唯々体育座りをしながら、ずっと泣いていた

機龍『見られた……僕の体の中……みんなに見られた………僕は……

   もう……』

   『化け物!』 『悪魔!』 『こっちに来るな!』 『消えろ!』

と、無数の声が機龍を責め立てる その声をかき消すように

泣きながら両手で耳を塞ぎ、必死に『声』を振り払おうと頭を振る機龍

しかし、怨嗟と恐怖の声はそんな物では防げず、どんどんと機龍の中に入って来ては、

その心を侵食していく

 

そして―――――

   ≪おーおー……無様に泣きたい放題かよ≫

機龍の後ろに、もう一人の彼自身≪ゴジラ≫が現れた

その姿は、銀髪を黒く染め、瞳を血のように真っ赤にした姿以外、機龍と

瓜二つだった

   ≪情けねえなぁ……かつては人間どもを絶望のどん底に叩き落した

    俺の影が、お前みたいにピーピー泣いてるだけかよ。≫

そう言って機龍のすぐ後ろに立つゴジラ

しかし、機龍は黙ったまま、動こうとしない

   ≪…ちっ……抜け殻に用はねえ……お前の体を寄越せ。

    ……全部、『ぶっ壊してやる』。人間も、この世界も≫

そう言って機龍の前を通り過ぎようとしたゴジラの服の袖を、

機龍が掴んだ

機龍「や、めて……やめて……」

今にも消えそうな声でつぶやくが、ゴジラはその手を忌々しそうに振り払った

   ≪泣き虫の抜け殻なんかにようはねえ。……その体、返してもらうぜ。

    ……人間を…一匹残らず滅ぼすためにな。≫

そう言って機龍の人格を殺そうとするように、その首に手を伸ばした

   ≪まずはこの地域一帯をふっ飛ばしてやる。一匹残らず…『全滅』だ≫

その声を聞いた途端、ビクッ!となる機龍

   ≪最初はこの旅館の人間からだ……お前の大切だと言う者を、全て殺してやる。≫

次の瞬間、機龍はゴジラの腕を弾いた

  「そんな、事……させない…」

   ≪ほう……威勢は良いが、今のお前に何ができる。覚悟も何もかも薄っぺらい

    お前によぉ。……助けるって息巻いた結果、どうなった?作戦とやらは失敗。

    そんでもってお前は他人の自分の体の中身を見られて泣いてるだけじゃねえか。

    そんなお前に一体どれだけの覚悟があるってんだ。あ?≫

―――『覚悟』―――その言葉が機龍の中に駆け巡った

そう言いながら、ゴジラは機龍の胸倉を掴んで強引に立たせた

   ≪弱いだけのお前に何が出来るのかって聞いてんだよ!あぁ!?≫

機龍の顔を覗き込むように睨みつけるゴジラ 対して機龍も

―――決意の籠った瞳でゴジラを睨み返した

  「確かに…僕は弱くて泣き虫だ………でも、守りたい人が居る!

   大切な人が居る!それを、お前にだけは殺させない!僕がみんなを守って見せる!」

   ≪ほう!じゃあどうする!どうしたい!≫

  「僕は戦う!例え僕が元は、壊すだけの化け物だったとしても……!」

そう言って右手に力を籠め、そして……

―――機龍の拳がゴジラの頬にめり込んだ―――

腕を離しながら数歩下がるゴジラ

  「そうだ!守って見せる!僕は≪ゴジラ≫じゃない!僕は……

   僕は『3式機龍』!人間の希望だ!」

そう言って悠然と立つ機龍を見たゴジラは、口元をぬぐいながら笑った

   ≪へへ……上等だ。だったら見せてみろ。お前の『覚悟』って奴をな。≫

それだけ言い残すと、ゴジラは深層意識の奥底へと戻って行った

機龍は振り返り歩き出しかけた時、消えそうな声でつぶやいた

―――ありがとう。と―――

 

機龍が決意を固めたその時、機龍が入っていたカプセルが独りでに解放された

観音開きのようにハッチが左右に開き、そこから機龍が歩み出て来た

と、その機龍の前に束が現れた

束「りゅ、リュウ君…大丈夫だった?」

なにやら、いつものハイテンションがなりを潜めている束

それに気づいた機龍は、束の方に歩み寄った

そして、まるで束を祝福するように、口づけをした

咄嗟に事に驚いて目を丸くする束 ゆっくりと唇を離す機龍

 「な、なななな!?何を!?」

機龍「…ありがとう。束。僕を目覚めさせてくれて。」

束「え?」

機龍「僕は、皆に出会えてよかったと思ってる。束、クロエ、一夏、箒、鈴、

   セシリア、ラウラ、シャルル、クラスのみんな、先生たち、

   そして…簪……僕はたくさんの人と出会って、『愛』を教えて貰った。

   楽しい心を教えて貰った。思い出をもらった。笑顔をもらった。

   たくさんの事を、皆が教えてくれた。」

束「リュウ、君。」

機龍「束は、僕に銀狼を渡した事、後悔してるんだよね?」

束「…うん……だって、そのせいで……」

俯いている束 それを見た機龍は、再び束の頬に両手を添え、口づけをした

再び顔を真っ赤にする束

機龍「これは……僕の感謝と、束への祝福。僕は、束を愛してるし、束が

   力をくれた事、感謝してるよ。……僕は、皆と出会えて、

   みんなを守るための力を持つことができた。」

束「リュウ君……」

機龍「守るよ。みんなを……僕に幸せをくれた人々を守るために……

   人間を守るために……戦うって、決めたから……もう逃げない。

   立ち向かってみせるよ。……だって僕は―――『人間の希望』だから。」

束「でも……リュウ君が戦う必要は……」

機龍「違うよ。必要だから…強要されたから戦うんじゃない。……

   僕の守りたい人達……大好きな人達のために戦うんだ。」

そう言ってゆっくりと束を抱きしめる機龍

そして、束を見上げながら、あることをお願いする機龍

  「束……用意してほしい物があるんだ。」

束「…何?」

機龍「―――――」

彼の言葉に、少しばかり驚愕の表情を浮かべる束

  「お願い……束」

束「……わかった。少しだけ、時間を頂戴。」

そう言うと、束は部屋を出て行った

 

その後、機龍は顔に巻かれていた包帯を、鏡を見ながら指でそっと撫でた

そこに、今度は機龍の様子を見に来た真耶が現れた

真耶「ッ!機龍君!起きて大丈夫なのですか!」

咄嗟に部屋の中に入って来て機龍に駆け寄る真耶

機龍「はい。大丈夫です。」

真耶「そうですか……では、寝ててください。今は自室待機中ですから…」

と言って、押し入れから布団を取り出す真耶 しかし……

機龍「すみません先生。僕には…やらなきゃいけない事があるんです。」

真耶「え?」

そう言って真耶が振り返った時、機龍は近くのテーブルに置かれていた拳銃形態の

銀狼を手にしていた

  「あ!だ、ダメです!出撃は絶対にダメです!そんな事、先生は認めません!

   第一、機龍君は怪我をしたんですよ!絶対安静じゃなきゃダメです!」

咄嗟に抗議する真耶だったが、そんな事で機龍の信念は揺るがなかった

機龍「ごめんなさい。罰はいくらでも受けます。…でも……僕は、救いたいんです。

   あの、福音に捕らえられた人を…だから――」

真耶「だからって!異世界に来てまでそんな!あっ!」

と、真耶が口を滑らせてしまった しかし、その事に驚きもしない機龍

機龍「…知ってたんですね。」

真耶「ご、ごめんなさい!そんなつもりじゃ……!」

機龍「わかってます……でも、なら…僕は先生に『ありがとうございます』って、

   言わなきゃいけない気がします。」

真耶「え?」

機龍「先生は、僕が『怪物』だと知っていたのに、普通に接してくれました。

   その事が、僕はとてもうれしいんです。」

真耶「それは…機龍君は怪物なんかじゃありません!かわいい、私の…

   私の生徒です!」

機龍「ありがとうございます。先生……僕は、この世界でみんなに出会えたことが

   うれしいです。だからこそ……僕は僕にできる事で、この世界を

   守りたい。……≪ゴジラ≫として壊すのではなく、『機龍』として、

   みんなと、この世界を守りたいんです。…だから行きます。」

そう言うと、機龍は真耶の横をすり抜けようとした、が

その機龍を、後ろから真耶が抱きしめた

真耶「なら…せめて、ちゃんと帰って来てください。先生と、約束してください。」

そう言って、泣いているのか、彼女の嗚咽が機龍の耳に届いた

 

ゆっくりと腕を外した機龍は、振り返り―――真耶に口づけをした

突然の事で驚く真耶

機龍「……帰ってきます。みんなの居る、この場所に……」

それだけ言い残すと、機龍は今度こそ、部屋を後にした

 

その頃、海岸に集まっていた箒、鈴、セシリア、シャル、ラウラ、簪の6人

箒を鈴が 責し、やる気を出させ、全員で戦う決意を固めた そこに―――

機龍「お姉ちゃん達も…戦うんだね。」

包帯を巻いたままの機龍が現れた

簪「機龍!」

ラウラ「お前は、もう大丈夫なのか?動いても平気なのか?」

機龍「うん。大丈夫……だから、僕も行くよ。一緒に。」

セシリア「み、認められませんわ!機龍は先ほどの戦いで負傷したのです!

     あなたは部屋で――」

と、まるでその言葉を遮るように、顔の包帯を外していく機龍

その下から現れたのは、完治した機龍の顔だった

機龍「大丈夫。僕はもう、迷わないよ。見つけたんだ。僕の戦う理由も、

   もう逃げない覚悟も。だから行くよ。僕も。」

と、セシリアが何かを言おうとしたその時だった

 

唐突に、砂浜の一角に長方形の物体が落下してきた

その事に驚く箒たち と、そのケースにスピーカーが内蔵されているのか、

そこから束の声が聞こえて来た

束『お待たせリュウ君。…持ってきたよ。』

機龍「うん。ありがとう束。」

やがて、機龍がそのケースに近づくと、

ケース上部から四方に向かって何かが放たれ、地面に突き刺さった

それらから発せられたエネルギーが、ピラミッド型のバリアを作り出した

何事かとそれに近づく簪だったが、

束『そのバリアを超えない方がいいよ。でないと――『被曝』しちゃうからね。』

スピーカーを通しての声に、一瞬足を止めた簪

そして、まるでそれを合図にするように機龍の前のケースの中から

人の握りこぶしほどの大きさの鉱物が現れた

それは―――ウラン235を含んだ―――『核物質』だった

 

そして、ケースの左右に、原子力を示すマークがある事に気づく6人

シャル「機龍!すぐにそこから離れて!危険だから!」

咄嗟に、今の機龍がどうなっているのかを悟ったシャルが叫ぶが、機龍には関係なかった

 

当の機龍は、その鉱物を見つめた後、それを手に取った

そして――――――その石に噛り付いた

バリバリガリガリと、まるでキャンデーをかみ砕いているかのような音が響く。

が、今の機龍が食っているのは―――放射能―――人間にとっての毒の塊

そのものを喰らっていたのだった

 

誰もが驚く中、最後のひとかけらを飲み込む機龍

やがて、ケースから周囲を浄化するための放射能除去装置が作動した

煙に包まれたフィールド やがてその煙が晴れると、そこには

何も変わらない機龍が立っていた バリアも消滅し、普通に戻った、かに見えた

 

次の瞬間、機龍の体が、青白い光に包まれ始めたのだった

やがて、地面に片膝をつく機龍 しかし、息を荒らげながらも立ち上がった

そして、その背中から、ゆっくりと鋼鉄の背びれが浮かび上がって来た

機龍「う!うぅぅぅぅ!」

さらに、足先から、指先から……どんどんと鋼鉄の、銀色の装甲が浮かび上がって来た

体をチェレンコフ光―――原子の光が包む そのまま、内なる力を完全に開放

するかのように、機龍の体は『元の』3式機龍の姿へと戻っていく

髪の毛が皮膚に溶け込むように消え、瞳が鋼鉄の物となり、指が鋼鉄をも切り裂く爪に

変化し、その足は全てを踏み抜く強靭な足となる

  「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

  『KYUOOOOOON!』

最後に、空に向かって放たれた機龍の咆哮が人と獣の二つの言葉となって

世界を揺らした

 

そして、光に目を背けていた箒たちが目を覚ました時、

そこには完全復活した3式機龍が立っていた

機龍『僕は行くよ。人間を守るために……』

スピーカー越しに、人としての機龍の声が響いた

ラウラ「お前は、敵の居場所がわかるのか?」

機龍『うん……奴の狙いは……僕だ。』

ラウラ「何?」

そう聞かれた機龍の頭に浮かんだのは、前回の戦闘の時、

福音が抱き着いてきた時のシーンだった

機龍≪あの時……あのISが僕の中から何かの情報を『引き出した』。多分、

   奴の狙いは僕。詳しい事はわからなくても、この世界に『ゴジラ』の情報は

   危険だ。僕が倒さなくちゃいけないんだ。≫

  『あいつは、僕の中から何かを引き出した。……狙いが何であれ、

   今の僕にはわかる。あのISがどこに居るのか。』

そう言いながらゆっくりと海の方に体を向ける機龍

  『だからこそ、僕がけじめをつけるんだ。』

そう言うと、機龍はスラスターを展開し、飛び上がった

  『僕は戦う……この世界に≪破壊神≫は必要ない。』

その言葉を背に、機龍は飛び出した

 

その、飛び立つ姿を、海岸を見下ろせる崖の上から見ている女性が見ていた事には

まだ誰も気づいていなかった

その女性はトーガのような濃いオレンジ色の布を胸と腰に巻いた姿に、

白い肌、透き通るような蒼い瞳、腰まで伸びたオレンジ色の髪

そんな特徴を持つ女性は、飛び立っていく機龍を見ながら微笑み、

呟いた

???≪あなたも……生まれ変わったのですね。『機龍』。≫

やがて、その女性も、その背に極彩色の羽を背中から広げ、

何処かへと飛び立っていった

 

その後、海上を飛行する機龍の背後には、6人のISが並んで飛行していた

誰もが、それぞれの思いを胸に空を飛ぶ

 

数分後

機龍は海上で胎児のような恰好で浮かんでいた福音を見つけた 

だが……その体は確実に変化していた

鈴「何、あれ……あれがあの福音なの。」

恐れと共に口にした言葉が、その場の全員の感情を物語っていた

頭から生えていた翼はボロボロになり、その手は爪のように鋭利になっている

何より目立つのはその背中に生えた―――背びれだった

さらにその体が―――真っ黒になっていたのだった

ラウラ「まさか……セカンドシフトか?いや。それにしても様子がおかしい。」

全員が疑問と恐怖を感じる中、機龍はあれが何を意味しているのかを知っている

機龍『そうか……奴の狙いは…僕のDNAデータ、細胞のデータだったのか。』

その言葉に、全員の視線が機龍に集まった

  『あのISは、暴走してるんじゃない。誰かが裏で操っているんだ。

   ……その誰かは、福音を通して僕のDNAデータを手に入れようとしているんだ。』

シャル「どうして……機龍の細胞なんて……」

機龍を『ISを動かせるだけの男の子』だと認識していれば、その反応は当然だろう

しかし、ラウラと簪は、DNAデータが何を指すのかを理解した

つまり―――機龍のDNAとは……ゴジラのDNAなのだ

  『おそらく、今の福音は取り込んだ僕の細胞のデータでシステムのバグを

   起こしたんだ。このままだと、あの中に居る人が死んでしまう。

   何より、このまま放置したら、あれが第二の≪ゴジラ≫になる。』

その単語に、簪、ラウラ、箒、セシリアが絶句した

しかし、その単語の意味を知らない鈴とシャルだけが疑問符を浮かべた

  『そうなれば、僕達だけの問題じゃない。本当に『ISの枠』を超えてしまう

   前に、停止させる!』

そう言うと、機龍はいきなり口と胴のメーサーの砲口を開き、一斉射した

それを察知し、咄嗟に回避する福音 

   ≪GYAOOOON!≫

その時、福音から以前とは異なる獣のような咆哮が響き渡った

  ≪やっぱり、福音はG細胞に浸食され始めてる!早く止めないと!≫

と、その時だった

――――――お願い……私を壊して――――――

  『え?』

 

不意に、機龍の頭の中に声が飛び込んできた

その衝撃に戸惑い、一瞬停止した機龍 それに、漆黒に染まった

福音の爪が攻める それを、左腕部に内蔵したレールガンで遮るセシリア

さらにそこに簪の弐式の『山嵐』から発射された無数のミサイルが

福音を襲った

セシリア「機龍!油断はいけませんわよ!」

機龍「今……声が……確かに……」

謎の声に機龍が驚く中でも、箒たちと黒く染まった福音の戦いは続いている

それぞれ、新装備のパッケージで強化された能力を使いながら黒い福音を追い詰めていく

そして、間合いに入った箒の二本のブレードで斬りつけた

しかし、その刃を掴み、箒もろとも上昇する福音

ラウラ「箒!装備を捨てて離脱しろ!」

しかし、そのまま福音と競り合ったまま上昇する箒

そして、福音の翼の砲口が開き箒を狙った

箒は紅椿の展開装甲を利用し、つま先にビームサーベルを展開、踵落としの要領で

福音の左の翼を切り裂いた

 

推力を失った福音が、海中へと脱落していった

シャル「やった、の?」

簪「多分……」

空中を浮遊しながら、じっと福音が沈んだ海を見ていた7人

 

だが、次の瞬間 

海水が蒸発し、そこから新たな姿となって福音が復活した

 

頭部の残った翼も捨て、光の翼を新たに生成したのだった

その翼はまさに天使の翼

だが、次の瞬間、その翼から青い光の奔流が箒を襲った

その間に、機龍が割って入り自身を盾にした

機龍『このパワー……やっぱり……!』

   ≪GYAOOOON!≫

再び咆哮を上げ、より一層光に力を籠める福音

機龍を襲った光の奔流が爆発し、彼を吹き飛ばした

  『グッ!』

簪「機龍!」

吹き飛ばされた機龍は何とか空中でスラスターを使って何とか態勢を立て直した

その傍に寄り添うように近づく簪

しかし、今の機龍は先ほど聞こえた声の事が気になっていた

その時……

 

――――お願い……私を止めて……――――

  ≪君は、誰?≫

――――私は、銀の福音……そのコアです。――――

  ≪やっぱり……≫

――――お願いです。早く、早く私を壊して、マスターを救ってください。

    私がどうなっても構いません。だから……――――

  ≪そうか……君は、主であるその人を、大切に思っているんだね。≫

――――はい。もとはと言えば、私が、誰かに乗っ取られるようになって

    しまったから……――――

  ≪わかった………任せて……『君たち二人とも』救って見せるよ≫

――――え?――――

  ≪あと少しだけ辛抱して……すぐに―――≫

  『助けるから!』

最後を口にした機龍は再び空を駆けた

 

 

そして、脱落した箒の元に、もう一人の男が舞い降りた

それは―――セカンドシフトによって、白式の第二形態『雪羅』を纏った一夏だった

箒を助け起こし、何かを手渡した一夏は飛び上がり、空の上の機龍と並んだ

機龍『一夏、やっと来たの?遅いよ。』

一夏「へへ、悪いな。遅れちまって……けどまぁ、間に合ったみたいだな。」

機龍『うん。……一夏。』

一夏「ん?」

機龍『…行くよ!』

一夏「あぁ!行くぜ!」

二人は意気込み、同時に福音に向かって突進した

機龍がスラスターを使って弧を描くように接近し、左右のレールガンで

牽制射を繰り出した それを踊るように回避する福音

さらに、後方からセシリア、ラウラ、鈴、簪、シャルの援護射撃が福音を襲う

その福音の背後から接近した一夏が斬りかかる 

それを、背部の翼からの光弾で撃ち落とそうとするが、その翼に

今度は機龍のメーサー砲が命中 ぐらりと、態勢を崩した福音の

装甲を、雪片のエネルギーブレードが掠り、シールドエネルギーをごっそりと

抜き取った

 

機龍は、福音が目標を一夏に変更した事を見抜き、一気にその福音に接近した

そして、その両肩を自身の剛腕で押さえつけた

機龍『接触回線オープン!いっけえぇぇぇぇ!』

  ≪KYUOOOOOON!≫

スピーカー越しの声と咆哮が重なった次の瞬間―――

 

―――機龍は暗い世界で、鎖に繋がれた少女を見つけた

その少女は、ボロボロの衣服の上に無数の鎖で身動きを封じられていたのだった

さらに、時折その鎖から彼女に向かって電流のような物が走る

それが彼女を苦しめていた

これは、機龍に見える知覚化された今の福音のコアの状況だったのだ

 

急いでコアに近づこうとするが、

――――来ないで!来たら、あなたまで!――――

苦しみながらも、そう訴えるコア

――――お願い……私を、撃って……マスターを…助けて――――

そう言っているコアの瞳には、涙が浮かんでいた

  ≪…ダメだ。≫

――――どうして……――――

  ≪僕は……誰も見捨てない!≫

そう叫ぶと、機龍はコアの少女に向かって走り出した

少女に纏わりつく鎖を握った瞬間、機龍の意識に激痛がほとばしった

  ≪グッ!≫

――――ダメ!このままじゃ、あなたまでファイヤーウォールにやられちゃう!――――

だが、それでも機龍は鎖を握る手に力を籠める事をやめない

  ≪僕は諦めない!だから……君も諦めないで!≫

その言葉に、はっとなった少女の瞳から、一滴のしずくが零れ落ちた

  ≪救って見せる!僕は……僕は戦うんだァァァァァ!≫

全力で、鎖を引きちぎる機龍 

次の瞬間、真っ暗だった世界が一瞬にして晴れ渡った

そして、鎖の束縛から解放された少女を、機龍が受け止めた

 

次の瞬間、外の福音にも変化が訪れた

黒かった体表が脱色されるように、白に戻って行った

しかし、それで終わりでは無かった 

福音の背部に展開されていた光の翼が、まるで最後の抵抗のように、

エネルギーをため始めた

そして、その狙いは、一夏達に絞られていた

機龍「ッ!みんな!逃げ――――」

その警告が届く前に、光の奔流が一夏達に向かって飛び出した

 

その攻撃に、誰もが驚き反応が遅れた 誰もが命中を覚悟し腕や装備で頭を守った 

だが、光が一夏達を襲う事は無かった

 

恐る恐る一夏達が前を見ると、そこには2対の翼を携えた女性の背中があり、

無数の金色の鱗粉が空を舞っていた

その女性が、ゆっくりと一夏達に振り返った

???「お怪我はありませんか?」

一夏「え、あ、はい。」

あまりの出来事にから返事しかできない一夏だったが

それでもにっこりと微笑む女性だった

と、ボケ~っとしながら一夏がその女性に見とれていると

横に現れた箒が一夏の頬をビンタした

  「痛ッ!何すんだよ!」

箒「う、うるさい!ボケ~っとしているお前がいかんのだ!」

と、顔を赤くしながら怒鳴る箒

???「うふふ、あらあら。微笑ましいですね~」

と言って笑う女性

シャル「そ、それより、あなたは…一体…」

明らかに『人では無い』女性に疑問を示すシャル

   「そうですね……いずれあなた達にもお話しするときが来るでしょう。

    ですが、今ではありません。」

そう言って、翼をはためかせ、一夏達から離れる女性

   「それと…機龍。」

一夏より少し離れた場所に浮いている機龍に瞳を向ける女性

   「あなたとは、ゆっくりと話したいですね。時間があれば…では……」

それだけ言い残すと、その女性は翼をはためかせ一気にマッハの速度まで加速し

一夏達の前から姿を消した

 

誰もが予想外の出来事に絶句する中、機龍が心の中でつぶやいた

―――モスラ…君も―――

 

その後、一夏と機龍たち8人は停止し待機状態になった福音を身に着けた

パイロットの女性と共に旅館へと帰還した

 

―――もちろん千冬によるお怒りが待っていたが―――

付け加えるなら、慣れないながらも千冬が8人を褒めもした

 

帰還したのはもう朝日が昇り始めていた時間で仮眠を取った後、

旅館での待機時間を過ごしていた時だった

 

夕食の時間

全生徒が集まった食堂で質問攻めにされている一夏達6人

そこに箒と機龍の姿は無かった―――のだが……

束「はいは~~い!全員注も~く!」

いきなり、大広間の前方のステージに束が現れた

全員がぽか~んとする中、部屋の明かりが落とされ、ステージ上だけが

ライトを浴びていた

と、束の後ろから現れたのは――――――昨日プレゼントされたフリルがたくさんついた

白いドレスを着て、銀色の長髪のカツラを被った女装姿の機龍だった

次の瞬間……

   『ぶふっ!』

   『『『『『『『ぶはっ!!!!!』』』』』』』

食事のお茶に口を付けていた一夏と大勢の女子がお茶と鼻血を大量に噴出した

 「はいはい!これこそ、前日のリュウ君の水着姿に対抗して私と

  助手のクーちゃんが作り上げた機龍専用ドレスとそれを着た本人だよ!」

そんな事を言っていると今度は……

千冬「おい束!貴様は何を………」

真耶「織斑先生?どうか、し、たの、で………ま、まさか……」

入って来て早々硬直する先生の二人

 

もはや花嫁衣裳とでも言えるような恰好の機龍

機龍「……ねぇ束。これでよかったの?何だか、みんな固まってるけど……」

束「大丈夫大丈夫!みんなリュウ君のかわいさにびっくりしてるんだよ!

  それと、はいこれ!」

と言って何かのドリンクを渡す束

機龍「飲み物?ありがとう束。」

そう言って束から渡されたドリンクを口にした瞬間

機龍の顔が真っ赤になった 手元から落ちたドリンクが部屋に液体と匂いを

まき散らした

そして、千冬がすぐさま匂いで束が機龍に飲ませたものを理解した

千冬「おい束!貴様機龍に酒を飲ませたな!?」

束「YES~!THAT’S RIGHT!」

千冬「お前は子供になんてものを飲ませてるんだ!」

そんな口論をしている間に、フラフラになった機龍は

あれよあれよと真耶の方へと足取りを進め、その胸に

倒れこんだ 咄嗟に機龍を受け止める真耶

真耶「機、機龍君!?大丈夫ですか?」

と、機龍の顔を覗き込む真耶

 

それに対して、機龍も顔を上げ、真耶の顔を覗き込んだ―――のだが……

機龍「……ママ。」

   「「「「「「「「「へ???」」」」」」」」」

どうやら酔った勢いで真耶をママと思い込んでいるようだ

  「ママ……暖かい。」

そう言って真耶の体を抱きしめ、その豊満な胸に顔を埋める機龍

真耶「あああ、あのですね。私は機龍君のお母さんじゃ……」

わたわたと慌てながらそう言った真耶だったが、それは逆効果だった

機龍「……ママは、僕の事嫌い、なの?」

涙目で、上目使いで真耶を見上げる機龍

   『『『『『ズッキュ~~~ン!!!』』』』』

その瞳が宴会場に居た全生徒のハートを打ち抜いた

そして、次の一言が追い打ちをかけた

  「僕は…ママの事大好きだよ。」

   『『『『『『『『『『ブッハッ!!!!』』』』』』』』』

愛の言葉と機龍の女装姿に心を奪われていた彼女達にとっては破壊力抜群だった

誰もが血を流しながら(鼻血で)倒れていく女生徒たち

そして、当の告白をされた真耶も顔を真っ赤にしていた

 

真耶「あ、いや、だからその、私も機龍君は大好きですけど、私と機龍君は

   生徒と先生ですし……」

機龍「じゃあ、僕の『好き』。証明してあげます。」

そう言うと、腰元に回していた手を真耶の頬に添える機龍 そして……

真耶に口づけを交わした 

真耶「ん!?ん~~~~~!」

咄嗟に事に驚きすぎて、抵抗するどころかがくがくと膝が笑い出し、

その場に膝を落としてしまう真耶

そしてそのキスが、女子たちにとどめを刺した

全員がその場に倒れ、膨大な量の鼻血を流し、その血で畳にこう書き記した

―――我が生涯に一遍の悔いなし―――と

 

ちなみに、真耶が機龍によってキスをされている頃、束は千冬のアイアンクローを

喰らっていた

 

その後は何とか生き残っていたシャルや簪が何とか機龍を眠らせた

宴会場はまさに死屍累々の様相だった

まぁ、一時間かけてようやく回復した女子たちは自分の部屋へと戻り

束は千冬が旅館の外に放り投げ、真耶はシャル達に介抱された後自室に戻り、

機龍はと言うと、何とか一夏が着替えさせ、自分の部屋で寝かしつけた

 

そして、誰もが寝静まった時間帯

 

~深夜~

   ≪機龍……機龍…≫

機龍は、夜中に頭の中に響く声で起きた

体を起こしてから瞼をこすり、うつらうつらと起き上がった機龍

   ≪機龍≫

そして、自身を呼ぶ声にはっとなった機龍

   『君は……モスラ、なの?』

   ≪はい。海岸で、お待ちしていますね。≫

と言うと彼女からのテレパスは終了した

機龍は浴衣の姿のまま、部屋を出て旅館を出て行った

 

深夜の海岸 夜空の星と月に照らされ煌く蒼い海の浜辺に

一人の女性が立っていた その、夜空を見上げる女性にゆっくりと

少年が近づいている 女性も足音に気づいて振り返り、笑みを漏らした

 

モスラ「……こんばんは、機龍。」

機龍「……やっぱり……君は…」

モスラ「こうして会うのは、もう半月ぶりになるのでしょうか。あの日の東京での

    一日から……」

そう、かつて二人は東京で出会っている―――『守護獣モスラ』と『3式機龍改』

として―――

その時、何を思ったか機龍が震え出し、砂浜に膝を落とした そして……

機龍「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」

その瞳に大粒の涙を浮かべながら謝り始めた その姿勢に言葉を失うモスラ

  「あの日……ぼくは…君を守れなかった。」

それは懺悔のようでもあった

あの日、機龍はゴジラの攻撃を喰らい、身動きが出来なくなっていたのだった

そんな中、モスラは戦場の現れた自身の子供たちを守るためにゴジラの熱戦を

自身の体で受け、燃え上がり、爆死したのだった

  「ごめんなさい……僕が、もっとしっかりしてれば……

   君を死なせずに、すんだかもしれないのに。あの子達が悲しむ必要なんて…」

そう言って泣き崩れる機龍に、モスラは歩み寄り、抱きしめた

モスラ「泣かないでください、機龍。あなたこそ、今まで辛い事をたくさん経験してきた

    のに……それでも私のために涙を流してくれるのですね。」

機龍「だって……僕が、動けていれば…君は、子供たちと……」

そう言う機龍の頬に、モスラはキスをした

モスラ「ありがとう。機龍。」

さらに、機龍の頭を抱き寄せ、撫で始めた

   「あなたは、この世界で本当に優しい子に育ったのですね。誰かを愛し、

守る気高い存在…人々の希望に……私は、あなたと会えてよかった。」

機龍「モスラ……僕は…」

モスラ「今は何も言わないでください。あなたの、暖かさだけを、今は……」

そう言って、お互いに抱きしめ合う機龍とモスラだった

 

数分後

   「どうですか?落ち着きましたか?」

機龍「うん……ありがとう。」

モスラの胸に顔を埋める機龍と、その頭を撫でるモスラ

  「……モスラは、これからどうするの?多分、僕達は……」

モスラ「そうですね。もう…あの世界に帰ることはできないでしょう。

    ですが、私達は新たな生をこの世界に得ました。

    私達は、この世界で第二の生を全うするでしょう。

    あなたは、それを拒みますか?」

機龍「ううん……僕には大切な人がいる。守りたい人…大好きな人……

   みんなが居る。だから…僕はこの世界で生きるよ。

   『篠ノ之機龍』として。」

と、決意の籠った瞳でモスラを見上げる機龍

モスラ「そうですか。……私も、この世界を見つめる事にします。

生まれ変わった私として…」

機龍「そうなんだ……ねぇモスラ、良かったら……」

何かを言おうとした機龍だったが、その唇をモスラの人差し指が塞いだ

モスラ「そのお誘いはとてもうれしいですが、今、ではありません。

    でも……私もすぐにあなたのおそばに行きます。」

そう言うと、機龍の唇を自分の唇で奪うモスラ

機龍「も、モスラ……」

その行いに顔を真っ赤にして、ドキドキと心臓を高鳴らせる機龍

モスラ「少しだけ、待っていてくださいね。必ず、あなたの元に参りますから。」

そう言い残すと、モスラは背中の羽を広げ、何処かへと飛び立っていった

 

翌日

機龍たちは無事に学園へと戻る事になり、今は全員が帰りのバスに乗っていた

ちなみに、何故かクラスメイト達の機龍を見る目がおかしい

やたらと顔を赤くしているが、機龍と目が合うとさらに顔を真っ赤にして

視線を逸らした 今の彼女達は内心でこう思っていた

   『『『『『『今あの顔を見るだけで昨日のを思い出して大変だ~!!』』』』』』   と

その事を機龍が気にしていた時だった バスの中に金髪の女性が乗り込んできた

 

???「えっと…小さな君が篠ノ之機龍君?」

機龍「はい。そうですけど……あなたは…?」

ナターシャ「私は『ナターシャ・ファイルス』。福音のパイロットよ。」

つまり、彼女は機龍たちの活躍で救出された人物なのだ。

     「今日はちょっとしたお礼にね。君のおかげで、

      福音は無期凍結が回避できたわ。ありがとう。」

そう、実は機龍は福音と接触し内部のバグ…ウイルスを発見した際に

一部を隔離し回収、千冬に提出していたのだった

それにより、福音の暴走は外部からのハッキングによると断定

暴走が事故では無く事件だった事で、なんとか凍結処理は回避されたのだった

 

     「君のおかげであの子と私はまた空を飛ぶ機会を与えられたわ。

      これは……」

と言いつつ、機龍の頬に自身の両手を添えるナターシャ

     「そのお礼♪」

そして、機龍の唇を奪った

 

全員が一斉にポカーンとしている間に、いつの間にか手を振ってバスを

降りていくナターシャだった

ちなみに、バスが他だった簪がこの事は知る由も無く、学園に戻った後に

ラウラから初めてその話を聞き、その日の夜は機龍に

キスを求めた簪 無論機龍はそれに答えた―――ディープキスで―――

これを機龍が知っているのは、束がそれを教えたからではあるが、

初めての濃厚なキスに簪はびっくりして、或いは幸せ過ぎて、

そのままベッドの中で気絶してしまったのは、余談である

 

新たな出会いと旧友との再会  だが、戦いの炎は

今だに燻っていた  そして、破壊神のデータを狙った敵が、

機龍や一夏達の前に現れる日も…着々と近づいていた

     第11話 END

 

 




次回は夏休み中の閑話として、機龍とセシリア、ラウラ、簪との
それぞれの話を書きます。できてら、OVAの話も書きたいなと思ってます。

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