「……そっか。アスナは、思い出しちまったか」
ナギさんは、私に全てを話終えた後に、ポツリとそう言った。
予想以上に複雑で、想像以上に壮絶な話であった。
私自身、この世界に産まれてから沢山の不思議を経験しただろうという自覚はある。だが、明日菜達の体験してきたことはより現実離れしていて、実際に旅をしてきた彼らには悪いが、私にはお伽噺のようにも感じてしまっていた。
幼少の頃出会った明日菜は、実は魔法世界では姫という身分であり、自身の持つ力故に兵器として使われていた過去がある。
それは、重く、苦しく、悲しい話だった。
散り散りになっていく仲間達。残されたのは記憶を消され何も分からない自分だけ。
初めて明日菜と会ったときのあの表情には、明日菜の辛い想いがどれだけ込められていたのだろう。
「……それで、アスナは今どうしてんだ」
「……いつも通りですよ。友達と、いつも通りにしてます。まだ混乱はしている気はしますし、無理している感じもしますが、いつも通りにしようとしてます」
明日菜が今訊いた話のどこまでを自分で思い出したのかは分からない。
最後に明日菜の前で亡くなったガトウという青年のことだけを思い出したのか、それとも、ナギさん達と旅してきた全てを思い出したのか。
私はそれを本人に訊ねる気はなかった。明日菜は自分がこれからどうしていくかを、今一生懸命に決めようとしている。ならば、私はそれを見守ってあげたかった。
「……ガトウのしたことが正しかったとか、間違ってたとかは、わかんねぇ。記憶を消すだなんだってことは簡単にやっちゃいけないんだろうが、それでもあいつはアスナのためにそうした。その時はきっと、それがアスナのためになると信じてた筈だ。ガトウはアスナが笑って過ごせることをずっと望んでたから」
記憶を消去したということが今の明日菜の不安定さを招いている。それを知った上で、ナギさんは切ない表情をしながらそう言った。
「ガトウはなんだかんだアスナのことを一番可愛がってたからな。闘いに巻き込まれながら生きる幼いアスナを見て、不憫に思ってたのかもしれねぇ。普通に学校に行かせて、普通に友達を作らせてやりたいと思ったんじゃねぇのかな」
私には、分からない。その時の状況も、旅していたものたちの気持ちも。過酷で幾多の困難が待ち受けていたその旅は、彼等に、明日菜に何を想わせたのだろう。
「ナギさんは、悔いているのですか」
何に悔いていると訪ねているのか、自分でも分からなかった。ただ、彼の表情を見るとそう訊ねずにはいられなかった。
ナギさんは弱々しく笑った。似合わない笑顔だった。
「……分からねぇ。未だに自分がしてきたことで正しかったか分からねぇことは大量にある。ただ、その時はがむしゃらでそれがいいんだと信じてやってきている。だから後悔はしてない筈なんだがな」
皆、同じだ。
過去は戻れず未来は知らぬ道。だから人々はその時々に自分の気持ちを置いてくることしか出来ない。魔法使いだろうと、英雄だろうと、それはきっと変わらないのだ。
それから私達は、静かになった。
部屋には何となく重苦しい空気が溢れ出していたのだが、それを打開しようとは思わなかった。私自身、明日菜の過去を訊いて暗い気持ちになっているのかもしれない。
不意に、部屋の隅から、パサリ、と本のページを捲る音がした。
静かなこの場では目の行く先はその音の下しかなく、見ればそこにはフェイト君が文庫本を持って座っていた。
フェイト君がここにいるのは当然だ。何故ならここはフェイト君の家だからだ。
視線が集まったのを感じたのか、フェイト君は顔を上げた。
黙っている私達をじっと見る。彼も、今の会話を訊いていたのだろうか。
フェイト君はそれから再び文庫本に視線を戻しながら、さらりと言った。
「……今更彼女の記憶が戻った所で、彼女が彼女であることに違いはあるのかい」
ナギさんは彼の方を見て、その瞳を大きくさせた。
フェイト君のその発言に驚いたのか、それとも、フェイト君がそう発言したことに驚いたのか。
「……だよな。変わんねぇよな。明日菜は明日菜だ」
ナギさんは、少し考えた後に笑ってそう答えた。
私も、同じようにそう思った。
ナギさんもきっと、そう思うべきなことは分かっていたと思う。
ただ、彼に言葉にしてもらっただけで、心強く感じているようだった。
「そういえば、フェイト君」
帰り際、玄関で振り向きながら私はフェイト君に声をかけた。
私が帰ることに特に興味を持ってなさそうだったフェイト君だが、名を呼んだらちゃんと此方を見てくれた。
「もうすぐ、私の妹が誕生日なのは知っているか?」
私がそう言うと、フェイト君はゆっくり頷いた。
「……知ってるよ。本人がしつこく知らせてきたからね」
うんざり、という風に彼はそう言った。ういのことだから、必要以上にフェイト君にアピールしまくったんだろう。我が妹ながら申し訳ない。
「そうか。なら、いいんだ」
これを訊いてどうしてあげるかはフェイト君次第だ。
最近、二人の関係が前より変わってきていることは知っている。フェイト君の態度は以前より僅かに柔らかくなり、ういに対して、その鬱陶しさに嫌悪を示すようなことはなくなった。
その変化はきっといいことで、そうやって色んな人と関わることで、フェイト君自身が更に変わっていけるならば、私は嬉しい。
○
「んで、どーすんだよ」
「……何が」
「ういちゃんの誕生日だよ」
ナギ・スプリングフィールドは、当たり前だろ、と続けて言った。
少し前に居候としてやってきた彼の態度は、今や借宿ということを忘れるほどに大きい。
「何あげるつもりなんだ?」
「……なぜ何かあげる前提なんだい」
僕がそう言うと、彼は信じられないとでも言うように口をあんぐりと開けた。
「まじかよお前。ういちゃんのこと好きなんじゃねぇのかよ」
「正直言うと、誕生日だからといってなんだ、と思っている」
訊くところによると、人は一年に一度、誕生した日を祝っているらしい。
だが、僕にはその祝いの意味がよく分からない。別に生物なんて今でもどこでも大量に産まれてきているだろう。それをどうして祝う必要があるのか。
まじかよお前、とナギ・スプリングフィールドはもう一度言った。
「あのな、フェイト。フェイト・アーウェルンクスよ」
「……なんだい」
「誕生日の意味だとかな、分からねぇならそういうことは別に何でもいいんだよ。そりゃ、その人が今まで生きていたくれたことに感謝だとか、子供がこんなに大きくなったことを祝ったりだとか、そういうことが分かればいいんだろうか、分からないならいい。それならそれで、こういうのは、機会だと思え」
「機会?」
「そーだ。お前、ういちゃんに思ってることが少なからずあるだろ」
彼女の、天真爛漫で、なんの濁りもない笑顔が頭に浮かぶ。
「そういうのを伝える機会だよ」
「……伝えるだけなのに、物がいるのかい」
「そら、物も人に気持ちを伝える手段の一つだからよ。お前が選んでお前があげたいと思ったものを彼女にあげることに意味がある」
そう言って、ナギ・スプリングフィールドは1枚の紙をさっとを差し出した。
「……これは?」
「金だよ。1万円。そんくらい分かるだろうが」
「分かるに決まっているだろう。だから、どうしてそれを僕に渡すのかを訊いている」
「家賃をそーいや渡してねぇなって思ってな。すくねぇけどとりあえずこれだけ渡しておくわ。好きに使えよ」
どこからこんな金が、とは訊かなかった。彼が朝早く起きて、アルバイトのようなことをしているのは知っている。
「んじゃ、いってらっしゃい」
彼は無理矢理お金を僕の掌に握らせてから、ぐいぐいと背中を押してきた。
「わかんねぇなら街の方に行け。そしたらショッピングモールあるだろ。そこでなんか買え」
その言葉を最後にして、彼は力強く玄関の扉を閉めた。
さらには戻ってくるなと言わんばかりにがちゃりと鍵まで掛けていた。
僕はポケットの中から自分の家の鍵を取り出す。自分の家だから鍵を持っているのは当たり前だ。彼はどうやらそこまで頭は回らないらしい。
部屋に戻ろうと思えばすぐにでも戻れる。
だが……。
『フェイフェイ! 私ね! もうすぐ誕生日なんだ!! それでね! なんかあやねぇが私にかわいい服を買ってくれるっていってたの!! 今度フェイフェイにも見せてあげるよ!! 』
僕は溜め息を一つ吐いて、街へと向かって歩き出した。
○
駅の近くにあるショッピングモールは、人で賑わっていた。通行人から聞こえた言葉によれば、このショッピングモール中にあるお店を新設させたばかりのようで、それがこれだけの人だかりを作った原因らしかった。
見渡せば、若者を中心として幅広い年代の人が集まっているのが分かる。
人混みは、嫌いだった。ごちゃごちゃとしていて、人の声や息遣いが絶え間なく響き、耳障りだ。
既に行きつけの静かなカフェが恋しくなっている自分がいた。大体、何か買うにしてもショッピングモールである必要はないだろう。
そうは思うが、だからと言って他に相応しい物を売っている店を知っている訳もない。結局僕は大勢の人の中に混ざることしか出来なかった。
中に入ると、僕は余計に混乱した。
天井は遥か高くにあり、強い光が店内を明るく照らしている。道路のように真っ直ぐに作られた道の左右には幾つもの店が並び、それぞれの個性を活かし客寄せをしている。
特に買うものの当たりをつけて来たのではない僕にとって、ここは広すぎるし、選択肢が多すぎた。
とりあえず呼び込みをしてくる店はなんとなく煩わしかったので全て無視して進み続けていたが、店に囲まれた道はいつまでも続き、ゴールが見えなかった。
どんどんと多くなる人の群れ。声。
どうして他のものはこの状態で平気に笑っていられるのか、不思議で仕方なかった。ただ歩いていただけなのに度重なる戦闘よりも疲労を感じてしまっている。
僕はひとまず、脇にそっと置いてあるベンチに座った。
自分には、向いてない。
ベンチに深く腰を下ろしながら僕は心の奥底て呟いて、溜め息をまた吐いた。
顔を上げ、通りかかる人々の表情を見る。
やはり、皆が笑っている。
父親と手を繋ぐ少年も、恋人と共に歩く青年も、友達と店を回る少女たちも、皆笑っていた。
その、一人一人の笑顔に理由があるのだろう。
ふと、そんなことを思った。
それぞれが、皆自分らしく楽しんでいて、笑っているのだろう。
こんな風に考えるようになったのも、多分彼女の影響だ。
ベンチに座りながら、何となく人の流れを観察し続けていると、突然、聞き覚えのある声がした。
「……お前、フェイトか? なにしとるんやこんな所で」
呼び掛けられ、目を向ければ、そこには犬上 小太郎がいた。
黒いニット帽子を被り、半袖のTシャツにジーパンという休日らしいラフな格好をしていた。
「あら、小太郎君。お友達? 」
彼の後ろには、二人の少女がいた。片方は背が高く大人らしい女性だった。雰囲気が明智 七海に少し似ている。もう一人は頬にそばかすがあり、控え目な印象である。
「ちゃうで、千鶴姉ちゃん。こいつはただのクラスメイトや」
「確かに、小太郎君と違うタイプな子だもんね。落ち着きがある」
「夏美姉ちゃん……それって俺が落ち着きないってことか?」
「ないでしょ、小太郎君は」
「あるわ! 少なくともこいつよりはあるわ!」
「小太郎君、お友達に、こいつ、って呼び方は駄目よ?」
「やから千鶴姉ちゃん、こいつはお友達じゃないって……! いえ、ごめんなさい。もう呼びません」
「よろしい」
いつもはクラスでは常に大きな態度をとっている犬上 小太郎は、千鶴姉ちゃんと呼ばれる人物に笑いながら睨まれると、しゅんと大人しくなっていた。
その大きめの女性は、ベンチに座る僕の前で膝を折り、目線を合わせてきた。
「こんにちは、フェイト君、でいいのよね。私は那波 千鶴。いつも小太郎君がお世話になっています」
「えと、私は村上 夏美。えー、小太郎君がいつもご迷惑を掛けます」
那波 千鶴は微笑みながら僕にそう言い、村上 夏美は頭を下げながらそう言った。犬上 小太郎は彼女達の挨拶に不服そうな表情をしたが、特に何も言わなかった。
「それで、フェイト君。親御さんは? それともお友達ときたの?」
「……いや、一人で来た」
「はっ! 寂しい奴やのぅ」
「……小太郎君? 」
「ご免なさい」
犬上 小太郎は再びすぐに謝った。どうやら那波 千鶴を恐れているらしい。
「フェイト君は、何を買いに来たの?」
そう村上 夏美に尋ねられ、僕は少し迷ったが、ありのままに話すことにした。
会ったばかりの彼等にこんなことを言う必要があるとは思えなかったが、現状のままだと何も解決しない。誰でもいいから何か手がかりとなるものを与えて欲しかった。
「素敵」
誕生日プレゼントを買いに来たと言うと、女性? と尋ねられ、頷いて肯定すると、二人は声を揃えてそう言った。
「それで、フェイト君は何を買うつもりなの?」
「それが、分からない。何を買えばいいのか」
「あらあら」
「いいなぁ、フェイト君。大人だなぁ。やっぱ小太郎君とは全然違うねぇ」
「ふん。何がいいんやそんなもん」
犬上 小太郎が鼻を鳴らしながら言った。
「俺に言わせれば、女なんかにうつつを抜かすなんて軟弱者や。愛だ恋だのナヨナヨしたこと言う奴等は大抵弱っちいわ。やっぱり男なら、腕っぷしがなきゃあかん」
「はぁ、ほんとに子供だよね、小太郎君」
「……いや、僕は彼の言うことは分かるよ」
僕が同意すると、彼女達は、え、と声をあげ意外そうな顔をした。
「結局、そんなものは本当に困ったときに役に立つものじゃない。いざという時に必要なのは力で、想いなんていうあやふやなもんは、自分を助けてくれはしない」
それはきっと、僕が一番分かっていた。魔法世界で闘いに身を任せたことがあり、逃げ惑う人々を見たことがある。彼等がどれだけ叫ぼうが、力がなければ生きてはいけない。それまでの人生で愛をどれだけ謳おうと、それは生きていく力にはならない。
だから僕は、彼の意見にも納得出来た。
だから僕は、恋愛という感情はあまり理解出来なかった。
僕と明智 ういの関係を語れば、誰もが、好きなんだろ、と訊いてくる。
でも僕は、『好き』という感情が未だによく分かっていになかった。
彼女には、他の人間には想わないような感情があることは自分でも分かる。
だからと言ってこれが恋かと訊かれれば、僕には分からない。
この気持ちに『恋』という名前を付けようとする人がいるが、僕にとってはそんな簡単なものではなかった。この気持ちはただの言葉一つで表せるようなものとは思ってなかった。
「……フェイト君」
那波 千鶴が僕を見て微笑んでいた。
「貴方達の言うことは、最もかもしれないわ。でもね、力でしか救えないものもあれば、気持ちでしか救えないものもあるのよ」
彼女の瞳は、しっかりと僕を見ている。優しく、語りかける口調だった。
「貴方がプレゼントを上げた相手は、きっと喜んでくれる。その笑顔は、きっと力では手に入らないものよ。貴方の気持ちで、人の笑顔を作ることが出来る。そう思えば、ナヨナヨしたものだって、捨てたもんじゃないでしょう?」
ちらりと犬上 小太郎にも目を向けて彼女はそう続けた。犬上 小太郎はその言葉に納得しているようではなかった。
「何でもいいのよ、フェイト君。高くても安くても、ありきたりでも珍しいものでも。貴方が彼女を想って選ぶことに意味があるんだから」
彼女を、想って選ぶ。
頭には、彼女の姿が浮かぶ。
笑っていて、笑っていて、笑っていた。
いつでも彼女は笑っていた。
僕の渡すものによって、彼女がまた笑顔になってくれるならば、僕はそれでいい。
「……そうだね。自分で、もう少し選んでみるよ」
ありがとう、と僕は彼女達に告げて、ベンチからやっと立ち上がる。
背を向けて、再び人混みの中に紛れて行こうとすると、後ろから彼女達の会話が少しだけ聞こえてきた。
「やっぱり大人だなぁ、フェイト君」
「……小太郎君も、早く彼に追い付かなきゃね」
「ふん。もうとっくに追い抜いとるわ」
「ふふ。そう言ってる間はまだまだね」
○
後日、小学校が終わり、いつも通り帰宅しようとしたところで、明智 ういと会った。
彼女は、フェイフェイ、と僕に向かって手を大きく振った。
彼女と放課後にこうして会うことは分かっていた。
何故だか知らないが僕たちはどこでも偶然出会うことが多くて、今日もまた然りだった。
僕らは、いつもと同じように、帰り道を共にしようとする。
「明智 うい」
「ん?なに、フェイフェイ」
僕は途中で彼女を呼び止め、ランドセルに入れていた、彼女宛のプレゼントを取り出した。
「これ」
「え。……私に?」
頷いて肯定する。
誕生日までは、まだ少し日がある。だが、当日は彼女は家族で過ごすと聞いていたため、早めに渡すことに決めていた。
彼女は受け取った袋を、じろじろ見たあと、開けていい、と僕に尋ねてきた。
僕はまた頷く。
「ぬいぐるみだ!」
彼女は、ぱあっと表情を明るくさせて言った。
色々と悩んだが、僕はあの日、最終的にぬいぐるみを選んだ。
思い出せば、彼女と初めて会ったとき、UFOキャッチャーでぬいぐるみをとった彼女が非常に喜んでいたのが印象的だったからだ。
「そうだね。気に入らないかもしれないけど」
「ううん。フェイフェイ、嬉しい。ホントに。ありがと」
彼女は、ウサギのぬいぐるみを両手抱き締めるようにしながら言った。
「……明智 うい」
「ん? 」
『お前、ういちゃんに思っていることが少なからずあるだろ』
『そういうのを伝える機会だよ』
僕は、彼女を正面から見る。
彼女に抱くこの気持ちが何なのかは、未だに答えはでない。
ただ、彼女に伝えておきたいことは、はっきりと胸の中にあった。
この気持ちだけは、自分の中で確かにあった。
だから、伝えるのならばこの言葉だと思った。
「君に会えて、良かった」
「……!」
彼女は、その瞳を大きくさせた。
それから、徐々に頬を緩めていく。
「ふふ。ふひひ」
彼女は、にっこりと笑っている。気のせいか、ほんのりと顔が赤みを帯びているようにも感じた。
「あは、どーしよ。私ね、今、凄い嬉しい」
彼女は、今までにみたことないほどの満面の笑みで、僕に言い返してくれた。
「私もね、フェイフェイに会えて良かったよ」
そうか、なら、良かった。
僕は、小さくそう呟いた。
もしかすると、僕の顔も赤くなっていたのかもしれない。