艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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chapter7「雪風編」

第二章「大演習祭(バトルフェスタ)編」&意外と隠れファンが多い室蘭雪風編スタート。

そして雪風の深海棲器も募集します、詳しくは活動報告にて!

あとお気に入りが100件を超えました!本当にありがとうございます!


第二章「大演習祭編」
第82話「雪風の場合1」


少女がふと上を見上げれば、そこには満天の星空が広がっていた、億万の星々からなるその光景は、夜空を彩るイルミネーションのようであった。

 

 

しかし、少女はその星空が偽りのモノだということを知っている、夜の世界を照らし出す金色の満月も、夜空を分かつように広がる天の川も、どれだけ時間が経っても微動だにせず、朝が来るのを拒むようにその場に居座り続けている、それはまるで虚像天体(プラネタリウム)のようであった。

 

 

少女がふと周りを見渡せば、そこには一面の大海原が広がっていた、星の光をその身に反射させる夜の海は美しいの一言に尽き、いつまでも眺めていたいとすら思える。

 

 

しかし、少女はその海が偽りのモノだということを知っている、足元を見ると水は動いていないし波も立っていない、そして少女は今()()()()()()()()()、特別な装置などは何も装着していない素足の状態でだ、なぜそんな事が出来るかと言えば、少女と海面の間に見えない隔たりがあるからだ、例えるなら海全体に透明のアクリル板が被せられている…といったところだろうか。

 

 

 

 

 

 

偽物だ、この空も、この海も、この世界も、何もかもが偽物だ…

 

 

 

 

 

 

そんな偽物の世界で、少女はひたすらに戦っていた。

 

 

 

その相手は、少女の目の前にいる、自分と全く同じ顔をした少女だ。

 

 

 

どうして目の前の少女が自分と同じ顔をしているのか、目の前の少女は自分の偽物なのか、それとも彼女が本物で自分が偽物なのか、そもそもなぜこんな偽物の世界でこんな少女と戦っているのか、思い出そうとしても脳から情報が出てこない。

 

 

でも、この自分そっくりの少女とは戦わなくてはいけない、そして絶対に勝たなくてはいけない、それだけは海馬の奥底に深く焼き付いている。

 

 

 

もうどれくらい戦い続けたか分からなくなってきた頃、少女は足を滑らせて転んでしまった。

 

それをチャンスと捉えたもうひとりの少女は得物のナイフを少女の眉間に向け、躊躇なく振り下ろす。

 

 

『じゃあね、もうひとりの吹雪(わたし)

 

 

その瞬間、少女…吹雪は偽物の世界から追い出された。

 

 

 

 

 

「…ハッ!」

 

 

吹雪は勢いよくベッドから飛び起きると、浅く息をして周りを見渡す、もうひとりの自分は当然ながらいない。

 

 

「…また、あの夢か」

 

 

吹雪はぽつりと呟く、ここの所吹雪は同じ夢ばかりを見る、もうひとりの自分と訳も分からず戦って、でも決着がつくという所でいつも目が覚める、いつもこうだ。

 

 

「あの子、何者なんだろう…?」

 

 

普通であればただの夢だと思って気にする人はいないだろうが、どうも吹雪にはコレが何か意味があるように思えてならなかった。

 

 

「“夢は自分を映す鏡”だって聞いたことがあるけど、あの子が私にとって大事な意味を持ってる…?」

 

 

そこまで吹雪が考えていた時…

 

 

『Deep Sea Fleetのメンバーはすぐに全員提督室に来てくれ、急用の連絡をしたい』

 

 

館内放送で海原が吹雪たちの呼び出しをかけた、すぐに全員を集めるような急用とは、どんな内容なのだろうか…?

 

 

「あまりに良い話じゃなさそうだな…」

 

 

そう言って吹雪は身支度を整えて提督室に向かう。

 

 

 

「大本営から呼び出しですか?」

 

 

「連絡の内容というのは、その間の留守番…ですか?」

 

 

「いや、今回呼び出しがかかったのは俺だけじゃない、台場鎮守府に所属している艦娘…つまりDeep Sea Fleet全員だ」

 

 

「「はぁ!?」」

 

 

海原の言葉にDeep Sea Fleet全員が同じタイミングではぁ!?と口にする。

 

 

「私たちまで大本営に呼ばれてるんですか?」

 

 

「司令官を召集するならまだ分かりますが、その所属艦娘…しかも全員を呼び出すとは…」

 

 

「大本営は何を考えてるのかしら…」

 

 

吹雪たちは驚いた様子でそれぞれ言い合う。

 

 

「というわけでこれから全員で大本営に行く、不平不満はあるだろうがお偉いさんの命令だ、我慢してくれ、それと外出するにあたって深海痕を隠せるような服装に着替えるように」

 

 

「「了解しました!」」

 

 

吹雪たちは一斉に敬礼をすると、それぞれ準備のために提督室を出る。

 

 

「…やっかいな事になりそうだな」

 

 

誰もいなくなった提督室で、海原はぽつりと呟いた。

 

 

 

 

 

 

「暑い…」

 

 

「溶ける…」

 

 

大本営に向かう道中、Deep Sea Fleetのメンバーは汗だくで炎天下のアスファルトを歩く、深海痕を出さないようにタイツを穿いたりパーカーを着たりと対策を練っていたのだが、真夏の南中時刻にそれをやるのは自殺行為である。

 

 

 

「キビキビ歩け、ダラダラしてたら余計着かなくなるぞ」

 

 

「ふぁ~い…」

 

 

「りょ~かいで~す…」

 

 

吹雪たちは返事をするのも億劫になってきているようで、大鯨に至っては今日10本目のスポーツドリンクを開けている。

 

 

そうこうしている内に台場一行は大本営の建物に着く。

 

 

「うーん!生き返るー!」

 

 

「やっぱりエアコン無いと生きていけないわね」

 

 

入り口をくぐった途端Deep Sea Fleetは一気に元気になる、空調設備の無い台場とは違い大本営は冷暖房完備のフル装備だ。

 

 

「受け付け済ませたぞ、とっとと来い」

 

 

「分かりました」

 

 

海原は吹雪たちを引き連れて大会議室の前まで来る。

 

 

 

「台場鎮守府の海原です、召集命令を受けて参りました」

 

 

「…入れ」

 

 

ノックをして南雲元帥の返事を受けると、深呼吸をして大会議室のドアを開け中に入る。

 

 

 

「…おいおい、なんだこりゃ」

 

 

部屋に入った瞬間、海原は会議室内を見渡して苦悶の表情を浮かべる。

 

 

 

「来たみたいだな」

 

 

 

そこには、南雲元帥と横須賀の佐瀬辺、そして、他の鎮守府の提督たちが一同に集まっていた、しかも…

 

 

「どうして所長まで?」

 

 

「元帥に突然呼び出されてね、俺も詳しい内容は知らないんだ」

 

 

榊原まで来ていた、呼び出された趣旨を伝えられていないらしく、苦笑しながらそう言う。

 

 

元帥を中心に各鎮守府の提督、この集まり方はまるで…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それではこれより、海原提督の()()()()()()の容疑に関する軍法会議を始める」




太鼓の達人×パズドラのコラボに胸アツな自分です。

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