艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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全部書こうとしたんですけど長くなりすぎると思ったので分けます。

上げて落とすのはクズの常套手段。


第43話「三日月の場合28」

 

あの大規模作戦から3日後、海原は再び大本営を訪れていた、三日月を含む5体の艦娘を轟沈させてしまった事に対して、海原の処遇を決める軍法会議が行われるのである。

 

 

(南雲元帥は俺の弁護をするって言ってたけど、元帥って裁判長みたいな立場だろ?どうやって俺の弁護をするんだ…?)

 

 

考えながら海原は大本営の廊下を歩く、まさか代理で弁護人でも立てるのだろうか?。

 

 

(どうでもいいけど無駄に緊張するな、今回の結果で俺の今後が決まるわけだし…)

 

 

良くて降格、悪くて除隊といったところだろう。

 

 

(っと、ここか)

 

 

軍法会議が行われる大会議室の扉の前で海原は生唾を飲んだ。

 

 

(ここでクヨクヨしてもしょうがねぇ、行ってやるか!)

 

 

腹をくくった海原は大会議室の扉を開けた。

 

 

 

「…来たな」

 

 

扉をくぐって中に入ると、室内は重々しい雰囲気に包まれていた。

 

 

長机が『コ』の字のように設置され、その中央に南雲が、周りに幹部連中や他の鎮守府の提督が座っている。

 

 

「それではこれより、海原司令官の軍法会議を始める、海原司令官、前へ」

 

 

「はい」

 

 

海原は言われたとおり前へ出る、後ろを除けば前も左右も提督たちの視線を感じる、普段こういった事には慣れていないため余計に緊張する。

 

 

「それではまず、今回取り決めるのは室蘭鎮守府所属の駆逐艦娘5体を轟沈させた事に対する処罰だ」

 

 

司会進行役の鹿沼が事前にタイピングしてある原稿を読み上げる。

 

 

「それに関してはオレから話そう」

 

 

南雲がそう言うと席を立つ、海原の弁護をしてくれるのは本当らしい。

 

 

(元帥が弁護してくれても、艦娘轟沈の罪は重い、ましてや5体ともなれば降格は免れないよなぁ…)

 

 

せっかく三日月たちに心を洗われたのに、これではかなりマイナスからのスタートとなりそうだ、海原はそう考えながら南雲の言葉を待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回の件は全て海原司令官の判断によるもので、オレを含む大規模作戦参加組は一切関わっていない」

 

 

「…へ」

 

 

海原は自分の耳を疑った、今南雲は何と言った?全て俺の判断…?。

 

 

「俺は別動隊を撤退させる方に賛成したのだが、海原司令官が“自分の艦隊に任せて欲しい”と自信を持って宣言したので、オレはその意志を汲む事にしたのだ」

 

 

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

 

先程から事実とは全く違う事を言っている南雲につっかかる。

 

 

「元帥!話が違うじゃないですか!俺を弁護するんじゃなかったんですか!?」

 

 

「…何の話をしている?俺はそんな話をした覚えはないぞ?」

 

 

南雲は心当たりが無いように振る舞うが、海原には見えてしまった。

 

 

南雲や鹿沼、そして周りの提督連中がほんの少しだけ、嗤っている事に…。

 

 

(そういう…事かよ…!)

 

 

この時初めて、海原は自分が嵌められたという事を自覚した、南雲は初めから自分を弁護する気など無かった、海原を蹴落とすためのいい口実としてこの軍法会議を利用したのだ。

 

 

「あれだけの大口を叩いておきながらこのようなお粗末な結果になるとは、やはり新任のお前には荷が重すぎたか…」

 

 

南雲はわざとらしく嘆いて見せるが、彼の言い分にはほころびがある。

 

 

「ちょーっと待ってくださいよ元帥、さっきから流暢に語ってやがりますけど、元帥の言ってることが事実だって言う証拠でもあるんですか?元帥の証言だけでは明確な証拠にはなりませんよ」

 

 

そう、今の話は全て南雲の証言のみだ、ここには録音した音声やその時の様子を撮った写真など、物的証拠が何一つ用意されていない、裁判に等しい軍法会議で物的証拠も無しに当事者を糾弾するにはいささか強引と言える。

 

 

「何を言う、“お前が艦娘を轟沈させた”という事実さえあればそれまでの過程などどうとでも出来るんだよ」

 

 

「そんなめちゃくちゃな理屈が…!」

 

 

通る訳がない、そう言おうとしたが、ここにいる連中はみんな海原を黒にするために南雲が飼い慣らした共犯者(グル)なのだ、この空間の中でまともな常識や正義が通るなどと考える方が間違っている、そんな雰囲気すら感じさせる。

 

 

「とにかくお前は自分勝手な考えで艦娘を轟沈させた、以上だ、反論も申し開きも一切認めん」

 

 

南雲がそう結論づけると、鹿沼が締めの挨拶をして軍法会議は終了する、一方的にも程があるそれは最早軍法会議などとは呼べないモノとなっていた。

 

 

 

「何が…俺の何がイヤでこんな事しやがったんだ…!」

 

 

海原は自らをせせら笑いながら帰って行く提督連中を睨みつつ南雲に問うた。

 

 

「そうだなぁ、詰まるところ、出る杭は打たれる…って所だろうな、元帥(オレ)より優れた人間などいらん」

 

 

 

南雲は愉快そうに笑いながら鹿沼を連れて会議室を出る。

 

 

要はあいつらは、海原の優秀さが気に入らなくて嫉妬していたのだ、だから何かとかこつけて海原を落とすための理由を探し、今回の件が決め手となった、そういうことだ。

 

 

「…ちっくしょおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」

 

 

 

誰もいなくなった会議室で、海原は腹の底…いや、心の底から叫んだ。

 

 




三日月編が終わったらちょっとした読者参加型企画を試験的にやろうかと目論んでおります。

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