艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー 作:きいこ
「こ、これは…」
眼前に広がる敵艦隊を見て三日月は言葉を失う、なぜなら敵の構成は…
○戦艦棲艦×3
○空母棲艦×2
○重巡棲艦×1
○駆逐棲艦×4
…と、駆逐艦1体がどう頑張っても倒せる兵力ではない。
「…こりゃ逃げるが勝ちだな」
「あら、司令官がそんな事を言うなんて珍しいですね?いつもなら“轟沈覚悟で特攻しろ”なんて言うのに」
「…戦術的撤退も必要な事だってのはお前からさんざん聞かされて耳タコだからな、流石に俺だって学習する」
「流石司令官です」
「…お前に言われると何かほめられてる気がしないんだよな…」
そうこう言っているうちに敵艦隊がこちらに攻撃を開始した、戦艦棲艦、重巡棲艦、駆逐棲艦は砲撃、空母棲艦は艦載機を飛ばしてくる。
「と言うわけだ!死ぬ気で走れええぇぇ!!!!」
「了解しましたああぁぁ!!!!!」
海原と三日月は回れ右からの死力猛ダッシュで提督室から飛び出す。
「うおおおおぉぉぉ!!!!!???」
するとその直後に提督室が大爆発に包まれ、部屋の基礎ごと崩れ落ちる。
「これじゃすぐに建物が崩れて圧死だ!外に出るぞ!」
「はい!」
海原と三日月は外に出るために階段を駆け下りる、すると走った後の壁や床板が次々と爆破されていく。
「何でこんなに正確に砲撃が出来るんだ!?敵艦はサーモグラフィーでも搭載してんのか!?」
「どうやら敵艦載機に後をつけられてるようですね、爆撃も艦載機が行っているみたいです」
三日月にそう言われ海原は後ろを振り向く、すると敵艦載機が5~6機程こちらを追いかけてくるのが見える。
「流石は正規空母ってとこだな、大方俺たちが外に出たところを戦艦棲艦が仕留める…って算段だろう」
「…敵ながら賢いですね」
三日月は忌々しそうに舌打ちするとこの状況を打破する方法を考える、雪風たちが出掛けている今、戦えるのは自分しかいない、しかしいくら機動力に優れヒット&アウェイを最大の持ち味とする駆逐艦の自分が戦艦や空母を相手に戦っても5分と保たないだろう。
(…5分?)
ここで三日月はある考えを巡らせる、あの敵艦隊を相手取るなら3分…粘れば5分は保たせる事が出来るだろう、もしその5分があれば…あるいは…
「…司令官、その場しのぎ程度にしかなりませんが、作戦を思いつきました」
「おっ、何だ?」
「私が囮になって敵艦隊を引きつけて時間を稼ぎます、その間に司令官は逃げてください」
「……は?」
三日月にそう言われた瞬間、海原は時間が止まったように感じた、自分が囮になる?でもあの敵構成で三日月が敵うワケが…
「お前本気で言ってんのかよ!あんな敵艦相手に勝てるわけがねぇだろ!」
「勝つ必要があるんですか?司令官の逃げる時間を稼げるのであれば轟沈だって覚悟の上です」
「三日月…!」
「それが、司令官の
三日月のその言葉を聞いて、海原は無意識に足を止めていた、背後から艦載機が来ているのに、足が動かなかった。
「司令官、今までありがとうございました、司令官の
三日月はそう一方的に言って海原にビシッと敬礼すると、回れ右をして敵艦載機の方へ向かっていく。
「三日月!」
「逃げてください司令官!私では5分が限界です!」
三日月はそう叫びながら主砲で敵艦載機を撃ち落し、所々崩落した廊下を駆けていく。
「…くそっ!」
海原は後ろ髪を引かれる思いを抱えながら再び走り出した。
艦これアーケードの母港画面で三日月をつついたときキュン死にしそうになった。