艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー 作:きいこ
そう言えば駆逐棲艦って肺呼吸とエラ呼吸どっちなんだろうか…
第2連合艦隊は絶体絶命のピンチを迎えていた、前方には戦艦棲艦と空母棲艦、そして新種個体の
後方を見れば駆逐棲艦が幾重にも列をなして第2連合艦隊の退路を塞いでいる。
どう転んでも戦うしかない状況だ。
「…仕方がないわね、どうにかして退路を作りながら戦いましょう」
「退路を作るって、具体的にはどうするの?」
ローマの言葉に伊勢が首を傾げて質問する。
「…吹雪と暁に後ろの駆逐棲艦50体全てを相手してもらう」
「えぇ!?」
「ちょっとローマ!?」
「気は確かですか!!?」
第3艦隊のメンバーは驚愕の表情でローマを見るが、それとは対照的に第4艦隊は妥当な判断だろうといった顔で平然としていた。
「ちょっときついかもしれないけど、お願いできる?」
「任せてください!」
「1体残らず殺し尽くしてやるわ!」
吹雪と暁は自信たっぷりにその役目を引き受ける。
「それじゃあ私たちは目の前の大物を相手することに集中しましょうか」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」
勝手に話をまとめるローマに蒼龍がつっかかる。
「駆逐艦なんかに後ろを任せていいんすか!?こんなバックアップ信頼出来ませんよ!!」
「そうかしら?私はこの子たちの事信頼してるわよ、少なくとも背中を預けられる位にはね」
ローマはそう言って蒼龍を見据える、戦場において背中を預けられるというのは最高の信頼関係と言えよう。
「ローマさん…」
「あの時は好き放題言ってごめんなさい、でも今はあなたたちの事…頼りにしてるわよ」
「っ!!はいっ!吹雪行きます!」
「あ!暁も!」
吹雪と暁は全速力で駆逐棲艦バリケードに突撃していく。
「さてと!じゃあ私たちはこのでかぶつを相手するわよ!」
「はい!」
「うっしゃあ!」
第2連合艦隊は気合い十分にベアトリスを見据えて戦闘態勢に入る。
「ふっ…艦娘風情がワタシに刃向かうか、面白い!」
「なっ…!?こいつ喋った!?」
「マジかよ!!」
初めて深海棲艦が人語を話す瞬間を目撃し、艦隊全員が驚く。
「
ベアトリスの指示を受け、戦艦棲艦と空母棲艦がそれぞれ行動を開始した。
第2連合艦隊と色丹島迎撃第1部隊との戦闘が始まった。
◇
まずは吹雪たち駆逐艦サイド、深海棲器を構えて一番手前側の駆逐棲艦に肉薄していく。
今回は数が数なので右手に主砲、左手に太刀という組み合わせを使う、いつものように太刀で敵の砲弾を斬り落としつつ右手の主砲で駆逐棲艦にダメージを与える作戦だ。
「撃てええええぇぇぇ!!!!」
まずは吹雪が主砲を連射する、さすがに一撃で撃沈させるのは無理だが、中破か大破にさせることは可能だ。
「死ねやあああぁぁぁぁ!!!!!」
そこへ暁が鎌で追撃、駆逐棲艦の胴体を真っ二つにして次々と撃沈させていく。
しかし敵もただやられている訳ではない、50体の駆逐棲艦が同時に砲弾を放ち、それが雨あられの如く降り注ぐ。
「くっ…!」
「きゃあっ!」
深海棲器や高角砲などで必死に捌いてはいるが、この弾幕を全て防ぎきれるはずもなく
◇
一方こちらは戦艦空母組、敵陣前衛の戦艦棲艦と空母棲艦が先陣を切ってこちらへ向かってくる。
「艦載機、発艦始め!」
瑞鶴、加賀、蒼龍、飛龍、の正規空母が艦載機を放つ、空母棲艦がいるとはいえ正規空母4体の実力があれば制空権を取るのは容易いはずなのだが、ここで予想外の出来事が起こる。
「何であなた達艦戦積んでないのよ!」
蒼龍と飛龍は艦上戦闘機…艦戦を全く積んでいなかったのだ。
艦戦とは平たく言えば『敵空母の艦載機を撃ち落とすための艦載機』である、一度発艦させると常に上空を旋回して飛び回り、敵空母が飛ばしてくる艦爆や艦攻などの攻撃機を撃ち落とす役目を果たす、言わば航空戦の要とも言える艦載機だ。
一見すると便利に見える艦戦だが、艦載機を落として敵空母を弱体化させるという性質上艦戦自体に敵艦への攻撃力は無い、敵空母を弱らせたければ艦戦を積まなければいけないが、それは同時に攻撃力を捨てる事を意味する。
いかに攻撃機を残しつつ艦戦を積むか、空母はその塩梅がとても難しいのだ。
「敵空母を弱体化出来ればこっちの被害も減るのよ!なのに艦戦積んでないってアホじゃないの!?」
「何言ってるんですか!艦戦に攻撃力は無いんですよ!?そんなもの積んだって何にもならないじゃないですか!」
「あんたはとりあえずその腐った脳筋をどうにかしなさい!」
「どっちでもいいから戦え!ブン殴るわよ!」
さっきからケンカばかりしている瑞鶴と蒼龍を霧島が怒鳴りつける。
◇
(取り合えずはまだ戦えるわね)
ベアトリスは戦局を見ながらそう判断する、こちらの兵力は
(てかあいつらさっきからケンカばかりしているけど大丈夫なのかしら?)
チームワークがまるでなっていない第2連合艦隊の状態に敵ながら不安になるベアトリス、よく今まで戦闘を続けられたものだと正直に思う。
(こっちは特に気にしなくてもいいけど、問題はあっちかしらね)
ベアトリスは後方にいる2体の艦娘に視線を向ける、退路を塞ぐために用意した50体の
(流石にこのままじゃよろしくないわね…)
そう思ったベアトリスは首筋に付けた無線機のような機械を手に持つ。
「アン、
◇
「よしっ!あともう少し!」
吹雪はナギナタを構えて駆逐棲艦を睨む、弾幕をかいくぐりながらの激闘の末、50体いた駆逐棲艦を20程にまで減らすことが出来た。
「暁、まだ行ける?」
「当たり前じゃない!」
暁はそう言うがすでにふたりとも中破のダメージを負っており、若干ではあるが動きも鈍くなっている。
「コレで決める!」
ふたりは残りの駆逐棲艦に向かって突撃していくが…
「…えっ!?」
「何よこれ!?」
突然ふたりの足元に渦潮が発生した、それはどんどん大きくなっていき、吹雪と暁を飲み込まんとしている。
「渦潮ってこんな突然起こるモノだっけ!?」
「そんなハズは…あっ!?」
必死に渦潮から抜け出そうともがいている途中、吹雪は渦潮の発生原因を見つける。
「潜水棲艦だ!潜水棲艦が水中で高速旋回しながら泳いでるんだよ!」
ふと水面下を見れば、4体の潜水棲艦が同じ方向で素早く旋回し渦を作っている、イワシの群がサークル状に泳いでいるあの動きを想像してもらえれば分かりやすいだろう。
「まずい…このままじゃ…!」
渦潮はどんどん水流を強くしていき、駆逐艦の速力でも抜け出せないほどになっていた。
「も、もう…ダメぇ…」
暁が飲み込まれそうになるのを吹雪が手を掴んで支える、しかしこのままだといずれはふたりそろって飲み込まれてしまう。
「吹雪!暁!」
すると騒ぎに気づいた瑞鶴が吹雪に向かって手を伸ばす、吹雪は限界ギリギリの速力で渦潮の流れに逆らい何とか瑞鶴の手を掴むことが出来た、これで渦潮を抜け出せると思ったが。
「…えっ?」
突然吹雪は手の感覚が無くなるのを感じた、そしてそれは伸ばしていた腕を駆逐棲艦に砲撃で吹き飛ばされたのだという事に気づいたのはそれからすぐの事だった。
「うわああああああぁぁぁぁ!!!!!!」
「きゃあああああああぁぁぁぁ!!!!!!!」
「吹雪いいぃ!暁いいいぃぃ!」
瑞鶴がふたりの名前を叫ぶが、すでにふたりは渦潮の中へと消えていた。
◇
渦潮に飲み込まれた吹雪と暁は潜水棲艦の前まで引きずり込まれる。
(マズい!反撃しないと…!!)
そう思ってナギナタを展開させるが、水中では上手く動けず全く攻撃が出来ない。
潜水棲艦はそんな吹雪たちに一切の容赦もなく魚雷を撃ち込んだ。
(があああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!!)
水中での雷撃を食らって吹雪と暁は大破のダメージを負う、何とか水上へ上がろうとするが、ふたりにはそんな余力すら残っていなかった。
(マズい…息が…)
吹雪と暁が息切れを起こそうとしていた、艦種によって例外もあるが艦娘も人間と同じ肺呼吸だ、無酸素活動時間が長引けば命に関わる。
(こんな所で終わっちゃダメ…!!こんな…所……で…………)
吹雪と暁は必死に水面へ手を伸ばしてもがくが、ふたりはそこで意識を手放してしまった。
いつも読んでくれている読者のみなさんのために何かしらの企画とかやってみようかしら、キャラ人気投票とか。