艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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軌跡シリーズを閃の軌跡3までクリアしたので改めて投稿、やりふけっている間に太鼓の達人のDLCで超お気に入りの「太鼓侍」が配信されたりスマブラspecialの続報が出たりと色々ありました。

いよいよ艦これも第二期に移行しますね、海域は一部リセットされるようですが、5-2までしか突破していないのであまり痛くなかったり。


第214話「七海の場合7」

「七海…!?」

 

 

榊原たちは何が起きたのか一瞬理解できなかった、どこからかの攻撃で七海たちが撃たれたというのを理解したときには、すでに七海のいた場所は炎に包まれていた。

 

 

「…10年にも渡り我々人間を苦しめてくれた深海棲艦の最期がコレとは、何とも呆気ないものだな」

 

 

榊原たちが呆然としていると、背後から聞き慣れた声が聞こえてくる。

 

 

「元帥…」

 

 

そこには南雲と鹿沼、そして海軍警察の隊員たちがぞろぞろとやってきた、さらに後ろには大本営所属の艦娘たちが艤装を展開させて控えている、今の砲撃も彼女たちが行ったものだろう。

 

 

海月(みつき)隊長、彼が例の男です」

 

 

「はい、造船所所長榊原啓介さん、国家に対する反逆の疑いであなたを拘束します」

 

 

そう言って前に出てきたのは大演習祭(バトルフェスタ)で佐瀬辺を拘束、逮捕した爆乳の女性リーダー…海月だった。

 

 

「なっ…!!拘束!?」

 

 

 

「元帥!これは一体どういうことですか!」

 

 

隊員たちに手錠をはめられ拘束されながら榊原は南雲に問う、海原や台場の艦娘たちも反逆罪とやらの共犯者で一緒に拘束されていた。

 

 

「いやね、この10年間我々の敵として数多の犠牲を出しながら戦ってきた深海棲艦、その原種(オリジナル)を君が作ったという信じがたい情報を入手してね、調査のためにコレを使って身辺を調べてみたらビンゴだった訳だ」

 

 

南雲は懐から小さい機械を取り出した。

 

 

「それは…!」

 

 

「今の言動から察するに盗聴器の類というワケですね、所長室で話していた密談の話は全てあなたに筒抜けだったというワケですか」

 

 

もっと南雲の動向に気をつけておくべきだった、そう後悔しながら吹雪は南雲を睨む。

 

 

「艦娘開発の権威、そして人類の起死回生の一手を生み出した救世主の正体が深海棲艦などという怪物を生み出したマッドサイエンティストだったとは、世の中分からないものだな」

 

 

 

「この件は日本を、いや世界中を震撼させる出来事になるだろう」

 

 

南雲と鹿沼が好き放題口に出していると、ふたりにとって聞こえてくるはずのない声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…なるほどね、あえて博士を泳がせて、私と博士…あなたの汚職の最大の証拠を消そうって魂胆か」

 

 

「ずいぶんと趣味の悪い真似をしてくれるな」

 

 

「っ!?」

 

 

突如七海のいた炎の中から声が聞こえ、その場にいた全員がそちらを向く。

 

 

「残念だけど、こっちもそんなにバカじゃないのよ」

 

 

そこには、七海を守るように防御兵装(リコリス)を展開させて立ちはだかる飛行場姫(エリザベート)が居た。

 

 

南雲は改めて艦娘たちに砲撃を指示しようとしたが…

 

 

「おぉっと、それはしない方が身のためだぞ」

 

 

気付けば南雲や艦娘たちを艦載機が取り囲んでいた、ベアトリスの牡丹雪にエリザベートの影夜叉、そして七海の御霊骸とまさにオールスターな面子である。

 

 

「我々の目的はあくまでも榊原氏との対話だ、そちらがそれを飲んでもらえればこちらからは一切の戦闘行為は仕掛けないし、そのサテライトにも攻撃はさせないと約束しよう」

 

 

ベアトリスは凄むような声で南雲たちに向けて言う、本当ならサテライトなど使わずに非武装での交渉と行きたかったのだが、すでにこちらは一撃(実際には何発もだが)もらっている、これくらいは許されるだろう。

 

 

 

 

 

「南雲さん、まさかあなたが元帥になってるとは思いもしなかったわ、大方博士の動向を伺うためなんでしょうけど」

 

 

七海はエリザベートとベアトリスを護衛につけながら榊原たちの方へと少し近づく。

 

 

「お久しぶりですね南雲さん、あの時の視察以来でしょうか」

 

 

「何を言ってるんだ?俺は深海棲艦に知り合いは居ないんだがな」

 

 

あくまでとぼける南雲に対し、七海は少しも動じずに次の台詞を口にする。

 

 

「…そうですか、なら改めて自己紹介をしたほうがいいかもしれませんね」

 

 

七海はそう言うと恭しくお辞儀をし…

 

 

 

「私の名前は七海、第三次世界大戦中に日本政府の計画によって作られた人造人間(ホムンクルス)の兵士…ヒューマノイド・ソルジャーと呼ばれる存在です、そちらの榊原啓介氏によって開発されました、言わば艦娘の原点(ルーツ)です」

 

 

そう挨拶をした。

 

 

人造人間(ホムンクルス)…!?てことは深海棲艦の始原って…」

 

 

「それに第三次世界大戦って…」

 

 

七海の自己紹介の直後、海軍警察や艦娘たちがざわついた、深海棲艦の正体が人間の作り出した人工生命、その真実はそこにいる人間たちに十分な衝撃(インパクト)を与えるものであった。

 

 

「そして、その計画を企画、立案して鶴の一言でGOサインを出したのは南雲さん、あなたですよね」

 

 

「なっ…!?」

 

 

「えぇっ!?」

 

 

警察隊員や艦娘たちは今度こそ言葉を失ってしまった、榊原所長が深海棲艦を生み出したというのも十分驚きに値するモノだが、今の発言はさらにその上を行く驚きを与えた。

 

 

「元帥…!?それは一体どういう…!」

 

 

その中で最も驚いていたのは榊原自身だった、別組織とはいえ、上司に近い存在の南雲がヒュース計画の立案者、その情報は榊原には伝えられてはいなかった。

 

 

「一体何の話をしてるんだ?俺にはさっぱり分からんな」

 

 

しかし南雲はやはりと言うべきかシラを切る、相手は人類の敵として戦ってきた深海棲艦の親玉、七海が何を言ったところで信じはしないだろう、南雲はそう高を括る。

 

 

「…そうですか、では…」

 

 

 

 

しかし、南雲は七海の切り札を知らなかった。

 

 

「コレを見ても、同じ事が言えますか?」

 

 

そう言って七海が取り出したのは、ヒューマノイド・ソルジャー計画の概要が書かれた政府の内部書類だった。

 

 

「っ!?」

 

 

それを見た瞬間、南雲の顔には焦りの色が浮かぶ、何故それをあいつが持っているんだ、あの書類は自分の権限を使って処分したはず、なのに何故残っている?そんな疑問が頭を駆け巡る。

 

 

「ここには当時計画されていたヒュース計画の概要や具体案、予算の見積もりなどが書かれています、そしてここには計画に参加した政府関係者の署名があなたの名前も含めはっきり書かれています、ご丁寧に拇印付きでね」

 

 

七海は書類の右上を指差しながら得意げに説明する、そこには当時ヒュース計画に参加を表明した人間の名前がずらりと並んでおり、その横には拇印も確かに押されている、実印ならいざ知らず、偽造が難しいとされている拇印での書類となれば物的証拠としての信頼性は高いと言えよう。

 

 

ちなみにこのデータは榊原に渡された研究所のデータに紛れていたモノで、複雑なパスワードやらセキュリティーやらでプロテクトされていたのだが、ようやく解除が出来たのだ。

 

 

「…………」

 

 

決定的な証拠を突きつけられて南雲は言葉を失う、海月も懐疑的な目で南雲を見つめていた。

 

 

「もう一度言いますが、私の目的は榊原氏との会話です、それさえ叶えてくれれば何も危害を加えるつもりもありませんし、この書類をあなた方海軍警察に渡してもいいです、この10年間の真実を明らかにする証拠がどれだけ重要で貴重なものか、考えなくても分かりますよね?」

 

 

七海は再度南雲や海月たちに自分の要求を突きつける、七海の持っている“それ”はこの交渉の場において最強のカードであり、更にそれを覆す切り札(ジョーカー)など南雲も持ち合わせてはいなかった。

 

 

「…榊原所長の拘束を解いてやれ」

 

 

海月は隊員たちにそう指示する、それを聞いた南雲は口を挟もうとしたが…

 

 

「南雲元帥、あなたには別途お話を聞かせて貰う必要が出てきました、流石にあんなモノを見せられてしまっては、我々も動かざるを得ない」

 

 

それよりも早く海月が鋭い視線を南雲に向ける、拘束こそされなかったが、海軍警察の影響力は海軍元帥よりも上だ、こうなっては誰も海月を止められない。

 

 

「七海殿、我々はそちらの要求を承諾する、対話に応じよう」

 

海月がそう声を上げると、七海はそれを聞くなり猛スピードで榊原に近づき、思い切り抱きしめた。

 

 

「あぁ、博士…この日をどれだけ待ち望んでいた事か、ようやく会えましたね」

 

 

七海は目尻に涙を浮かべながら榊原との再開を心から喜ぶ。

 

 

「…あぁ、ようやく会えたね、七海」

 

 

しかし、そんな笑顔の七海とは裏腹に、榊原の顔は曇っていた、七海に会いたいと思っていたのは紛れもない事実だ、しかし日本の起死回生の一手として生み出された七海が今や日本…世界の敵になってしまったのは紛れもなく自分のせいである、あの時自分も七海と一緒に逃げていれば、それ以前に敵国の諜報員にヒュースの事を知られないように対策をもっと立てていれば。

 

 

…それ以前に、自分が七海を生み出さなければ、そんな考えすら頭を過ったこともあった、そんな自分が今更どの面を下げて七海に会えばいいのだろうか、そんな自己嫌悪の自問自答を繰り返していた。

 

 

「博士、あなたと別れてから10年間、私は独自にヒュースの開発を進めてきました、私以降のヒュースの開発が難航し始めてから、政府の人間は手のひらを返したように博士を非難するようになって、それがずっと悔しかったからです」

 

 

「だから私は自分の開発したヒュースで沢山の人間を倒せるようにずっと努力してきました、そうして成果を挙げれば博士を非難してきた奴らを黙らせられる、博士のやってきたことが正しかったと証明出来る、そう信じて…」

 

 

七海は榊原と別れてから今までの事を楽しそうに話す、その内容は些細な日常の出来事からヒュースに関する内容まで、本当に様々な“思い出話”を。

 

 

しかし話が“今”に進むにつれ、次第に七海から笑顔が消えていった。

 

 

「…“艦娘”と呼ばれる存在が初めて現れたとき、本当は既にそれを作ったのが博士だという可能性を浮かべていました、回収した艦娘の身体を調べたら、その主成分がヒュースとほとんど変わっていなかったから」

 

 

「でも“そんなはずはない”とそれをずっと否定してきました、人間を倒すために活動を続けている私たちに敵対する存在を、博士がわざわざ生み出すわけがない、そう思うことでその“可能性”を否定し続けてきました」

 

 

「でも、吹雪から艦娘を作っているのが博士だというのを聞いて、一番信じたくなかった可能性が現実のモノになって、どうしても博士の真意を確かめたくなって、今日こうして会いに来ました」

 

 

話が進むにつれ七海の顔が“不安”と“悲哀”に歪んでいき、幼さを残したその顔は今にも泣き出してしまいそうだった。

 

 

「博士、正直に答えてください、私は今まで博士の意志を継ごうと頑張って来ました、でも…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私のしてきたことは、間違っていたんですか…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

泣きそうな…いや、すでにうっすらと涙を浮かべながら、しかししっかりと榊原の顔を見ながら、七海は問い掛けた。

 

 

 

「……………………………………」

 

 

そんな七海の問い掛けに榊原は答えることが出来ず、ただ立ち尽くすしか出来なかった。




次回「終戦」

『さようなら』か『ただいま』か、怪物に許された結末は…。

最後の七海が榊原に問い掛けるシーンですが、このDSFの小説を書くときに一番最初に考え付いたシーンです、ほぼラストシーンから逆算して書いてきましたが、ようやくここまで来ました。

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