艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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艦これ運営Twitterのエイプリールフールツイートが今年も凄い内容でしたね、文月の漫画や第2期は本当っぽいですけど、瑞雲Inよみうりランドやアイススケートは去年の瑞雲祭りの実績(前科)のせいで嘘だと思えなくなった(笑)

でも文月の漫画は読みたいですね、フミィ。


ちなみに冬イベはE-5でタイムアップでした、空襲マスでの大破撤退が何十回も続いたのが主な理由です。


第205話「渋谷奪還作戦19」

最悪の展開だ。

 

 

目の前の七海とエリザベートを前にして、吹雪は脂汗を額に浮かべる。

 

 

エリザベートは以前秋葉防衛戦でDeep Sea Fleetを持ち前の白兵戦能力で散々苦しめた強敵であり、七海は戦艦や巡洋艦、空母などの様々な艦種の艤装をリアルタイムで換装しながら戦う能力を持っている多芸な深海棲艦だ。

 

 

エリザベートが力で敵を圧倒するタイプなら、七海は器用さで敵を翻弄するタイプといった所だろうか、スタイルこそ違えどどちらも油断すればこちらの命など簡単に摘み取られてしまうほどの強敵だ。

 

 

「なるほど、敵艦隊の姫級がユリアナだけと思いきや、こんなところに伏兵を置いていたんですね」

 

 

「彼女の乗っているユミルはあれでも人工物だからね、メンテナンスの為にここにいるのよ」

 

 

「…出来ることならこのまま引き下がってもらいたいんですけどね」

 

 

「それは無理な相談ね、言ったでしょう?人間を滅ぼすのが私たちの目的、それは人間に味方するあなたたち艦娘も例外ではないわ」

 

 

七海はニヤリと口の端をつり上げ、不敵な笑みを吹雪たちに向ける。

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

七海サイドと吹雪サイドは互いに動かず睨み合う、少しでも視線を相手から外せば()られる、それを本能的に察知した吹雪たちは脂汗を流しながら拳を握り締め、奥歯をギリギリと噛み締める、このまま膠着状態が続けば敵の術中にハマるだけだ、こちらから仕掛けなければ不利になるのは目に見えている(元々戦力的にこちらが不利だが)。

 

 

「っ!!」

 

 

先に動いたのは暁だった、先手必勝と言わんばかりに主砲を撃ち、それと同時に走り出す、暁の撃った砲弾は七海とエリザベートの1メートル手前のホームに着弾、凄まじい轟音とともに着弾地点のコンクリートが砕け飛び、細かい砂塵が七海たちを包む。

 

 

(この隙に…!)

 

 

砂塵を煙幕代わりにして七海たちに近づき、棘棍棒(メイス)を思い切り振り上げる。

 

 

(頭を潰して一撃で殺す!)

 

 

その一点に集中し、暁は棘棍棒(メイス)を振り下ろす、七海の頭蓋骨を砕き、脳を潰し、血潮と脳漿を撒き散らす、そう確信していた。

 

 

 

しかし、結果から言えばそれは空振りに終わった。

 

 

「えっ…?」

 

 

棘棍棒(メイス)が空を切る感覚に暁は困惑し、一瞬思考が止まる。

 

 

「残念、後一歩足りなかったわね」

 

 

直後、砂塵の煙幕を突き破るように正面から砲撃が飛んできて、暁に直撃する。

 

 

「がああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

 

 

受け身もガードも出来ていない無防備な状態で砲撃を食らった暁はそのまま勢い良く後方に吹き飛ばされ、コンクリートのホームを3バウンドして柱に激突する。

 

 

「暁!?」

 

 

「あっ…うぎぃ…!」

 

 

暁はすぐさま立ち上がろうとしたが、左腕に激痛が走る、砲撃された衝撃で折れたらしい。

 

 

「クソが…!」

 

 

暁はそう吐き捨てるように言うと、篝に支えられながら立ち上がる。

 

 

「砂塵を起こしたまでは良かったけど、詰めが甘いとしか言いようがないわね」

 

 

砲撃によりかき消された砂塵の中から七海とエリザベートが姿を現す、そしてその横には…

 

 

「…なるほど、それでこちらの様子を見ていたというわけですか」

 

 

七海とエリザベートの艦載機、影夜叉と御霊骸がふたりの周りを浮遊していた、暁の攻撃も艦載機越しに筒抜けだったというわけだ。

 

 

「このホームだけじゃないわ、この渋谷駅全体にサテライトを配置してるの、人間の言葉を借りるなら“監視ドローン”って所かしら、ここへ来るまでにあなた達が歩兵級(ポーン)に遭遇しなかったのも、ここに入ってくるのを見て中の歩兵級(ポーン)を避けたからよ」

 

 

「…そんな事までしてたんですか?」

 

 

 

「ここに来るだろうということは大方予想がついていたからね、お膳立てというやつよ」

 

 

 

用意周到なやつだ、得意げに語る七海を見て吹雪は素直にそう思った。

 

 

「まぁそう言うわけで、大人しく死んでもらうわよ!」

 

 

七海とエリザベートが再び攻撃を開始する、エリザベートは鉄球を飛ばし、七海は艤装を戦艦級形態(バットルシップフォーム)にチェンジさせて砲撃を行う。

 

 

吹雪たちはそれらをかわしていきながら七海たちに接近していく、砲撃はコンクリ片や砂塵で自分たちの視界を塞いでしまうため、ここでは封じる。

 

 

「くっ…!」

 

 

砲撃や近接攻撃で吹き飛んだ柱やホームのコンクリが飛んできて身体中に当たる、秋葉原の時もそうだったが、やはり陸での戦いは障害が多すぎる。

 

 

雪月花(セツゲッカ)!」

 

 

鉄球と砲弾の弾幕をかいくぐり、何とか至近距離まで近付いた吹雪は渾身の右ストレートをお見舞いする。

 

 

「甘い!」

 

 

しかしそれはエリザベートの防御兵装(リコリス)によって遮られてしまう。

 

 

月光閃剣(ゲッコウセンケン)!」

 

 

そこへ三日月が騎兵軍刀(サーベル)で切りかかる、ガード中で身動きが取れないところへ追撃を敢行する、以前秋葉で使った手口だ。

 

 

「…御霊骸」

 

 

七海の御霊骸が三日月を銃撃し、それを阻止する。

 

 

「私の存在も忘れないでもらいたいわね」

 

 

「忘れるわけないのですよ!」

 

 

七海が御霊骸を操作しているスキに篝がパイルバンカーで七海に詰め寄り、引き金を引く。

 

 

緋槍(ヒソウ)

 

 

最大温度まで加熱された超高温のスパイクが七海目掛けて射出される、七海は持っていた主砲で防御したが、高速射出されたスパイクの衝撃を殺しきることは出来ず、勢い良く後ろへ吹き飛ばされる。

 

 

「七海様!?」

 

 

「大丈夫よ!問題ないわ!」

 

 

七海は大きくへこんだ主砲を投げ捨てると、腰に下げていた双剣を引き抜いて篝に向かっていく。

 

 

「何この剣術…!?凄い…!」

 

 

七海の剣捌ききを見た篝は目を剥いた、その身のこなしはまさに達人レベルであり、篝もクレイモアで応戦しているが到底防ぎきれない。

 

 

「元々私は一騎当千を目的として博士に設計されたからね、これくらい朝飯前なの…よ!」

 

 

七海が双剣によるX字切りを繰り出し、守りが追い付かなくなっていた篝のクレイモアを吹き飛ばす。

 

 

「があっ!」

 

 

さらに追い討ちとして巡洋艦級形態(クルーザーフォーム)の中口径主砲で篝を砲撃する、受け身も防御もマトモに出来ていない状態での零距離砲撃を受けた篝は大きく後ろに吹き飛ばされ、ホームに激しく叩きつけられる。

 

 

「がはっ…!ごぼっ…!」

 

 

肋骨を粉砕骨折した篝は喀血しながらホームの上でのたうち回る。

 

 

「このっ…!」

 

 

ダウンした篝にトドメを刺そうと主砲を向けた七海に暁がバスターソードで攻撃を加える、折れた腕は破って紐状にしたタイツとホーム上にあった売店の雑誌で無理矢理固定している。

 

 

「そんな状態で私に勝てるとでも思ってるのかしら?」

 

 

「勝とうだなんて考えてないわ、殺すのよ!特にアンタみたいなアバズレのクソ尼は殺して下さいって痛哭するまで嬲ったら最っ高に愉しそうだわ!」

 

 

暁が狂気に充ちた笑顔でバスターソードを振り回す、暁は吹雪と三日月に並ぶ白兵戦能力を持っており、当然剣術の腕もかなりのモノだ。

 

 

「あら、ずいぶんお転婆な艦娘ね、でも…」

 

 

 

「その血気盛んなあまり周りが見えてないのは、いささか考え物かもね」

 

 

「?」

 

 

何のことだ?と暁が疑問符を浮かべてちらりと周囲を一瞥する。

 

 

「っ!?」

 

 

そこにはゆうに10機を越える御霊骸が爆弾を構えて暁を狙っていた、それは以前エリザベートが暁に使った戦法であった。

 

 

「こんの…!クソがぁ!!」

 

 

以前エリザベートに使われた手に再び引っかかった、その事に対して自分に猛烈に腹が立った暁はバスターソードを七海の喉元に突きつけようとする。

 

 

「直情的になって理性を無くすのは戦う上で良くない事よ、覚えておきなさい」

 

 

そう言って七海は御霊骸に攻撃を指示、爆弾による一斉爆撃を全身に受ける。

 

 

「ぎゃあああああああぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

 

 

爆風と爆炎によって吹き飛ばされた暁はホームに叩きつけられる。

 

 

「あっ…あぅ…」

 

 

全身を激痛が支配し、暁はまともに動くことが出来なかった、おまけに爆撃で折れた腕が千切れ飛び、立ち上がることすら出来ない。

 

 

「暁!?」

 

 

「余所見をしてる場合かしら?」

 

 

吹雪が暁の方を向いたが、すぐさまエリザベートと七海が攻め立てる。

 

 

「なぜあなた達はそこまでして“博士”の願いを叶えようとするんですか!?、人間を滅ぼすなんて願いを叶えることが、本当に正しいと思ってるんですか!?」

 

 

三日月と2体がかりで攻撃を防ぎながら吹雪は七海に問い掛ける。

 

 

「黙りなさい!あなた達みたいな艦娘が、私たちの粗悪品の分際が博士を…!」

 

 

 

 

「榊原啓介博士の事を侮辱するな!」

 

 

七海は素早い剣捌きで十字切りを繰り出すが、吹雪と三日月はバックステップでそれをかわす、すぐに反撃してくると思った七海とエリザベートは防御の姿勢を取った。

 

 

 

「…今、何て…?」

 

 

しかし、その予想に反し吹雪は呆けた顔でそんな言葉を口にするだけだった。

 

 

「?」

 

 

あまりに予想外の展開に七海は思わず攻撃態勢を解いてしまう、それはエリザベートも同じだったようで、頭に疑問符を浮かべていた。

 

 

「あなた、今榊原啓介って言いましたか…?」

 

 

「…えぇ、榊原啓介、艦娘や人間が深海棲艦と呼ぶ私の生みの親よ」

 

 

「っ!?」

 

 

七海のその言葉を聞いた吹雪と三日月は目を剥いて驚いた、榊原啓介といえば艦娘を建造している造船所の所長で、艦娘開発の第一人者だ、そんな人物が深海棲艦の生みの親?吹雪は訳が分からなかった。

 

 

「あの人が、深海棲艦を作った…?」

 

 

「っ!?」

 

 

呆然とした吹雪の口から出た言葉に、今度は七海が驚いた、今この艦娘は“あの人”と言った、それすなわちこの艦娘は博士を知っているという事だ、もしそうであれば、何としてでも博士の情報を聞き出さねば。

 

 

「あなた、博士を知っているの!?博士はどこ!?今は何をしているの!?」

 

 

七海は持っていた双剣すら投げ捨てて吹雪に駆け寄り、肩を掴んで榊原の事を聞く。

 

 

「どこで何をって…もしかしてあなた知らないんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「艦娘開発の第一人者にして、私たち艦娘を生み出している組織のトップ、その人が榊原啓介ですよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ぇ?」

 

 

吹雪が放ったその言葉は、七海に空白の現実として、何よりも重くのし掛かることになる。




次回「真実」

その真実を、怪物は認めたくなかった。

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