艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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秋イベントですが、E-4のギミック解除で時間切れになりました、涼月…君に会いたかった…

でも神風や矢矧、時津風なんかの未入手艦娘もゲットできたのでそれなりに収穫はありました。

…そろそろ翔鶴が欲しい。


第199話「渋谷奪還作戦13」

「ふ、ふざけるな!今すぐこの首輪を取れ!」

 

 

爆弾首輪を付けられた蘇我は大慌てで海原に外すようまくし立てるが、当の本人はそんなものどこ吹く風といった風に口笛を吹いている。

 

 

「取って欲しかったら今言ったミッションをクリアしてみてくださいよ、そのカッターで誰かを切るか、俺から起爆装置を奪うか」

 

 

海原は起爆装置を弄びながらけらけらと笑っている、海原が本気なのだということを悟った蘇我は脂汗を流してテーブルの上のカッターナイフを見つめる、これでこの中の誰かを切りつければ首輪は外してもらえる、しかしそれをやればさっきまで偉そうに曙に説教をしていた自分の立場が無くなってしまう。

 

 

引くに引けなくなった蘇我は意を決して海原の前に出る、余裕綽々の海原をものすごい形相で睨みながら蘇我は足を1歩前に出す。

 

 

「おっと、それ以上近づいたらこのボタン押しますよ」

 

 

すると海原は2歩後ずさりをして、起爆装置のボタンに親指をかける。

 

 

「ふざけるな!それじゃあ起爆装置を奪うのなんて不可能じゃないか!理不尽だ!」

 

 

「言っておきますがこの検証は曙からの事情聴取を元に再現したものです、つまりこの状況はここにいる曙が実際に経験した出来事、それを不可能だの理不尽だのと言うのなら、それをひっくり返すための“努力”をしてみてください、あなたが彼女にやれたはずだと豪語したその“努力”ってのを、我々に見せてください」

 

 

海原は底意地の悪い笑みを浮かべて蘇我を見る、まさに行くも戻るも地獄といった状況に蘇我の呼吸は荒くなっていき、真夏の猛暑日にフルマラソンをした後のような量の汗をダラダラと流している。

 

 

(どうする…!?どうすれば…!?)

 

 

蘇我は頭をフル回転させてどうにか海原から起爆装置を奪う方法を模索する、普通に近づいてはその前に起爆スイッチを押されてしまう、なら何かしらの方法で海原の不意を付いて起爆装置を奪うしかない。

 

 

近くのモノを投げて気を逸らす…などの奇襲作戦も考えたが、どれも確実性はないうえに、どのような案を浮かべても死の危険が伴うため安易に実行できなかった。

 

 

そして段々と精神的に追い詰められていった蘇我が最後に取った行動は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…これは仕方ない、仕方ない事なんだ…)

 

 

起爆装置を奪うのを諦め、カッターナイフで誰かを切りつける事だった。

 

 

「お、おいアンタ…何の真似だ!?」

 

 

蘇我がターゲットにしたのは最初に海原に突っかかってきた浪川だった。

 

 

「こ、これは仕方ない事なんだ!あいつに脅されて、もうこうするしかないんだ!大丈夫、殺しはしない!」

 

 

蘇我はカッターナイフを浪川に向けて振り下ろす。

 

 

しかし、その刃が浪川を切る事は無かった。

 

 

「あ、あんた…」

 

 

曙がすんでのところで蘇我の腕を掴み、それを阻止したのだ。

 

 

「…検証終了です、ありがとな曙」

 

 

海原が静かにそう言うと、曙は蘇我の手からカッターナイフを取り上げ、再び海原の隣へ戻る。

 

 

「これで分かったでしょう?努力だ何だと外野が何かを言ったところで、実際にその情況に立たされればこの通りです」

 

 

「う、うるさい!御託はもうたくさんだ!早くこれを外せ!」

 

 

蘇我は自分の行動を恥じることもなく、最早自分の立場など完全に忘れて海原を怒鳴りつける。

 

 

「…分かりました」

 

 

蘇我に対して失望の目を向けながら海原はそう言うと、躊躇なく起爆装置のスイッチを押した、首輪から電子音が鳴り、ランプが待機(グリーン)から起爆(レッド)になる。

 

 

「うわあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

 

 

蘇我はスタジオの床にのたうち回りながら叫んでいる、しかしいつまで経っても爆発する気配はない。

 

 

「ぁぇ…?」

 

 

さすがに不振に思ったのか、蘇我は首輪を指で撫でる、するともう一度電子音が鳴り、首輪が外れて床に落ちた。

 

 

「本当に爆発すると思いました?模造品(レプリカ)ですよ、流石に本物を使うわけにはいきませんから」

 

 

「え?でも、最初のやつは爆発して…」

 

 

数十分前の光景を思い出した浪川が海原に聞く。

 

 

「あぁ、あっちは本物ですよ、一度本物を見れば次が偽物でも信じてしまう、よくある思いこみを利用させてもらいました」

 

 

海原が解説しながら蘇我の首から外れた首輪を回収する、その時…

 

 

「ふざけるなああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」

 

 

突然キレた蘇我が海原の胸ぐらを掴んだ。

 

 

「人を馬鹿にするのもいい加減にしろ!あんなモノは検証でも何でもない!ただの脅迫だ!こんなふざけた方法で人を侮辱するのがそんなに楽しいか!?」

 

 

一方的にまくし立てる蘇我の言葉を海原は全て聞き流すと、今度は海原が蘇我の胸ぐらを掴み、ドスの利いた低い声で迫る。

 

 

「…ならアンタに聞く、さっきの言葉、もう一度曙に言えるか?」

 

 

「は…?何言って…」

 

 

「問題解決の為に努力をしなかった艦娘が悪い…ってアンタは言ったよな、その言葉、もう一度曙に言えるか?たった今努力することを放棄して他者を傷付ける事を選んだアンタにそれを言えるか!?」

 

 

海原にそう怒鳴られた蘇我は糸の切れた操り人形(マリオネット)のようにへなへなと崩れ落ちた、言えるわけが無かった、あのときの緊張や恐怖と同じ、いや、それ以上のモノをあの事件で経験してきたと言うのなら、今の蘇我に曙を批判する事など出来なかった。

 

 

 

 

途中で一波乱あったが、気を取り直して番組を再会しようと絵菜が再び場を仕切り直したとき、スタッフのひとりがコードレスホンの子機を持って海原のもとへやってきた。

 

 

「(すみません、海軍の鹿沼さんという方から電話が来ています、緊急の用件らしいのですが…)」

 

 

(鹿沼から、緊急…?)

 

 

嫌な予感がした海原は急いで電話を受けとると、保留状態を解除する。

 

 

『番組中に悪いな、急ぎの用が出来たから電話させてもらったよ』

 

 

「あんたからの急用ってだけで嫌な予感しかしないんだが、どんな内容なんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『渋谷駅付近で姫級の深海棲艦と多数の駆逐戦車が出現し、()()()()()を展開させている、すぐに番組を抜けて渋谷に来て作戦に加わってくれ』




次回「泊地棲姫」


その姫、大地を震わす難攻不落の砦なり。

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