艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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演習をしようと榛名旗艦(リーダー)の6体艦隊を選んだら戦闘始まった瞬間に春雨単騎になってた。
演習艦隊はリアルタイムで反映されると聞いていたがここまでリアルタイムだとは思わなかった。

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この画面まではちゃんと6体いたのになぁ…


第183話「H/S:0012」

七海の覚醒は問題なく成功し、強制記憶(インプット)した知識にも欠落などの異常は見られなかった、あとは戦闘訓練などで実戦技術を磨く段階に入る。

 

 

「さてと、ここが俺の…いや、俺たちの部屋だ」

 

 

榊原は七海を連れて一度研究所内にある自室へ戻る、彼女は戦闘、及び敵の殲滅を目的に作られたヒュースだが、それ以外ではこの研究所内で日常生活を送ることになる、戦うことが出来ても日常生活がマトモに送れないようではまず話にならないので、稼働チェックも兼ねて榊原と行動を共にして普段の生活になれるという事から始めている。

 

 

「…お邪魔します」

 

 

七海はそう遠慮がちに言うと、靴も脱がずに土足で上がろうとする。

 

 

「待て待て!部屋に上がるときは靴を脱いで入るんだ!」

 

 

「そうなのですか?、ですが博士、いちいち靴を着脱していては戦闘の妨げに…」

 

 

「戦闘云々以前にここではそういうルールなんだよ、確かに七海は戦闘用のヒュースだが、ここで生活する以上はルールを覚えて守ってくれ」

 

 

「…分かりました」

 

 

七海は不思議そうな顔をしつつも靴を脱いで部屋に入る、もっともその靴は揃えられておらず乱雑に脱ぎ散らかされているのだが。

 

 

「一般常識も強制記憶(インプット)しておけば良かったな…」

 

 

そんな事を思いながら少し後悔する榊原だった。

 

 

 

 

 

 

 

「…よし、今日のデータ採取はここまで」

 

 

 

榊原は七海から採取した戦闘データをパソコンに記録していく、七海が覚醒してから今日で一週間目、すでに七海は戦闘の実戦訓練を受けており、その詳細なデータを記録して今後のヒュース運用に生かしていく。

 

 

「腹が減っただろ、ちょうどいい時間だし食事にしよう」

 

 

「はい、分かりました」

 

 

榊原と七海は研究所内に併設されている食堂へ足を運ぶ、本当なら食事睡眠を一切取らずに24時間戦い続けられる戦闘マシンとして製造したかったのだが、人間の身体が素材になっているからなのかそれは出来なかった、持って生まれた機能を侵すのは許されないことらしい。

 

 

「でも、七海の戦闘力の延び幅は凄まじいね、俺も目を見張るよ」

 

 

昼食のカレーを食べながら榊原は言う、七海が行っている訓練は一騎当千…1対他を目的とした戦闘訓練だ、状況的に味方残兵数が減っていたので一刻も早くヒュースを実用可能までに育成する必要があった、そのため準備期間に余裕が無く、なるべく知識は強制記憶(インプット)で済ませてあとは身体に戦いのイロハを叩き込むという荒削りな方法を取っていたのだ。

 

 

軍団スタイルにしなかったのは敵味方の判別を教えるのは面倒な上にチームプレイの知識は強制記憶(インプット)では限界がある、おまけにそれを叩き込む時間もない、よって“目に映るもの全てが敵”という最も楽な一騎当千を選んだのだ。

 

 

「政府は一刻も早くヒュースを実用可能レベルに育てろ…と言うが、まだうちにいるヒュースは七海だけだ、下手に動かしてお前が死んだら本末転倒だからね、慎重に動かなきゃいけない」

 

 

「次のヒュースの製造は進んでいるんですか?」

 

 

「うん、着々と進んでいるよ」

 

 

そう言って榊原はタブレット端末を七海に見せる。

 

 

 

 

個体識別番号(シリアルナンバー)/コードネーム……開発状況(%)

 

・H/S:002/暁海(あけみ)……95%

 

・H/S:003/夕海(ゆみ)……87%

 

・H/S:004/夜海(よみ)……80%

 

 

 

 

「…意外と順調ですね」

 

 

「七海のデータ採取が順調にいったからね、あと数日のうちには覚醒出来るはずだよ」

 

 

「そうすれば、私も戦場に?」

 

 

「当初はその予定だったけど、ひょっとしたら七海はこのままテスターになってもらうかもしれない」

 

 

「テスター…ですか?」

 

 

「全員を戦場に出したらその間研究や実験をするための被験者がいなくなるからね、1体は残ってくれた方が都合がいいんだよ」

 

 

「…そうですか」

 

 

七海は特に何も言わずにカレーを食べ続ける、その様子はどこか寂しそうだった。

 

 

「戦場に出たかった?」

 

 

「…よく分かりません、でも、博士は戦うために…人間を殺すために私を作りました、それなのにテスターだけでも博士のお役に立てますか?」

 

 

そう言って七海は不安そうな顔で榊原の顔を覗いてくる、覚醒からずっと一緒にいるからなのか七海は榊原に懐いている、それ故に彼の役に立てなくなる事が七海にとっては不安でしかなかった。

 

 

「そんな事無いよ、七海は目を覚ました時からずっと俺たちの力になってくれてる、役立たずなんて思ってないよ」

 

 

榊原はそう言って七海の髪を撫でる、しかし榊原は彼女が不安そうにしているのは戦うことが出来ない事に対する不満からだと思っていた、チームプレイを想定して造られていなヒュースには他者や仲間を思う気持ちは強制記憶(インプット)されていないし教えてもいない、七海の心情には気付いていないのだ。

 

 

「…ありがとうございます」

 

 

榊原に撫でてもらえて、七海は少し嬉しそうに笑う。

 

 

 

 

 

「見てごらん七海、夕日が綺麗だよ」

 

 

そう言って榊原は地平線に身を沈めようとしている太陽を指差す、研究所内で訓練漬けもナンだから気分転換に、と榊原が七海と近くの海岸を散歩していたのだが、別に七海から言わせれば夕日など毎日見ているのだから別段珍しくもない。

 

 

「…別に夕日なんて窓から毎日見れますよ?」

 

 

「ははっ、確かに七海の言うとおりかもしれないね、でもこのご時世にこうして落ち着いて夕日を見れるなんてそうあることじゃない、この時間は貴重だよ」

 

 

確かに彼の言うとおり、こうして浜辺に座って呑気に夕日を眺めるなど滅多に出来ないことだ、特に第三次世界大戦なんていう戦争をしている()()()()()

 

 

「いつか、こうして毎日のんびり夕日を眺める生活が送れるといいね」

 

 

ぼんやりと海を見ながら言う彼に対して、そうですね、と七海は返事をした。

 

 

 

(…博士がそんな毎日を送れるように、私が頑張らないと、早く戦いに出られれば、早く人間を殺せれば…!)

 

 

…そんな思いを胸に秘めながら。




最後の浜辺での会話シーンは72話の最後にちょっと加筆したモノです。

○オマケ:2-5突破後の補給画面

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Σ(゚Д゚)ってなった。

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