艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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最近「アクセルワールドVSソードアートオンラインー千年の黄昏(ミレニアム・トワイライト)ー」を買いました、こういう他作品のキャラが一同に集う展開は好きなので結構楽しいです。

…そう言えばもうすぐ4月1日ですね(意味深


第157話「蛍の場合6」

次の日、海原は提督室で出撃任務に出すメンバーの編成を行っていた。

 

 

「…何?メンバーにお前を?」

 

 

「えぇ、入れてほしいの」

 

 

その途中で曙が出撃メンバーに立候補したのだ。

 

 

「…予定ではしばらく遠征に従事してもらうつもりだったんだが」

 

 

「そんなモノどうだって良いわ、私は深海棲艦を倒せればそれでいいのよ、分かったらさっさとメンバーに私を加えなさい」

 

 

曙は物怖じしない態度で海原に詰め寄る。

 

 

「分かったよ、それじゃ今回の出撃メンバーは吹雪、曙、篝、夕月の4体でいこう」

 

 

海原は放送機器のスイッチを入れると、館内放送で今の4体を提督室に集める。

 

 

 

 

「曙って、今までに実戦経験はあるの?」

 

 

「それなりにはあるわよ、だから足を引っ張るような事にはならないわ」

 

 

「ほう、随分と大口を叩くものだ、それなりに期待させてもらおう」

 

 

海上を進むDeep Sea Fleetは敵艦隊を探しながら曙と談笑をしていた。

 

 

「ていうか、それ…何?」

 

 

曙は吹雪たちが持っている深海棲器を指差して怪訝そうな顔をする。

 

 

「深海棲器って言って、深海棲艦の装甲を原材料に作られた白兵戦用の武器だよ」

 

 

「はぁ!?深海棲艦の装甲から!?」

 

 

曙は目を剥いて吹雪の手甲拳(ナックル)を見る。

 

 

「曙も何か持つ?戦闘指南は私がするよ?」

 

 

「冗談!そんなモノ持てるわけないでしょ!深海棲艦から作られてる武器なんて…!あり得ないわ!」

 

 

曙は深海棲器に拒否反応を起こしたのか、少し吹雪から離れる。

 

 

「…敵艦隊発見です、数は1体、この距離だと会敵まで30秒」

 

 

篝が電探で敵艦隊を発見した、それを聞いた曙は一転して目を輝かせる。

 

 

「待ってなさい!深海棲艦!私が倒してやるわ!」

 

 

曙は主砲を構えると、敵艦隊が現れるのを今か今かと待っていた。

 

 

そして30秒後、敵艦隊が姿を現した、艦種は駆逐棲艦が1体。

 

 

「先手必勝!」

 

 

敵艦を見るなり曙は主砲を持って突撃する。

 

 

「待って!」

 

 

しかしそこで吹雪が曙の首根っこを掴んで止める。

 

 

「ぐぇっ!」

 

 

曙は首をガクンと曲げながら奇妙な声を出す。

 

 

「な、何すんのよ!、首もげたかと思ったじゃない!」

 

 

首を押さえながら曙が猛抗議する。

 

 

「あの深海棲艦、“面影”持ちだよ…」

 

 

吹雪は眼前の駆逐棲艦と、その後ろに見える面影を見据える、常盤色の長い髪に黄色いたれ目、黒地に赤い刺繍が入った巫女装束…といった出で立ちの艦娘だ。

 

 

「…“面影”?」

 

 

「深海棲艦になった元艦娘のことだよ、私たちは混血艦(ハーフ)だから深海棲艦になった艦娘の声を聞くことが出来る、私たちDeep Sea Fleetはそんな“面影”と会話をしたりして“面影”を元の艦娘に戻して救うのが目的なの」

 

 

吹雪が曙に“面影”について説明する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くだらない」

 

 

曙はそんな吹雪の…Deep Sea Fleetの行動理念をバッサリと切り捨てた。

 

 

「たとえ味方だったとしても深海棲艦になればソイツは敵よ、救う必要は無いわ」

 

 

「そんな事はないよ、現にここにいるDeep Sea Fleetのメンバーはかつて深海棲艦だった、みんな未練を残して沈んでいって、助けを求めても届かなくて、だけど私たちが言葉を交わして、歩み寄って、それでみんな救われたの、だから敵だとしても救う意味はあるんだよ」

 

 

吹雪はここにいる艦娘たちの思いを代弁するように言葉を紡ぎ、曙に語って聞かせる。

 

 

「そんなの、そいつが弱かったから沈んだだけでしょ?沈む方が悪いのよ、ただの自業自得に付き合う必要は無いわ!」

 

 

「曙…!あんた…!」

 

 

その一言に頭に血が上った吹雪は曙に手を上げそうになったが、ここで予想外の事が起きた。

 

 

「…えっ?」

 

 

“面影”持ちの駆逐棲艦が猛スピードでこちらに向かってきたのだ。

 

 

『曙!曙!』

 

 

しかも曙の名前を呼びながら…だ。

 

 

「…曙の知り合い…なの…?」

 

 

事情が飲み込めない吹雪は駆逐棲艦に詳しい話を聞こうと近付こうとしたが…

 

 

『ひっ…!?』

 

 

「…来るな、深海棲艦!」

 

 

曙が駆逐棲艦に向けて威嚇射撃を行ったのだ、そのせいで驚いた駆逐棲艦は吹雪たちから数メートルの所で止まる。

 

 

「待って曙!さっきも言ったでしょ!あの深海棲艦は元艦娘なんだよ!」

 

 

「だったら何だって言うのよ!たとえ艦娘だったとしても深海棲艦になった時点でそれは私の敵よ!助ける理由も義理もないわ!」

 

 

曙は吹雪にそう言い放つと、今度は主砲を駆逐棲艦に向け、こう告げた。

 

 

「あんたが誰かは知らないけど、あんたはもう艦娘じゃないわ!私の大切な親友を奪った深海棲艦…私の敵よ!」

 

 

曙がそう言い切ると、“面影”はボロボロと涙を流し、踵を返して走り出してしまった。

 

 

「曙!あんた何て事を…!」

 

 

「本当の事を言ったまでよ」

 

 

吹雪の追求に曙は悪びれもせず答える、対象の深海棲艦は逃亡、他に敵艦隊も見あたらないので、Deep Sea Fleetはこれで帰投という結果になった。

 

 

 

 

 

帰投後、吹雪は海原に結果を報告し、似顔絵のスケッチを書いて海原に検索をかけてもらっている。

 

 

「…むぅ、これは…」

 

 

「どうしたんですか?」

 

 

突然海原が苦い顔をしたので、吹雪が首を傾げて聞く。

 

 

「…これを見てみろ」

 

 

そう言うと、海原は“面影”の艦娘データを吹雪に見せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○艦娘名簿(轟沈艦)

 

・名前:(ほたる)

・艦種:駆逐艦

艦級(クラス):暁型8番艦

練度(レベル):57

・所属:新潟駐屯基地

・轟沈:2050年4月2日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…これは…」

 

 

吹雪の頭の中には、考え得る中で最悪の展開が浮かんでいた。




次回「然るべき対応」

苦しめ、徹底的に。

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