艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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chapter4「三日月編」

タイトル通り三日月編となります。


何気にUAが2000を越えていて驚きました、ありがとうございます!


第16話「三日月の場合1」

世界各地の海で深海棲艦が蠢くこの世界にも夏の季節がやってきた。

 

 

本来であれば海水浴のシーズンだが、深海棲艦が現れてからは日本全域の海は立ち入りが禁止されているので夏期の避暑地はもっぱらプール施設だ。

 

 

特に夏場はその需要はとても高く、ここ2~3年で急激に数を増やしつつある。

 

 

 

「あっつーい…」

 

 

「溶けるぅ~」

 

 

…もっとも、プール施設とは縁のない台場鎮守府にとっては全然関係ない話なのだが。

 

 

「何でこの鎮守府冷房が無いんですか…」

 

 

「いくらなんでもおかしいですよ…」

 

 

そうグチる吹雪とハチは提督室のソファで伸びていた。

 

 

「島流し先の鎮守府だからな、わざわざ金出して空調設備なんて作る必要は無いって判断したんじゃないか?」

 

 

「大本営クズ過ぎる…」

 

 

吹雪が悪態をつきながら持っていたうちわで顔を扇ぐ、冷房や扇風機には劣るがコレがあるのと無いのとでは大きな差が出来る。

 

 

 

「だらしないわねこんな暑さで、そんなんじゃダメよ!」

 

 

「全身汗だくでそんな事言っても説得力ゼロですよ」

 

 

暁がだれているふたりに渇を入れるが、ハチの一蹴によりあえなく撃沈した。

 

 

「一人前のレディとして、暑いくらいでブーブー文句は言わないのよ!」

 

 

「はいはいレディレディ(笑)」

 

 

「絶対バカにしてるでしょ!?」

 

 

暁がブンブン腕を回してぷんすか!しているのをハチは面白そうに流している。

 

 

(…このふたりが一番暑苦しい)

 

 

そう思ったがあえて口には出さない吹雪だった。

 

 

 

 

「んんー!おいしい!」

 

 

「夏って感じがしますね」

 

 

「夏はやっぱりコレよね」

 

 

その日の昼下がり、3人は海原お手製のかき氷に舌鼓を打っていた、安売りしていたプラスチック製のかき氷機で作っているのでクオリティは低いが、3人にとっては十分すぎるほどのおいしさだった。

 

 

「そんなに暑いなら海に出てきたらどうだ?近海あたりなら深海棲艦も出にくいだろうし」

 

 

かき氷機を片している海原が吹雪に言う。

 

 

「イヤですよ、燃料が無駄に減るじゃないですか、ただでさえ大本営から支給される資材は少ないのに…」

 

 

しかし吹雪は海原の提案を却下する、それまでは行われていなかった大本営からの資材支給も吹雪たちが着任してからは少しずつだが行われるようになってきている、ただしそれはごくわずかな量であり、今のフルメンバーで全力戦闘を行えば無くなってしまう。

 

 

「別に艤装を着けなくても浜辺で泳ぐくらいなら十分だろ」

 

 

「それは私も考えたんですけど、私たち水着持ってないんですよ」

 

 

「…あー、そういやお前ら全員手ぶらでここに来たんだっけか」

 

 

その事をすっかり忘れていた海原だった。

 

 

 

 

次の日、吹雪たちは敵艦隊出現の一報を受け、台場近海よりも少し遠い海域へ出撃していた。

 

 

「…敵艦隊発見!戦闘開始します!」

 

 

程なくして敵艦隊を発見、その数は4体。

 

 

•軽巡棲艦

 

•軽母棲艦

 

•駆逐棲艦

 

•駆逐棲艦

 

 

今回は敵に軽空母が混じっている、対空に関してはからっきしの台場艦隊だが…

 

 

「暁にまっかせなさい!」

 

 

今回はニューフェイスの暁がいる、おまけに対空能力を備えた主砲『10cm連装高角砲』を持っているのだ。

 

 

開戦早々軽母棲艦が艦載機を出す、カブトガニを彷彿とさせる敵の艦載機が吹雪たちを攻撃せんと急降下を始めた。

 

 

「食らええええぇ!」

 

 

そうはさせまいと暁が高角砲を連射、上空に向けて放たれた砲弾が敵艦載機を次々と撃ち落としていく。

 

 

「スゴい…」

 

 

「これが対空砲…」

 

 

しかし暁の対空射撃も完璧ではなく、撃ち漏らした何機かの敵艦載機が魚雷や爆弾を投下していく。

 

 

「うわっ!」

 

 

「きゃっ!」

 

 

「あうっ!」

 

 

3人とも敵の空撃を食らったが被害は小破未満(カスダメ)で済んだ。

 

 

続いて軽巡棲艦と駆逐棲艦がこちらへ砲撃を行いながらこちらへ近付いてくる。

 

 

吹雪がナギナタと太刀の二刀流で敵の砲弾を叩き落としながら進路を作り、ハチと暁がそれに続く。

 

 

「はぁっ!」

 

 

吹雪が手甲拳(ナックル)で駆逐棲艦の片割れを殴りつけ一撃で撃沈させる、吹雪の練度(レベル)であれば駆逐や軽巡なら手甲拳《ナックル》の一撃だけで倒すことが出来る。

 

 

「せいやあ!」

 

ハチが拳銃の引き金を引き駆逐棲艦のもう片方に銃弾をぶち込む、左目に命中した銃弾は大爆発を起こし駆逐棲艦が大破になる。

 

 

「やああぁぁ!」

 

 

トドメに暁が棘棍棒(メイス)を駆逐棲艦の脳天に叩きつけ撃沈させる。

 

 

「敵艦…残り2体!」

 

 

残敵は軽巡棲艦と軽母棲艦だけになった、軽母棲艦は続けて艦載機を発艦させ、軽巡棲艦は主砲から砲撃を連射していく。

 

 

吹雪は太刀を使って砲弾を切り裂きながら道を作り軽巡棲艦に肉薄し、暁とハチがそれに続いて艦載機を撃ち落とす。

 

 

「はあああぁ!」

 

 

続けて武装を太刀からナギナタに切り替えて、軽巡棲艦の身体に深く突き刺す。

 

 

「暁!」

 

 

「任せて!」

 

 

暁は吹雪が刺したナギナタを思い切り踏みつけると、そのしなりを利用して跳躍する。

 

 

跳躍した暁は軽巡棲艦の後ろに着地すると、鎌を展開させて軽巡棲艦の首もとへ刃を添える。

 

 

「てやああああぁぁぁ!」

 

 

暁が鎌を思い切り引くのと同時に、軽巡棲艦の雁首が胴体から削ぎ落とされる。

 

 

そこへ吹雪が太刀を叩きつけ軽巡棲艦の胴体を一刀両断、軽巡棲艦は完全に沈黙する。

 

 

「よし、あとは軽母棲艦だけ…」

 

 

吹雪が軽母棲艦の方を向くが、その眼前には軽母棲艦が新たに発艦させた艦載機が機銃を向けている光景が視界いっぱいに広がっていた。




ちなみに三日月は我が艦隊の中で2番目にレベルが高い艦娘でもあります(現在Lv97)。

一番高いのはもちろん吹雪です(現在Lv112)。

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