艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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第三章「東京湾沖海戦編」&chapter11「夕月編」連載開始です。

活動報告にて夕月の深海棲器募集も行いますので、アイデアのある方はぜひどうぞ~。


第三章「東京湾沖海戦編」
第142話「夕月の場合1」


11月に入り急に冷え込んだある日の深夜、都内某所の路地裏をひとりの少女が歩いていた、年は15~16くらいだろうか、長い黒髪を背中に流し、白いダッフルコートに黒いスカート、黒タイツを身にまとっている、丑三つ時の路地裏にいるには不自然な人物であることは間違いない。

 

 

「ねぇねぇお嬢ちゃん、こんな所で何してるのかな~?」

 

 

突然後ろから声をかけられ少女が後ろを向くと、いかにもチンピラですと言わんばかりの格好をした3人の男が立っていた、名前を付けるのも面倒な連中なので左からカス、クズ、ゴミとしておこう。

 

 

「良かったら俺たちといいところに行かない?」

 

 

いつの時代のナンパ台詞だよ、というつっこみを少女は心の中で入れておくが、少女はそのまま無視して去ろうとする。

 

 

「ちょっとちょっと~、無視はひどいんじゃない?俺傷ついちゃうな~」

 

 

カスが少女の腕を掴んで引き止める、少女はそれを振り解こうとするが…

 

 

「おーっと、痛い目見たくなかったら俺たちの言うとおりにしようね~」

 

 

カスがポケットから取り出した折り畳み式のナイフで少女の顔をペチペチと叩く、そんな状況で少女は恐怖する様子は見せず、ただ何も言わずカスを見ている。

 

 

「じゃあこっちに来てね、大声出したら喉にこれ刺しちゃうよ?」

 

 

カスが少女の喉元にナイフを押し当てながら腕を掴んで歩かせようとすると、突然乾いた発砲音のような音が小さく辺りに響く。

 

 

「…ん?何の音だ?」

 

 

ゴミとクズが首を傾げていると、カスが突然仰向けに倒れる。

 

 

「お前何急に倒れてんだよ…」

 

 

カスの腹には大きな穴が空いており、そこからおびただしい量の血が流れ出ている。

 

 

見れば少女の右手には不思議な機械が握られていた、それはまるで軍艦に取り付けられている大砲を縮小したようなモノだった、少女はそれでカスの腹部を撃ったのだ。

 

 

「ひぃ…!!」

 

 

悲鳴をあげそうになったクズの頭を少女が大砲で撃ち抜く、頭部のほとんどが無くなったクズは脳や血液を辺りに撒き散らし、下顎だけが残った頭部を残してその場に倒れる、その時に吹き飛んだ眼球がゴミを見るような形で転がってくる。

 

 

そのあまりにも異常な光景に闘争本能がビンビンに刺激されたゴミが脱兎のごとく逃げ出そうとするが、少女がゴミの足を撃ってうつ伏せに転ばせる。

 

 

「助けて…!」

 

 

ゴミが助けを呼ぼうと叫ぼうとするが、少女が馬乗りになって口に何かを猿ぐつわ代わりに詰め込まれる。

 

 

それは、少女がカスの腹の穴に手を突っ込んで引きずり出した心臓だった、まだ微かに鼓動しており、妙な生暖かさをダイレクトに感じる。

 

 

いよいよ気が狂いそうになったゴミだったが、その直後に少女に頭を吹き飛ばされて絶命する。

 

 

「…へぇ、中々いい性能の消音器(サイレンサー)じゃない、ベアトリスもいいもの作るわね」

 

 

純白のダッフルコートを返り血で真っ赤に染めた少女は不気味に笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大演習祭(バトルフェスタ)から一週間がたった頃、海原は吹雪たちの検査のために造船所を訪れていた、検査終了までは榊原と話をしながら待っていたのだが…

 

 

「艦娘を民間人に密売…?」

 

 

「そういう事案が最近になって報告されてるんだよ」

 

 

そう言って榊原ははぁ…とため息をつく、待っている間に榊原から聞かされたのは、一部の鎮守府や駐屯基地の司令官が金儲けの目的で艦娘を民間人に密売している…という内容だった。

 

 

「艤装を展開させた艦娘は人間をはるかに超える攻撃力を持っているからね、テロや強盗なんかの犯罪目的で買う輩がいるんだよ、駆逐艦が1体もいれば小さな銀行くらい襲えるからね」

 

 

「でもちょっと待ってください、犯罪目的で艦娘を買う所までは分かりました、でもその場合燃料や弾丸はどうするんですか?陸上で行動するなら燃料はあまり気にしなくてもいいですけど、弾丸はどうやっても必要になりますよね?」

 

 

海原はそこに疑問を持った、艦娘が艦隊行動などで活動するには燃料と弾丸が必要になる、燃料は艦娘が海上を移動する時に必要になるもので、足に装着する水上移動装置を動かすのに必要だ、そのため陸上で艤装を使う場合は燃料はほぼ使わない。

 

 

しかし弾丸だけは別だ、民間人が艦娘を買ったとしても、その圧倒的な力を発揮するための弾丸が途中で切れてしまえば艦娘は何も出来なくなってしまう、かといって民間人が軍事施設である鎮守府の補給部屋など使えるわけもない、ならばどうするか?

 

 

「簡単だよ、その都度燃料や弾丸を買わせるんだ、一度艦娘の力に魅了された人たちは抜け出せなくなってどんどん金を出していくからね」

 

 

「それじゃまるでドラッグじゃないですか」

 

 

「その通り、艦娘の密売は新たなドラッグとして少しずつだが世に広まりつつある、これだけは何としてでも防がなければいけない」

 

 

吹雪たちの検査が終わるまでの間、新たな問題の発生に榊原と海原は頭を悩ませていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そうですか、そんなことが…」

 

 

帰りの電車内で艦娘密売の話を聞いた吹雪は悲しそうな顔をしていた、密売の当事者からすれば兵器の闇取引のような感覚なのだろうが、吹雪たち艦娘から見れば人身売買そのものである。

 

 

「ひどいことする人もいたものですよね」

 

 

「そうだな…」

 

 

海原はそう言って座席にもたれ掛かる、すると右斜めのドア側でふたりの男が言い争いをしているのに気づいた。

 

 

「おいあんた、さっきから俺の足を踏んでるんだよ、退けてくれよ」

 

 

20代半ばといったところの長身の男は自分の足を踏んでいる小柄な小太り男に抗議する。

 

 

「だ、黙れよ!この俺に指図するな!どうなっても知らないぞ!?」

 

 

 

小柄な小太り男は依然長身の男の足を踏みつけながら意味不明な言葉を大声で発していた、それにつられて何だ何だと周りの客がそのふたりの男を見る。

 

 

「はぁ?何を言ってるんだよ…退けさせてもらうからな」

 

 

長身の男は小太り男の足を持ち上げようと手を伸ばす。

 

 

「俺に触るな!撃て化け物!」

 

 

刹那、凄まじい発砲音と共に長身の男が突然吹き飛んだ、長身の男は腰から真っ二つに裂け、血と内蔵を周りの乗客にぶっかけながら車内の床を水っぽい音と共にバウンドする。

 

 

長身の男を吹き飛ばしたのは小太り男ではなく、そばにいたひとりの少女だった、その少女は右手に小さな大砲のような機械を手にしており、砲口からは硝煙が上がっている、この大砲で長身の男を撃ち殺したのは誰が見ても明らかだった。

 

 

 

海原がその少女が艦娘であると認識するのと同時に、電車内は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。




次回「バトル・トレイン」

この話書いてるときポケモンBWのバトルサブウェイを思い出してました。

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