艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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遅ればせながら映画「君の名は。」を見てきました、中盤以降の展開にただただ驚きです。

戦闘中…というか出撃中の補給はゲーム内でも実現しないかな~と考えております。


第134話「大演習祭14」

無限の弾丸(インフィニティ・バレット)?」

 

 

「あぁ、事前にあいつらに言っておいたんだよ、向こうが弾切れを起こさない事に不審がったら“弾切れを起こさない魔法の艤装だ”ってハッタリをかましとけってな」

 

 

「そううまく行くの?魔法の艤装って言ったって、ただ後ろで大鯨さんがこっそり補給してるだけじゃん、すぐにバレると思うよ」

 

 

島風がもっともなつっこみをする、そう、“弾切れを起こさない魔法の艤装”の正体は、弾が切れそうになったら大鯨に弾丸を補給してもらう…という至極単純なトリックである、魔法でも何でもないただの“戦闘中の補給”だ。

 

 

潜水母艦である大鯨は簡易的ではあるが資材物資などの保管庫を艤装に有している、それを利用して戦闘中の補給を行うという作戦を思いついたのだ。

 

 

 

「それならあいつらはそんなトリックにすら気付けないバカだってことだ、現に大鯨が狙われてない事を考えると、まだユニゾンレイドは気付いてないだろう」

 

「というか普通は戦闘中に補給してるなんて考えないよね、弾切れを起こさないように節約しながら戦うのがセオリーなのに、弾切れを起こすのを前提に補給役を置いておくなんて意表を突くのもいいとこだよ」

 

 

「本当に台場の作戦は予想の斜め上をいくよね、恐れ入るよ」

 

 

瑞鶴と川内が口々にそんな事を言う。

 

 

「こっちは雷撃処分がかかってるからな、使える手段は何でも使うさ、策は多くて多すぎる事はない」

 

 

海原はそう言って吹雪たちの方を見る、あの様子だと本当にバレてはいないだろう。

 

 

「でも、試合開始からそこそこ経つのにこんなトリックも見破れないなんて、ユニゾンレイドも大したことないのね」

 

 

ローマが半ば呆れ気味に言うが、ユニゾンレイドに限らず現場の選手の視野は観客が思っているよりも狭いものである。

 

 

例えばスポーツ中継などを見ているとき、ミスをした選手に対して“ここはこうすれば良かったのに”、“何でここでこんな凡ミスをするんだ”、などといったつっこみをした経験はないだろうか。

 

 

たとえそのつっこみの内容が正しかったとしても、それは競技場全体を上から広々と見渡せ、プレイなどせずにのんびりと状況を考えられる“中継映像”だからこそ出来る事だ。

 

 

しかし実際に現場でプレイしている選手は競技場を上から見渡すことなど出来ないし、刻一刻と変化している状況に対してのんびりと考えるような余裕もない、よって選手は観客が思っているような“最適解”のプレイを必ずする事は出来ないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそれは現場で試合をしている武蔵たちにも当てはまる、目の前をちょこまかと動き回っている吹雪たちを狙って攻撃していれば後方で補給をしている大鯨は視界に入りにくい。

 

 

「なぜだ…!なぜ弾切れを起こさないのだ!?」

 

 

武蔵は焦りにも似た感情を抱きながら吹雪たちを攻撃していた、相変わらずこちらの攻撃は全てかわされてしまい、吹雪たちから一方的に攻撃され続けている。

 

 

Deep Sea Fleetからの攻撃によるダメージはこの際無視してもいいと武蔵たちは思っていた、所詮は駆逐艦の貧弱な攻撃力、自分たちがやられるなんて事は絶対にありえないからだ。

 

 

だが問題はあの弾が尽きない魔法の艤装だ、相手が弾切れを起こさないのであれば間違いなく長期戦になるだろう、そうなればこちらの弾丸が尽きるのも時間の問題である。

 

 

「…ん?」

 

 

そこからさらに時間が経ち、どうしたものかと武蔵が打開策を考えていたとき、“それ“は武蔵の視界に映った。

 

 

「なっ…!?あれは…!?」

 

 

大鯨が三日月の弾丸と燃料を素早く補給しているのを見た、見てしまった。

 

 

「ははっ…」

 

 

それを見た瞬間、武蔵はこみ上げてくる笑いをこらえることが出来なかった、魔法の艤装だの何だの言っていたが、タネが割れてしまえば何て事のない話だったのだ。

 

 

「あっはっはっはっはっは!」

 

 

武蔵は声をあげて高らかに笑う、突然笑い出したので僚艦がびっくりした様子で武蔵を見るが、かまわず笑い続ける。

 

 

戦闘中の資材補給、こんな簡単なトリックに気付かずに魔法の艤装とかいう吹雪のハッタリに騙されていた、そんな自分の愚かさがおかしくてたまらない。

 

 

「なるほどな!大鯨に弾丸を補給させて弾切れを起こさないようにしていたとは、台場も中々ナメた真似をしてくれる!」

 

 

「やばっ!バレた!」

 

 

「全艦大鯨に向けて一斉攻撃!奴らの補給ルートを寸断しろ!」

 

 

武蔵の号令で戦艦と空母が一斉に大鯨を狙って攻撃を開始する。

 

 

「ふっ…!ほっ…!やっ…!」

 

 

その攻撃を大鯨はほとんど身体を動かすことなくかわしていく、激しい動きが出来ない大鯨は“必要最小限の動きで攻撃を避ける”事に特化した訓練を行っている、今では砲撃一発なら軽く身体を捻る程度でかわす事が出来るほどだ。

 

 

「きゃああぁっ!」

 

 

しかし翔鶴とグラーフの空撃が大鯨に直撃、一撃で戦闘不能になってしまった。

 

 

「よし!これで奴らは補給が出来なくなった!このままガス欠になるまで追い込めば我々の勝ちだ!」

 

すでに勝った気になって高笑いしている武蔵だが、吹雪たちDeep Sea Fleetは少しも動じていない。

 

 

「すみません、もっと時間を稼げれば良かったんですけど…」

 

 

「何言ってるの、十分だよ、後は私たちに任せて」

 

 

大鯨は申し訳無さそうに舞台袖に下がっていく。

 

「Deep Sea Fleetよ、大鯨という補給兵を失った今、お前たちに長期戦は無理だ、降参するならこの試合を穏便に終わらせてやるぞ?」

 

 

武蔵はそうドヤ顔で言うが、それに対する吹雪の答えは決まっている。

 

 

「そっちこそ、そのダメージで試合を続けて後半保つんですか?」

 

 

「は?お前一体何を…」

 

 

言っているんだ、と口にしながら武蔵は電光掲示板を見やる。

 

 

「何!?」

 

 

電光掲示板に表示されている耐久値の情報を見て武蔵は目を剥いた、武蔵は中破寸前の小破、ほかの艦娘たちは全員中破になっていたのだ。

 

 

「どういうことだ!?駆逐艦の攻撃で戦艦を中破にするなんて…!」

 

 

「確かに私たち駆逐艦の攻撃力では戦艦に微々たるダメージしか与えられません、でもノーダメージで済むわけじゃない、いくら駆逐艦の微量なダメージでも何十何百も食らえばトータルの数字は莫大なものになります」

 

 

驚いている武蔵を無視して吹雪は得意げに語る、いくら戦艦の防御力が高くても攻撃に対するダメージをゼロにすることは出来ない、身体に傷やダメージは無くてもその身体を加護している艤装はダメージを受けるからだ。

 

 

「だ、だがすでに大鯨は戦闘不能だ!お前たちの残弾数でこの艦隊の耐久値を削りきることは不可能だぞ!」

 

 

武蔵の言うとおり、Deep Sea Fleetがユニゾンレイドの耐久値をここまで削れたのは大鯨による途中補給のおかげだ、それが断たれた今、Deep Sea Fleetがユニゾンレイドに勝つことは不可能に近いだろう。

 

 

「確かに砲雷撃戦でユニゾンレイドに勝つことは無理ですね」

 

 

吹雪は砲雷撃戦での勝利は不可能だと認めた、そう、()()()()()()

 

 

「でも、いつ私たちのバトルスタイルが砲雷撃戦だと言いました?」

 

 

「…どういうことだ?お前は何を言っている?」

 

 

吹雪の言っていることが理解できずに武蔵は首を傾げる。

 

 

「つまりこういう事ですよ、総員、()()()()()!」

 

 

「「了解!!!」」

 

 

吹雪の号令と同時にDeep Sea Fleetが深海棲器を取りだす。

 

 

「なん…だと…!?」

 

 

近接兵装を構えるDeep Sea Fleetを見て、武蔵は今度こそ言葉を失った。

 

 

 




次回「白兵戦」

リベッチオがカレー洋リカンカ沖(4-5)でドロップするようになったみたいなんですが、カスガダマクリアしてないのであまり関係ない話でした。

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