艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー 作:きいこ
「ついにやってきた!日本の首都東京!」
「この前も秋葉防衛戦で来たでしょ」
東京駅入り口で大々的に叫ぶ瑞鶴と、さして珍しくもないといった様子で返す加賀、珍しく2体の休日が一致した今日、瑞鶴と加賀は東京へショッピングに繰り出していた。
「東京と言えば日本の中心とも言える場所ですよ?これがテンション上がらずにはいられませんって」
「まぁ、確かに都会に来てバカみたいに無意味にテンション上がるのは分からなくもないけれど、あと日本の中心は正確には日本橋よ」
「何か今サラッと罵倒された気がするんですがそれは」
瑞鶴のつっこみに加賀は気のせい気のせい、とそれをかわす。
「それは置いておいて、最初はどこに行く?瑞鶴の事だから秋葉原のメイドさんのおみあしを見てニマニマしたいとは思うけど…」
「人前でそんな嘘言うの止めてもらえませんかねぇ!?」
カラカラと笑いながら瑞鶴をからかう加賀と割と本気で焦る瑞鶴、対照的で面白い2体だった。
「まぁ、やっぱり最初は秋葉原ですかね、アニメショップなんかも行きたいですし」
「瑞鶴のサブカル好きは相変わらずね、私も人のことは言えないけど」
瑞鶴の提案に加賀も賛成し、2体は秋葉原へと向かった。
◇
「思ったより進んでないですね…」
「被害が被害だからね」
秋葉原についた瑞鶴と加賀は目の前の光景を見てそう呟いた、先日のエリザベート率いる駆逐戦車たちの襲撃で秋葉原駅周辺は決して小さくない被害を受けた、建物の修繕などの復興作業は行われているが、中々思うように進んでいないのが現状である。
「さてと、まずはどこに行こうかな…ん?」
瑞鶴がキョロキョロと辺りを見回すと、通りの向こうに人集りが出来ていた。
「なんか人が集まってますね」
「行ってみる?」
「はい、何か楽しそうです」
加賀と瑞鶴は人集りの方へと向かっていく。
◇
「“秋葉原復興チャリティーイベント”…?」
人集りの最前列にはそのような垂れ幕がかかっていた。
「秋葉原復興に何か我々も役にたてないかと思ってね、同人サークルでチャリティーイベントを開いたんだよ」
瑞鶴が首を傾げていると、側にいた20代前半の男性が解説する、この人もサークルの人なのだろうか。
「ということは、あなたも…?」
「そう、俺は同人サークル“
「なんか犬みたいな名前ね」
「加賀先輩失礼ですよ…!」
瑞鶴は慌ててフォローを入れるが、ペロはよく言われるよ、と笑って許してくれた。
「それで、このチャリティーイベントはどんなモノなの?」
「主にはサークルが作った同人誌やグッズの販売だね、出張コミケみたいなモンだよ」
「へぇ~、中々面白そうね」
加賀は興味ありげに会場を見る、加賀もサブカルチャー好きの瑞鶴に影響されて多少はそういうモノを嗜むようになってきていた、こういうイベントにも興味が湧いているのだろう。
「あと、もう少ししたらコスプレコンテストも始まるから見ていくといいよ、もし参加するなら早いうちにね」
そう言うとペロは主催団体の集まりへと消えていった。
「…ねぇ瑞鶴」
「何ですか加賀先輩?」
「コスプレイベント、出場してみない?」
「…え!?」
加賀の思わぬ発言に瑞鶴は加賀の方を見やる。
「なんか面白そうだし、たまにはこういうのも良いんじゃないかしら?」
「…加賀先輩にサブカルを教えたのは間違いだったかしら…」
微妙に責任を感じる瑞鶴だった。
◇
コスプレコンテストにエントリーした2体は早速選んだ衣装に着替え、更衣室から出てくる。
瑞鶴が選んだ衣装は忍者を連想させる和風装束だ、それに黒い眼帯と短剣(レプリカ)を持っている、“暗殺九ノ一”というコンセプトらしい。
一方加賀は青を基調としたメイド衣装を着ていた、今加賀が読んでいる吸血鬼モノのライトノベルに登場するキャラクターのコスプレのようで、青いロングヘアーのウィッグまで着けている。
「加賀先輩、ずいぶん気合いの入った格好ですね…」
「そうかしら?自分で言うのもアレだけど、中々似合うと思ってるわよ」
「確かに似合ってますけど…」
自分より気合いが入っている加賀を見てなんだか複雑になる瑞鶴であった。
「おっ、君たちも参加するんだね」
すると先ほど別れたペロが瑞鶴たちに話しかけてきた、重厚な雰囲気の鎧を身にまとっており、どこかの騎士のような格好である。
「…うん、俺が睨んだ通りだ、ふたりともすごく似合ってるよ」
「そ、そうですか…?」
「面と向かって言われると少し照れるわね…」
瑞鶴と加賀は恥ずかしそうに頬を赤らめる。
「ペロさんがここにいるって事はOTK兵団も参加するんですか?」
「あー…うん、まぁね…」
ペロはなぜか歯切れ悪そうに答える、どうしたというのだろうか…?。
「おー!やっと見つけましたぞペロ殿!」
するとひとりの男がペロの所へやってきた、おそらくOTK兵団のメンバーだろう。
「えっ…!?」
「ちょっ…!!」
その男を見て2体は絶句する、理由は男の格好である。
「もう用意は出来ましたかな?」
「それ以前に何だよその格好は!?」
ペロが男の格好につっこみを入れる、何せ上半身はサンバカーニバルのような衣装で下半身は葉っぱで股間を隠してるだけというかなーり人目を引く格好なのだから。
「ワタクシの新作衣装ですぞ!どうですかな!?」
「ちったぁ人目を気にしろボケェ!」
堂々とポーズを取る脳内カーニバルな男にペロが全力投球でつっこむ。
「同人サークルって面白い人たちが多いのね、勉強になったわ」
「いや~…ああいうのを参考にしたらダメになる気がするんですけどね…」
そこそこ失礼な会話をしながら2体はこっそりOTK兵団と別れる。
◇
「それでは次に参りましょう!エントリーナンバー15番、瑞鶴さんと加賀さんのペアでの参加です!」
「いよいよですね先輩、なんか緊張してきました…!」
「落ち着きなさい瑞鶴、こういうときは観客をジャガイモかゴミ捨て場のゴミ袋だと思えばいいのよ」
「ジャガイモはともかくゴミ袋は初耳なんですがそれは」
そして始まったコスプレコンテスト、自分の順番がやってきてガチガチに緊張する瑞鶴、加賀のボケで少しは和らいだが、深海棲艦と相対するのとはまた別の緊張感に上手く身体が動かない。
それでもなんとかステージ上に上がった2体はそれぞれポーズを取る、観客のおぉ!という声を聞く限りウケてはいるようだ。
「加賀先輩!敵を殲滅して下さい!」
「
加賀がコスプレしているキャラクターのセリフを言うためにここで一芝居、それに合わせて動く加賀に客席からは喝采が上がった。
「瑞鶴さん、加賀さん、ありがとうございました!」
司会の声と共にステージ脇に捌ける瑞鶴と加賀、その時盛大な拍手が送られ、2体は嬉しい気持ちになった。
…ちなみにその後にOTK兵団の出番もあったのだが、あまりにもカオスな格好をしているメンバーが多すぎて途中で中断させられてしまっていた。
◇
コンテスト会場を後にした瑞鶴と加賀はアニメショップなどで適当に買い物をして歩行者天国をブラブラと歩いていた、ちなみにコンテスト終了後にコスプレの格好をOTK兵団に撮ってもらい、それを2体で待ち受けにした。
「次はどこに行きましょうか?」
「そうね…お腹も空いてきたしお昼でもどう?」
「おっ、良いですね!ならこの近くの美味しいお店は…」
瑞鶴は持ってきた東京の観光用雑誌を見ながら店の目星をつける。
「この辺りだともんじゃのお店が人気みたいです」
「もんじゃ…いいわね、ならそこにしましょう」
「はい!そうと決まればレッツゴー!です」
ハイテンションで歩いていく瑞鶴を微笑ましく眺めながら加賀もそれに続く。
ちなみに加賀のコスプレは実際のラノベのキャラが元ネタになってます、誰か分かったあなたは魔族特区の住人。