異世界御伽草子 ゼロの使い魔!   作:ユウジン

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オンディーヌ騎士隊

「トーヤ。最近はどうだい?」

 

学園に帰ってきて一週間。廊下で会ったギッシュに声を掛けられ、

 

「疲れました……」

「だろうね」

 

思わず同情的な目をギーシュは向ける。

 

この一週間。英雄として凱旋した闘夜を見る目が全員変わっていた。

 

武勇伝を聞こうと集まってくる生徒達に、貴族となった闘夜に自分の魔法自著を進める教師たち。その中には勿論嫉妬し、嫌味を言うものもいたが、それは闘夜は無視していた。

 

しかしつい先日遂に、

 

「7万も壊滅させられるわけがない。化けの皮を剥いでやる!」

 

という輩が数名やってきたので、仕方なく全員ボコボコにしてから、表立って嫌味を言うやつはいなくなったのだが。

 

「もう疲れましたわ」

「仕方ないさ。君は先の戦争の英雄だからね。そして申し訳ないんだが、君には更に疲れてもらうことになる。因みに僕が悪いわけじゃないんだからそんな恨めしい顔をしないでくれよ」

 

ギーシュの言葉に、思わず嫌そうな顔をする闘夜に、ギーシュは苦笑いを浮かべ、

 

「おめでとうトーヤ。君は騎士隊の隊長だ」

「は?」

「今度新たに新設される騎士隊の隊長を君にする。という連絡が来たんだよ。因みにメンバーはこの学園の生徒たちで構成されるものでね。僕は因みに副隊ちょって待ち給え。どこに行くのかね」

「お断りしといてください」

「陛下から直々の通達だよって君すごい力だな!」

 

闘夜の肩を掴んで止めようとするが、ズルズルと引きずって歩く闘夜。

 

「今はこれ以上抱え込む余裕ありません!」

「そんな事言わないでくれ!僕にとっても折角の出世のチャンスなんだ!」

 

アンタのためじゃねぇか!君のためでもある!っと言い合う二人。

 

結局縋られて頼まれた闘夜が、せめて副隊長でと譲歩し、隊長ギーシュ、副隊長闘夜の体制で、新設する騎士団を作ることになったのは、また別に話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな騒動から更に一週間、ルイズは庭で編み物をしていた。

 

魔法を使えない彼女だが、母から編み物は習っており、一応できる。一応というのは、本人が趣味で編み物を上げる程度には編み物を得意としているのだが、実際今出来上がっているのは毛糸のオブジェ?である。

 

「あーあ。何やってんだか」

 

その隣には、ギーシュのガールフレンドであるモンモランシーがおり、その視線の先には、ギーシュ達がいる。十数名のメンバーで構成された、オンディーヌ騎士隊は、先日にアンリエッタからの命で結成された、この学園の生徒達で構成される騎士団である。隊長はギーシュ。副隊長は闘夜という構成で、やる気は一応充分?なのだが、如何せん剣を振っても様にならない。所詮は素人集団といった感じだ。

 

実際皆で剣を降っているものの、まともに振れているのは闘夜くらいである。

 

だがギャラリーはそれを見てキャーキャー騒ぎ、ギーシュ達は鼻の下を伸ばしていた。

 

「気に食わないわね」

「確かに変よね」

 

モンモランシーはルイズに声を掛けるが、ルイズは同意する。だが考えていることは違う。

 

確かに闘夜は英雄かもしれないが、幾ら何でも高待遇すぎやしないか?と。騎士(シュヴァリエ)の称号授与はまだ分かる。だが、新設される騎士団の隊長にしようとしたり、何よりも……

 

「どうかしました?ルイズさん」

「ナンデモナイワ」

 

シエスタがニコニコしながら隣に立っていた。

 

これもつい先日、アンリエッタから直々に辞令が降り、シエスタが何と闘夜付きのメイドになってしまったのだ。

 

全く一体全体どういうことなのか説明がほしいくらいである。

 

(明らかに待遇がおかしい。まず新設される隊の隊長ですって?確かにトーヤの活躍はすごいけど、部隊での経験もないアイツに任せるなんて。結局、副隊長に落ち着いたけど……いや待てよ、この学園の生徒で構成されるって辺りも変っちゃ変ね。最初は新しく騎士団を新設するに辺り、有望なメイジが多いこの学園で募集することにしたのかと思ったけど、それでも当初の闘夜を隊長にしようとしたのは引っかかる。どちらかというと、闘夜を隊長にするために、新しい騎士団を新設しようとした?)

 

だがそれだとすると、その理由がわからない。

 

「ちょっとルイズ聞いてる!?」

「え?あ、なに?」

 

等と考え込んでいると、モンモランシーに声を掛けられ、びっくりしながら振り返ると、

 

「全く。アレ見てよ!」

「んー?」

 

モンモランシーが指差す先を見ると、そこにはギーシュと闘夜に集まる女子たちの姿だ。

 

「あぁ。最近話題の騎士団の隊長と副隊長にキャーキャー集まってるわけね」

 

鼻の下を伸ばすギーシュに、歯軋りしているモンモランシーを見ながら、ルイズはため息をつく。そんなルイズを見て、

 

「あんたは何とも思わないわけ?」

「だって……」

 

ルイズが何か言おうとすると、向こうから砂塵を上げて闘夜が走ってきた。そして、

 

「ルイズ様!お菓子貰いました!一緒に食べましょ!」

 

ズザーっとブレーキを掛けながら、目の前にやってきた闘夜に笑みを返してあげつつ、

 

「ちゃんと教育が行き届いてるから平気よ」

「ムキィイイイイイイイ!」

 

フッと笑うルイズと、ハンカチを噛んで怒るモンモランシーを見て、闘夜はクッキーを頬張りつつ、首を傾げるのだった。

 

因みに余談だが、

 

「ルイズさん今更ですけど何作ってるんです?」

「ニット帽よ。闘夜いつもバンダナ巻いてるからたまには違うのもいいかなって」

「成程、てっきり謎の毛糸玉を作ってるのかと」

「あんですって?」

 

そんなやり取りがあったとかなかったとか……


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