異世界御伽草子 ゼロの使い魔!   作:ユウジン

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初めての感情

「ごめんなさい!」

 

ルイズの部屋にて目の前で土下座をするのはモンモランシー……更にその隣で一緒にギーシュも土下座していた。そしてそれを見つめるのは闘夜とルイズ……

 

なぜ土下座かって?その理由は昨晩のルイズの変貌である。実は昨日ルイズが飲んだワイン……あれにはモンモランシーお手製の惚れ薬が入っていたらしい。それがこの変貌である。お陰で昨日から今日にかけて闘夜はゲッソリしていた。

 

更に、

 

「んふふ~。トーヤ」

「あ、はい……」

 

昨日からルイズは闘夜の腕から離れようとしない。何時も厳しいルイズがこうやってニコニコしながら自分に抱きついてくると言う光景は中々すごい光景だ……

 

しかしこの状態では授業もまともに受けられないため、早急に惚れ薬を解除させようと言う話になったが、この惚れ薬……本来は作るのも所持するのも、ましてや使うのも禁止。もし学園にバレれば怒られるなんてもんじゃすまない。まず確実に牢屋行きだ。

 

なのでモンモランシーも学園にバレないように静かに……だが迅速に材料をかき集め、お金は闘夜が前にアンリエッタから受け取った報酬を使った……が、

 

「どうしてもひとつだけ足りないの!」

 

モンモランシーが言うには他の材料は全て集まったとのこと。しかし一個だけどうしても見つからないらしい。

 

それは【精霊の涙】と言うアイテムで、自分達も授業もほったらかしにして探したとのことだが、全く売ってなかったとのこと。

 

「精霊の涙はラグドリアン湖って言う湖に住む精霊から貰えて普段は出回らない上に今ラグドリアン湖もゴタゴタしてるらしくて入荷は絶望的なんだって……」

 

そうモンモランシーから説明を受けると闘夜はマジかよと頭を抱えた。それが意味するにはつまり……ルイズはこのまま戻らないかもしれないと言うことである。

 

「ま、まあそのうち戻ると思うわよ?」

「何時ですか?」

「え、えと……一ヶ月か、一年か、もしかしたら一生……」

「君はそんなものを僕に飲ませようとしてたのかい!?」

「あんたがすぐ浮気するのが悪いんでしょう!」

 

ギャイギャイと喧嘩を始めた二人を見ながら闘夜はため息を吐きながら腕に絡み付くルイズを見た。

 

「なぁに?トーヤ」

「いえ……」

 

語尾にハートマークの一つも付きそうな雰囲気に闘夜は戸惑う。ルイズの今の状態はマトモじゃない。それはわかっている。だがそれでも心臓の鼓動が早くなってしまうのはどうしようもない(さが)というものか……

 

だがどうにかしないと自分まで可笑しくなりそうだった。となれば簡単だ。

 

「わかりました。行きましょう!」

『え?』

 

突如闘夜は立ち上がる宣言……それに喧嘩していたモンモランシーとギーシュは何をいってるのかと見てきた。

 

「え?じゃないですよ!行くんです!ラグドリアン湖に!」

『…………えぇええええええ!?』

 

勿論二人は驚愕し、色々文句いってきたが必殺の【先生に言いつけちゃうぞ?】によって黙らせ渋々……もとい、喜んでついてくることになったのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえトーヤ……それでね」

「あ、はい……」

 

モンモランシーとギーシュが流石に夜も遅いので明日行こうと話し一度帰ったあと、眠くなってきたのでルイズと闘夜の二人だったが結局ルイズが話しかけてくるので寝れない……

 

昨晩もこんな感じでお陰で寝不足気味である。だがルイズはお構いなしに話しかけてきた。が、

 

「ねぇトーヤ……」

「はい?」

 

適当に返事しているのがばれたか?と少しドキッとしつつルイズを見ると闘夜の目の前にルイズの顔があった。

 

「っ!る、ルイズサマ!?」

 

ここまで接近されてることに気付いてなかった(顔見てるとドキドキするから顔を背けていたのだ)闘夜は思わずロボットみたいな口調になったがルイズは気にしていない。鼻と鼻がくっつきそうだ。

 

「私のこと……好き?」

「うぇ!?」

 

突然の問いに闘夜は目を限界まで開いて驚愕する。

 

「そ、そりゃ好きですよ?何時もお世話になってるし……」

「メイドより?」

「シエスタ?」

 

突然のシエスタとどっち?と聞かれても闘夜は何故そこでシエスタが出てくるのかわからなかった。

 

「どっちがって事はないですよ?ルイズ様はルイズ様だしシエスタはシエスタです」

 

と、返した。闘夜にしてみればどっちが上も下もない……だがその返答にルイズが不満げな顔を浮かべる。

 

「ふぅん?」

「ど、どうかしまムグ!」

 

どうかしました?と闘夜は聞こうとした次の瞬間だ……いきなりルイズは自分の唇を闘夜の唇にくっつけた。まぁ俗に言うキスである。

 

ただ唇を重ねるだけのキス……それは召喚されたときの契約のキスと同じようで違う。あの時のただ唇を重ねるのとは違う。事務的済ませたものではなく、熱いキスだった。

 

まるで唇を通じてルイズの熱が伝わるような感覚……脳がドロドロと溶けていきそうなその感覚に闘夜は今までにはなかった感情のうねりが生まれた。

 

「えへへ、ドキドキした?」

「……」

 

コクり……と闘夜は頷く。

 

「メイドより?」

「さ、さぁ?したことないので……」

 

本当はされた(頬にだけど)が、それをいったら殺されそうなので咄嗟に嘘をついてしまう。ただシエスタの時とは確かに違う。どう違うのか分からないが……

 

しかしそう言うとルイズは嬉しそうに顔を綻ばせる。

 

「じゃ、お休み」

 

そう言って目を詰むってスヤスヤと寝息をたて始めた。

 

だが反対に闘夜は眠気が吹っ飛んでいる。そして胸中には今までには感じたことのない感情……

 

ドキドキ……とは違う。こう全身が震え、熱をもち、息が自然と激しくなった。

 

もし闘夜が野生の犬であったなら遠吠えのひとつでもしそうな状態なのだが、この状態がどういうことなのか闘夜には理解できない。

 

気が狂いそうなほど彼女を抱き締めたい、香りを味わいたい、そして……そして?

 

(そして……なんだ?)

 

そのあとどうする?それが分からない。闘夜には理解不能な領域だ。

 

(あぁ、もう!寝れねぇ!)

 

勿論その夜、闘夜は一睡も出来ず、普段ルイズが味わっている悶々とした気持ちを感じながら朝を迎えるのだが……それは余計な話である。


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