異世界御伽草子 ゼロの使い魔!   作:ユウジン

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第六章 アンドバリの指輪
怒り大爆発


タルブの村での戦いから暫くたった雲一つない晴天のある日のことだった……

 

「あ、トーヤさん!」

「ん?シエスタ?」

 

ルイズが授業中は暇なので昼間は木の上等で寝てるか他の使い魔たちと遊んでるかしている(主人の授業中に結構暇そうにしてたりそもそもサイズの問題で教室に入れない使い魔は結構いる)闘夜はそろそろ日が沈み始め、授業も終わりだろうとルイズのいる教室まで向かおうとした時に声をかけられた。

 

黒い髪を揺らし、目の前に現れたのは見間違うはずもない。シエスタだ……前に人生初の告白を彼女にされて若干気まずい感情があるがそれを知ってか知らずか、前と同じように接している。ただし、

 

「今帰ったのか?」

「はい、あとこれお土産です」

 

そう言ってシエスタはタルブの村から持ってきた袋からなにかを引っ張り出す。

 

「これは?」

「マフラーです」

 

と、袋から出したマフラーを闘夜の首にそっと巻いてくれた。とまぁこんな感じで明らかに距離感が告白前とは違う。

 

一途……と言うのはどうやら冗談ではないらしい。結局タルブの村を救ったあとはドタバタしてしまい会えずじまいだったがこんな物を持ってきてくれるとは……

 

「トーヤさんいつも同じ格好だしこれから寒くなりますから少しでも暖かくなってもらおうと思いまして」

「へぇ~」

 

確かに最近朝晩冷え込み出していた。勿論寒さには人間より強い(暑いのは駄目だ)がそれでもマフラー一つで結構暖かいものだ。しかし……

 

「これなんて書いてあるんだ?」

 

ふと目に止まったマフラーの文字に闘夜は疑問符を飛ばす。勿論この世界の字は読めない闘夜に、シエスタは少し照れ臭そうに答えた。

 

「トーヤって書いてます……」

「へぇ~、よく俺の名前が刺繍してあるの見つけたな」

 

そう闘夜が言うとシエスタは可愛らしく頬を膨らませた。純朴な顔立ちの彼女はこう言った仕草が新鮮に見えるが賤らしくは見えないのだから不思議である。

 

「これは私が作ったんですよ?トーヤって刺繍されたマフラーがあるわけないじゃないですか」

「え?そうなの?」

 

はい、と頷くシエスタに闘夜は申し訳なさが生まれた。態々自分のために作ったのだろう。それに対して既製品扱いは少々失礼な物言いと言うものだ。そう思った闘夜は慌てて頭を下げる。

 

「ご、ごめん。すごく暖かいよ」

「ふふ、そういっていただけると頑張ったかいがあります」

 

悪戯成功と言った感じの笑みを浮かべたシエスタに闘夜は苦笑いを返す。しかし、

 

「でもちょっと長いかな……」

そう、闘夜はチビと言うわけではないがそれでもこのマフラー……少々長く、地面に付きそうだ。すると、

 

「これはこうするんです」

 

そう言ったシエスタは地面に付きそうな方を手に取るとそれを自分の首に巻き、闘夜の腕に抱きつく。

 

「し、シエスタ?」

 

ギクッと思わず体が強ばった闘夜……それを見たシエスタは目を覗き込みながら、

 

「嫌でした?」

 

ドキっと心臓が跳ねる。嫌なわけではない。ただ困惑はする。闘夜は顔立ちは整ってるのでモテたが全く気づかないほどの鈍感さを持っている。そのため生まれてから十と五年生きているがこういう風にグイグイ来るタイプは居なかった。好意を伝えられ、更にこうして行動をしてくるタイプへの対処を闘夜は知らない。

 

だが……敢えて言わせてもらえばここは少しでも嫌な顔とまではいかずとも困った顔くらいはしておくべきだったかもしれない。何故なら……

 

「………………」

(ヒィイイイ!こえぇよ相棒!)

 

背中に背負われていたデルフリンガーは気付いたが、後方の角から顔だけを覗かせ眼力だけで人を殺せそうなほど強くこちらを睨み付けながら恐ろしいオーラを身に纏うルイズがいたのだから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ相棒。今日は覚悟しといた方がいいぜ?」

「何が?」

 

シエスタと久々にあったその後、教室に既にルイズは居らず、多分部屋かと戻っていた途中デルフリンガーに突然言われた言葉である。

 

「まああれだ。頑張れってことだ」

「???」

 

闘夜はますます首をかしげた。だがデルフリンガーは詳しく語れない。と言うか語ることができない。何故なら先程シエスタとイチャイチャ?しているのを影から見ていたルイズは恐るべき察知能力でデルフリンガーがこっちを見ているのを見抜き口パクで言ったのだ……《余計なことを言ったら溶かす》と。

 

デルフリンガーも命は惜しい。なのでこれくらいで後は闘夜の頑丈さに賭けるしかなかった。なぁに、流石に命は取られまいよ……

 

そんなことをデルフリンガーが思っていると部屋につく。恨むな相棒……すまん、とデルフリンガーが密かに謝罪する中、闘夜は迷いなくドアを開けて入る……そこにいたのは、

 

「おかえりなさい。トーヤ」

 

宿題をしていたのか、机に座って何かを書いていたが入ってきた音で振り返り闘夜をにこやかな笑顔で出迎えたルイズであった……

 

「あ、すいません。もう帰ってたんですね」

「まあね。待ってたんだけどいつもみたいに迎えに来ないから先に帰ってたわ」

 

プリプリといった感じに起こるルイズに闘夜はまた頭を下げた。しかし……

 

「なんか機嫌良いですね?」

「そう?」

 

そういいながら可愛らしく首をかしげるルイズに闘夜は胸が若干高鳴った。分からないが最近自分はおかしい……心臓の病気か?

 

だがデルフリンガーは気づいていた。機嫌なんか全く良くないことに……寧ろ不機嫌を通り越した別のものに変貌していることに……

 

デルフリンガーには見えていた。ルイズの背後には魔王とかそんなものではない、邪神とかそういった類いのものが必死に隠れていること、更に闘夜は宿題と思っているがノートのあれは違う。凡そ文字とは言えない何かの暗号?いや……ひたすらに手を動かしていただけだろう。その結果生まれた狂気の絵?そんな感じのものだった。更に、

 

「ほら、取り合えず剣を置きなさいよ」

 

そう言ってルイズは闘夜の腰から鉄閃牙を取り、闘夜が言われるがままに肩から降ろしたデルフリンガーを受け取る。更にそれを壁際に持っていき立て掛けると……

 

 

《静かにしてろよ?》

「っ!」

 

デルフリンガーは悲鳴をあげなかった自分を褒めたかった……一瞬だけ浮かべた闘夜から見えない角度でのルイズの表情……それくらい彼女が浮かべた冷笑が恐ろしかった。首がないが人間であれば首をブンブンと縦に振ってる気分を味わったデルフリンガーを背にルイズは闘夜の方に向かう。

 

「そのマフラーどうしたの?」

「え?あぁ、シエスタがくれたんですよ」

「へぇ?ちょっと見せて」

 

もう知ってるはずなのに敢えて聞く……ここにルイズの警戒心を抱かせない妙技を誰に教わるわけでもなく身に付けていることをデルフリンガーは知った。体と言うか刀身が震えそうである。だが静かにしてないとどういう目に遭わされるか分かったものじゃないので黙っておく。

 

「ふぅん、トーヤ……シエスタ……か」

「はい?」

 

ルイズに首に巻いていたマフラーを手渡した闘夜はルイズの呟きに闘夜は首をかしげた。するとルイズは文字を指差しながら、

 

「ここよ、トーヤ……そしてこっちはシエスタって書いてあるのよ」

「へぇ~。そうだったんですか~」

 

シエスタのやつ全然そんなこと言ってなかったなぁと闘夜は頭を掻いた。だがそんな闘夜を余所にルイズは手に取ったマフラーを床にポイっと捨てる。

 

「あ!ちょっとルイズさ……ま?」

 

なに捨ててんですか……そう言いたかった闘夜は言葉を続けられなかった。何故なら闘夜はここに来て漸く気づいたのだ……言動や行動じゃない。気づいた理由は目だった。

 

どういうことかと言うと、ルイズの目は、ハイライトがなかったのだ……光がなく、感情がない。人形のような目だった。いや、タバサじゃないよ?

 

「ねぇトーヤ……あなたずいぶん楽しそうだったわね?私が必死に勉学に励んで終わったあと何時までもあんたが来ないなぁと思って外まで探しに来てみたらメイドとイチャコリャしくさって……」

「い、イチャコリャなんて……「だまらっしゃい!」はい!」

 

ピシャリと放たれたルイズの怒声に闘夜は背筋を伸ばして気を付けの姿勢を取る。それを見たルイズはニッコリと、しかし全く可愛くない。いや、表情だけ見れば可愛いがオーラが絶対零度のためか恐ろしさしかない。

 

「あっちこっちに尻尾を振りに行く《犬》にはやっぱり首輪がいるわねぇ。私としたことが《犬》を買うときのマナーを忘れてたわ」

「あのぉ……確かに俺は犬妖怪の血を引いてますけどそんなに犬、犬と連呼されると……」

「なにか言ったかしら?」

 

ギロッと睨まれ闘夜は口にチャックをした。今なにかを言えば殺される……そう闘夜の本能が告げたのだ。

 

「そう言うわけでこれを着けましょうか」

 

そう言ってルイズは机の引き出しから箱を取りだしその中から何かの棒のようなものと頑丈そうな首輪を取り出した。

 

「あの……それなんでしょう?」

「見ての通りリードの持ち手と首輪よ?」

 

そう言うとルイズは椅子にその首輪を着けると少し離れ棒のようなものを振る……すると、椅子がルイズの方に引っ張られたのだ。まるで磁石のように……紐がないため、リードには見えなかったがそう言う感じなのかと闘夜は感心しそうになった。

 

「このマジックアイテムわね……たまにいる言うことを聞かない使い魔や幻獣コレクター何かが好んで使っててね。飼い主がこの棒を、そしてペットはこの首輪をつける。因みにこの首輪は硬化の魔法が幾重にもかけてあってオークが綱引きしたって引きちぎれないって売り文句でね。まぁスッゴク高いからお小遣いとんじゃって無駄だったかなぁ?なんて思ってたけど、一応と思って儀式の前に買っといて良かったわ」

「ソ、ソウナンデスカー」

 

闘夜は全身から冷汗が止まらなかった。足が震え、口が乾く。こっちの世界で色々と戦うことがあったがそんなものとは別ベクトルで違う恐ろしさがあった。

 

「あ、勿論メイジ……しかもこれ凄いことに持ち主の登録ができて登録した者以外は外せないようになってるの」

 

そう言って椅子に着けていた首輪を外しルイズはその首輪をこちらに向ける。

 

「さ、あんたの首につけましょうか」

「い!」

 

やっぱり!っと闘夜は慌てて逃げ出そうとドアに向かう……が、

 

「あ、あれ!?」

 

ガチャガチャとドアノブを捻るが開かない。さっきまで普通に開閉したのにだ。

 

「私ね?虚無に目覚めてから簡単なコモンマジックなら出来るようになったの。お陰で鍵を閉める魔法も今なら使えるわ……」

「あ、アノルイズサマ」

 

いつの間にか杖を抜いていたルイズは振り返った闘夜の元へ杖を仕舞いながら間合いを詰める。

 

「別に痛くしないわ。安心してお姉さんに任せなさいよ」

「いや俺首輪なんてそんなの嫌ですよ!」

 

そう言って闘夜は部屋の中を走り逃げ場を探す。

 

「まちなさい!」

 

だがルイズもそれを逃がすわけはなく追いかけ始めた。部屋の中であり、しかもルイズが身体能力は高めだと言うことを差し引いても油断するとあっという間に追い付かれそうだ。この追いすがってくる光景は、闘夜にとって恐怖でしかない。

 

「お、落ち着いてくださいルイズ様!」

「あら私は冷静よ!」

 

目に光がなく不気味な笑みで追いかけてくる様をどう解釈したら冷静と判断できるのか非常に疑問だがその疑問を解消している余裕はなかった。

 

「逃がすかぁ!」

「ひぃ!」

 

そんな中ルイズの首輪を西部劇でもできそうな程見事な投擲……を闘夜は伏せて躱すとその首輪はベットの天蓋柱に巻き付く。これで一旦外すまで隙が出来る筈、と思ってたときもあったよ。

 

「ウォオオラァアアアアア!」

 

次の瞬間の事だ……ルイズはとても年頃の女の子が出してはいけない声をだしながら持ち手の棒を振り回しす!

 

「いぃ!」

 

するとそれに合わせベットが動き闘夜の方へ吹っ飛んで来る。

 

勿論このリードは大型の動物にも使うため引っ張ったりするの力が要らない。勿論紐がないため、首輪をつけた状態で持ち手の棒からどれだけ離れられるかは飼い主のお心次第で調節も出来る。

 

「よっ!」

 

まぁ解説してる間も飛んでくるベットがまた飛んできたため躱す……

 

とにかく一旦逃げねば命……は大丈夫だと思うがプライド的に非常に辛いことになるだろう。なので、

 

「とぉ!」

 

闘夜はドアから出られないなら別の場所からと言わんばかりに窓を開けると脱出……後ろでルイズがなにかを叫んでいたが、取り合えず無視して走り続けた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、綺麗な月だ。でも君の美しさの前では霞んでしまうね」

「どーも」

 

一方闘夜とルイズがそんな追い掛けっこを演じているとき芝生の上に椅子とテーブル……更に、ワインと軽く摘まめる物を置いて喋る二人の男女がいた。

 

片方はギーシュである。そして彼が必死に口説いているのはモンモランシーと言う少女で、ギーシュとは元恋人……と言う関係である。だが先の浮気騒動で破局した……が、モンモランシーにとってこれが一度や二度ではなかった。

 

と言うかこの男は可愛い女の子を見れば取り合えず口説くのが礼儀だとでも言わんばかりの性格である。なのでこう言った事で喧嘩して別れる何て言うのは良くあること……そしてギーシュは自分のご機嫌を取るためにこうしてまた自分に甘い言葉をささやく。そして結局寄りを戻す……と言うのがいつものパターンである。

 

いつもギーシュを許してしまう自分はバカだと言う自覚はある。だが好きで付き合っていたのだ。こうやって口説かれて悪い気はしない。しかしそろそろこの病気みたいな女好きはどうにかしなければなるまい。

 

そう思いモンモランシーは彼に気付かれないようにソッと懐から小瓶を取り出した。今手にある小瓶の中身をギーシュに飲ませればこの女好きは暫くは解消されるだろう。だが問題があった。

 

それは、この小瓶の中身をどうやって飲ませるか……である。いや、これは無味無臭なのでワインに垂らせばいい。ようはこれをどうやってワインに混ぜるかが問題だった。

 

ギーシュの気を一瞬でも良いのでどうにか逸らせれば……そう思っていた時だ。

「た、助けてください!」

「うぉ!」

「きゃあ!」

 

突如転がるようにやって来た男……モンモランシーは顔くらいしか知らないがギーシュはよく知っていた。

 

「トーヤ?どうしたんだい?」

「ル、ルイズ様に殺される!」

「はぁ?」

 

突然やって来た闘夜にギーシュは視線を合わせる……今だ!

 

「ルイズに?君は何をしたんだい?」

 

ギーシュが闘夜に気を取られてる隙にモンモランシーは小瓶の中身を垂らした。無論二人は気づいていない。

 

「背が小さいといったりとかは?」

「してません」

「狂暴だといったりとかは?」

「口にしてません」

(思ってはいるのか……?)

「なら胸が小さいとか?」

「そんなまさか」

 

こうなるとギーシュではお手上げだった。そもそもルイズがどういう風に怒ってるのかがわからない……

 

「そう言えばルイズになにされそうになったんだい?」

「首輪をつけようとしてきて……」

「首輪?……それは特殊なプレイの一環かなにかかい?」

「ぷれい?」

「あ、いや……忘れてくれ……」

 

突然首輪をつけられそうになってと訴える闘夜にギーシュはどういう状況でそうなったのか全くわからなかった。

 

そのためSM的な奴を思い浮かべたものの闘夜の純粋な瞳にギーシュの汚れきった心は撃ち抜かれてしまい慌てて前言撤回する。

 

「どーせ他の女に鼻の下伸ばしたんじゃないの?」

「いやいや……ええと……?」

 

確かにさっきシエスタとは会ってたがそれで怒られることはないだろう。別にマフラー貰ってただけだし……と思いつつ闘夜は、あんた誰?と言う目を向けた。

 

「あぁ、私はモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ……あんたの主人と一応同じクラスよ」

「ん~?」

 

そう名乗られ、そう言えばこの人……っと闘夜は思い出した。

 

「モンモン様って前にギーシュ様を平手打ちしてた人ですか?」

「誰がモンモンじゃ!……まぁ確かに平手打ちしたけど……」

 

あまりにも長くて面倒だったため短く略して呼ぶと怒られる……まあ当然なのだがモンモランシーは怒りつつも平手打ちしたことに関しては否定はしなかった。

 

「仲直りしたんですか?」

「違うわよ。コイツがどうしても話したいって言うから仕方なく付き合ってあげてたの」

 

ちらり……とギーシュのワイングラスを横目にモンモランシーは言う。まだ口はつけていない……取り合えずこの平民を追い払った方がいいか?そうモンモランシーが思ったときだった。

 

「ミツケタワヨトーヤ……」

『っ!』

 

ビキィ!っと闘夜、ギーシュ、モンモランシーの三人は石の様に固まった。声の方を見たくなかった。何故なら見なくてもわかるほどの怒りの波動が背中にビシビシ当たってくる……

 

だがいつまでそうしてられないので三人はゆっくりと声の方を見て……後悔した。

 

「チョコマカト、マァヨクニゲマワル、ツカイマネ」

『ひぇ!』

 

ギーシュとモンモランシーは椅子から驚いて落ち、闘夜は腰を抜かしつつも這いずってギーシュの後ろに隠れた。

 

だが逃げ出さなかった。否、逃げ出せなかった。それだけ恐ろしかった。

 

ルイズには牙と角が生え、口から煙をだし、髪がウネウネと動き、コォオオオオオオホォオオオオと唸り声をだす。これでは背中に邪神処かルイズが邪神そのものであった……と言うのは勿論闘夜たちが恐怖の余り見ていた幻なのだがそれくらい恐ろしかったと言うことだ。

 

「あ!」

 

そんな解説をしている間にもルイズは間合いを詰め、首輪を片手に持ちながらテーブルの上に合ったワイングラスを手に取り、モンモランシーは思わず声をあげた……が、止める前にグイッと一気に煽る。そして、

 

「モウニガサナイ……」

「お、落ち着くんだルイグェエエエ!」

 

止めようと勇気を振り絞り立ち上がったギーシュだったが次の瞬間には鳩尾にルイズの拳がめり込み潰れたカエルのような声をだし倒れる。

 

今回ばかりは完全にギーシュはとばっちりであった……だがそんなギーシュを横目にルイズは腰を抜かした闘夜の前にたつ。

 

「アバババババババババ!」

 

体の震えが止まらない……だが同時に安らかな気持ちにもなった。

 

もう終わりなのだから……安らかに逝こう……と。

 

そう思い闘夜は目を閉じ、刑の執行を待った。だがいつまで待っても来ない。何だ?と思いつつ目を開けようかと思っていると、

 

「え?」

 

ボスッと体に軽い衝撃が走り目をあげるとルイズは自分の顔を闘夜の胸に擦り付けていた。

 

「馬鹿……何で私を放って置いてあんなメイドとくっつくのよ……私にくっついてよ……」

「はい?」

 

そんな言葉を漏らしながら顔をあげたルイズの顔は驚くほど色っぽくて紅い……しかもさっきからなに言ってんの?

 

「ヤバイことになったわ……」

 

そんなモンモランシーの呟きはやけに大きく聞こえたが……闘夜の耳には入ってこなかった。


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