異世界御伽草子 ゼロの使い魔!   作:ユウジン

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説明

「虚無の系統を……貴女が?」

 

タルブの村での一戦から直ぐにトリステインの城の謁見の間に通されたルイズと闘夜は鎧から前にも見たドレス姿に着替えて来たアンリエッタに事情の説明を行った。

 

まずはルイズの力、更に闘夜がガンダールヴだと言うことも話す。最初は信じられないと言った感じだったものの、あの突然の竜巻に爆発……王族として魔法教育にも力を入れられた彼女であっても、あんな魔法をアンリエッタは見たことがないし、聞いたこともなかった。

 

だが伝説の系統と使い魔の力なのだとしたら、話は変わってくる……

 

「まだ夢を見ているようですが……信じましょう」

 

故に信じるしかない。それにルイズが今までどんな魔法も爆発しかしなかったのもその辺が理由なのかもしれないと思うと余計に真実味が帯びてくる。更に、

 

「王家の間ではある伝承があります。始祖の力を受け継ぐものは王家の血筋に現れると……貴女の家のヴァリエール家は遡れば王家とも繋がりがあります。そう考えればおかしくないのかもしれません」

 

そう言うとルイズと闘夜は成程と頷いた。すると次の瞬間アンリエッタの表情が暗くなった。

 

「そうなると……貴女に報奨を渡せませんね……」

 

確かに彼女の言う通り、ここでルイズに報奨を授与すればルイズが虚無の系統を使えると言うことを公にしないとならない。そして喧伝すれば間違いなくルイズはアルビオンの軍に狙われるだろう。それに何より、

 

「ルイズ。今すぐにでも虚無の力のことは忘れなさい」

 

【過ぎたる力は人を滅ぼす】【力には責任がある】等と言う言葉がある。それ故にアンリエッタはルイズと言う小さな少女に虚無の系統が使えると言うのは、あまりにも重すぎる重責だと考えた。だがその言葉にルイズは首を横に振る。

 

「私はこの力を陛下に捧げたいと考えます」

『え?』

 

ルイズの言葉に驚いたのはアンリエッタだけじゃない。闘夜まで目を見開く。

 

「待ちなさいルイズ。貴女の力はあまりにも巨大すぎるわ。貴女も見たでしょう?虚無の力は危険すぎるわ」

「だからこそです」

 

凛とした佇まいでルイズは言葉を紡ぐ。

「だからこそ私に枷を頂きたいのです。この巨大な力を乱用しないように……」

 

その場が静まり返った。息遣いすらうるさく聞こえるほどに……そして、

 

「分かりました」

 

アンリエッタはそう言うと近くにある机の引き出しから一枚の書類を取り出しサインをする。

 

「これは貴女が私直属の女官であると言うことを証明するものです。そしていくつか約束してください」

 

アンリエッタは言う。虚無の力は内密にすること、勿論闘夜のガンダールヴもただ腕が立つだけとすること等だ。

 

「勿論兵達の間でも今回の一件は噂になるでしょうがあの爆発を一人で起こしたと考える者は殆ど居ないでしょう。フェニックスが甦った場に居合わせた……とでも広めれば大丈夫だと思います。あと使い魔どの」

 

そう言ってアンリエッタは更に闘夜に近づくと一つの袋を渡した。

 

「なんすか?これ」

「お金です。本来は貴方を貴族にしても良いくらいなのですがルイズの一件と同様です」

そう言うと闘夜は笑って首を振った。

 

「いやいや、貴族なんてそんなめんどくさそうなのは別に良いですよ」

 

袋の中のお金に驚きつつ闘夜が言うとアンリエッタは申し訳なさそうにお礼を言った。

 

「それでは二人も今日はゆっくり休んでください」

 

最後にアンリエッタがそう言うと闘夜とルイズは礼を言ってその場を後にしたのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何怒ってんのよ」

 

と、外に出て暫く歩いたところでルイズが口を開く。

 

「別にそういう訳じゃないですけど……」

 

ポリポリと闘夜は頭を書きつつルイズを見る。

 

「良かったんですか?あんなこと言って……」

「あんなって?」

 

闘夜の問いにキョトンとしながらルイズは聞き返した。それに闘夜は大きなため息を一つ吐く。

 

「虚無の力を姫様に捧げるってやつですよ。そんな事言っちゃって危険な事任されたらどうするんですか?」

「良いじゃない。良い?貴族にとって国のために働き、国のために命を懸け、そしてそれで死ぬことがあってもそれは名誉なことなのよ?貴族にとって名誉はとても大切なこと。例えそれで死んでもね」

 

ルイズの言葉に闘夜は眉を寄せた。それは戦国時代の武士と同じような考え方だ。だが闘夜はそんな生き方がどうも肌に合わないのだ。

 

死ぬことなんてカッコ良くない。みっともなくたって生きる方がいい!そう思っている。だからこそ前のウェールズ皇太子の一件でも彼に噛みつく結果となったのだ。

 

だからこそルイズの言葉に闘夜は頷けないし頷かない。でも同時にきっとこの考えはルイズには理解されないだろうと闘夜は同時に諦めてもいた。

 

「なによ、急に黙りこんで」

「なんでも……ないです」

 

ルイズを見ながら闘夜は思った。ルイズ様が死んだら……きっと悲しい。いや、悲しい何てもんじゃ済まないだろう。

 

主人だから?お世話になったから?いや、それだけじゃないと闘夜は心の中で否定する。

 

ルイズ様が死んだら……そう考えただけで心が堪らないほど締め付けられる。クラクラするほど悲しくなる。どうしようもなくイライラする。

 

そんな感情の変化に闘夜は着いていけない。自分の変化に戸惑いが強い。

 

最近可笑しい。ルイズを見ていると何かが違う。その何かがわからないのだが、自分はどうしてしまったのだろう……闘夜は必死に考えるが、その答えが分かるのは、まだ少し先のお話しだ……




ゼロの使い魔最終巻面白かった……一応この作品も、原作最終巻まで書く予定なのですが、さてさてどれくらいかかるのやら……

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