異世界御伽草子 ゼロの使い魔!   作:ユウジン

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打ち砕け!鉄閃牙!

ドクン!ドクン!とルイズは自分の胸が高揚するのを感じた。

 

【これより我が知りし真理をこの書に記す。この世の全ての物質は、小さな粒よりなる。四の系統はその小さな粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり】

 

しかしここで慌ててはいけない。とルイズは必死に自分に言い聞かせページを読み進める。

 

【神は我に更なる力を与えた。四の系統が影響を与えし小さな粒は、更に小さな粒より為る。神が我に与えし系統は、いずれにも属さず、更に小さな粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。四あらざるこの力、我は【虚無の系統】と名付けん】

 

「虚無の系統……」

 

唇が乾くように感じ、舐めて湿らす。だがそうしながらも必死に読み進めていく。

 

【これを読みし者は、我の行いと理想と目標を受け継ぐものなり。【虚無】を扱うものは心せよ。志半ばで倒れし我とその同胞のため、異教に奪われし【聖地】を取り戻すべく努力せよ。【虚無】は巨大なり。また、その詠唱は永きにわたり、多大な精神力を消耗する。詠唱者は注意せよ。時として【虚無】はその強力により命を削る。したがって我はこの書の読み手を選ぶ。たとえ資格なきものが指輪を嵌めても、この書は開かれぬ。選ばれし読み手は【四の系統】の指輪を嵌めよ。されば、この書は開かれん。

 

ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ】

 

「なによこれ……」

 

ふと、ルイズは自分の指に嵌めた水のルビーが目に入った。そうか、これが【四の系統】の指輪か。確か他にも火、土があるときいたことがあり、そしてアンリエッタに闘夜が渡した風……これで四系統が揃っている。

 

つまりだ。これを嵌めて読めると言うことは、

 

「私が……受け継ぐものと言うこと?」

 

するとルイズはまだ続きがあることに気がつく。

 

「これは……闘夜!」

「は、はい!?」

 

いきなり呼ばれた闘夜は慌てて振り返った。まあ振り返ってもルイズの顔は見えないのだが反射というやつだ。そして、

 

「しばらく時間稼いで!」

「えぇ!?」

 

突然の言動に闘夜は首をかしげるしかない。だがルイズは言う。

 

「できるかわからないけど……私を信じて!」

「っ!」

今のルイズの覚悟を決めた表情を闘夜は見ることは叶わない。だがその声音から感じとることはできた。

 

「分かりました……任せてください!」

 

闘夜はそう言うとエンジンフルスロットルと言わんばかりにレバーを握る。

 

「相棒!右だ!」

「よっしゃ!」

 

闘夜の視界をデルフリンガーが補いワルドの魔法を躱しながら時間を稼ぐ。だが、

 

「うぉ!」

 

ドォン!っと空気が振動するほど大きな爆発音が響く。やはり船の砲撃も加わってきた。なんとか躱すもののワルドだけではなくこれはヤバイ……だが、

 

「相棒!船の上だ!あそこなら砲撃は届かねぇ!」

「よし!」

 

闘夜はレバーを引き一気に上昇。こう言った事が素早いのもまたゼロ戦の特徴だ。そのためあっという間に砲撃の間をすり抜けていく。

 

その間にルイズは杖を引き抜きゆっくりと息をしながら口を開くと続きにかかれていた文字を読む。

 

「エオルー・スーヌ・フィル……」

 

この書にはこう書かれていた。

 

【以下に我が扱いし【虚無の系統】を記す】

 

と、

 

「ヤルンサクサ・オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド……」

 

このスペルを唱えていると、今までに感じたことのない力のうねりを感じた。だがそれはルイズだけではない。

 

「なんだ?」

 

ルイズの口ずさむスペルを聞いていると闘夜に不思議な高揚感が生まれた。今なら何でもできそうだ。そんな気分にさせる。

 

「ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ……」

 

その時だった!砲撃を回避し、戦艦の上空に無事出た闘夜たちの目の前にワルドが待ってましたと言わんばかりに飛び出す。

 

「砲撃に晒されたお前たちが来るのはここしかない……思った通りだ」

「ちぃ!」

 

闘夜は回避しようとレバーを引くが、

 

「もう遅い!」

 

ワルドは既にスペルを唱え終わっていた。当たり前だろう。ここに来ると分かれば後は何時でも攻撃する準備を整えておくのは不思議なことではない。

 

「死ねぇ!ガンダールヴ!」

 

杖を降り下ろしたワルドが自分の精神力を使いきる寸前まで込めて作り出した魔法、《ストーム》が発動した。

 

この魔法、ただ単に竜巻を作り出すと言う単純な魔法だ。だがスクウェアのメイジであるワルドが自分の全てを賭けたこの魔法は竜巻なんて言うのが生易しく見えるほどであり、殆ど天災レベルの破壊力を持っていた。しかも忌々しいことにちゃんと味方たちには被害がない角度で発動している。

 

流石に、昔いたと言われるメイジが放った200メイル級のとはいかないが充分回避することもできないほどだった。

 

「ジェラ・イサ・ウンジュー……」

「不味いぞ相棒!」

「分かってる!」

 

ルイズが後ろでスペルを唱える中で闘夜の思考が高速回転する。どうする?どうすればいい!?

 

死にたくない?当たり前だ。こいつを倒したい?倒したい。幾らでもツラツラと言葉が浮かんでは消えていく中、一際強く思う感情があった。それは、

 

「守りてぇ……」

 

自分の命もタルブの皆も、そして何より後ろにいる少女を守りたいんだと!そう強く願ったとき、突如鉄閃牙の鞘が脈を打つ。

 

「え?」

 

闘夜が驚愕していると空気を切るような音が近づいてくる。目が見えずとも、音が……そして何より本能的に感じ取ると立ち上がり手を伸ばす。そして、

 

「なに!?」

 

ワルドは精神力を大きく使った際の独特の疲労感の中で見た。先程落としたはずの魔剣が闘夜の手に飛んでいくのを……

 

だがもう遅い。既に魔法が眼前まで迫っている。

 

「ハガル……」

「どうすんだ相棒!」

「風の傷を……」

 

そう思いキャッチした鉄閃牙の刃を振り上げるが、恐らく風の傷を放っても消し飛ばす前に竜巻に突っ込むか、風の傷とぶつかった際の余波でこっちが危ないのを闘夜は理解していた。

 

どうすればいい?闘夜がそう思うと、あることに気づく。

 

(なんだ?)

 

闘夜は目が見えなくなっておるため真っ黒な世界しか見えない。その中で見えた軌跡……闘夜の直感が何かを感じ取ったのだ。そう、あの竜巻の中に風とは違う別の渦があるのだと。何かとはなんだ?と聞かれても困る。だが何かが渦巻いているのを感じとった。闘夜は視界が塞がれることで耳や鼻、だが何よりも直感……正確には第六感と言われるものが本人も気づかぬうちに集中し、結果として普段より鋭敏になっていた。

 

それらが感じ取ったのだ。ここを斬れと!

 

「あそこだ!」

 

闘夜は鉄閃牙を下げると意識を集中する。チャンスは一回。しかもこれで正しいと言う保証はない。だがルイズの呪文を聞いていると大丈夫だ、安心しろと言われてる気がする。どちらにせよやるしかないのだ。

 

そう闘夜は覚悟を決めると鉄閃牙を構える……そして!

 

「オォオオオオオオオオ!」

 

闘夜は鉄閃牙を振りかぶるとワルドのストームに刃を入れ、感じ取った場所に通す。そして次の瞬間!

 

「なっ……」

 

突如ストームが更に巨大な竜巻へと変化し、それはワルドの方に戻っていったのだ!

 

(俺の最大のストームを返したのか!?しかも更に強大にして!)

 

そう考えてるうちに乗っていた風竜ごとワルドは自分の放ったストーム以上の竜巻に呑み込まれ逆流していく。

 

「ベオークン・イル!」

 

それとほぼ同時にルイズの方も詠唱が完成した。大きな力がルイズの体から解放される。

 

この魔法は初歩の初歩の初歩……名前は、

 

爆発(エクスプロージョン)!!!!」

 

ルイズが杖を振り下ろし高らかに言い放つ。すると杖の先に一瞬光が点り、次の瞬間!

 

『え?』

 

この言葉はアルビオン艦隊のものたちの呟きであり、タルブの村近くに到着し陣形を整えていたアンリエッタを筆頭にしたトリステインの者たちの呟きでもであり、竜の羽衣が本当に飛んできたことに驚きを隠せなかったタルブの村の皆の呟きでもあった。

 

見たもの異口同音に言う……

 

突然太陽が生まれたようだったと、だが熱くはなく、その代わりにとんでもない音量の爆発が轟きわたったのだと。

 

後の皆は後世に伝える……

 

まさにあれはフェニックスの復活だったのだと。

 

そして皆は知る……

 

これは伝説の幕を開ける鐘だったのだと、虚無の目覚めの合図だったのだと。

 

「いちちち……」

 

勿論そんなことを知らない闘夜は突然の爆発によろめきそうになりながらも席に座り安定を保つ。ちなみに闘夜は見えていないがアルビオンの艦隊はどんどん高度を落としていっていた。

 

「ぷはぁ!」

 

一方ルイズもやっと息を吐くと未だに信じられないと言った様子だった。

 

「今何が起こったんですか?すごい爆発しましたけど……」

「虚無の魔法よ……凄いわ、私初めて魔法をちゃんと使えたのよ闘夜!私!虚無の系統を使えたのよ!」

「うわっ!」

 

初めて魔法をちゃんと使えたと言う嬉しさからか後ろからルイズに抱きつかれる闘夜……だがすぐにルイズは慌てて離れた。よほど嬉しかったのだろう。そんな二人のやり取りをカチカチと鍔を鳴らしながらデルフリンガーが喋る。

 

「ま、大体予想はついてたけどな」

「何がだ?」

 

闘夜が何の話なのか聞くと、

 

「嬢ちゃんが虚無の担い手だろうってのは予想はついてたんだぜ?何せ伝説の使い魔を召喚したんだ。多分素質は持ってると思ってたんだよ」

「じゃあなんで教えなかったのよ!」

「そりゃおめぇ、あくまでも予想だからな。間違いかもしんねぇし変な期待させるわけにはいかねぇだろ?」

「うぐぐ……」

 

ルイズの抗議も何のその、といった風情のデルフリンガーにルイズは歯を噛み締める。だがそんなものは無視してデルフリンガーは闘夜の方に意識を向けた。

 

「それにしたって相棒、おめぇさんあんなすげぇ技隠してたのかよ」

「あぁ~。無我夢中でキナ臭いとこ斬っただけなんだけどな……何が起きたんだ?」

「相棒があの野郎の放った魔法を斬ったらあいつの竜巻をもっと大きな竜巻にして返したのさ」

 

そう言われると闘夜は成程と納得の言った顔になった。

 

「多分【爆流破】だな……昔聞いたことあるんだ、風の傷で相手の妖力を巻き込んで返す鉄砕牙の奥義があるって……魔法でも出来るんだなぁ~」

 

アッハッハと闘夜は笑うがデルフリンガーは人間で言えば冷や汗を垂らすような感覚を感じる。

 

(こいつもホント運の良い奴だぜ……)

 

そんな風に笑ったりしていると、

 

「さて……これからどうします?」

 

と、闘夜が言う。確かにアルビオンの艦隊は今ので完全に船を失い今は地上で白旗をあげるか、撤退を始めているものたちしかいない。恐らく船からの砲撃や幻獣による空中からの戦いを前提に編成されていたためか地上戦での準備が出来ていなかったのだろう。もしくは飽くまでも今回のは祝いに来たと言う体裁で来たため、本格的な軍備はこのあと本隊が来て行われるはずだったのか……もしくはその両方かはルイズにも闘夜にもわからない。だが少なくともこの戦いはトリステインの軍勢が損害を被ることはまず無いだろう。まぁ抵抗するものが出ないとも限らないがここから先は闘夜たちの管轄ではない。少なくともタルブの村からアルビオンの軍勢を退ければそれで良いのだから。

 

そしてルイズは闘夜を見た。

 

「これって降りれるの?」

「そりゃ降りれますよ?ただまぁ目が見えないから大丈夫かどうかが……」

「その辺は俺も調整手伝ってやるよ」

「なら一旦あそこのトリステインの軍がいる近くに降りましょ」

 

そう言いながらルイズは地上でまだ驚きつつもアルビオンの艦隊の捕縛や追撃の指示を飛ばすアンリエッタを見つける。

 

彼女には色々説明しなければならないだろう。勿論それはこの虚無の力……そして闘夜のガンダールヴについてだ。

 

「んじゃ、行きますか」

「んじゃまずは左にレバーを倒しな」

 

そう言って闘夜はレバーをデルフリンガーの言う通り倒しながら降下を始めたのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、

 

「殿下!アルビオン軍の捕縛はほぼ完了、追撃部隊からは現在追撃中とのことですが逃げ足は早く壊滅は難しいとのこと」

「分かりました。捕縛の際に怪我をしたものは?」

「抵抗するものも若干居ましたが命に関わる傷を負ったものは居りません」

 

アンリエッタは報告を聞くと了承し報告してきた兵が下がるのを見届けながら静かに息を吐いた。正直な話、兵たちを連れ飛び出してきたのは良いもののアルビオンの空軍は地上戦を得意とするトリステイン兵とは相性が悪く空を飛ばれていては魔法をチマチマ撃つしか手がなかった。

 

勿論このあとトリステインにも空軍はあるのでそれが合流する予定ではあったがそれでもどうするか悩んでいた。その時だ。突然アルビオン艦隊が砲撃を始めたのは……

 

最初はこちらに向けたのかと身構えたがそういうわけでもないらしい。よく見てみればアルビオンの軍勢の中を飛ぶ何かが居てそれに向けていたようだ。見たところ鉄の塊のようなものが孤軍奮闘しているようである。

 

勿論自分達にそんな味方の心当たりはないがアルビオン軍の気を引いてくれるなら利用するしかなかった。

 

だがそれだけでは終わらない。突如その鉄の塊はアルビオンの艦隊の上空まで行くと突如巨大な竜巻が発生しその鉄の塊を襲うもその鉄の塊が更に巨大な竜巻を生み出し最初にできた竜巻を呑み込んだかと思った次の瞬間、今度は思わず目を瞑り、耳を塞ぐ程の閃光と爆音が轟いたのだ。しかもそのあと突如浮力を失ったらしいアルビオンの船はそのまま墜落……アンリエッタは慌てて捕縛の指示を飛ばし追撃部隊の編成を行った。

 

遠くにはまだあの鉄の塊が飛んでいるのが見えるがあれは一体何なのだ?等と彼女が考えているとそれがこちらに向けて飛んできた!?

 

「殿下!あの鉄の塊がこちらに来ます!」

「えぇ、見えています……」

 

迎撃しますか?そう言う兵にアンリエッタは眉を寄せる。確かに何者かはわからない。だがアルビオンの軍勢と戦っていたのなら少なくとも敵ではないんじゃないのではなかろうか?そう考えていると、

 

「ん?」

 

アンリエッタは目を細めた。よく見ると誰かが立って手を振っているのが見える。

 

ピンクのブロンドにあの背丈……そう、あれはと言うか彼女は!

 

「ルイズ!?」

「え?」

 

アンリエッタが突然度肝を抜かれたように声を出すため兵は驚きつつ首をかしげた。

 

「迎撃はしてはなりません!あれに乗っているのは私の親友です!」

 

ルイズの姿を視認するや否や慌てていつ迎撃の指示が来ても大丈夫なように準備していた兵たちをアンリエッタは止めた。

 

だがふと脳裏になぜあの鉄の塊にルイズが乗っているのだ?と言う疑問が浮かぶ。少なくとも竜巻を返したり爆発を引き起こしたのは恐らく今の状況を見てもルイズが関係していると思われた。

 

まぁその辺に関しても問いただした方がいいだろうと彼女は思いながら指示を飛ばした後ルイズたちの方を振り返った……が、

 

「ん?」

 

何だろう……遠目だから良く分からないがルイズが足元の方に向かって叫んでいるとそのまま座り窓のような場所を閉めた。そしてそのまま鉄の塊は自分達から離れた場所に向けて進路を変え、そのまま地面に着陸した……が、

 

「あ!」

 

アンリエッタは目を見開く、そりゃそうだろう。地面に着陸した鉄の塊は突然ドリフト(まあアンリエッタはドリフトと言う言葉を知らないのだが)し、そのまましばらく蛇行したかと思えばゴン!っと木に激突してやっと停止したのだから……

 

「いてて……」

「この馬鹿犬……後で覚えてなさいよ……」

 

そしてプスプスと煙を出す鉄の塊の中から這い出してきたのはルイズと闘夜……

 

後で聞いたのだが、何でもこの鉄の塊はゼロ戦と言う名前だと言うこと、更に離着陸のうち特に着陸に関してだが、本来舗装された地面に行う筈のものを草木が生い茂る地面で、しかも目が見えない状況で行ったのだから幾らデルフリンガーの助言を加えても微妙な加減をミスり、挙げ句の果てドリフトし木に激突と言うオチを迎えたらしい。

 

まぁそれは置いておくとして、

 

「ルイズ!それに使い魔殿まで!?」

 

アンリエッタは慌てて這い出してきた二人のもとに駆け寄った。

 

「姫様……いえ、殿下。突然失礼しました」

「それは良いのです。それより……」

 

アンリエッタは一度ルイズから視線を外し闘夜を見る。それから杖を抜き素早くスペルを唱えると、

 

「お?おぉ!」

 

闘夜は違和感を感じ目を開く……するとさっきまで血が流れ見えなかった視界がクリアになり完全に見えるようになっていたのだ。

 

「な、治った!治りましたよルイズ様!」

「水の系統は治癒や薬の精製を得意とする系統だからよ。だから落ち着きなさい」

 

とは言え本来魔法薬と併用しなければ高い効果は望めないものの風の刃は切れ味が異常に良く、切り口が綺麗だったため治りやすく、更に今の魔法は正確には治癒力を高め、回復する速度をあげると言うのに近い。そういう意味では闘夜は元から高いので、アンリエッタが首をかしげる程度には効果が顕著だった。

 

とは言え何時までも話しているわけにはいかない。

 

「ルイズ、一体何があったの?」

「私たちもそれを話に降りてきたのですが……ここでは少し人の目が」

 

ルイズの言葉に余り聞かれたくない話だったのだと察したアンリエッタは頷くと、

 

「分かりました。アルビオン軍が撤退したなら私も一度城に戻らなくてはなりません、お二人も一緒に」

「あのぉ……」

 

すると闘夜が申し訳なさそうに声を発した。

 

「どうしました?使い魔殿」

「取り合えずゼロ戦(コレ)を学院まで運びたいんですけど今の木にぶつかった衝撃で動かなくなっちゃって……」

 

ゼロ戦が高い飛行能力をもつのは既に説明したが飛行能力が高いと言うことは軽量であると言うことで、突き詰めれば装甲は紙なのである。故に結構な勢いでゼロ戦は木にぶつかりその結果動かなくなってしまった。それに対しアンリエッタは笑って了承した。

 

「分かりました。直ぐに飛竜を手配して運ばせておきます」

「すいません……」

 

こりゃコルベール先生怒りそうだなぁ……と闘夜は苦笑いを浮かべながら礼を言い、二人はアンリエッタに連れられながら城まで事情を話すため戻ったのだった……

 

 

ちなみに余談だが、ボロボロになったゼロ戦を見たコルベールは怒りはしなかったものの、まだ調べてないのにと泡を吹いて気絶し、直ぐ様元通りにして調べれば良いと修理に取り掛かった結果、授業をすっぽかして学院長から怒られるのだが、それはまた別の話である。


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