絶唱光臨ウルトラマンシンフォギア   作:まくやま

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EPILOGUE 【別離。そして時は未来へ】 -A-

 世界が闇で覆い尽され、人と光と歌が地球(ほし)と一つになってその強大な闇を祓い退けたあの戦いより、僅かばかりの時が流れた。

 未だ冬の寒さが残りながらも日差しが齎す陽気は、変わり往く季節を実感させる。そんな晴天のある日、二人の少女が街を歩いていた。仲良く繋がれた手……その中指には、アルファベットのAを象った同じ形のペアリング。手首には彩り豊かなミサンガが巻かれていた。

 

「だんだん暖かくなってきたデスねー、調♪」

「そうだね切ちゃん。でも、まだ風は冷たいね」

「調ってばいっつも手が冷たいから、風邪ひかないか心配デス」

「私はもう薄着で寝てる切ちゃんの方が心配。お腹は冷やすなってみんなに怒られてたじゃない」

「うぐぅ……! ま、まぁそれも兼ねて、またあったかいものをいただきに行くデスよ!」

(……逃げた)

 

 調の手を引いて走る切歌。幾度となく通った道、その角には何の店があるかは誰よりもよく知っていた。cafeACE……北斗星司がブーランジェとして働いていた、街中に小さく佇むカフェだ。扉を開けて入っていく二人。出迎えたのは――

 

「あ、いらっしゃい。調ちゃん、切歌ちゃん」

「七海おねーさん、こんにちはデェース!」

「お邪魔します、七海さん」

 

 このカフェの元店員である七海。今は彼女がこの店を取り仕切っていた。

 

「二人ともいつもので良い?」

「はい」 「デェス!」

「ん、りょーかい。作っとくからパン選んどいてね~」

 

 前より種類が減ったパンの棚から、さほど迷うことなくチョココロネとメロンパンをそれぞれトレーに乗せる調と切歌。カウンターでは七海が既に、調のカフェモカと切歌のキャラメルマキアートを作り終えて待っていた。

 

「はい。じゃあお代は、っと……」

「……はい、じゃあコレで」

「ん、丁度いただきました。毎度ありー」

 

 笑顔でやり取りをし終えた三人。と、ふと切歌がカウンターの奥にある、湯気の立った一つのコーヒーカップを見つけた。

 

「七海おねーさん、それは?」

「ん? あー、またミスっちゃってねぇ……。二人が来るとついクセで一緒にブレンドコーヒーも入れちゃうのよ。後で私が飲むから、気にしないで」

 

 そう言う七海に押し出されるように席へと着いていく調と切歌。二人には、あのコーヒーがなんであるか十二分に理解していた。

 椅子に座り、それぞれが頼んだ飲み物を一口飲んだ後トレーに乗ったパンを頬張る。数回咀嚼してから飲み込むが、二人の胸に去来したのは言い得もない寂寞感だった。

 

「……やっぱりちょっと、味が変わったデスね」

「うん……。でも、仕方ない。星司おじさんは、もう居ないんだから」

「そうデスね……。ちゃんと、お別れしたデスもんね。仕方ない、ことなんデス」

 

 調の言葉に、切歌の顔も何処か寂しそうに笑う。

 そのまま彼女らは、数週間前にまで想いを遡らせ記憶を再度思い起こさせた。

 

 彼らとの、別れの日のことを――。

 

 

 

 

 

 

 世界の命運を賭けた闇黒魔超獣との戦いが終わり、平穏が戻った世界。また一つの戦いを終え、皆が安らかな眠りについた時、突如として変化が齎されたのは、響とマリアにだった。

 マリアは意識の奥底で、自らが変身していた銀色の巨人……ウルトラマンネクサスと相対していた。

 

「……終わった、と言うのね」

 

 おもむろに口を開くマリアに、ネクサスはやはり答えない。――だが、知っていた。神が如き力であるバラージの盾。其処に残されていた力こそがマリアの自身に与えられていた力だ。それがまた、在るべき場所に還るというだけの事。ただそれだけだ。

 右手に握られていたエボルトラスターが光と化して、ネクサスのエナジーコアの中へと還って行く。それを少し名残惜しそうに見送るマリア。だがその眼はしっかりとネクサスの方へ向き、真っ直ぐ言葉を伝えていった。

 

「貴方の厳しさが、私を支えてくれていた。貴方の強さが、私を勇気付けてくれていた。……そして、貴方の優しさが私に【本当に大切なもの】を理解らせてくれた。

 光は、受け継がれていく魂の絆。誰かと繋がる事で何度でも輝く。その輝きを、より強くする……」

 

 ネクサスはやはり何一つ語らず、だが初めてその首をゆっくりと縦に振り首肯した。そしてその身を光と変えて、消えていく。

 今度はマリアは、もうその手を伸ばすことは無かった。

 

「――ありがとう」

 

 その心からの言葉だけを光に託し、光は何処へと飛び去って行った。元々はウルトラマンゼロに与えられていた力だ、彼の下に帰って行くのだろう。ただそう思いながら、光を見送っていた。

 途中で合流した赤と青の光からは、それぞれの光の持ち主らの笑顔が見えたような気がした。

 

 

 

 それと同じくして、響もまた意識の底で再度邂逅を果たしていた。そこに在ったのは暗い空間に揺蕩うフィーネ――櫻井了子の姿だった。

 

「了子さん!」

「お疲れ様、響ちゃん。そして、ありがとう。【あの子】を……この地球(ほし)を守護ってくれて」

 

 了子からの労いの言葉に、響は首を横に振る。

 

「私の力じゃありません。この地球(ほし)に生きるみんなの祈りが、地球(ほし)を愛する者たちの勇気が、地球(ほし)そのものの願いが、私たちに負けない力をくれたんです。

 キャロルちゃんも、その命を燃やして……」

 

 思わずキャロルの事を口に出した瞬間、了子が優しく響の頭を撫でる。思わぬ行動につい目を閉じるが、開いた先の了子の顔は優しい笑顔だった。

 

「みんなで背負う。そう決めたんでしょ? だったらそれを通さなきゃ。あんまり未練がましいと、彼女にドヤされちゃうわよ」

「……そう、ですね」

 

 なんとか笑顔を見せるがそれでも幾分か暗い表情になってしまう響。そんな彼女に対して、何処か仕方なさそうに了子がまた声をかけていく。

 

「……大地は、命を待っている。どんなに破壊されても、大地は諦めない。何時だって、新しい命を育てようと待ち構えているの」

「命を、待っている……?」

「そう。人理を超えて命を重ねてきたキャロルも、死を迎えた今はこの地球に還っていった。そしてこの地球(ほし)の中で、新しい命として育まれているはずよ」

「じゃあ、いつかまたキャロルちゃんと会えるんですかッ!?」

「それは理解らないわ。響ちゃんが生きている間には会えないと思った方が良いと思う。それに新しい命となって生まれてきたものが、同じ”キャロル・マールス・ディーンハイム”であるという訳ではないしね」

「そうですか……。でも、新しい命にちゃんと繋がっているって事なんですよね」

「そうね。ただ、彼女はちょぉっと特異なケースだから、今後どういう形になるかは私にも予測がつかないわね」

 

 何処か楽し気にウインクする了子。姿や衣装は響と対峙した永遠の巫女フィーネであるはずなのだが、その仕草や言葉遣いは彼女が知っている”櫻井了子”そのものだった。だが彼女の言葉は案の定響にとっては理解のしようも無い言葉でもあった。だから彼女は、いつものように言葉を返すのだった。

 

「やっぱり私には、了子さんの言ってる事よく分かりません。でも……了子さんがそう言うのなら、きっと何かがあるんじゃないかって思えます。だから、その予測のつかない何かを信じてみますッ!」

「――そう。なら、好きにすると良いわ」

「はいッ!」

 

 気持ちの良い笑顔で返す響に、了子の顔も優しく解れる。すると響の手に在ったエスプレンダーから光が解き放たれ、了子の背後で赤い光のウルトラマン、ガイアの姿となりそびえ立つ。

 直感で理解した。この身を選んだ彼とも別れの時が来たのだと。何処か感慨に包まれながら、響は強く言葉を放っていった。

 

「今まで力を貸してくれて、ありがとうございましたッ!!」

 

 その簡素だが素直な一言にガイアの光は大きく首肯し右手でガッツポーズを取った。そしてそのまま、光の粒と化し何処へと帰って行った。

 

「……それじゃ、私ともこれまでね」

「寂しくなります……。もういつかの時代、どこかの世界でも了子さんに会う事は無いんですよね……」

「そうね。でも、永遠の巫女フィーネはこの地球で永遠に見守っている。【あのお方】が生み出したこの世界と、其処に生きる者たちを。

 だから響ちゃんたちは頑張って、現在(いま)を生きて自分が望む未来(あした)を掴み取りなさい」

「はい、必ず。ありがとうございます、了子さんッ!」

 

 響の明るい返答に、ガイアの光と同様に何処へと消えていく了子。それと同時に、響の意識もまた暗い眠りの中に落ち込んでいった。

 

 

 

 そして時は、朝を迎える。

 いの一番に目が覚めていたのは、やはり翼だった。早起きは最早習性のようなモノ、周りで仲間たちが眠っている中で目が覚めたのはこれが初めてでは無かった。

 ふといつものように……その癖がいつからついたのかは定かではないが、左腕のブレスレットを眺め見る。すると、その形状が変わっていることに気が付いた。三つの菱形の宝玉が付いたものから、一つの丸い宝玉が中央に付いた、何処か鳥のような形のブレスレットだ。

 だが何故か不思議に思うこともなく、手早く寝間着から着替えて外に出る。早朝の清廉な、未だ寒さを色濃く残す空気に白い息を吐きながら、ブレスレットに向けて声をかけていった。

 

「おはよう、ゼロ」

『おう。こんな時でも相変わらず早ぇな翼』

「生来より授かった癖だ。今更変えることなど出来んさ」

『ヘッ、そうか』

 

 他愛ない会話。だが何処かで互いに直感していた。恐らくはこれが、二人で交わせる最後の会話なのだと。

 

「……ブレスレットの形が変わっているな」

『ウルティメイトイージス、それにダイナとコスモスの力が戻って来たからな。元の形に戻ったんだ』

「つまり、マリアはもう……」

『ウルトラマンの力を失った、って事だな』

 

 少し淡々と語るゼロに対し、翼も出来るだけ感情を込めずに「そうか」とだけ返した。同時に確信する。この身に一体化している彼とも別れの時が近付いていると言うことに。

 上り始める陽の光を浴びながら、翼は近くの段差に腰を掛けてまたゼロと話していった。

 

「お前も、此処から去るんだな」

『そうだな。宇宙にはまだまだワルが蔓延ってやがる。俺も宇宙警備隊……ウルティメイトフォースゼロの一員として、また仲間たちと一緒に宇宙のワルどもを成敗しなきゃならねぇからな』

「……平和を噛み締める時間は、無いと言うことか」

『ヘッ、こちとら生まれた時から生粋の戦士やってんだ。平和を楽しむ時間なんざ、これぐらいありゃ十分だよ』

「そうか。……やはり強いな、お前は」

『……お前だって十分強いさ、翼』

 

 その言葉と共に翼の左腕からウルティメイトブレスレットが外れ、其処から赤と青の光が輝き彼女の前でウルトラマンゼロがその姿を現した。そして翼と向き合い、膝を付いてその顔を近付ける。

 もう会えるかどうかも理解らぬ、共に戦場を駆け抜けた戦友(とも)を前に、翼はまた自身の抱くものを伝えていった。

 

「ゼロッ! 私はお前と会って、共に戦い抜いて、共に心を通わせた中で、新しい目標を見つけたぞッ!」

「へぇ、なんだいそりゃ?」

「――私は、この遥かな空を越えた先を目指そうと思うッ! そして、私の歌をこの果て無き宇宙(そら)に響かせるんだッ!

 そうすればいつか……いや、きっと必ず、お前にも届くだろうッ!?」

 

 自信に満ちた翼の言葉に思わす押し黙るゼロ。それは余りにも無茶で無謀な目標だ。きっと誰もが無理だと一笑に附すであろう。

 だが、彼は確信していた。彼女ならばきっと、その無茶で無謀な目標も到達できる。何時かこの宇宙の何処かで、もう一度彼女の歌を聴ける日が来るのだという確信が、その心の中に宿っていた。故に返す言葉は、何処か挑戦的な言葉にもなっていった。

 

「――ああそうだなッ! 二万年くらいなら、待っててやらぁッ!!」

「フフッ……二万年も待たせてやる心算はないからなッ!!」

 

 意気のある翼の返答に、ゼロは中指と薬指を折り曲げ残り三本の指を伸ばしたポーズで返す。それは彼がかつてとある地球人と一体化した時に覚えた、歓迎や激励、感謝といった意味合いの仕草だった。

 それを最後に起ち上がり、後ろを向く。そして掛け声と共に大きく飛び上がった。

 空を飛ぶゼロにウルティメイトイージスが装着され、次元の穴を展開。そこを通り穴が消えたことで、この世界からウルトラマンゼロという存在が去ったと言う現実を、風鳴翼は理解していった。

 涙を流すことは無い、約束を交わしたのだ。いつか――この宇宙(そら)に歌を響かせることで、またあの男と会えるのだから。

 

 

 

 そして皆が起き出してきた後で、ゼロが先んじて帰って行ったことを伝えた。

 皆はやはり寂しそうにしていたが、「アイツが何時までもこんなところに留まっていられるわけが無いだろう?」との翼の言葉に、笑いながら皆で肯定していった。

 それに次ぐように、マリアからは自らに与えられていた光がゼロへと還って行ったこと、響からは光の失ったエスプレンダーを見せられて彼女もまたウルトラマンガイアとしての力が地球に還って行ったことを皆に告げた。

 

「……そっか、みんな帰って行かなきゃいけないもんな」

 

 おもむろに呟く大地。出会いがあればやがて別れは訪れる。ただそれだけだ。だがそれを寂しく思うのは、誰もが同じだった。一緒に居た時間の長さが重要ではない、どれだけ心を繋げられたかが重要だ。そういう意味では、大地もついこの世界から離れることを惜しんでしまっていた。

 だが自分にも帰るべき場所がある。待っていてくれる仲間たちが居る。其れを蔑ろになど出来やしないのだ。そんな想いで小さく迷う彼に代わって、エックスが先達二人に声をかけていった。

 

『エース、80、貴方たちは如何なさるおつもりですか?』

「この地球(ほし)に迫る危機は去った。最早俺たちが、此処に居残る理由は無い」

「私たちもまた、今回の件も含め光の国で精査すべきことが出来ました。ただ無作為に留まってはいられないでしょう」

「そんな……ッ!」

「そんなすぐに帰らなきゃいけないんデスかッ!?」

「よせよお前ら、センセイたちにだって事情があるんだ。ワガママ言っても仕方ねぇだろ」

「でも、だけど……ッ!」

「クリス先輩だって、矢的先生とこんなにすぐサヨナラするなんて嫌じゃないんデスかッ!?」

 

 調と切歌の首根っこを掴みながら抑えようとするクリスだったが、彼女らの反論につい口を噤んでしまう。寂しくないはずがない。残念でないはずがあるものか。だけど、彼らは宇宙の秩序と平和を守護るウルトラマンである。こんなところで留まっていて良いはずがない。そう割り切るしかないと、クリスは考えていた。口惜しそうに唇を噛み締めながら。

 

「――……アタシに言わせんなよ、そんなこと」

 

 小さく絞り出した彼女の声は僅かにだが鼻声が混じっているように聞こえていた。別れの辛さなんか何度となく味わったか知れないこと。それでもこの身から湧き出てしまう感情は、止めようのないものだ。例えそれがマイナスエネルギーだと理解っていても。

 そんな彼女たち姿を見る他の者たちにも、何故こうなっているのかはすぐに理解できた。月読調と暁切歌は”ウルトラマンエース”とではなく”北斗星司”と、雪音クリスは”ウルトラマン80”とではなく”矢的猛”と、それぞれ深く心を繋げて来たのだ。だからこそ、其処に生まれ繋がった思慕の情は強く固い。それ故に起きてしまったことなのだ。

 響や未来、大地は勿論、翼やマリアや大人たちでさえ彼女たちをどう説得したものか悩んでしまっていた。其処に口出し――正確には皆に聴こえるぐらいの大きさの声で唐突に呟いてきたのは、メフィラス星人のエルヴィスだった。

 

「さて、では私は地球侵略の準備に取り掛かるとするかな」

「エルヴィスさんッ!? なんで、いきなりそんな――」

 

 思わず詰め寄ろうとした響だったが、後ろに組まれた彼の平手が彼女を制止させた。それは、今は止まれという無言の合図だった。

 

「地球人たちよ、二週間の猶予を与えよう。その間、精々好きに過ごすといい。やり残したことをやるも良し、最後の想い出作りに奔走するも良しだ。ハッハッハ」

 

 笑いながらその場からテレポートで消えるエルヴィス。残った静寂に呆然とする一同。だがそこで、隣に居る響に向けて口を開いたのは未来だった。

 

「……エルヴィスさん、ここにウルトラマンが三人居るってこと分かっててあんな事言ったよね?」

「だよ、ねぇ……。つまり――」

「二週間、この世界に居る時間を与えられた……ってこと、だよね?」

 

 困惑したままの大地の言葉に響や未来、翼やマリアだけでなく弦十郎たちもやや呆然とした顔で首肯する。

 

『やはりヤツも悪質宇宙人の一人だったか……ッ! 大地、すぐにヤツを追って――』

「ってのは無粋ってヤツだよエックス。きっと、気を使ってくれたんだよ」

『あのメフィラス星人がかッ!? そんな事が……』

「……繋がってくれてた、からね」

 

 微笑みながら返す大地の言葉に、響と未来も自然と笑顔になる。そして少し遅れてエルヴィスの意図に気付いた調と切歌はクリスを振り切り星司に擦り寄り、クリスも溜め息を一つ吐いてから少し不器用な笑顔を作って猛の元に歩み寄って行った。

 

「……ま、地球人としての暮らしを片付けるには良い時間か」

「兄さん、私たちは『侵略予告をしてきたメフィラス星人の動向を調べ、これを阻止する為に地球に滞在する』のです。そこを、お忘れなきように」

「おぉ、そういえばそうだったな」

 

 笑顔で話す猛に、星司もまた少しとぼけたような笑顔で返していく。

 

「エックス、大地、二人も協力してくれるか? ゼロのヤツがこっちに何も言わずに帰ったから人手が必要なんだ」

 

 星司に言われ一瞬考える大地とエックス。その時ふと目に入ったのは、自分たちの方へ目線を向けていたエルフナインの姿だった。それが決め手となった。

 

「ええ、勿論です。いいよな、エックス?」

『ああ。私たちは独自の方向で捜査をさせてもらいますが、構いませんね?』

「勿論。みんなで手分けして捜査すれば、ヤツの目論みもすぐに理解るだろう」

 

 猛の言葉でみんなにまた笑顔が広がる。目論見など既に理解っていると言うのにこんな会話をするのは、余りにも陳腐な茶番劇だ。だが何よりも、彼らもまたそれを楽しんでいるのだから止めようがなかった。

 

 

 

「……よもやこの私が、仇敵と認識していたはずの者たちに塩を贈るような真似をするとはね。

 変わったのか――それとも変えられたのか。フフフフフ……」

 

 機械的な明るさで満たされた空間――メフィラス星人エルヴィスの乗って来た宇宙船の中。その中で一人呟きながら、自分の中で変化を続ける感情を楽しんでいた。

 コンソールを操作する手も自然と早くなる。彼の身を支配するこの感情は、紛れもなく喜楽と呼ぶべきものだった。

 

 

 

 その二週間と言う捜査期間――実際は余暇と言える期間のある日の休日。シンフォギア装者たちとエルフナイン、星司と猛と大地は全員で集まって遊園地に繰り出していた。名目上は捜査の経過報告と言うところだったが、実際はクリスの大学合格祝いが主な理由であった。

 

「という訳なんでぇ、せっかくだから今日は目一杯遊んじゃいましょうッ!!」

「なんでお前が仕切ってんだこの馬鹿ッ!」

 

 そんないつもの軽いノリで、少女たちは年相応に大きな遊具を目一杯楽しんでいく。そこに引率の教師や保護者が一緒に混じりながらではあるが。ジェットコースター、メリーゴーラウンド、お化け屋敷やアトラクションなどなど……時に競うこともありながらも、みな夢中になって楽しい時間を過ごしていった。

 そして一時の小休止。軽食の取れる屋外フードコートにマリアが一人で座っていた。他のみんなはトイレだったりまだ遊び足りないだったりと散り散りだ。そんな中で独りで過ごす時間。そこまで疲れた訳でもなければ嫌気が差したのでもない。ただ少しだけ、腰を落ち着かせてこの笑顔が溢れる空間を見ていたかったに過ぎなかった。そんな時……

 

「そこの綺麗なおねーえさんっ♪」

 

 と、とても軽快な声で呼び掛けられた。声の方を向くと、其処には人懐っこそうな笑顔をした茶髪の少年がテーブルに両肘を付いてしゃがみ、此方に向けて手を振っていた。その余りにも陰りの無い目を見た時、マリアの脳裏に何かが走って行った。

 

「――……貴方は」

「あれ、おねーさん俺の事知ってたの? おっかしいなぁ……俺ココに来る客の顔なら大体覚えてっから、おねーさんは初めてだと思ってたんだけど……。尾白のヤツが悪い噂でも流しやがったか?

 まぁいいや。俺は千樹憐。ココで住み込みのアルバイトしてるんだ。よろしくッ!」

 

 一瞬訝しげな顔をするもすぐに明るい顔に戻してマリアの前で腕を組む少年――憐。彼の記憶能力は正しかった。マリアは確かにこの遊園地には初めて訪れたし、眼前の憐とも初対面。ただ、マリアに”受け継がれていた記憶”だけは彼を知っていた。いや、彼と”極めて近く、限りなく遠い存在”を識っていたのだ。

 だがそんなことは露知らず、マリアに気安く……馴れ馴れしく声をかけていく憐。そんな彼の肩に、分厚い掌が力強くバンッと叩き置かれた。

 

「ッてえなぁッ! なんだってん、だょ……」

 

 思わず振り返る憐だったが、振り返った先に居たのはとんでもない威圧感を隠そうともしない星司の姿だった。

 

「……坊主、ウチの連れに随分と馴れ馴れしくしてんじゃねぇか。ええ?」

「う、うわああッ! ま、まま、まだなんにもしてないだろッ!? つーか誰だよオッサンッ! あ、もしかして親御さんッ!? にしては全ッ然似てねぇしなァ……」

 

 憐の敬意皆無の言葉遣いに怒りを覚えたのか、そのまま腕を捻りアームロックを仕掛ける星司。憐は思わず許しを請うように開いた手でテーブルをバンバンと強くタップしていく。

 

「があああああッ!! おっ、折れるぅぅぅぅぅ!!」

「まったく、マリアをナンパしようとするからそうなるんデス」

「でも星司おじさん、それ以上いけない」

「ち、違うのよ北斗さんッ! 確かに彼から話しかけられてはいたけど、別に本当に何も無いのよッ! っていうかこの子よりタチの悪いパパラッチとか何度も遭って来たんだから、こんなの大したことじゃないわッ!」

「あぁッ! それはそれで心が痛いッ!」

 

 必死になって星司を止めるマリア。憐の叫びが聞こえる中、それを聴きつけて響や猛たち、果てには憐のバイト先の店主までも駆け付け星司を止め始めた。

 

「ちょ、ちょっと何やってるんですか星司兄さんッ!」

「落ち着いてくださいよッ! 暴力沙汰は駄目ですってッ!」

「ええい離せ猛ッ! 大地ッ! このガキに喝を入れてやるッ!」

 

 猛と大地によってようやく引き剥がされる星司。憐はと言うと、へたり込みながらもなんとか助かったと思いながら上を見上げると、其処にはまた別の男の険しい顔が待ち構えていた。

 

「は、ハリス……ッ!」

「憐……お前は何回仕事中にナンパするなって注意を受けたら気が済むんだッ!?」

「べ、別にナンパしてたわけじゃねぇよッ! こういうところで独りだと、何か困ってるのかもしれないだろッ!? 『 May i help you ? 』 と同じようなもんじゃんッ!」

「確かにお前のそのお節介で助かったって声は多く届いている。が、露骨に美人さんばかりに対して声をかけているのも確かだッ! これ以上変なことやるとクビにするぞッ!?」

「そっ、それは勘弁ッ!」

 

 ハリスと呼んだ男に叱咤され素直に反省する憐。その光景はまるで、親子のようなものだった。

 

「ったく……。いやはやウチの若いもんがご迷惑をおかけしました」

「いいえこちらこそ、血の気の多い友人が彼に酷い事をしてしまいまして、申し訳ありません」

「いやいやそんなッ! 今は他所の家庭にちゃんと注意出来る大人が少なくなりましたからね……。感心させてもらいました」

 

 なんとなく保護者のように話し合う猛とハリス。一方で星司は未だ険しい顔を崩しておらず、大地がなんとかなだめようと必死になっていた。やはり、こういう時に猛が居て良かったとつい思ってしまう少女たちであった。

 

「大変だなァ、センセイも……」

「そうだよクリス。もし先生になったら、生徒の指導だけじゃなく保護者へのフォローもちゃんとしなきゃいけないんだからね」

「今からこの先が大変だねー、雪音セーンセ♪」

 

 響のその舐めた口調に怒りを覚えたのか、思わず平手で響の頭をブッ叩くクリス。すぐに響から抗議の声が上がるが、二人の関係性はまだ先輩と後輩であり共に肩を並べる仲間同士だ。そんな風に言われる筋合いはないと一蹴してやる。響は響ですぐに未来に泣きつくが、泣きつかれる方は苦笑いしたままだった。

 

 そんな空気を変えるべく……いや、もしくはただのナンパ野郎と認識されつつあることを払拭すべく、憐が彼女らに向かって声を上げた

 

「ねぇねぇみんな、お詫びと言っちゃなんだけど記念写真とかどうかなッ!? せっかく友達や家族とこういうところに来たんなら、そう言うのもいいと思うんだッ!」

 

 憐の言葉に考え出す一同。だが皆の考えはすぐに肯定的な方向へと傾いていった。

 

「それは良い考えデスッ! ナンパなおにーさんにしては名案なのデスッ!」

「でっしょ! さっすが俺ッ!」

「でも、カメラマンさんとか居るの?」

「それはこの俺に任せときなさいって! ハリス、ちょっと店よろしくねー」

「あ、おい憐ッ! ……ったく」

 

 慌ただしく走り出す憐。

 数分後、彼が戻ってきた時に連れて来たのは一組の男女だった。片や気難しそうな顔を続ける男と、そんな彼を中和するかのように温和な空気が印象的な女性だ。だが彼女は憐に対し呆れ顔で応対しており、男の方は無口を貫いている。そんな二人に対して、憐は後ろ歩きのまま手を合わせてただお願いをしていた。

 

「なー頼むって! アンタら記者なんだろ? 写真数枚ぐらい協力してくれよぉ~」

「あのねぇ、こっちだって遊びで来てるわけじゃないんだからそんな事に付き合って……」

「――いや、佐久田さん。案外悪くない写真()が撮れそうだ」

 

 先に目を向けながらカメラを構える男にそう言われた女性……佐久田恵が目を凝らして憐の向かう先に集まっている少女たちを見つめる。幾らかして彼女らの姿を確認した時、その顔が驚愕に変わった。

 

「ま、マリア・カデンツァヴナ・イヴと風鳴翼ッ!? あの二人が一緒に映るオフショットとなるとかなりのスクープになるわね……。行くわよ、姫矢クンッ!」

 

 先に駆け出す佐久田を追うように走り出すカメラマン――姫矢准。彼の顔を認識した瞬間、マリアの脳裏にまた何かが走るような感覚が起きた。憐の顔を見た時と同じ”なにか”だ。

 だがそれをすぐに隠し、彼女の顔付きは世界のトップアーティストのそれに変わる。僅かな期間とはいえそうしなければ生きて来れなかった世界だ、この手の対応には慣れたものがある。ついでに言うと、憐を待つ間にハリスがみんなにと奢ってくれた焼きたてのベビーカステラが美味しかったのも効いていたりもする。

 そうして佐久田と姫矢が近寄ったところで、先に話を切り出したのはマリアからだった。

 

「パパラッチを招待したつもりはないのだけれど。日本のジャーナリストも其処まで地に堕ちたのかしら?」

「い、いえその、私たちはこの少年に頼まれてですね……」

「それを名目に取材も行い貴重なオフを無碍にさせ、あまつさえ私の大事な友人たちにも迷惑をかけるつもりなのかしら。そういう事ならばお断りよ」

「い、いや、そんなことは……」

 

 マリアの威風溢れる堂々たる言葉に、ジャーナリストとして押すべき佐久田が逆に引いてしまう。其処へ釘を刺すように、更に言葉を重ねていった。

 

「確かに今日の私たちはオフだけど、下手な記事や写真を流そうものならどうなるかしら。このテーマパークを出たら、黒いスーツに用心した方が良いわよ二人とも」

「あ……そ、その……」

 

 完全に意気を殺した。佐久田恵の表情と態度を見てマリアはそう確信した。だがそんな彼女の前に、今度はカメラマンの男――姫矢准がゆっくりと前に出る。そして静かにマリアへ声をかけていった。

 

「そうまでして俺たちを脅し引き下がらたいってことは、よほど知られたくないモノがあるか……よほど守護りたいモノがあるかだろう。アンタの場合は、多分後者なんだろうな」

「本当にそうかしら。根拠はあるの?」

「眼を見れば理解るさ。ファインダー越しなら尚更な。今のアンタの眼は、どうやれば友人らに目を向けさせずにこの場を収めようかと考えている。俺にはそんな風に見えた」

 

 無言で姫矢を見つめ返すマリア。微笑ってはいたものの、彼の目測が当たっていた事をその沈黙が肯定しているようにも感じられた。二人が作り出す静寂、その空気の重さに思わず固まってしまう一同。だが先に言葉を発したのは姫矢の方だった。

 

「――理解った、写真を何処かに売ったり流したりするような真似はしない。カメラマンの誇りに賭けてだ。

 だから是非撮らせてほしい。アンタと、アンタがそうまでして守護ろうとしているものを」

「……貴方はまだ信用できそうね。だったら、最高の写真を撮ってくれないと承知しないんだから」

「任せてくれ。コイツ(カメラ)ぐらいしか取り柄は無いが、間違いなく最高の写真にしてやるさ」

「はいはーいッ! 話まとまったなら並んで並んでーッ!」

 

 憐の言葉でまた周囲の空気が明るく変わり、切歌と調に手を引かれてマリアも連れられて行く。そんな中、力強い笑顔で見つめる姫矢と楽しそうな笑顔で目を合わせる憐の姿に、マリアの脳裏で再度何かが走った。

 ……それは光が齎していた適能者(デュナミスト)の記憶。”姫矢准”と”千樹憐”、共に此処ではない何処かの世界であの光に選ばれ、適能者(デュナミスト)として死線を潜りながらも命を掴み取り邪悪から世界を守護り抜いて光を繋いできた者たち。

 だが、目の前で自分の友と触れ合う彼らは齎された記憶の中の【彼ら】とは別人だ。極めて近く、限りなく遠い存在に過ぎない。

 これはきっと光が齎した、ほんの僅かに交わった小さな小さな奇跡なのだと、マリアは独り心で思うのだった。

 

 

 輝く笑顔の溢れる写真は、後に全員に配られ其々の手元で飾られることになっていった。

 姫矢と佐久田は約束通り装者たちに関する写真や情報の流出をすることもなく、憐は変わらず遊園地の住み込みアルバイトとして訪れる人たちに笑顔を与えている。

 それが彼らの、この世界での在り方だった。

 

 

 

 更に数日後……メフィラス星人エルヴィスの指定した期限まで残り二日と迫っていた。

 藤尭朔也や友里あおいをはじめとするタスクフォースのブリッジスタッフの努力の甲斐があって、メフィラス星人が潜んでいると思しき座標の特定には成功。それにより偵察の任が必要だと弦十郎は考えていた。

 其処に立候補したのが大地とエックス、そしてエルフナイン。具体的な任務内容は、大地とユナイトせずに自身の肉体で顕現したエックスが改修したジオアラミスを持ち運び、其処へ同乗する大地とエルフナインが目的座標近隣に接近。データを集めると言う内容が提示された。

 エルフナインが出向することに心配から異を唱えるものも居たが、大地がジオアラミスの気密性を始めとした宙間機動力を公開したこととエックスの口添えもあって、エルフナインの希望は通されていった。

 そういった過程を経て、今現在エルフナインは大地の隣……実体化したウルトラマンエックスの手に乗せられているジオアラミスの助手席で、生まれて初めての宇宙空間をその小さな身体で味わっていた。

 

「――これが、宇宙……!」

「ああ。星々が輝き、光と闇が交錯と調和を為しながら広がっている無限の世界……それが宇宙さ。

 落っことさないでくれよ、エックス」

「任せておけ。ドライバーの安全を守護るのは私の役目だからな。シートベルトは外さないようにお願いします」

 

 まるで何処ぞのナビゲーションシステムのように話すエックスに、二人とも微笑みながら了解していく。すると、件の座標から通信電波が放たれてきた。すぐにエクスデバイザーで受信する大地。普段はエックスのバストアップが表示されているモニターに現れたのは、メフィラス星人エルヴィスだった。

 

「メフィラス星人ッ!」

『やあ諸君。君たちならここを嗅ぎ付けて来るだろうと思っていたよ』

 

 やはり少々嘗めた口調で拍手しながら返答するメフィラス星人。だが発するその言葉に敵意は見れなかった。

 

『私が指定した期限より48時間ほど前か。まぁ及第点と言ったところだな』

「メフィラス星人……貴様は本当に、この地球への侵略を開始するつもりか?」

『可能だ、という返答で良いかね?』

 

 押し黙る大地とエックス。その曖昧な返答では、何方に取れるか理解らなかった。その沈黙に口を挟んでいったのは、エルフナインだった。

 

「メフィラス星人さん……いえ、エルヴィスさん。響さんから貴方に、伝言を預かってきました」

『伝言? 私にかね』

「はい。 『また地球にやって来た時は、今度はみんなで一緒にご飯を食べましょうねッ!』……とのことです」

『それだけか?』

「はい、それだけです。確かにお伝えしましたッ!」

 

 その場に似つかわしくない可愛らしい笑顔でそう伝えるエルフナイン。そこに何かを疑うような気持ちは一切存在しなかった。その言葉に対し一考する仕草を見せるメフィラス星人エルヴィス。数秒の思考の後に、彼はまた彼らしく返答した。

 

『理解った。では私からと、立花響に伝えてくれたまえ。 『その時は、美味しいラッキョウを用意してこよう。楽しみにしていたまえ』――と』

「ラッキョウ……あの辣韭(らっきょう)、ですか?」

『ああ、あのラッキョウだ』

「分かりました、お伝えしておきますッ!」

 

 二人のやり取りを横で眺める大地。その一切の敵意を抱いていないやり取りに、自然と顔が綻んでいくのが理解った。異種族同士が手を取り合い絆で結ばれる世界……彼の夢であるそんな光景の一端が、異なる世界にも確かに垣間見えている。その事に喜びを感じながら、今度は大地がメフィラス星人との対話を始めていった。

 

「メフィラス星人、君は突然のように地球侵略についての準備と言ってあの場を離れたよね。だけど俺には……俺たちには、それがただの方便にしか聞こえなかったんだ」

『ふむ、どんな方便というのかね』

「俺やエックスとエルフナインちゃん、他のウルトラマンたちと装者の娘たち……みんなの為にわざと自分の立場を敵対者にして、みんなが一緒に居られる最後の時間を作ったんじゃないかって」

『もしそうだとしたら、如何するつもりなのかい?』

 

 メフィラス星人……エルヴィスの問い掛けに、大地は爽やかな笑顔で自らの素直な想いを投げ返していった。

 

「礼を言いたい。君がくれたこの時間は、みんなにとっても凄く大切な時間になった。かけがえのない想い出になった。それは、もちろん俺にとってもだ。だから、ありがとう。

 それと、もし良ければ……いつか、俺の生まれた世界にも来てくれないだろうか。俺も、友人として君を迎えたいんだ」

 

 それは大地の掲げる大きな夢でもあった。人類と怪獣、宇宙人との完全なる共存。偶然訪れた異世界なれど、その夢を叶える為に必要な何かをまた一つ得たような気持ちが大地の胸の中にあった。言葉を越えて繋がれる”なにか”の可能性を。

 それに対してエルヴィスは、やや少し意外そうにだが彼自身の率直な考えを大地に返答していった。

 

『……そうだな、私の興味が君の世界に向いたら行かせてもらおうかね。

 但し、侵略か友好か……私が何を目的として赴くかは、その時の気分次第だと思ってもらいたい』

「それでもいいさ。エルヴィスさん、俺は君を信じてる」

『その甘さに、何度も足元を掬われないようにしたまえよ』

 

 二人の対話はコレで終わり、また彼らの間に静寂が訪れる。

 エルヴィスは自らの円盤の中からジオアラミスを抱えるウルトラマンエックスと、その背後にある青い惑星を眺めながらそっと呟いた。

 

「――美しいな」

『美しい……?』

「ああ、あの惑星(ほし)は美しい。だから我々の種はそれを焦がれ欲したのかもしれんな。

 君らも――特にエルフナイン、君はとくとその眼に刻み付けておくと良い。其処に生きる者が本当に大切に思うべき、自分達の居場所の姿を」

 

 エルヴィスに言われ、ゆっくり手の中のジオアラミスを押さえたまま振り返るエックス。大地とエックス、そしてエルフナインの眼前には大きな地球の青く美しい姿が飛び込んで来た。錬金術を修めた叡智を持つ彼女に、それを遥かに超える衝撃を与えるかのように。

 ただ茫然と母なる青い地球(ほし)を見つめるエルフナイン。漏れ出したのは、心底からの感嘆の言葉だった。

 

「――綺麗、なんですね。地球って……ボクらの生きている世界って、こんなにも……」

「そうだね。この地球(ほし)は、こんなにも美しい。だから、みんなで守護らなきゃいけないんだ」

『エルフナイン、前に約束したな。私が自分の身体を取り戻したその時は、私の力で見せられるものを君に見てもらいたいと。この景色は、その最も足るものだった。

 君たちみんなが守護ったものが……キャロルと君たちの父親が愛した世界が、どんなものなのか。映像や資料ではなく、君自身の眼で感じてもらいたかったんだ』

 

 大地とエックスの言葉に耳を傾けながらも、エルフナインの眼は青い地球(ほし)に釘付けになっていた。身体の全て、細胞の一つ一つにこの感動を沁み込ませるように。

 

「……これが、【世界】……。パパが識れと言い遺したもの……」

『ああ。だが、まだこれは世界の表面という一部分にすぎない。まだまだ、識るべきことは多いな』

「……はい、まだまだこれからですッ! キャロルの分まで……ううん、キャロルと”一緒に”、もっとたくさんの世界を識らなきゃいけませんッ!

 それがボクの、望む未来ですから――ッ!!」

 

 明るく微笑む彼女に大地も嬉しそうな笑顔で返す。そして根拠のない確信を持つ。彼女ならば、きっと望む未来を手にすることが出来るのだと。

 そんな喜ばしい気持ちの中、エルヴィスの乗る円盤がその姿を現した。

 

『さて、では私も行かせてもらおうか』

「どういうことだ?」

『逃げるのだよ。私の居場所は君たちに暴かれた。それも侵攻予定時刻の48時間も前にだ。もし私が侵略に乗り出すと言うのであれば、君らは今、即座に私に対して降伏と投降を勧告するだろう。抑止力である三人のウルトラマンが率先してな。

 この地球(ほし)の防衛機能など私の手にかかれば容易いが、三人のウルトラマンと戦うのは望むところではない。何度も言っただろう、私は戦いが嫌いなのだよ』

 

 言葉と共に円盤から光が発せられ、包まれていく。

 

『さらばだ、地球人たち。ウルトラマンたちよ。私に【本当に大切なもの】を教え、この手を握り繋ごうとした愚かなれど愛すべき者たちに、よろしく伝えてくれたまえ』

「はいッ! エルヴィスさんもお元気でッ! お達者でッ!」

『――フッ、フハハハハ……ッ!』

 

 エルフナインが代弁した、みんなからの別れの言葉を聴いて笑いながら宇宙を飛び立つ円盤。一分も経たぬうちに光速へと至ったそれは、すぐに三人の視界から消えていった。

 

「……行っちゃったね」

「ですね……」

『余韻に浸る暇は無いぞ、二人とも。風鳴司令にこの事を報告しなければ』

「そうだな、エックス。

 ……風鳴司令ですか? こちらジオアラミス、大地です。データ収集任務の経過報告ですが……」

『大地くん、何かあったか?』

「はい。目標座標近辺にてメフィラス星人の円盤が放つ通信電波を傍受、対話を試みました。ですが……」

『どうかしたのか?』

「……僅かに会話する事は成功しましたが、その直後にメフィラス星人の円盤が顕現、発光と共に目標を消失してしまいました」

『……そうか、了解した』

「念の為俺たちは、このままエックスに乗せてもらって地球外縁を一通りチェックしてから帰投します。メフィラス星人との会話データは帰投後に其方へお渡しします」

『了解だ。くれぐれも、気を付けてくれ』

「了解ッ!」

 

 弦十郎との会話を終え、一息吐きながらヘルメットを外す大地。そのにこやかな顔に、エルフナインが尋ねていった。

 

「良かったんですか……? エルヴィスさんはきっともう、ボクらが補足出来ないところまで行ってると思うんですが……」

「だろうね。でもまぁ、今ぐらい良いじゃない。そうだろ、エックス」

『――ありがとう、大地。エルフナイン、せっかくの機会だ。地球を一回りして、見れるだけ見て帰ろう。最後まで、君との約束を果たしていたいんだ』

「……はいッ!!」

 

 エックスの率直な言葉に、エルフナインの顔が再度綻び破顔する。

 彼女の可愛らしく元気な返答の後に、ウルトラマンエックスはこの世界での最後の飛翔を始めていった。

 

 

 

 彼らが宇宙を飛んでいる中、cafeACEには調と切歌と星司が午後の一時をゆっくりと過ごしていた。テーブルの上には二つのトレーと三つのカップ。カフェモカとチョココロネ、キャラメルマキアートとメロンパン、そしてブレンドコーヒー。変わり映えの無い、三人のいつものセットだった。

 特に大きく言葉を発することもなく寛いでいる中、星司の脳裏にエックスからのテレパスが届く。それは同時に、学校で仕事をしていた猛にも届いていた。

 

「……そうか。メフィラス星人も去っていったか」

 

 星司が発した言葉は調と切歌にも届いており、二人とも星司の方をただジッと見つめていた。そんな二人に、星司はいつもの笑顔で優しく声をかけていく。

 

「どうだ二人とも、美味いか?」

「うん、いつも通り美味しいよ、星司おじさん」

「このお店に出入りし始めてそんなに経ってないはずデスのに、もう何個食べたか分からんデス」

「そっか。ありがとうな、俺のパンをいつも美味そうに食ってくれて」

 

 そんな何気ない感謝の言葉。だが二人とも理解ってしまった。

 時が来たと言うことを。ワガママで引き伸ばした時間にも、終わりが近付いているという事実を。

 だがまだそれを上手く言えず、どうしても当たり障りのない返答をしてしまう。

 

「ううん、お礼を言わなきゃいけないのはこっちだよ」

「今までいっぱい、美味しいパンを食べさせてくれたのは星司おじさんデスもん」

「いつも、私たちを助けてくれて……」

「いつもアタシたちの傍に居てくれて……」

 

 トレーに零れ落ちる涙。意識すまいと思えば思うほど、目頭は熱くなり涙が溜まっていく。ぽろぽろと、何度拭おうとも止め処なく……。

 

「あ、アレぇー……お、おっかしいデスねぇ……」

「止まらない……。止まって、くれない……」

 

 止まらない涙を拭っていく二人を見て、星司がゆっくりと彼女らに手を伸ばし優しく頭を撫でていく。二人の目線の先には明るい彼の笑顔。聞こえてきたのは、彼の優しい声だった。

 

「無理は、しなくていいぞ」

 

 その言葉が引き金になり、二人が同時に泣きながら星司へと抱き付いた。

 

「おじさん……おじさぁん……ッ!」

「寂しいデス……ッ! やっぱりおじさんがいなくなるの、とってもとっても寂しいデス……ッ!」

「……馬鹿野郎、俺は居なくなるんじゃない。また何処かの世界で、誰かの笑顔を守護りに行ってくるだけだ。みんなが優しさを失わず、弱い者を労り、互いに助け合い、何処の世界の人たちとも友達になれるような……そんな世界を守護りに行ってくるんだ。今までずっと、そうしてきたようにな」

「分かってるんデス……。仕方ないって……ずっと一緒には、居られないって……。でも、でもぉ……ッ!」

「でも、それじゃあもう……星司おじさんと、会えない……ッ!」

 

 分かっているのに溢れ出して止まらない想いを只々ぶつける調と切歌。そんな二人を抱き寄せながら、子供をあやすかのように優しく頭を撫でつつ星司は優しく語り掛けていく。

 

「大丈夫だ。夕子も言ってただろう? 想いが共に在れば、どんなに離れていてもずっと近くで感じられる。俺はお前たち二人の想いを受け取っていたし、俺の想いは俺を支えてくれた【二人の愛娘】に全部託したつもりだ。

 お前らがそれを受け取っていてくれていれば、離れていても繋がっていられる。いつだって傍に感じられるはずだ。

 俺はずっと二人の傍に居る。そのウルトラリングが、輝く限り」

 

 涙を流しながらただ頷く調と切歌。その口からは今まで思っていたけど口に出来なかった言葉が自然と溢れ出した。

 

「おじさん……ううん、おとう、さん……ッ!」

「ホントじゃなくても……星司おじさんは、一番のおとーさんデス……ッ!」

「ありがとうな。お前たちがそんなにも()しんでくれるから、俺は胸を張って兄弟の元に帰っていける。みんなに二人の事を自慢できるぞ。本当の家族じゃなくっても、俺には自慢の娘が二人も出来たんだってな。

 ……だから、俺が行く時は一番の笑顔で見送ってくれ」

 

 うんうんと頷き続ける二人を、星司は優しく撫でながら抱き締め続けた。

 それが、彼女たちにしてあげられる最後の事だと思いながら。

 

 

 

 

 同時刻、リディアンの校内では一つの喧騒が終わったところだった。正確には一つの教室で、だが。その中心に居たのは、夏休み明けから講師として教鞭を奮っていた男、矢的猛だった。

 臨時の講師である以上いつかこの学園を離れるのは当然であり予定の内にあったことなのだが、彼の予想を遥かに超えて自らが受け持った三回生たちが彼との別れを惜しんでいたのだ。しかもその離職予定日が、時期としては非常に中途半端な卒業式の数日前。惜しむ生徒の誰もが口を揃えて『どうか卒業式には出て下さい』と嘆願しにくるほどだった。

 猛自身、それについては感激するほどに喜びながらも同時に強く悔やみながら、『一身上の都合でどうしても……』と断り続けていた。

 だが彼は知らなかった。いくらリディアンが、若干なれど閉鎖的な面もある女子高であろうとも、18歳のうら若き女生徒が持つ底知れぬそのパワーを。

 

 【出れなけりゃ やってしまおう お別れ会】

 

 そんな標語を掲げた一部の三回生たちが主導となって【矢的猛先生壮行会】を企画、開催にこぎ着けたのだ。僅か一週間で。

 そうして卒業前で授業も残り少ない時期にあった今日、猛にはサプライズとして参加してもらったという流れである。無論、その中に雪音クリスの姿もあった。

 喧騒の中で突如泣き出す生徒も現れた。曰く、進学も就職も上手く行かず途方に暮れていたところを猛が誰よりも親身になって助けてくれたと。そんな先生との別れが悲しくて思わず……と。一人が零した涙はやがて連鎖し、参加した生徒の半数以上が泣き出すという思いがけない状態にもなった。

 折を見て全員に感謝の言葉を告げ、皆の未来に幸多からんことを伝えると共に頭を下げる猛。そんな彼への盛大な拍手と花束贈呈で、壮行会は幕を下ろした。

 

 そこから少し間を置いて、なんとか抱えられる程の贈り物を持った猛は独り生徒指導室に立ち寄っていた。静かな室内に響くノック音。優しく『どうぞ』と返す猛の前に現れたのは、クリスだった。

 

「……やあ、クリス」

「……ありがとな、センセイ。わざわざあんなのに出てくれるなんて」

「何を言うんだ、せっかくみんなが私の為に用意してくれたんだ。とても……とても、嬉しかったよ」

「……そっか。そう言ってくれりゃ、みんな喜ぶな」

 

 それだけ言って、会話が止まる。静寂の中、つい言葉を探し出すクリス。だが、やはり先に口を開いたのは猛だった。

 

「クリス。――思い出は、たくさん出来たかい?」

 

 猛のそのたった一言に胸が詰まり、頭の中でリディアンで過ごした二年間のありとあらゆることがフラッシュバックするように思い出されてくる。

 知らない何かを学ぶ楽しさを得て、気兼ねなく楽しく歌える喜びを得て、親愛なる仲間と友達、先輩と後輩を得て――。たくさんなんて言葉じゃ安すぎるほどに、数多の思い出がクリスの中に刻み込まれていた。

 そしてその中に、眼前の優しい顔を絶やさない男の姿も有り……――気が付いたら、クリスの眼には大粒の涙が溜まっていた。

 

「――な、なんでだよこんな時に……ッ! なんで、アタシ……」

 

 乗り越えたはずだ。夢と現実の狭間で動けずにいたあの日はもうとっくに。なのに何故こんなにも未練や哀惜が押し寄せて来るのか。そんな戸惑うクリスの頭を、猛が優しく撫でていった。いつもの優しい笑顔のままで。

 

「良かった、たくさん出来てたんだねクリス。君が、君の夢へと進む為の糧が」

「夢へ、進む為の……?」

「ああ。世界に流れる矛盾だらけの風にその足を掬われても、その胸に詰まったかけがえのない想い出が夢へと進む道標になる。

 クリスなら、見えない明日にでも恐れず踏み出して迷わずに進んで行けると信じてる。君の瞳には、きっと未来が映っているはずだから」

 

 猛が今まで何度も言ってくれた激励の言葉。だが理解っている。もうこれが、”矢的先生”から貰える最後のメッセージなのだと。

 最後まで自分を信じて言葉を贈ってくれる。そんな恩師に応えなければならないと思った。優しく頭を撫でる猛の手の温もりを自分から振りほどき、拭えども溢れ止まらぬ涙と共に、決して言葉を詰まらさぬように……クリスは思い切って、心からの言葉を彼に放った。

 

「アタシ、絶対に夢を叶えますッ! だから……もう傍に居られなくても、二度と会えないぐらい遠くに行ったとしても……どっかで見守っててくださいッ!

 ――矢的猛、先生。短い間でしたが、本当に……本当に、ありがとうございましたッ!!」

 

 大きく一礼するクリス。そんな彼女の小さな手を、猛が強く握り締める。

 顔を上げると其処には、今まで見たことのない程に喜びを前面に出した猛の笑顔があった。彼のその眼尻には、クリスと同様に涙を浮かべていた。

 それ以上の言葉は要らない。二人互いにこの世界で出会った意味が、握り合った不器用な手と手の内にある。それが理解ったのだから。

 

 

 

 

 

 ……そしてその日の夜にエックスと大地、エルフナインが帰還。申し合わせていたかのように装者全員と星司、猛が彼らを出迎えた。大地が弦十郎に報告と会話データの転送を済ませ、何も変わらぬ最後の夜を過ごす。

 そして翌朝……。埠頭にて、昇る朝陽を背にしながら北斗星司、矢的猛、大空大地の三人がタスクフォースの一同と向かい合って立ち並んでいた。彼らを前に先ず声を発したのは、司令である弦十郎からだった。

 

「皆さん、この度のご協力、本当にありがとうございます。今こうして変わらぬ朝を迎えられているのも、皆さんのお力添えのおかげです。

 国連を、S.O.N.G.を代表して……そして私個人としても、最大の感謝を贈らせていただきます。本当に、ありがとうございました」

 

 真っ直ぐ深々と頭を下げる弦十郎。それに続くように他の者たちも星司たちに対して姿勢を正し深く頭を下げていく。それに対し慌てることなく、星司たちも言葉を返していった。

 

「こちらこそ、みんなには世話になった。……だから、顔を上げてくれ。俺たちは最後まで、みんなの顔をこの眼に焼き付けておきたいんだ。本当に感謝すべき、大切な仲間たちの姿を」

「”サヨナラ”は終わりではなく、新しい想い出の始まり……次の扉を開く鍵だと言います。今日までの想い出を糧に、新しい道への第一歩としましょう。みんな、どうかお元気で」

『本当に、みんなには感謝の念しかない。最初は大して役にも立てなかった私だが、それでもみんなは私を仲間と受け入れてくれた』

「俺もそうです。本当に短い時間だったけど、この世界でみんなに会えて、一緒に戦って、仲間として受け入れて貰って……。自分の夢に繋がる大切な何かを新しく見出せたと思います。

 みんなで掴んでいきましょう、それぞれの未来を」

 

 四人の言葉が終ったところで、全員が朝日の方へ向く。そして星司は両腕を天に掲げるように伸ばし、両の拳を打ち付け合う。猛は腰に携えたブライトスティックを天に掲げ、手元のスイッチを押す。大地はエクスデバイザーをXモードに変え、顕現したエックスのスパークドールズをデバイザーでリード、天に掲げる。

 三つの光が輝くと共に、タスクフォース一同の眼前にウルトラマンエース、ウルトラマン80、ウルトラマンエックスの三人が雄々しく佇んでいた。そこへ、彼らと共に戦い繋がった少女たちが万感の思いを込めた声を彼らに向けて贈っていった。

 

 

「エックスさんッ! 大地さんッ! ボクに色んなものを見せてくれて、教えてくれて、ありがとうございましたッ! そしてこれからも、もっとたくさんの世界を識っていきますッ!! だから、またいつかお会いしましょうッ!!」

 

 

「星司おじさぁーんッ! 今まで、本当にありがとぉーッ!!」

「気を付けて、お仕事行ってらっしゃいデェースッ!!」

 

 

「センセェーイッ!! ……アタシ、頑張るからさッ! センセイみたいに、センセイに負けないぐらいにッ!!」

 

 

「みんなありがとうッ! 共にこの世界を守護ってくれて……この世界に生きる人々を、愛してくれてッ!!」

 

 

「どうかご壮健でッ! 皆様のことは、決して忘れませんッ!! そしていつか、必ず皆様にも追い付けるよう努力いたしますッ!!」

 

 

「北斗さんッ! 矢的先生ッ! エックスさんッ! 大地さんッ! 先に行っちゃったけど、ゼロさんもッ! みなさん、どうもありがとうございましたぁぁぁぁッ!!!」

 

 

 彼女らの声をすべて受け止めた後、三人のウルトラマンは全員を見回し、それぞれ首肯し合う事で言葉もなく理解り合う。そして一斉に飛び立った三人の巨人たちは、愛する仲間たちに見送られる中で光と化して地球を後にしていった。

 

 

 こうして、光の巨人(ウルトラマン)たちは飛び去って行ったのだった。この世界に生きる人々の、愛する人たちの未来を信じながら……。

 

 


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