絶唱光臨ウルトラマンシンフォギア   作:まくやま

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EPISODE 23 【其の名は”破滅”】 -A-

『――ウルトラギアッ!!! コンッバイイイイイイインッッ!!!!』

 

 咆哮と共に掲げられるマイクユニット。エルフナインとエックスが生み出したそれは、”ウルトラマン”に適応装備されるように改良を加えた、”人と光と歌”の三つのユナイトに他ならない。

 各々の胸に突き立てられる楔は魔剣の聖遺物ダインスレイフの影響によるもの。内なる闇を解放し、それを装者とウルトラマンたちで制御することで……闇を抱いて光となる、彼女らの手の内にある最大の対抗兵装なのだ。

 ウルトラマンゼロは天羽々斬の蒼穹の光に立ち昇らせ、ウルトラマン80はイチイバルの紅蓮の光を解き放ち、ウルトラマンエースはシュルシャガナとイガリマの緋翠の二色の光を螺旋の如く纏い、アンファンスに戻ったウルトラマンネクサスはアガートラームの白銀の光に包まれ、ウルトラマンガイアはガングニールの黄金の光で天を貫いた。

 

 

 放たれる六つの光が収まった其処に起つ者たちが居た。

 先史文明期より逸話として遺されし、神聖なる者が奮いし神器……聖遺物。その僅かな破片より生み出した、選ばれし人間の”歌”と共振することで励起する力――シンフォギア。

 そして遥か遠く、光の国から正義の為にこの世界へと光臨した巨人。この地球の生命の光そのものが姿を変えた巨人。光の絆を受け継いていくが為に人へ渡り宿る巨人。総称――”ウルトラマン”。

 二つの異なる奇跡の力が、”人”と繋がり重なることで生まれた存在。”FG式回天特機装鉄鋼”……ウルティメイト・フォニック・ギア・テクターを纏いし五人のウルトラマンと、二つの光の結晶であるベータスパークアーマーを鎧うウルトラマンエックスが、暗黒魔鎧装を纏うエタルダークネスとそれが率いるイズマエル、巨大ヤプールたちの前に起ち上がったのだ。

 その威容を見つめ、忌々しく歯軋りするように息を吐くエタルダークネス。隠せぬ怒りと苛立ちのままに、激しい声を上げた。

 

「何処までも俺の前に立ち塞がるか、ウルトラマンよッ! ニンゲンよッ!!」

「『ッたりめぇだッ! テメェらみたいな悪逆が世に跋扈する限り、我らは幾度でもその前に立ち塞がるんだッ!!』」

「『私たちは人を、この世界を守護る為に此処に起っていんだ。悪党如きに持っていかれるワケにはいかないのだよッ!!』」

『「『マイナスエネルギーなんかに負けん……。お前を斃して、それで全てを終わりにする、デスッ!!』」』

「ほざくかぁッ! 光など……絆など、全てこの闇で破壊してくれるッ!!」

「何度その闇で満たそうとも、何度でも輝いてみせる。それが光……絆なのだからッ!!」

「そしてどれだけ壊れようがその度に強く繋がっていくッ! だからッ!!」

「私たちは貴様を討ち倒すのだ、エタルダークネスッ!!」

 

 全員分の啖呵を浴び、憎悪と憤怒と怨嗟が激しく高まっていくエタルダークネス。漆黒の鎧からは悪しきマイナスエネルギーが噴出し、隣に居る巨大ヤプールとイズマエルもそれに中てられたかのように狂乱の叫び声を上げた。

 爆裂するように高まる瘴気と絶えず輝きを続ける燐光。先に動き出し駆け始めたのはエタルダークネスたちだった。

 それに対しウルトラギアより……否、ウルトラマンたちより、共に在る歌巫女たちの胸の内より歌が始まり流れ出す。鼓動が高まり溢れ出す。その希望の音を、昏き世界に響き鳴り渡れと言わんばかりに厳かに。

 彼女らの魂に受け継がれ刻まれた、”生きることを諦めない”という信念。其れを熱く燃える夢の幕開けに示せと。爆ぜる光と共に纏いしこの奇跡に――紡ぎ歩んだこの軌跡に嘘は無いと、六重奏と化した【燦然たる力(RADIANT FORCE)】を叫ぶように歌い出した。

 

『……なんで、歌をッ!?』

「遅れるなよ大地ッ! これが彼女たちの……シンフォギアを纏う戦姫たちの真の戦い方だッ!!」

 

 

 

 

 

「『ヤプールッ!! 貴様の相手はッ!!』」

『「『因縁的に、俺たちが相手をするッ! デェェスッ!!』」』

 

 巨大ヤプールの鎌のような右腕から連続で光弾が発射される。それをまるでスケートのように滑らかな動きで回避していくウルトラマンエース。地面を抉りながら背後に周った瞬間、巨大な長刀を携え真向に振りかぶったウルトラマンゼロが襲い掛かった。

 それを右腕の鎌で受け止める巨大ヤプール。その対側から加速を乗せた一撃を叩き込もうとエースの拳が唸るが、捕まえる巨大ヤプールの掌は意外なほどに頑丈だった。

 

「『ッ!!』」

『「『コイツ……ッ!!』」』

「――ワレ、は、ヤプール……。スベてのチョウジュウの、オンネンを……ゾウオのタマシイを、このミに――」

 

 不完全な魂をしながらも呟くようにたどたどしく声を発する巨大ヤプール。そのおぞましい姿は、見るものが見れば恐怖で自身の動きを止めてしまうだろう。だがウルトラマンゼロと風鳴翼は、ウルトラマンエースと月読調と暁切歌は、そんなもので怯むはずがなかった。

 ウルトラギアで爆裂するフルパワーを出しながら押し切ろうとしていると、巨大ヤプールにも変化が訪れる。眼が怪しく光ると共に、右手が長い鞭尾のように伸びてゼロの長刀を弾き叩き付けた。一方でエースの拳を掴んでいる左腕も筋肉が隆々とした緑色のヒレのような姿に生まれ変わり、掴んだ拳を振りほどくと共にその胸へ力強く叩き付けるのだった。

 思わぬ反撃に地に膝を付き見上げると、巨大ヤプールはその肉体を更に異形へと変化させていった。上半身は更に肥大化し下半身には巨大な後半身が生まれ脚部は節足動物のような太い六足歩行へと変化していく。口の部分も怪獣のように長く伸び、大きく開いていった。

 

「『なにが、どうなっていやがるッ!?』」

『「『ベロクロン、キングクラブ、ドラゴリー、バラバ、Uキラーザウルス、ジャンボキング……この世界で俺たちが斃した全ての”超獣”の因子が、全部まとめてアイツに混ぜこぜになってるようなもの、デスか』」』

「『芸のない合体超獣……と言うよりももっと歪な、不完全な合成獣(キメラ)だな……』」

「ワレは、ヤプール……。キラー、フルトランス……ッ!!」

 

 再度の呟きと共に上半身の棘から生体ミサイルを斉射するヤプール。即座にエースがシュルシャガナの大鋸を展開し、その爆発からゼロをガードする。そしてその爆炎を斬り裂いて突進するゼロ。超高速で奮われる刃の連撃にヤプールは防御するしかなかったが、後半身より放たれた破壊光線がゼロを直撃、その身体を吹き飛ばす。

 だがすぐさま空中で受け身を取り、額の前で思念を込めて長刀を突き出すと、頭部から遠隔操作の出来る翼の如き刃が発射された。

 

「『まだだッ! ハバキリゼロスラッガーッ!!』」

 

 二本の翼状の刃がヤプールに襲い掛かるが、それと同時に頭に生まれた鋭利な刃が射出。ハバキリゼロスラッガーと打ち合う形でせめぎ合う。バラバの頭部の刃と同様に、ヤプールの脳波で自在にコントロールできるのだ。

 スラッガーと同時に長刀で再度襲い掛かるゼロに、鉄球の付いた剛力の左腕で受け止め殴り付けて反撃していった。

 一方でエースも自らのアームドギアを展開し、攻め込む姿勢を整えていった。

 

『「『エースブレードッ!天鋸式・へェLL裁Zぅ(てんきょしきヘルサイズ)ッ!!』」』

 

 大鋸と巨鎌。長い柄が伸びた二つの刃を携えたエースが、脚部ローラーを活かした高加速と共にヤプールへ襲い掛かる。だがヤプールはそれも察しており、頑強な甲殻を纏う尾のように伸びた右腕を自在に動かして疾るエースを攻め立てた。

 大鋸と激突する甲殻は嫌悪感を齎す甲高い音を立てながら拮抗。なればとその根元に巨鎌を突き立て引き落とし、先ずは右腕から解体した。しかし切られた腕は意志を持つかのようにエースの身体へと巻き付き締め上げる。

 

『「『ぬ、ぐううぅ……!』」』

「『野郎ッ! 斬り裂けスラッガーッ!!』」

 

 ゼロの命令でエースに巻き付く甲殻触手を節々で斬り離していくハバキリゼロスラッガー。なんとか自由は取り戻したものの、意志のあるように動く触手は再度合体、右腕と戻って行った。

 ヤプールの眼が輝くと同時に放たれる、生体ミサイルと火炎放射、後半身からの破壊光線の同時発射。乱れ撃たれる攻撃に晒され、二人のウルトラマンは怯み退がってしまっていた。

 

「『やるじゃないか……。どうしようもなく我らをブチ殺したいようだ』」

『「『恐ろしいまでの怨念……。傀儡と化してもヤプールの本質は変わることが無いんデスね』」』

「コロす……ウル、トラマンを……ミナ、ゴロす……ッ!!」

 

 ベロクロンを模した口から超高熱火炎を発射するヤプール。同時に下半身部分のUキラーザウルス・ネオを模した結晶部分からも極太の破壊光線を発射した。

 

「『――ッ! ゲキリンゼロディフェンダーッ!!』」

 

 ゼロの声と共にブレスレットが光を放ち変形、巨大な幅のある剣を生みだし盾と為した。それに合わせるように、エースもウルトラネオバリヤーを発生させると同時に裏γ式による四枚の回転鋸を盾として形成。ヤプールの攻撃を何とか食い止めていった。

 しかしヤプールもまた生体ミサイルの斉射を追加で放ち、防光壁を越えてゼロとエースに打ち付けられていった。

 

「『ッそお! しつこい上に強いとは、なんともッ!』」

『「『だが負けん……負けないッ! 負けてやるものかデスッ!』」』

 

 荒れ狂う咆哮を上げるヤプールに、再度奮起したゼロとエースが接近戦を挑んでいった。

 

 

 

 それと同じくして、最強と謳われるスペースビースト・イズマエルに対しては80とネクサスが対峙していた。

 まるでイチイバルの乱射のように放たれるウルトラアローショットを背に、アームドギアである騎士剣を携えて駆けるネクサス。イズマエルの放つ光弾や熱線が赤い弓状光と衝突し爆炎が起きる中を突っ切り、振り下ろした。

 

「『決まったかッ!?』」

『――く、ぐうぅぅ……!!』

 

 鳴り響いたのは重たく硬質的な音。白銀の刃の先にある、甲虫のような顔がネクサスに向けられていた。左肩に有るグランテラ、その超硬質の甲殻なる因子がネクサスの攻撃を防いだのだった。

 次いで右脚で蹴り付けると同時に膝から触手が伸び、電撃がネクサスに直撃するとともに跳ね飛ばされた。

 

「『野郎ッ! 加勢するぞッ!』」

 

 空中を大きく捻り回転して飛ぶ80。大型化したヒールで空中からの踵落とし、着地と共に連続蹴りを放ちイズマエルをネクサスから遠ざける。そのまま彼女を庇うように前に立ち、胸の前で両手を構え腕を伸ばし赤き光の槍を生み出した。

 ZEPPELIN RAYLANCEを発射、分割して攻め立てる80だったが、鳴き声と共に一瞬でその姿が透明化。クラスター弾の全てが空を切るように貫通していく。驚きも束の間、背後より出現したイズマエルが右手の巨大な爪で80の背を切り裂いた。

 

「『なに……ぐあぁッ!?』」

 

 思わず転がる80に連続で振り下ろされる爪。だがそれを、借りは返すとばかりに颯爽と割り込み白銀の剣で受け止めたネクサス。左腕のガントレットを沿わせながら剣を振り抜き、大型化した光刃であるパーティクルフェザーでイズマエルをなんとか迎撃した。

 そしてすぐに80を立ち上がらせるが、周囲の空間が歪んでいる事に気付く。四方より様々な鳴き声を上げながら僅かに映っては消えるイズマエルの姿を警戒し、二人背中を合わせていった。

 

「『一体全体、何がどうなっているというんだ……!』」

『イズマエルは全てのビーストの能力を有している。単純に強力な攻撃から、位相差への移動や幻覚による強襲……その攻撃は多岐に渡る……ぐうぅッ!』

 

 マリアの言葉と同時に噴霧される赤色のガス状のもの。体表に触れた瞬間に燃え上がり、二人は炎に包まれる。それと同時に浴びせられる電撃がガスと反応を起こし大爆発となる。ウルトラギアで防御力は上がっているものの、そんな攻撃を喰らわされてただで済むはずがない。

 思わず膝を付く両者。其処へ更に追い打ちをかけるべく、先端に凶悪な顎の付いた触手で食らい付こうと伸ばしていった。その刹那。

 

『そこッ!! クリスッ!! 先生ッ!!』

「『よし、ッしゃらあああああッ!!』」

 

 ネクサスが触手を捉えた瞬間、80が両腕をガトリングガンに変形させて触手の根元へと一気にトリガーを引く。確かな手応えを示す火花が散る中で空間の歪みは解消され、その一点には光弾の連続攻撃を受けて叫び声を上げるイズマエルの姿が在った。

 ダメージによる隙を突き右の拳による一撃、後ろ回し蹴り、輝く左腕によるアッパーカットを打ち付けるネクサス。吹き飛ばされるイズマエルはすぐに立ち上がり、怒りのままに全身から放てるだけの光弾や光線を一斉発射していく。

 なんとかそれぞれの光壁で対応するモノの、イズマエルの攻撃には防ぐだけで精一杯。更に腹部から糸状の光線を吐き出して二人を拘束し、其処からの接近戦でも不利を強いられてしまっていた。剥がれぬ拘束から頑強な両腕の攻撃を受け続け、為すがままだった。

 

「『最強のビースト……その名は伊達じゃねぇってことか……!』」

『だが、それがなんだと言うものか……ッ!』

 

 ネクサスが左腕のガントレットに力を込めて普段より巨大なシュトロームソードを形成。80も腰部のアーマーを展開させて小型の光子ミサイルを自らの周囲で炸裂させることでそれぞれが自らに為された拘束を断ち切り破った。

 そして同時に駆け寄り、ネクサスがその輝く左腕でイズマエルの腹部を殴り付け一足跳びから脳天へ右手刀をぶつけていく。そこに合わせる形で80の足底がイズマエルの脇腹にめり込み、ふらついたところで同じ場所に膝蹴り、延髄切りへと繋げていく。

 其処から息吐く間もなく、80は両手のアームドギアをクロスボウに変化して強化されたウルトラアローショットを連続発射。ネクサスも力の高められたパーティクルフェザーで同時に光の嚆矢を発射した。

 怯み後退しながらも、イズマエルから感じられる獰猛な戦意は変わることが無い。闘争と捕食の思考しか持たぬスペースビーストであるが故に、その精神に感情らしい感情は持ち合わせておらずただひたすらに敵を殺すと言う単純な殺意だけが煮え滾っていた。

 だが相対する80とネクサスにも変わるところは無い。何故ならばウルトラマン80はマイナスエネルギーの専門家、ウルトラマンネクサスはビーストの駆逐者なのだから。

 

「『貴様の存在、否定するのが私たちってことだ……ッ!』」

『最強だろうとなんだろうと、私たちは人の心を傷付け喰らうビーストを殲滅するッ!!』

 

 互いに声を張り上げながら突進する。組み合った瞬間、周囲が爆発するかのように弾け上がった。

 

 

 

 そしてエタルダークネスに対し、ガイアとエクシードエックスが近接戦を仕掛けていた。

 脚部ブーツからバーニアを爆発させての超加速で一気に懐に近付き左右剛拳での連撃を打ち付け、一瞬の怯みに合わせてエクシードエックスがベータスパークソードで斬り付ける。そのたった一撃に合わせて今度はガイアの膝が跳び込まれ、後ろ回し蹴りまで繋がっていった。

 

『まだまだぁッ!!』

「続くぞ、大地ッ!」

『ああッ!』

 

 拳と剣の連撃が続く。暗黒の鎧から何度も火花が散り、一見するとエタルダークネスに対して攻勢であると見て取れる。だがヤツは倒れない。二人のウルトラマンの猛攻を受けてもなお、暗黒の瘴気を鎧から溢れさせながら受け続けていたのだ。

 

「効かんぞッ! そんなものはぁッ!!」

 

 全身から瘴気を爆発させると共に光弾を乱射するエタルダークネス。その一撃で怯んだ隙を突き、双方に刃を持つダークネストライデントでガイアとエクシードエックスに連続で斬りかかっていく。

 敢え無く攻撃を受ける二人だったが、伸びる剣閃の一撃を見切ったガイアがトライデントの柄を受け流し軌道を変更。其れを軸に飛び上がり、即座に変形させたブーストナックルでエタルダークネスの顔面へ撃ち放った。

 

『ここならあぁぁッ!!』

 

 重たい音と共に顔を歪ませるエタルダークネス。だがガイアの攻撃は其処で終わらず、変形した拳はそのままピストンのように撃ち付けられ腕の内に高まったエネルギーを放出した。

 確実に怯むエタルダークネスではあったが、その動きは止まらない。ダークネストライデントをガイアに突き上げ、零距離からレゾリューム光線を発射したのだ。

 

「がああああッ!!」

「響ッ!!」

 

 吹き飛ぶガイア。エクシードエックスが駆け寄ると、その胸元にダメージは見えるものの自分の身に起こったような分解現象はほとんど見られなかった。恐らくは、ウルトラギアに用いられているシンフォギア……聖遺物が守護ってくれていたのだろう。

 其処から追い打ちするように放たれる暗黒光弾に、エクシードエックスはベータスパークソードを用いたバリヤーを展開し辛うじて防いでいく。

 彼が携える光の巨人の力を宿した剣でも、ウルトラマンガイアの……立花響の握られた機械仕掛けの拳(アームドギア)でも、確実に攻撃は通っているはずだ。だがそれでもエタルダークネスの驚異的な強さに陰りは見えない。暗黒の鎧から溢れるマイナスエネルギーから為るものなのか定かではないにしろ、その力は無尽蔵に溢れているようにも感じられていた。いや、それはエタルダークネスだけではない。隣で戦うイズマエルも、異形と化したヤプールも、それぞれが圧倒的な力で襲い掛かっているのだ。まるで、魔王獣と同等の力を以って。

 

「それも、アーマードダークネスの力に依るものか……ッ!」

「その通りだッ! マイナスエネルギーの凝縮されたこの肉体、ヤプールとスペースビーストとを巡るこの連環ッ! 三つの巡る力こそがぁぁぁッ!!」

 

 アーマードダークネスを中心に連環するマイナスエネルギーの螺旋と奔流。それこそが力の源だとエタルダークネスは高らかに吼える。だがそれは決して彼女たちの想いを削ぐものなどではなかった。

 

『そんなものなんかでェェェッ!!』

『俺たちの重ねた力がッ!』

「負けてたまるものかァッ!!」

 

 脚部バンカーを地面に撃ち、超速でエタルダークネスへと肉薄。ダークネストライデントを打ち払い確実な位置で足を止めたと同時に右の拳を叩き付け、其処から身体を捻り切るように肘打ち、零距離から肘を突き上げる裡門頂肘を鳩尾の隙間に撃ち込む。そして締めに双掌打からのバンカーと化したガントレットを押し込み必殺のエネルギーを叩き込んだ。

 吹き飛ぶエタルダークネスに合わせるよう、即座に追いつくエクシードエックス。縦に横にと連続で奮われるベータスパークソードの青く輝く剣閃が暗黒の鎧を切り付けていく。そして先に着地したエックスが剣を構え直し、外へ大きく振り抜いた。

 火花を散らし倒れるエタルダークネス。ガイアとエクシードエックスの諦めぬ猛攻、その勢いは他の者たちにも伝播していき、持てる力の全てを解き放っていく。

 

 

 

 それはヤプールと相対するゼロとエースも同じであり――。

 

「『そうだッ!! 最早我らのビッグバンの如き勢いは、貴様なんぞには止められねぇッ!!!』」

『「『貴様のその因子、その怨念ッ! 一片たりともこの世界に遺しはしないッ!! デェェスッ!!』」』

 

 絶対に未だ見ぬ日へと往く為に、障り害する総ては我らのその刃で切り裂かん。

 絶対に信じ合う想い……其処に不可能はなどは無く、それは何よりも心を強く固め、高める唯一無二のモノであり――。

 

 滾る力と共にゼロが思念で操るハバキリゼロスラッガーで怪光線を放つバラバの刃を砕き散らせる。そして巨大化した天羽々斬のアームドギアにより、零距離で叩き付けるように放った蒼ノ一閃でそのまま鉄球と化した左腕を破壊した。

 逆側から攻めるエースもシュルシャガナの鋸を象ったエースブレードを奮いキングクラブの尾の如き甲殻触手を節から復元させぬよう微塵に伐り刻んでいく。そこからその場で脚部ホイールにより大きく回転しながら、Uキラーザウルス・ネオを模した節足をエースブレードの逆側――イガリマの鎌で薙ぎ払いまとめて切り裂いた。

 バランスを崩し、傾き倒れるヤプール。その隙にゼロが既にヤプールの背後に立っており、ジャンボキングの後半身、中でも破壊光線を発射する器官を斬り落とす。それでもと生体ミサイルと火炎放射を発射しようとするヤプールだったが、その動きが取れず痙攣するように震えている。見ると巨大な影に向けてハバキリゼロスラッガーが深く突き刺さっており、それが影縫いとして機能していたのだ。

 それを見た瞬間、エースは携えるエースブレードを分割、両腕を下向きに組み合わせると共に腕部装甲へと変形、両腕を天に向かって仰ぐように伸ばした。緋と翠の力がウルトラホールを通じて強く激しく増幅されていく。

 同時にゼロは天空高く舞い上がり、もう一本アームドギアを出現させて二刀一刃と化し廻転と共に蒼雷が刃鳴散らす。脚部のブレードからはまるで翼のような轟炎を噴き上げ、それを加速材料としてヤプールへと吶喊した。

 

『貴様の総てを(切 伐)り刻み裂いて、絶ぇ対にブッ千切ィィィるッ!!!』

 

 大きく振りかぶったエースの右腕から離れた超光速の廻刃がヤプールの頸部へと吸い込まれるように入り込み、その場で尚も回転を続け無限に肉体と魂を切り伐り刻む必殺技である【暁星×夕月光(ぎょうせいゆうげつこう) スP詠sS・ギRぉ血nn処ッtOoぉ(スペース・ギロチンショット)】を解き放つ。

 身動きの取れなくなったヤプールに擦れ違うように雷刃を携え炎翼はためかせるゼロが飛翔(かけ)抜けた。雷炎の刃羽(やいば)による一閃を放った後、双刃のアームドギアを腕部装甲へと変形。流れるように構えを取り【煌輪絶破(こうりんぜっぱ)・ハバキリゼロショット】を発射した。

 終わり無き伐切を斬り伏せ終わらせるかの如く放たれた光の刃を受け、もがきながらヤプールが薄く声を上げる。

 

「おのれ、ニンゲン……ウルトラ、センシ……。……だが、ハルかなるトキをヘて、ワレはイクタビでもヨミガエる……。

 ――”ハメツ”のミライで、マっているぞ……。ク、ハハハハハ……」

 

 断末魔と言うには余りにも静かなヤプールの最期の声。だがそこに誰もが一切の耳を貸すこともない。ゼロとエース、翼と調と切歌、鍛えし刃を持つ者たちの光が交わり合った瞬間、ヤプールの紅い肉体は完膚なきまでに微塵へと刻み込まれその場で大爆発を起こし散った。

 

 

 

 イズマエルと相対する80とネクサスもまた――。

 

「『貴様ような邪悪なマイナスエネルギーに満ちた怪獣は、私たちが斃すッ!!』」

『この世界に、貴様のような存在は必要ないッ!!』

 

 咆哮するイズマエルの放つ光弾を80がその紅い矢で相殺させていき、口から吐き出される炎はネクサスが左腕のガントレットを巨大化、盾と化して受け止めながら突進していく。右手には大型の両刃剣と化したアームドギアを携えており、射程距離にまで近付くと炎を掻き消し白く輝く大剣で縦に一閃した。

 火花を散らし鳴きながら後退するイズマエルに向かって、ネクサスの背後から巨大な光のミサイルが二つと小型の誘導ミサイルが襲い掛かる。80の追撃にネクサスは高く跳躍することで回避し、左腕に大剣を接続しながらイズマエルの背後を陣取る。瞬間、その着弾と共に起こる大爆発を見ながら、80は円運動と共に左腕を斜め上外方、右腕を真横に伸ばしてスカートユニットを大きく展開した。

 それを共にネクサスは光の力を左腕に集め、接続した大剣を白銀に染め上げていき、そのまま爆炎に包まれるイズマエルへ吶喊。諸共に両断すべく一気に斬り貫け、80の隣に着地する。その時には80のスカートアーマーは周囲のマイナスエネルギーを集め正方向へと転換。自らのエネルギーとして最大にまで高められていた。

 

 例えこの身が闇に吸い込まれそうになっても、流す涙さえも血に濡れて苦しくなろうとも……我らには”帰る場所”が待っている。

 だから皆で集い歌える。守護る為に頑張れる。誇りと契り、戦える――。

 

 ネクサスは両腕を胸の前へ近付けながら距離を縮め、その間を行き交うエネルギーがエナジーコアの輝きと共に上昇し、左腕の光刃が更に伸びる。やがて両の腕が交差した瞬間、右手でガントレットに装着された剣を引き抜き右腕を上外方、左腕を下外方へ真っ直ぐ伸ばす。

 そして80もまた、ネクサスの必殺の動きに合わせるようにその両腕を強弓を引き絞るかのような形へと構えを変えていく。眼前に赤き弓状光が発生すると同時に両腕のクロスボウガントレットが展開、スカートアーマー同様に強く輝きだした。

 

『この愛と勇気の結晶こそがッ!! 貴様の存在の総てを滅する輝きだぁぁぁぁッ!!!』

 

 腕を順回転させ、右に携える光り輝く刃を縦に構え左の籠手は内側から下の柄を叩き付けるネクサスが逆転した【†】の形となった両腕から白銀の光波を発射。80もまた同時に、サクシウム光線同様に腕をL字型へと組み、左右のアーマーの両方から貯め込まれたすべてのエネルギーを解き放つように発射した。

 どちらもまたマイナスエネルギーをすべて浄化させ、スペースビーストと言う存在を否定、抹消すべく撃ち放たれた必滅光線……【EUTERPE SUCCIUM PURIFYRAY】と【OVEREVOLRAY†REDEMPTION】が爆煙を掃ったイズマエルに直撃。自らと相反する清浄なる輝きに包まれたことで断末魔の叫び声を上げながら悶え苦しみ、やがて光の粒子となって完全に消滅。余剰エネルギーがその場で大爆発を巻き起こした。

 

 

 

 

「ヤプールッ! イズマエルッ! だが、我が力を使えば、何度でも――」

『やぁせるかああああああッ!!!』

 

 天に突き上げようとしたダークネストライデントを捕まえるガイア。脚部バンカーを用いた超速接近に、エタルダークネスも気付く余地は無く、そのままそれを支柱にして思い切り投げつけた。地面に叩き付けられたエタルダークネスを何度も振り回し投げ放つ。遠心力でダークネストライデントを手放してしまうエタルダークネスが高層ビルへと直撃し、倒し込んだ。

 

「くッ、貴様あああッ!!!」

 

 憤怒と共に起き上がろうとするエタルダークネス。だが彼の視界に映ったのは自らの持つ武器の形を変えて此方に狙いを定めるエクシードエックスの姿だった。

 ベータスパークソードを組み換え、真逆に展開することでその形状を剣から弓へと変形させることで完成するもう一つの必殺武装ベータスパークアロー。既に収束させ始められていた光のエネルギーは、ガイアによって投げられ姿勢を崩したところを狙っていたのだ。

 一方でガイアは光を放ちながら左腕をライフゲージに向かうよう伸ばし、右腕は天へと高く突き伸ばす。集束する光と共に左腕を前に突き出し右腕は内回りに一周、そして頂点に戻ったところで左右の腕で天を抱え込むようにもう一周仰ぎ回す。そして両腕が胸の前で上下に伸ばし重ねられた時、下に位置する左腕の装甲が上にある右腕の装甲と合体。一個の円柱型のガントレットと化した。

 引き絞られた右腕と共に合体したガントレットが展開し、バーニアに光の火を溜めながら超速回転を開始する。赤と青と黄のエネルギーが折り重なりガントレット周囲にリング状となって形成、力の開放を待つかのように昂っていった。

 

「ぐ、うおおおおおッ!!!」

「『ベータスパークアロォォォォォッ!!!』」

 

 エタルダークネスもまた自らの全ての力を高め、身体を大きく広げて全力の暗黒光線を解き放った。頭部以外の全身を包むアーマードダークネスそのものから発射される、【ギガレゾリューム光線】。ダークネストライデントから放たれていたものよりも強力な、光を消し飛ばす一撃となる。その確信を持って放たれた。それに合わせエクシードエックスも、ベータスパークアローに溜め込まれた全ての力を解放。X字の光線となって真っ直ぐとギガレゾリューム光線とぶつかり合う。

 拮抗する光と闇のエネルギーは中空で火花を散らしながらぶつかり合い爆ぜていく。互いに勢いを勝らせるべく抑え合う状況。そこへエックスが声を上げた。

 

「――往け、響ィッ!!」

『だぁあああああああああッ!!!』

 

 ベータスパークアローの光を右腕に重ね合わせ、ガントレットの高速回転と共に超加速を発生させる。ぶつかり合うギガレゾリューム光線は徐々に押し切られていき、ガイアの、響の眼は確実にエタルダークネスへと近付いていった。

 

 絆と心を一つに束ね、此処に響き鳴り渡るは希望の音。『信ずることを諦めない』と、調べられた歌と共に独奏(つらぬ)かんと唄い飛ぶ。どんな小さな可能性であろうとも、其処にゼロは無いのだと。故に、この手繰り寄せた奇跡に――

 

『光、あぁぁれええええええええッ!!!!』

 

 闇の波動を押し切り、ベータスパークアローを乗せたガイアの右拳がエタルダークネスの胸へと直撃。そのまま拳の方向を天へ向けるべく、更に抉り込むように身体ごと押し付ける。

 円柱型のガントレットが展開し、アーマードダークネスに食い込むと共に杭打機のように引き伸ばされる。その内部で限界まで溜め込まれた螺旋状の光のエネルギーが稲妻を纏い、ガントレットの重く激しいピストンによってエネルギーの全てを猛々しく撃ち込んだ。

 

「ば、馬鹿な……ッ! この俺が……アーマードダークネスがッ!!? うおおおおおおおおおッ!!!」

 

 響の狙い通り空中へ飛ばされたエタルダークネスは、光の奔流にその身を貫かれながら輝きと共に大爆発を巻き起こしていった。

 


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