副隊長、やります!   作:はるたか㌠

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イオンシネマで噂のULTIRAを鑑賞してきました。
他のシアターよりも更に大画面の迫力と、高音の効果が抜群でした。
立川の極爆といい、平和島のimm soundといい、音響一つで此処まで変わるものだと改めて実感しました。


さて。
先にお断りしておきますが、今回は登場人物が多い為やや冗長かも知れません。
各校の話はあとがきにて。

では、パンツァー・フォー!

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誤字がありましたので修正しています。


第6話 講習会です!(後編)

 講習会と言うだけあり、戦車道を行うにあたってのルールや注意事項の説明から始まった。

 過去にあった事故についての具体例を上げての注意喚起もあった。

 講師は戦車道連盟会長の児玉と審判員の香音。

 退屈になりがちな講習会だが、巧みな話術とスライドや映像を織り交ぜた講習で聴衆を飽きさせない工夫が凝らされていた。

 概要は別にプリントやテキストで配布されるのだが、梓は話のポイントを逐一メモしている。

 梓自身、この参加者の中でも一番キャリアが浅くまだまだ素人に毛の生えた程度という自覚をしていた。

 ならば、人一倍身を入れて聞き頭に叩き込むより他にない。

 彼女らしい真面目さが、遺憾なく発揮されていた。

 

 そして。

 

「……あの方も講師なんですね」

「……みたいだね」

 

 梓とみほが小声でそう言い合う相手。

 

「こんにちは~。バーっと喋るからガンガンと理解してね」

 

 相変わらず妙なテンションと日本語で登場したのは、強化委員の一人で審判団の責任者でもある蝶野亜美。

 若くして戦車教導隊の一尉にまで昇進している彼女は、無能どころか立派なエリート自衛官だ。

 実際、亜美自身が豪語する通り彼女が搭乗する10式戦車は撃破率が圧倒的に高い。

 無論10式の優れた性能による面もあるのだが、旧式の74式戦車に乗せてもやはり他の隊員を圧倒してしまう。

 ……のはいいのだが、その指導があまりにもアバウト過ぎて受ける隊員は慣れるまで余計に苦労する羽目になる。

 それでもいきなり搭乗してある程度戦えた大洗女子学園の面々は、やはり異質と言えるのかも知れない。

 

 賑やかで饒舌な講師のお陰か、聴いている面々は誰一人退屈そうな様子も見せずに講習会は進んでいった。

 

 

 

 そして、昼休み。

 

「西住さん、一緒に昼食はどうだ?」

「今日の為に、新作メニュー用意してきたっスよ」

「ドゥーチェ、ペパロニもいきなり過ぎますよ。すみません、西住さん」

 

 アンツィオ高校の三人が、みほのところにやって来た。

 

「こんにちは、アンチョビさん。……もしかして、まだ隊長なんですか?」

「そうなんだ。私はペパロニかカルパッチョ、どちらかに任せようと思ったんだが」

「それならカルパッチョっしょ。頭もいいし、戦車道のベテランだし」

「だから、私はサポートする方が得意なんですって。ペパロニの方がアンツィオの校風に合ってますし」

「……とまぁ、こんな具合でな」

 

 溜息をつくアンチョビ。

 

「あはは、大変そうですね……」

「全くだ。ウチにも西住さんみたいな二年がいてくれれば迷わないのにな」

「お話中すみません。こんにちは、西住さんに澤さん」

「こんにちは」

 

 そこにやって来たのは、オレンジペコとルクリリ。

 聖グロはどうやら世代交代が決まったらしい。

 

「オレンジペコさんにルクリリさん。こんにちは」

「お二人が隊長と副隊長なんですね」

「はい、澤さん。……何故か、一年生の私が隊長に指名されてしまいましたが」

 

 はにかむオレンジペコ。

 梓は、思い切ったダージリンの抜擢に驚きを隠せない。

 自分も一年生で副隊長だが、当然隊長と副隊長では責任の重さは比較にならない。

 ましてや、名門聖グロの隊長というのだから異例という他ない。

 

こんにちは(ズドラーストヴィチェ)!」

 

 続いてやって来た人物は、梓だけでなく全員に取って予想外だった。

 

「確か……クラーラさん?」

はい(ダー)

「……なあ、オレンジペコ。何て返せばいいんだ?」

「わ、私もちょっとロシア語は……。アンチョビさんこそ、ご存じないんですか?」

「失礼しました。日本語で大丈夫ですよ」

 

 ペコリと頭を下げるクラーラ。

 その隣で倣うのは、ニーナ。

 

「こんにずは。クラーラさんが新しい隊長なしてす。んで、おらが副隊長やれっでカチューシャ様に」

「じゃあ、私と同じですね」

「んだ、梓さん。改めてよろしくだべ」

 

 聖グロも思い切った起用だが、プラウダの新体制は一同に取ってそれ以上の衝撃だったらしい。

 クラーラもそれは察したのか、みほらを見渡しながら続ける。

 

「カチューシャ様から正式に隊長をやるようにと。それで、卒業まで留学期間を伸ばす事になったんですよ」

「そ、そうだったんですか」

 

 あのカチューシャがそう判断したのだ、クラーラはみほらが想像している以上に優秀なのであろう。

 エキシビジョンマッチや大学選抜戦でもその片鱗は窺えたが、来年もプラウダは要注意。

 みほも梓も、同じ思いを抱いた。

 

「西住さん、ご無沙汰しております!」

「ご、ご無沙汰であります!」

 

 今度は知波単学園の二人。

 隊長は絹代のままだったが、隣の人物は硬直でもしたかのように背筋を伸ばしている。

 

「西さん。それに福田さん」

「福田には副隊長を任せる事にしました。福田、挨拶を」

「は、はい! 若輩者ではありますが、御指導御鞭撻宜しくお願い申し上げるのであります!」

 

 福田もやはり一年生。

 知波単は主力メンバーのほとんどが二年生なので、これも大抜擢と言っていい。

 兎に角突撃一辺倒の知波単学園だが、福田は伝統に拘るよりも冷静に戦況を見定めようとするタイプ。

 来年の知波単学園はダークホースになるかも知れない、その場のほぼ全員が思いを新たにした。

 

「挨拶もいいっスけど、早く食べないと昼休み終わっちゃうっスよ?」

「そうですね。冷めないうちにどうぞ、皆さんの分もありますから」

 

 待ち草臥れたという表情がありありのペパロニの一言で、カルパッチョがいつの間にか大鍋を運び入れていた。

 

「トマトと大葉、エビの冷製パスタだ。これならもともと冷たいからな、用意して持って来た」

「さ、どうぞ。ドゥーチェの冷製パスタは絶品ですよ?」

「他の方々も遠慮せずに食べるっスよ」

 

 アンツィオ三人衆が、手際よく皿にパスタを盛り付けていく。

 

「それでは、私達は紅茶を用意しますね。ルクリリ様、お願いします」

「ええ」

 

 講習会場は、いつの間にか大勢での食堂と化していた。

 そしてサンダースの二人まで加わり、賑やかな昼食となった。

 パスタの皿と紅茶を受け取りながら、梓は思う。

 副隊長となった事で舞い上がっていては駄目だと。

 オレンジペコもニーナも福田も、歴戦の各隊長が見込んで起用した以上手強いライバルになるのは必定だろう。

 この場にいないだけで、将来有望な新人も出てくる筈。

 

(大洗だって例外じゃないよね。私が努力するのは当然だけど、次を担える人材を育てなきゃ)

 

 一人、そう誓う梓であった。

 

 

 

 午後になり、講師が交代した。

 

「此処からは高校戦車道連盟理事長、西住しほ様に講師としてお話いただきます。宜しくお願いします」

 

 香音と入れ替わりに、教壇に立ったしほ。

 トレードマークとも言える黒のスーツに、鋭い眼。

 日本戦車道を代表する戦車道家元としての貫禄に、聴衆の生徒らにも緊張感が漂う。

 みほは一瞬しほと眼が合うが、逸らす事なく顔を上げていた。

 梓は横目でみほの様子を窺い、すぐに前を見た。

 しほは表情には出さず、視線を他に移す。

 

「皆さんに質問です。皆さんに取って、戦車道とは何ですか?」

 

 しほの問いかけに、各校がお互いの顔を見合わせた。

 いざ問われると、咄嗟には答えられないようで全員が無言のまま。

 そんな反応を見ながら、しほは続ける。

 

「我が西住流の場合は鉄の掟があります。その事はご存知かと思います」

「…………」

「戦車道は確かに大和撫子の嗜みであり伝統的な武芸、それを否定するつもりはありません。……ですが、それだけの為に戦車道をやるのならば他にも道はあります」

 

 そう話すしほの視線は、みほに向けられていた。

 

「西住みほさん」

「は、はい!」

 

 弾かれたように立ち上がるみほ。

 二人が実の親娘だと知らない人間は、恐らくこの場にはいない。

 様々な視線が、二人に注がれた。

 

「貴女はどう思いますか? 高校戦車道全国大会優勝チームの隊長として」

「…………」

「どうしました? まさか、戦車道にいて自分なりの思いはないのですか?」

 

 みほは、意を決したようにしほを見返した。

 

「……いえ、違います。以前の私は戦車道とは兎に角勝つ事……そう考えていました、それが西住流の教えでもありましたから」

「では、今は違うと?」

「はい。……勝たなきゃダメだけじゃない、楽しむ事も戦車道なんだって。大洗の友達が気づかせてくれました」

「楽しむ、ですか。では楽しめれば勝敗などどうでも良いと?」

「いえ。楽しみながら、どう勝てるかを考える。それが、私の戦車道だと今は思います」

 

 みほとしほの視線が交錯する。

 親娘の会話とも思えないやり取りだが、みほは怯む様子もなくしほもまた表情を変えずにいる。

 そのまま、沈黙が流れる。

 時間にしてほんの数秒だが、その場にいた人々はそれがとても長く感じられる程ピリピリと張り詰めた空気だった。

 

「……わかりました。もう着席して構いません」

 

 しほはそれだけを言い、一瞬目を閉じた。

 そして、室内を再度見回す。

 梓には、その眼が幾分和らいでいる……そんな気がしていた。

 

「戦車道を続ける上で、大切な事は何か。……少し、私自身の体験をお話しましょうか」

 

 

 

 日が傾き始めた頃、講習会は終了となった。

 

「西住隊長。……宜しいのですか?」

「ありがとう、気を遣ってくれて。今は、あれで十分だから」

 

 多忙なしほは、終了と同時に帰り支度を始めていた。

 みほが声を掛ければ、僅かでも話をする時間を作ろうとするかも知れなかった。

 だが、みほがそう言う以上は梓が出しゃばる事は出来ない。

 そう思っていると、しほが此方に近づいてきた。

 そのまま帰るつもりなのだろうが、その様子に残っていた全員が注目を浴びせた。

 みほの横で立ち止まり、ふうと息を吐いた。

 そして、みほにだけ聞こえるような声で呟いた。

 すぐ隣にいた梓にも聞こえてはいたが、素知らぬ顔で明後日の方向を向いた。

 

「楽しんで勝つ……。それが貴女の戦車道なのね、みほ」

「……うん。そうだよ、お母さん」

「……そう」

 

 フッと息を吐くしほ。

 

「お土産、美味しく頂いたわ」

「……え?」

「次は、堂々と正面から来なさい。西住流らしくね」

「お母さん……うん、そうするね」

 

 みほは、柔らかく微笑んだ

 そのまま、しほは振り向く事なく立ち去って行く。

 

「西住隊長、良かったですね」

「ふえっ? 梓ちゃん、聞いてたの?」

「すみません、そんなつもりはなかったんですが……」

「……でも、ありがとうね。これも、梓ちゃんのお陰だから」

「私は何もしてませんよ? 西住隊長自身がきちんと向き合った結果ですから」

 

 小さく頷くみほ。

 そこに、二人連れが近寄ってきた。

 

「全く。相変わらず弱気なのか強気なのかわかりにくいわね、あなたは。西住師範相手に」

「エリ……逸見さん?」

「……別にいいわよ、エリカで」

 

 黒森峰女学園は、まほが引退しエリカが新隊長となっていた。

 

「ふふ、さっきからみほさんと話したかったのに切っ掛けが掴めなかったんですよね。隊長」

「な、何言ってるのよあなたは!」

 

 赤くなるエリカの隣で、小梅がニッコリ笑っていた。

 

「こんにちは、みほさん。私、今度副隊長になったの」

「小梅さん。そうなんだ、おめでとう」

「ありがとう。私なんかでいいのかな、と思ったんだけど」

 

 そう言って、小梅はエリカを見た。

 

「隊長と、前隊長の推挙だったから。改めてよろしくね、みほさん」

「うん、此方こそ」

「みほ。約束、忘れないでよ」

「勿論。エリカさんも頑張ってね」

「あ、あなたに言われずとも当然よ。小梅、行くわよ!」

 

 ずんずんと歩いて行くエリカ。

 小梅は軽く頭を下げてからその後に続いた。

 みほはその後姿を、微笑んだまま見送った。

 そして、振り向いた。

 

「さ、私達も帰ろうっか」

「はい!」

 

 ふと、梓は継続高校の面々と話していない事に気づいた。

 ……が、既に帰ってしまった後のようだ。

 大学選抜戦の時もそうだが、マイペースさは相変わらずなのだろう。

 

 

 

 夕方の常磐線は混んでいた。

 みほと梓は吊革に掴まり、並んで立っていた。

 

「お疲れ様でした。西住隊長」

「…………」

「西住隊長?」

「……梓ちゃん、約束」

 

 むくれるみほに、梓は思わず苦笑する。

 

「大洗に着くまでですよ。……みほお姉ちゃん」

「えへへ。やっぱり梓ちゃん、可愛いなぁ」

「な、何言ってるんですか!」

 

 気恥ずかしいのか、梓がまた顔を赤くした。

 ふと、梓は先ほどのエリカの言葉を思い出した。

 

「みほお姉ちゃん。一つ、聞いてもいいですか?」

「何?」

「さっき、黒森峰の隊長さんが仰ってた約束って何ですか?」

「あ、エリカさんが言っていた事?」

「はい。あの人、何だかあまりいい印象がなくって」

「大丈夫。エリカさん、あんな言い方してるけどとってもいい人だよ」

「そうですか。それで、さっきの質問なんですけど」

「あ、約束だっけ。前にね、会長から他校訪問するようにって言われた時に黒森峰に行ったのは知ってるよね?」

「はい」

「その時ね、二つ約束したの。一つは今度練習試合しようって」

「練習試合ですか……。新しい黒森峰の実力を見るいい機会かも知れませんね」

 

 まほは西住流そのものを自負している。

 その指揮には全隊員が従い、一糸乱れない戦いをしてきた。

 それが覆った唯一の戦いが、対大洗戦。

 エリカは副隊長として、それを目の当たりにした。

 勿論、まほとエリカではタイプが異なる。

 黒森峰がより柔軟な戦いを身につけるようなら……。

 来年は更に強敵として立ち塞がるかも知れないと、梓にはそんな予感がしていた。

 

「もう一つはね。必ず私が叩き潰すから、決勝まで来なさいって」

「でも、プラウダや聖グロもそう簡単には勝たせて貰えない相手になりそうですよ。うちも、他人事じゃありませんけど」

「ふふ、そうだね。頑張らなきゃね」

「はい!」

 

 電車が、大きな駅に着いた。

 大勢の乗客が降り、車内が一気に空く。

 二人の前も席が空いた。

 

「座ろっか」

「そうですね。茨城に戻ると、何だかホッとします」

「え? 何で茨城だってわかるの?」

「さっき、利根川を渡ったじゃないですか。あれが県境ですから」

「そうなんだ。良く知ってるね、地元だから?」

「いえ、別にそれだからって訳じゃないんですが」

「……でも、わかるかな。私も、今は大洗が一番だから」

 

 梓は、ふと思った。

 もし杏が廃校阻止の為に戦車道復活を言い出さなかったら。

 もしみほが大洗女子学園ではなく、他の学校に転校していたら。

 もしみほが戦車道復帰を拒んだままだったら。

 ……自分は今こうしていなかっただろうし、どうなっていたかも想像するだけで身震いがする。

 運命は浮気者……ダージリンの言葉ではないが、本当に今が偶然の積み重ねなんだとしみじみと思う。

 その切っ掛けとなったみほが、こうして大洗に愛着を持っている事も。

 

「……ふぁ」

 

 少し疲れが出たのか、梓は小さく欠伸。

 

「眠いの?」

「……ちょっと」

「じゃあ、寝ていいよ。着いたら起こしてあげるから」

「みほお姉ちゃん。行きに寝過ごしかけたのは何処のどなたでしたっけ?」

「ええっ! 梓ちゃん、酷いよ」

「事実じゃないですか。……でも、ありがとうございます」

 

 梓は目を閉じ、みほにもたれかかる。

 やはり睡魔には勝てず、すぐに意識が遠のいて行く。

 みほはその寝顔を暫く眺めていたが、規則正しい揺れが誘うのかうつらうつらし始めた。

 

 

 

「もう、みほお姉ちゃんったら!」

「あはは……ごめんなさい」

 

 結局二人は寝過ごしてしまい、気づいた時にはひと駅先の勝田駅まで来てしまっていた。

 水戸駅まで戻っても、接続する列車は暫く来ないと判明。

 梓がその場で調べ、那珂湊駅経由のルートで向かう事となった。

 とりあえず学園艦には連絡を入れ、連絡艦に待っていて貰うよう手筈を整えた。

 那珂湊駅から茨城交通バスに乗り換え、大洗に向かう。

 那珂川にかかる海門橋を渡り、先日エキシビションマッチで最初の戦場となった大洗ゴルフ倶楽部の横を通る。

 見慣れた景色の筈だが、梓はジッとそれを眺めている。

 

「梓ちゃん、どうかしたの?」

「あ、いえ。エキシビションマッチ、私達はあまり出番がないまま終わってしまったので」

 

 ウサギさんチームはノンナのIS-2を止めようとして立ち塞がり、あっけなく撃破され民宿の看板を倒しただけで終わってしまった。

 その時はまだ梓は副隊長ではなかったが、苦い経験として彼女の中に残っているらしい。

 

「やっぱり、みほお姉ちゃんは凄いと思います。不利な状況まで追い込まれたのに、あと一歩というところまで持って行ったんですから」

「でも、負けちゃったけどね。カチューシャさんもダージリンさんも本当に凄いと思う」

「それはそうですけど。……もし私が隊長だったら、その前にやられてしまったと思います」

「そうかな? やってみないとわからないんじゃないかなって思うよ」

「そうでしょうか?」

「うん。それに、梓ちゃんはこれからじゃない。一緒に頑張ろ?」

「はい、よろしくお願いします。あ、着きましたね」

 

 いつの間にか、バスは大洗港に入っていた。

 運賃を払い、ターミナルから連絡艦に乗り込む。

 ホッと一息つく二人。

 

「……あ」

「どうしたの、梓ちゃん」

「いえ」

 

 携帯を開いた梓は、しまったという顔になった。

 そこには着信履歴とメッセージ、メールが数十件という表示が。

 心配したチームの仲間達からだった。

 学園艦に連絡をした後、また列車に乗る前に電源を切ったままだったので気付くのが遅れたらしい。

 ちなみにみほも同じ事をしていたが、携帯はそのままのようだ。

 きっと、自分以上にいろいろな履歴が残っているに違いない。

 

(戻ったら、とりあえずみんなに謝らなきゃいけないかな)

 

 だが、その事で梓は気が重くなったりはしていない。

 それだけ自分達を心配して、待ってくれている人達がいるという事だから。

 だんだん近づいてくる学園艦のシルエットを見ながら、梓はそう思っていた。

 

「約束、忘れてませんよね?」

「ふえっ?」

「言った筈ですよ。もう二人っきりじゃないんですから、元のように呼びますから」

「……うん。でも、またこんな機会があった時はお願いしてもいいかな。私、とっても嬉しかったから」

「考えておきます」

「えーっ、約束してよ。梓ちゃんの意地悪!」

「もう、西住隊長こそ少しは弁えて下さい」

 

 二人は軽く睨み合い……そして。

 

「プッ」

「ププッ!」

 

 何方からともなく吹き出してしまう。

 あまりの大笑いぶりに、二人に接舷を告げに来た船員が呆気に取られていたとか。




他校についてはオリキャラは極力出さない方向で考えています。
わかりにくくなりますし。
サンダースだけはどうしても足りないので出します。
ナオミは二年生という設定もあるようですが、本作では三年生として進めます。

で、本作での各校体制です。
学年は公式設定がないか不明、あるいは曖昧な人物はとりあえず決めてしまっています。
(後で公式設定が出された場合は修正するか書き直すかも知れません)


大洗女子学園:
 隊長:西住みほ(二年)
 副隊長:澤梓(一年)

黒森峰女学園:
 隊長:逸見エリカ(二年)
 副隊長:赤星小梅(二年)

プラウダ高校:
 隊長:クラーラ(二年)
 副隊長:ニーナ(一年)

聖グロリアーナ女学院:
 隊長:オレンジペコ(一年)
 副隊長:ルクリリ(二年)

サンダース大学付属高校:
 隊長:アリサ(二年)
 副隊長:ナオミ(三年)(暫定続投)

アンツィオ高校:
 隊長:アンチョビ(三年)(暫定続投)
 副隊長:ペパロニ、カルパッチョ(共に二年)

継続高校:
 隊長:ミカ(二年)
 副隊長:アキ(二年)

知波単学園:
 隊長:西絹代(二年)
 副隊長:福田(一年)


マジノ女学院はスピンオフコミックの設定を使うかどうか……そもそも出すのかどうかも決めていません。
やりだすとキリがないので、本編と劇場版、ドラマCDを基本とするつもりです。

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