ファイアーエムブレム~俺の系譜~   作:ユキユキさん

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トラキアにて。

では・・・。


第6話 ~トラキアの王

ーエシャルー

 

パピヨンさんとの空の旅、これが女の子とだったら言うことなしなんだけど。空から眺めるトラキア王国は、本当に山ばっか。申し訳ない程度に緑があるだけ、…なんとも難儀な国なのだろうか。ヴェルダンは逆に緑しかねぇけど、トラキアの山ばっかよりはマシだよなぁ。民が可哀想だよね、色々と。

 

民達は、自分達の足で行動するんだよね。普通だったら、足腰が鍛えられて良い鍛練ってことだけど。貧困の為にこれが致命的、無駄に体力を削る。貧困で食料調達も厳しく、入手する為の行動で命を削る。あまりにも厳しいトラキアの現状、先程の村のことと、空から眺めるトラキアの山々を見て、勝手にそう思っているだけなんだけど。…それほど間違った見方はしていない筈。

 

トラキア王国、…山々に囲まれた天然の城塞で難攻不落。されど、民は苦しみ兵は傭兵稼業をしなければ、滅びを待つだけの国。

 

「……形振り構う暇があれば、国の為に心を殺す日々…か。」

 

「………。」

 

そして俺を乗せた飛竜は、トラバント王がいるトラキア城へと舞い降りた。

 

 

 

 

飛竜から降りた俺、パピヨンさんに付いていけばいいんかね?

 

「私は先程のこととは別に、もう一つ報告せねばならない。エシャル殿は兵に客間へと案内させる故、そちらでお待ちを。」

 

部外者に聞かれては、まずい案件があるのかな? …巻き込まれたくないから、大人しく待ってますよ。思う存分、報告してくるといいさ。…でもなぁ、なんか巻き込まれそうな気がするな。まぁ俺に出来ることなら、協力するのもいいんだけどね。そんなことより、国の現状ってヤツを知りたいなぁ。内容次第じゃ、俺にやれることもあるかも知れんし。とりあえず、客間に案内してくれる兵士に聞いてみよう。…聞くぐらいはいいよね? 捕まんないよね?

 

 

 

 

 

ートラバントー

 

「トラバント様、第12竜騎隊隊長パピヨンが報告の為、到着致しました。」

 

「…そうか、パピヨンがな。奴等の件か、賊の件か…。まぁ、いい…。こちらに呼べ。」

 

「はっ!」

 

一礼してから、部下が退室する。それを見届けてから、現状を思い浮かべる。

 

ミーズとマンスターの国境、人目を避け山中に砦を建てた。コノートの弓兵、マンスターの斧騎士を中心とした騎士団、少数ではあるが魔導士の姿も確認されている。巧妙に隠していたようだが、存在が明らかになった以上はな。…大方、コノートのレイドリックあたりの策だろう。そして、その口車に乗ったマンスター。ミーズ奪取の足掛かりにするのだろうが、そう易々とミーズを取られるわけにはいかない。

 

早急に落とさねばならないが、空から近付けば弓が、地上から攻めれば騎士団が、思いの外攻めにくい。迂闊に攻めれば被害が大きく、後々響くのは明白。パピヨンには、抜け道か何かを調査させているが、望みは薄いと考える。

 

 

 

 

そして、賊の類いも増えた。件の砦が発見される前から、少しずつ増えてはいたが。発見後、あからさまに数が増えている。…最初は砦の存在を隠す為、存在発覚後は攻めの兵力を減らす為。…小賢しいことをしてくれる、さすがはレイドリック。我らトラキアの内情を知っての策、…なかなかに有効な手だよ。

 

中途半端に打撃を与えても、あの野心家のことだ。すぐに後詰めの部隊を送ってくるに違いない。打撃を与えるなら盛大に、大きな痛手を与えればマンスターは退くだろう。そうなれば、流石のレイドリックも退かざるを得ない。コノートの兵だけで、我らを倒せる等の思い上がりはしない男だ。

 

…もし我らに、奴等のように豊かな土地があれば、動かせる兵が多くいれば、我らに…!

 

「…虚しいだけか。」

 

もしもの話等、私らしくない。今はいかに現状を打破するか、…それを考えるのが先だ。…最悪、ミーズを捨てることも考えなければ。無理をして、国を傾かせる等愚策。いかにトラキアを守るか、民を守るかが先なのだ。城の一つに固執して、国が滅んだら笑えんからな。今はこれを乗り越える、…それだけだ。

 

…思考の海に沈みかけた時、執務室の扉がノックされ、

 

「第12竜騎隊パピヨンです。ご報告に参上致しました!」

 

との声が。フッ…考え込む等、私らしくない。

 

「…入れ。」

 

パピヨンからの報告、良い情報があればいいのだがな。

 

 

 

 

パピヨンからの報告を受け、砦を落とすことは難しい、それが分かった。期待はしていなかったが故、特に思うこともなかったが、賊の話に及ぶとそうはならなかった。

 

「腕の立つ協力者…だと? その協力者が人質を救出し、賊捕縛に繋がったと…。」

 

「ハッ! その協力者はエシャルと言いまして、レスキューの魔法を…。」

 

パピヨンからの報告を聞きながら考える。ヴェルダン王国から、ワープで流れてきた魔法剣士。ヴェルダンからトラキアまで、ワープで来ることが出来る男。レスキューで人質を救出した男。ワケありのようだが、人間性は悪くない。立ち振舞いから、どこぞの国の貴族階級に属していたのでは? と思わせる風格。何より鋭い目、その目が強者であると語っている。

 

…面白い、単純にそう思う。パピヨンは人を見る目、これがなかなかに良い。そのパピヨンにそう言わせる男、興味が出てくるのは必然だろう。それに、そのエシャルという男。ミーズの攻防で、助力を取り付けることも出来るかもしれん。

 

「パピヨン、そのエシャル…と言ったか? 王座の間へと連れてこい、会ってみたい。」

 

「ハッ!了解致しました!…では、失礼します!」

 

退室するパピヨンを見届け、私も王座の間へと向かう。エシャル…、どれ程のものか…。そして、聞いたことのある名であった。私の知る名の者か、それも気になる。自然と口元に、笑みが浮かんだ。

 

 

 

 

 

ーエシャルー

 

兵士の人に案内された客間にて、茶をシバく俺。兵士の人に話を聞こうかと思ったんだけど、部屋を出ていったんで一人ぼっち。…ここ最近というか数日間、ぼっちだった為に話をしたい俺には酷な仕打ちだぜ? 人里下りても一人ぼっちって、泣くぞ俺! なんてブツブツ言っていたら、ノックの後にパピヨンさん登場。良いところに来てくれたパピヨンの旦那、さぁさぁボーイズトークとシャレこみましょうや。

 

「エシャル殿、トラバント様が王座の間にて話がしたいと。度々申し訳ないが、足を運んで頂けないだろうか。」

 

たぶん会うことになるだろうと思っていたけど、ボーイズトークのお相手が王様ですか。トラキア初のマトモな会話がトラバント王、ハードル高いけど気にはしねぇ。竜騎士ダインの血筋に会ってみたいと、俺の心が訴えてきてるぜ。

 

「了解、会いますよっ…と。どんな人かドキドキワクワクだね。」

 

内心めっちゃ緊張してますが、…何か?

 

 

 

 

王座の間に入った瞬間、何やら違和感が。ついでにパピヨンさんが隣にいない、…王様と二人きりなんですか!? だだっ広い間で二人きり、イジメっすか? とりあえずモヤモヤしとるけど、トラバント様の前まで歩き、片膝をつく。

 

「私をお呼びとのことで参上致しました、トラバント王。」

 

とりあえず挨拶をば。少しの沈黙の後、

 

「お前が協力者か、…楽にして良い。」

 

とのお言葉を頂いたので、立ち上がってご尊顔を拝見します。

 

「「………!!」」

 

なんだかビビっときました、王様も同じみたいです。…なんかワケありって、隠した意味が無い気がします。

 

沈黙の後、トラバント王が一言。

 

「エシャルと言ったか。…お前、聖戦士の血を引いてるな?」

 

その言葉で、ワケあり設定での隠し事が無くなりました。さっきのビビって血の共鳴だったんかーい! 聖戦士の血、恐るべし…。

 

「…はぁ、まぁ…引いていますね。…その、かなり?」

 

なんだかよく分からんけど、そこから普通の会話が。たぶんあちらさんも同じ気持ちだろう、…よく分からんけど。なんで…?

 

そんなこんなで、この俺エシャルはトラちゃんを気に入った。若くして王になり、貧しい国の為に頑張ってる彼に感動した! 民を想う気持ち、国を憂える気持ち、他国に対する気持ち、トラキアを治めるに相応しい男だと思ったのだ!

 

因みに俺が、ファラとヘズルの血を色濃く継いでいるってバレました。バレたと言うか、知っていた? カマかけられて、ポロっとね。…まぁ、別にいいんだけど。名前だけ知っていたみたいだね、トラちゃんは。うろ覚えながらワケあり話をしましたよ、隠したっていずれはバレるわけだし。

 

「…血を継ぐってことは、呪いも継ぐってことになる。…特にお前は二つの血を継いでいる。…苦労するな、この先。」

 

不敵な顔で、同情されました。そんな感じで仲良く? なれましたよ!




次回はどうなるか?

むむぅ・・・。

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