ファイアーエムブレム~俺の系譜~   作:ユキユキさん

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作者さん、A-ガーランドさん、感想ありがとうございます!

suryu-さん、アンケートありがとうございます!

アンケートはだいぶ前に終わっていますが、複数になりますんで!


他の作品もあって更新が遅れました。

久々なんであれですけど、ユルユルいかせてもらいます。


第1話 ~隠れ里ティルナノグ

ーエシャルー

 

前世で知っている隠れ里ティルナノグ、今・・・俺達はその場所にいるわけでテンションは高め。服装もレイミアの言うように民族衣装、新鮮な気持ちでいるのです。まぁカナッツ君を含めた俺の部下達は、軽装過ぎる自分にモヤモヤしているっぽいが。最低でも軽鎧装備だったからな、胸当てだけじゃ違和感あるわな。・・・それはさておき、見た目が整ったわけなのだから次は・・・、

 

「レイミア、・・・あまり人がいないようだが何故だろうか?それに服装を変えたとしても俺達は他国民、奇異の目で見られると思ったのだがそれがない。逆に同情・・・?そんな目で見てくる、・・・これ如何に?」

 

このティルナノグに来て感じたことを聞いてみる、何故ここの民達は初対面の俺達を同情の目で見るのか?レイミアが言った忘れられた地、・・・それが関係しているのか?それにレイミアとクーちゃん達は微妙に暗い雰囲気を纏ってはいるが、同じくイザーク国民であるホリンは初めて見る場所らしくお上りさん状態だ。この差は一体・・・何なのだろうか?

 

そんな俺の疑問に答えてくれたのは、レイミアではなくクーちゃんだった。

 

「・・・忘れられた地ティルナノグ、いえ・・・隠れ里ティルナノグ。この地に住むは民族闘争に破れて逃げてきた者達の末裔、剣が折れし負け犬の里なのです。戦う心を忘れた者達が身を寄せて住む里、・・・イザーク王国の地獄なんですよ。イザークの戦士達にとって、戦う心を失うことは死も同然。故に心砕けた者達の住むこの場所は禁忌の地、名を口にするだけで穢れると伝えられていますので、この地に住む人々以外はティルナノグという言葉を口にしません。そして忘れ去られてしまったわけです、・・・同情の理由が分かりましたか?」

 

・・・・・・なるほど、この地に来た俺達も同じと見たか。他国民だろうが心折れた者、この地に来たことがその証。それに・・・俺達はこの地に来て服装を変えた、重装からかなりの軽装・・・イザークの民族衣装に。自らの装備からこの地の服装に変えた、はたから見れば自身の武を捨てたと・・・そう見えるだろう。クーちゃんの言うように、このティルナノグがそのような地であれば尚更な。

 

因みにホリンは呆然としています、ぶっちゃけ武人の墓場ってことになりますからな。レイミア達は知っている場所みたいだからまぁ・・・大丈夫みたいだが、現役バリバリで知らなかったホリンは・・・ってヤツだね。・・・・・・しかし、・・・忘れられた地ねぇ。・・・失礼ながら、俺としては都合の良い地ではあるな。

 

 

 

 

 

 

俺がイザークへと来た理由は一つ、動乱のきっかけとなるリボー一族が引き起こしたダーナの虐殺、それが起こるか否かを調べる為だ。・・・ヴェルダンで暗躍が起きているのは兄貴の亡命で分かっている、故に起きることは確実であろうとは思う。ぶっちゃけ調べるのは二の次、本命は救える命を救い出しトラキア陣営に迎えることだ。言わずと知れた戦士の国イザーク、この国の戦士を迎え入れたらトラキアの戦力は更に高くなる。

 

・・・動乱の中でグランベルは強大な力を得る、大陸一の領土を手にするのだから。そんなグランベルにトラキアは屈することはしない、・・・ディアドラを守る為に教団を国に入れるわけにはいかないのだ。そして民達を・・・子供達の命を守る為に戦わなければならない、その為には戦力をより強化しなければならない。トラキアの為ならば、俺はダーナの虐殺を見逃す。そしてイザークが滅びることも致し方なし、俺は聖人ではない。それに今更、何をやっても止まりはしないだろう。そして・・・全てを守ることなど、人の身で出来る筈がないのだからな。滅びゆく国の中でこそ、次代の為に俺の下へと降る者がいるだろうさ。

 

・・・虐殺が起きると考えれば、既に国内には教団の者が潜んでいることは確実。そんな教団の目から逃れるのにこのティルナノグは最適、この地をイザークでの拠点として行動するのが最も安全であろう。そしてあわよくばトラキアの飛び地に、保護地に定めて来るべき時にはこの地から・・・。俺はそう考えている、まぁこの先どうなるかは分からんけど。とりあえず、そういう方針にしようかと考えますわ。色々と考えなければならないが、まずは行動せねばならない。細かいことはそれからでいい、さて・・・どうするかな?

 

 

 

 

 

 

クーちゃんから聞いたティルナノグのこと、そこで暫く・・・と言っても数分間、・・・だと思いたいが考え事をしていたみたいで、

 

「エシャル様、・・・何か気になることがあったのですか?」

 

と、何やら心配そうな顔で俺を見るディアドラ。その言葉で思考の海より戻った俺は、バツが悪いように笑みを浮かべて、

 

「・・・いや、すまないなディアドラに諸君。この地のことを聞いてね、これからどう動くかを考えてしまったよ。・・・イザーク国民にとっては負の地であるようだけど、俺からしてみれば良い地であると言わせてもらう。レイミア達やホリンに問題が無いのなら、この地を拠点として動きたいのだが・・・大丈夫だろうか?」

 

「問題があったらここを想像して、エシャル様達を連れてきやしないよ。こんな場所でも私達の故郷みたいなもの、拠点にしてもらうってんなら嬉しいことこの上ないね。」

 

俺の言葉に反応し返してきたレイミア、少しばかり元気になったかな?・・・にしても、この地がレイミア達の故郷か。レイミア達は折れた者達の末裔ってわけか、・・・ビックリだよね?彼女達の故郷は折れた者達の住まう地なのに、彼女達は折れてはおらず剣を握り、傭兵として各地を飛び回っていたのだから。末裔の中にも強き者達がいる、なおのことこの地が欲しくなったのは仕方のないことだよな?

 

レイミア達はいいとして、ホリンは・・・・・・、

 

「・・・ティルナノグが実在していたとは、・・・・・・知らなかったとはいえ俺は、・・・俺は剣士としてこのままいけるのか?」

 

・・・と、ややへこみ気味であります。イザーク国民にとってこの地は、・・・ティルナノグはそんなに重い地なんか?他国民である俺には分からんけど、イザークの紡いできた歴史がそうさせているのだろう。負け犬はいらない国の歴史、俺にどうこう言える資格はないけれど。・・・くだらない、俺は単純にそう思う。

 

レイミア達はこのティルナノグを出身地としているが、この地を飛び出し各地を巡り、剣を片手に研鑽を積み・・・今は俺の下に。そんな彼女達を愛おしいと思う、この地に生まれながらも前を向いている。彼女達の心は分からんけども、俺の下で働く意志は感じる。故郷を胸に、歯を食いしばって生きてきたのだろう。・・・俺には分かる、その流れる血に微かではあるが聖戦士の血があることを。その強き意志が、戦士の誇りは、決して折れてはいない。未だ迷いはあるのだろうが、彼女達ならばきっと・・・・・・。

 

・・・に比べてホリンの奴はウジウジしている、何とも情けない。イザークの王子・・・何て名前だったっけ?え~と・・・マ、・・・マリクル!そうそうマリクル王子だったな、彼にいずれ勝利すると言っていた男がこんなんでいいのか?・・・否!この程度で自身の道を不安に思う奴如きが、剣聖オードの継承者であるマリクル王子に勝てるものか!逆に、自分がこの地に誇りを思い出させてやるというぐらいの気概を見せてほしいものである。不屈無くして大成などしない、この世界はそう甘くはないのだよ。

 

俺とて曖昧ではあるが、負け犬である。・・・教団にしてやられたばかりか、たぶん・・・忘れてしまっているのだろうが、身近で大切な者達を亡くしている。再会したアイーダは俺のせいでもあるが、教団に何かしらをされてしまっている。故に今はトラキアの館にて、彼女は眠り続けている。俺自身も逃げて逃げて、そこでガンドルフの兄貴と出会い、トラキアにて自分のやるべきことを見付けた。負け犬でも前を向いて歩けば、必ず報われると信じている。信じなければそれで終わりなのさ、人生ってものは。・・・・・・要は自分を信じて歩けということ、心強く進むことこそが戦士の証。負け犬の何が悪いか、そこから知ることもあるだろうに。俺は狼狽えるホリンの尻に、問答無用の蹴りを入れた。当然身構えていないホリンは、盛大に吹っ飛んだ。

 

──────────────────

 

ーホリンー

 

レイミア殿の案内?になるのだろうか、エシャル殿のワープにて俺の本国であるイザークへと来た。マリクル王子に勝つ為、イザーク国内を全て渡り歩いたつもりなんだが、今日来た場所は初めて見る場所だ。世界は広いと言うが、我がイザーク王国もなかなかな・・・。そう思いながら周囲を見回すが、何故だろうか?街の規模に比べて人の数が少なく、いたとしても暗い表情で道を歩いている。エシャル殿達が寄った服屋の主人に至っては、俺達を同情の目で見てくる。・・・その視線を受けると、何故か胸が締め付けられる気がする。何なのだろうかと思ったのだが、その理由はすぐに分かる。

 

 

 

 

 

 

折れた剣の集う場所、ティルナノグ。イザーク国民・・・特に戦士の部類に属する者なら知っている、・・・戒めの名ティルナノグは存在していた。物語の中だけかと思っていた、行こうにも行ける場所ではない。その場所が何処にあるのかは誰も知らない、行ける者は戦士として死んだ者だけ。戦士の墓場ティルナノグ、俺がこの場所に・・・・・・。

 

そのことを知った時、俺は呆然としてしまった。・・・なんて所に来てしまったのかと、・・・俺の剣士生命は終わりを迎えるのかと。この地の陰鬱とした雰囲気、そして人々の視線。胸を締め付けられる気がしたのは、その視線のせいだと気付いた。・・・それは同情、・・・俺に哀れんだ目を向けてくる。同情の目で俺を見ないでほしい、俺はまだやれる男だ。・・・俺はまだ戦える、・・・俺は剣を振るえる、・・・俺の闘志はまだ消えていない、・・・俺には目標がある、・・・・・・俺には。

 

・・・・・・何故だろうか?どうにも俺の心に不安というモノが見え隠れする。こんなことは初めてだ、・・・これがティルナノグ。死を受け入れた戦士の目はこれ程までに恐ろしいモノなのか?知ったが最後、幼き頃より植え付けられた戦士の墓場ティルナノグの名。その名がここまで、心を蝕むモノだったとは。・・・イザークの闇、戦士の行き着く先は全て・・・。

 

自問自答をしていた俺は、突然の衝撃に為す術もなく吹っ飛ばされる。その衝撃で俺は正気に戻り、

 

「・・・一体何が!?」

 

体勢を立て直し振り向いてみれば、エシャル殿が蹴りの体勢で立っていた。

 

 

 

 

 

 

体勢を戻したエシャル殿は、俺のことをジッと見てきた。・・・何故そんなに凝視するのか?

 

「・・・そんなしけた顔をしてんじゃない、お前はその程度なのか?禁忌の地だか墓場だか知らんが、お前の剣はまだ折れてはいないだろ。・・・まぁイザーク国民故に思うところもあるだろうが、・・・立ち止まるな。レイミア達を見ろ、そして俺を見ろ。・・・お前にも話しただろ?こう見えても俺は負け犬だ。それがどうだ?トラキアの将軍に収まっている。ティルナノグに縛られるな、逆に変えてみせるぜ!とでも言ってみろ。揺るがぬ心なくして王子にも俺にも勝てんぞ、・・・レイミアとクーちゃんにも勝てん。それでいいのか?ホリン。」

 

エシャル殿は俺に対しそう言ってきた。

 

・・・エシャル殿の言葉を考えてみる。・・・この地に来たからといって、俺は折れていない現役の剣士だ。そして俺には目標がある、・・・マリクル王子に勝つこと。技術的に天と地ほど離れているわけではない、もう少しで一太刀だけでも入れることが出来そうなんだ。・・・俺に足りないモノ、・・・俺はレイミア殿達を見る。口ぶりからしてこのティルナノグの出身、なのに折れてはいない。それどころか、何やら強い意志を持っている、・・・そう感じる。その目は戦士の目だ、前を向いている。それに比べ俺は、ティルナノグという言葉に恐れを抱いている。・・・エシャル殿だって自信に溢れた強者の目をしている、俺如きでは語れない道を歩んできたのにだ。

 

イザークへ来る前、俺はエシャル殿から色々と話を聞いた。エシャル殿は二つの血を、聖戦士継承者の資格を二つも持っている。その二つの血の間で、どれ程・・・苦悩したことか。そして事件が起こり、エシャル殿自身も覚えていないようだが逃避行の日々。最近思い出したことは、自身に近い者による暗殺・・・ではなかろうかということ。そして俺と出会ったアグストリアにて、エシャル殿にはロプト教団の影がチラついているとのこと。・・・ロプト教団にこれから先、狙われる可能性が高いと・・・俺は知った。そのようなことがあったり、これから先に起きるかも知れないことがあるというのに、・・・エシャル殿はそれを微塵も感じさせない程、・・・前向きだ。より良い未来を掴む為に、日々・・・明るく過ごしている。・・・それは何故か?・・・エシャル殿の心が強いからだ。

 

レイミア殿達にもそれは言えることだ。話を聞く限りティルナノグの出身、なのに・・・折れずにいる。先程までは少しだけ暗い雰囲気を纏ってはいたが、エシャル殿の発言にていつもの雰囲気に戻った。・・・それを見るに、レイミア殿達もこのティルナノグには色々と思うこともあるのだろう。故郷であればそれも仕方なし、だが・・・折れずに傭兵として大陸を巡る強さがある。そう・・・、心の強さだ。レイミア殿達はこのティルナノグを変えたいのだろう、その想いが強く・・・今も戦っている。エシャル殿は彼女達のそこに目を付け、個人で彼女達を雇い入れた。今回の調査の為というのもあるだろうが、彼女達のその意志・・・経験を求めたに違いない。

 

・・・それに比べて俺は?エシャル殿に負けて、その剣に惚れ込んで自らその配下・・・弟子となったつもりだが。・・・確かに剣の技術は上がったと思う、だが・・・それだけだ。その技術が自身の強さになっているとは思う、思うのだが・・・俺は・・・。

 

・・・俺はただの剣士だ、その技術を高めるだけの剣士。・・・マリクル王子に勝つことだけを考えてここまでやってきたというのに、俺はいつの間にか剣術を高めることだけに執着していた。いつ・・・闘争心が消えた?いつ・・・俺はただの剣士にへと落ちぶれた?・・・・・・考えれば考える程、俺は剣士であって戦士ではないということに気付いた。・・・そういえば、この地がティルナノグであると知った時、最初に思ったことは・・・、

 

『俺は剣士としてこのままいけるのか?』

 

・・・そう、俺は戦士ではなく剣士と言ってしまった。俺は剣士だ、それと同時に戦士でもある。だが、俺の戦士としての心が死にかかっている。エシャル殿に蹴られて、考えて・・・気付くことが出来た。もし蹴られていなかったら気付きもせずに、折れる前になまくらとなってつまらん男になっていたことだろう。

 

・・・今思えば、海賊との戦いで久々の殺気を怯む程に浴びた。その時はかなりキツかったが、・・・俺の心は高ぶっていたな。武器も何もないレイミア殿達を守る為に、殿として海賊達をいなして逃げたあの時、俺は確かに戦士だった。弱きを守る者として、心を奮い立たせた。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・そうか、・・・そういうことか。俺には心が備わっていなかったのか、・・・だから俺は。そういえばマリクル王子も言っていたな、

 

『ホリンは技術だけはいいな、・・・だがそれだけだ。お前には何か無いのか?強さを求める以外の何かが・・・。』

 

強さを求める以外の何か、・・・俺には無いな。だが、あの戦いではあった。レイミア殿達もそれぞれあるのだろう、自身の心の中に決して譲ることの出来ない何かが。エシャル殿にも、・・・まぁ言わずもがな。

 

ティルナノグに縛られるな・・・か、・・・なるほど。心の何処かで気付いていた弱さ・・・何もない俺は、ティルナノグという戦士の墓場に引き摺られていたようだ。・・・今からでも遅くはないか、気持ち新たにいけるものかね?・・・気付いただけ良かったのかもしれん。戦士の墓場から再び立ち上がる、・・・何だか一回りも強くなれそうだ。

 

そんな俺を見ていたエシャル殿は、

 

「蹴ってから数分間・・・何か考えていたみたいだが、ホリンならすぐに戻れるとは思うぞ。強さだけではなく、他に揺らがぬ何かを見付けられれば更に強くもなれる。要はここだここ、・・・俺もまだ決まりきってはいない身だけどな!」

 

親指で胸をトントンと指す。エシャル殿を見て、俺は自分の進む道を改めて考えようと決意した。それと同時に揺るがぬ何かを見付けなければな。




ティルナノグは戦士の墓場という設定。

故にこの場所は禁忌の地として、イザーク国民は住人以外は絶対に近付かない。というか、場所を知らない。

精霊の森のディアドラの故郷と同じようなものです。

ティルナノグ出身のレイミアは・・・アレです。

とにかく、エシャルはこの地に目を付けました。何か企んでいる模様。

子世代の伏線になるのかな?


ホリンはイザークの現役として色々思い悩ませました。

一皮剥けるかな?



久々なんで、作者もちょっとアレです。

正直に言って、アレ?って自分で感じています。もやもや何ですよね、・・・間が空くとやっぱりダメだなぁ~。

でも頑張りますぜw

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