ファイアーエムブレム~俺の系譜~   作:ユキユキさん

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つんさん、A-ガーランドさん、感想ありがとうございます!

マッシュマンさん、アンケートありがとうございます!


閑話 ~他国の状況・その2

《ノディオン王家》

 

ーグラーニェー

 

アグストリア諸公連合の最北にあるマディノ領、オーガヒルの海賊と一進一退を繰り広げるアグストリア一の激戦区。そのマディノにエルトの愛する甥、エシャル君と思われるトラキアの将軍が依頼の為に赴くという。その報を友人であるベオウルフさんからの手紙で知らされ、イーヴを伴い慌ててノディオンを発ったのは大体二ヶ月前かしらね?・・・そして先日、エルトが帰ってきたのだけれど・・・、

 

「・・・ああエシャルのことを陛下に話したい!その武を、その勇姿を、エシャルがトラキアにて健在であると、思う存分語り尽くしたい!・・・が、箝口令が敷かれている!・・・そして、エシャルの身を考えるならば話せない!・・・何ということだろうか!・・・これも全部、・・・奴等のせいだ!俺の面前に姿を現すことがあるのなら、ミストルティンで一刀両断にしてくれるわ!」

 

数日おきにこの調子なのよね、・・・あれ程箝口令を敷いた上で城内の者達に語り尽くしたのに、まだ話し足りないのかしら?・・・まぁイムカ王もエシャル君のことを孫可愛がりって感じだったから、エルトが話したいのも分かるのだけれど。・・・話せないわよね?エシャル君のことは、・・・彼の身を案じるのならば絶対に。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

エルトが帰った時、ノディオンの主要な者達を王座の間へと集めた。そして最初に言った言葉は・・・、

 

「これより話すことは他言無用、ノディオンのみの箝口令を敷く。最終的には異質なモノも含まれる為、このノディオンと共にあると誓える者以外には話せん。・・・最悪、ノディオンはアグストリアにて孤立するかもしれない。・・・それほどの内容が含まれる、故に咎めはしない。覚悟の無い者は、早々にこの場から外してくれ。」

 

エルトはそう言ったのだ。ただエシャル君であるか否か、それだけではなかったみたいね?・・・事はノディオンの孤立、アグストリア諸公連合を敵に回すことになるかもしれない、それほどのことをエルトは知ってしまったのね。優しいエルトは、みんなに選択肢をあげた。・・・聞けば事が起きた場合、・・・万が一があるから。でもねエルト・・・、私も含めてだけれど、みんな貴方のことが好きなの。共にあることを願う者ばかり、去る者などいないのよ?

 

・・・集まった者はみんなエルトを見る、覚悟ある目で・・・。みんなの視線を集めるエルトは・・・嬉しそうね?顔には出ていないけれど。そして語ったことは、良い情報と悪い情報。良い情報とは件のトラキアの将軍、彼はあのエシャル君で間違いないとのこと。そしてエシャル君達と協力し、オーガヒルの海賊をほぼ壊滅にまで追いやったこと。ここに集まる主要な者達の殆んどが、エシャル君とは面識がある者ばかり。生存の報にみなが喜び、海賊壊滅に歓声を上げる。・・・が、次の言葉に動揺が走る。・・・エルトとエシャル君が剣を交えた、それも命を懸けた死合いをだ。エルト曰く、

 

「・・・気を緩めることが出来なかった、・・・緩めていたのなら最悪、・・・この首を持っていかれただろう。」

 

エルトは余裕で、まだまだ余力があるといった虚勢を張ったらしい。エシャル君はそれに気付かずに、いや・・・気付けなかったようだ。

 

細かい内容は伏せるとのことで言ったことに、私達は驚いた。・・・エシャル君は正気ではなかった、故に襲い掛かってきた。色々あり正気に戻ったエシャル君と和解、そして・・・あの事件にアグストリアの誰かが関わっているかもしれないとのこと。・・・エルトに襲い掛かったのはその恐怖が、・・・自分を狙っていると思ってのことらしい。エシャル君は本能的に、アグストリアの中央には行きたがらないらしい。自分の命を狙うナニカがあると、そう思っているみたいなのだ。そのことが剣を通じてエルトにも伝わったらしく、エルト自身もそれを信じての箝口令となった。・・・にわかに信じ難いが、エシャル君に会ったエルトのことを信じようと思うし、それが本当のことならば話せないし呼べもしない。私もエシャル君に会いたかったが、おいそれと呼べもしない事実に気持ちが沈む。・・・このアグストリア諸公連合内に闇がある、エシャル君のことを思うのならば、今回の話は私達の中に納めておくべき。最悪離反することを視野に入れている、・・・エルトはそう決意している。そして私達は聞いた以上、彼にただ従うのみ。重苦しい空気の中、私を含めたみんながそう誓ったに違いない。

 

・・・がその空気も長くは続かず、暫くしてからエルトが目を輝かせてエシャル君を語り尽くす。先程の重苦しさを消すが如くの饒舌さ、・・・エシャル愛ここに極めたり、・・・最終的にはいつも通り。それがエルトの機転であり優しさが半分、・・・後はただ語りたいだけ、良いも悪いもエルトである。・・・まぁ私達ノディオンは共にある、それが分かったのだから良しとしましょう。

 

ーーーーーーーーーーーー

・・・自分から箝口令を敷いておきながらのこの状態、どれだけエシャル君が好きなのかしら?ちょっと妬けてしまうのは仕方のないこと。あの時はラケシスがいなかった、それ故にあの後・・・エルトはあの話をしようとしたのだけれど、私とイーヴはそれを止めた。万が一が起きた場合、何も知らぬ方が言い逃れしやすいし、助かる可能性が高くなる。現状・・・教えぬ方が良い、状況によっては教えなければならないし、自ら知ることになってしまうかもしれない。だが今はその時ではない、噛み砕いて説明してエルトは納得したんだけれどもね?

 

・・・これは発作のようなもの、痛撃を与えてその思考を途絶えさせるしかない。私は近くにいる使用人から箒を受け取り、

 

「・・・落ち着きなさい、エルト!!」

 

その言葉と同時に、箒の柄にて脇腹を一撃。ノディオン内では非力な私、されど一点集中で突けば・・・、

 

「・・・んごふぅっ!!?」

 

と、エルトは蹲り悶える。・・・色々と問題を抱えることになったのだけれど、いつも通りのノディオンであり、何が起ころうとも乗り越えられると私は信じているわ。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

《イザーク王国》

 

ーマリクルー

 

「ハハハハハハ!甘い、甘過ぎるぞアイラよ!この俺にその程度の流星剣、子供の児戯に等しい!見よ、俺の剣は受け止めるか弾くか、はたまた俺自身が避けるかで当たりはしない!緩い、緩すぎるわアイラよ!高めろ・・・その血を!内に秘めたるオードの血を感じ取るのだ!ハハハハハハ!!」

 

俺は高ぶる戦闘欲を十分に発揮、必死に追い縋る妹アイラをあしらい続ける。この俺にここまで追い縋れるのはイザークでもそういない、その点は称賛に価する。

 

「・・・まだだ、・・・まだ私は駆け抜けることが出来る筈だ。・・・兄上ぇぇぇぇぇっ!!」

 

更に鋭さが増すアイラの剣戟、・・・流石はアイラ!剣聖オードの血を引く者、戦いの中で成長するは戦士の証!ならばこの俺も、真正面からぶつかり、斬り裂くのみ!

 

「・・・その意気や良し、敬意を表しそれを・・・斬る!・・・オードの真髄が一つ、俺の流星剣を捌いて見せよ!」

 

互いに最高の状態でぶつかり合う、・・・・・・結果は決まりきっているがな!

 

 

 

 

 

恒例の手合わせを終えて、へたり込むアイラの隣に座る。アイラは息を荒らげるばかりで余裕が無い、まぁ当然ではあるな・・・この俺が相手なのだから。俺からすれば、アイラはまだまだ未熟。腕は上がっているが、どうにも剣にのめり込み過ぎている。オードの性か、それは仕方のないことなのだが・・・、恋の一つでもしてもらいたいものである。守るべき者、大切な者・・・、それに準ずる何か・・・或いは想い。それを知り、手にすることが出来れば、更に強くなると思うんだけどな。俺はアイラの横で、アイラが恋する乙女になっている未来を想像してほっこりする。・・・・・・いいな、恋するアイラ!愛らしいぞ!・・・・・・プッ、・・・流石は俺!無意識に言葉遊びをしてしまうとは、・・・自分の才能が恐い!・・・・・・まぁそれはいいとして、アイラに良い人が現れれば安心するんだがなぁ~・・・。

 

 

 

 

 

ーアイラー

 

今日も兄上と手合わせをし、やはりと言うか・・・手足も出なかった。・・・今日はイケると思ったのだが、力及ばずに敗北。兄上は強すぎる、私もイザーク内では強者の部類に入るのだが、格が違う。兄上に勝つことが出来る武人は国内にはいない、他国にもそういないだろうな。思い浮かぶのは、勇名轟くノディオンの獅子王ぐらいか?後は・・・誰がいるか分からない、はっきり言って世俗に疎いからな。・・・どの道私は負けたのだ、誰が勝てるとかはどうでもいい。せめて一太刀、兄上に一矢報いたいが・・・私では無理だろうな。・・・木刀で手加減した上、私の木刀を斬り刻むとか・・・出来る筈がない。やはり兄上は化物だ、・・・兄上にあって私に無いものは何だろうか?・・・私には分からない、分からないから修行しかないだろうな。剣に全てを懸ければきっと・・・、いつかは勝てる日が来るだろう。

 

 

 

 

 

手合わせをして乱れた息を正し、兄上に手合わせの礼を言おうと思ったのだが・・・、

 

「・・・アイラに良い人が現れれば安心するんだがなぁ~・・・。」

 

突然、横から兄上の呟きが・・・。いつの間に!?気配が無さすぎるし心臓にも悪い、それ以上に・・・、

 

「・・・良い、・・・人?」

 

兄上が呟いた良い人とは、一体何だろうか?・・・好敵手のことだろうか?・・・まぁそのような者がいれば、兄上にも迷惑を掛けないし、私の腕でも上がるというもの。・・・ふむ、探してみるのも良いかもしれない。なんて考えていたら、兄上はこちらを見て・・・、

 

「・・・口に出していたみたいだな、・・・なら話が早い。アイラ、・・・お前に良い人はいるのか?」

 

と言ってきたから、

 

「・・・すみません兄上、私には好敵手と言える者がおりません。・・・ですが、兄上が安心出来るよう探してみます!」

 

と返してみれば、何とも可哀想な目で私を見てくる。・・・何故そのような目を?

 

「・・・好敵手と受け取ったか、・・・我が妹は脳筋系みたいだな。・・・この調子では独り身決定、・・・由々しき事態だ。」

 

・・・脳筋!?・・・私を脳筋と言われたのか兄上は!・・・私はそれを断固として抗議する!私は決して脳筋ではない、・・・私には剣以外のことでも出来ることぐらい!

 

・・・・・・・・・・・・・・・。

 

・・・剣のこと以外、何も出来ないじゃないか。・・・兄上の言うように、脳筋の部類に入るな私は。・・・ぼっち、・・・私はぼっち。兄上の危惧するように、このままでは友人無しのぼっち決定じゃないか。シュンとなる私を見た兄上は、

 

「・・・いやうん、・・・まぁお前はぼっちではある。・・・がそうじゃなくてだな、・・・好きな人がいないのかとそういう意味で良い人と言ったのだが。・・・ぼっち、・・・そちらも気になることではあるな。・・・妹のアイラがこのままでは、・・・独身ぼっちの喪女剣士になってしまう。・・・どうしたものかな?」

 

好きな人?・・・それは恋人とかそういった者のことか?・・・兄上、・・・何とも失礼な!

 

「兄上!好きな人とか恋人とかは必要ありません!今の私はいかに剣の腕を上げるのか、いかに兄上との差を縮めるのか、そう言ったことを考えねばならぬのです。・・・それを恋人はいるか等と軟弱な!私を見くびってもらっては困ります!あえて言うなら剣が恋人ですよ私は!・・・ですので安心してください、兄上!」

 

と言えば、

 

「・・・独身ぼっちの脳筋喪女剣士待ったなしと、・・・何処に安心出来る箇所があるのか?・・・危機的状況じゃないか。・・・アイラ、・・・何とも哀れな。」

 

兄上の死んだ目が私の心を抉る、・・・何故?何故そんな目で私を見るのですか!?

 

 

 

 

 

ーガルザスー

 

・・・俺は無力だ、マリクル王子に次ぐ剣士と呼ばれようとも、父上の考えを諌めようとも、一族の者達に荷担を控えるように言っても、最早・・・止めることが出来ないところまで来てしまった。どんなに不満があろうとも、やって良いことと悪いことがあるではないか。グランベルを非難するのは良い、だがそれで戦争を仕掛けるのは、グランベルの友好都市ダーナに攻め入るのは、イザークの武人がすることだろうか?まして虐殺を目論むとは・・・。まだ計画の段階ではあるが、実行を止めることはもう叶わない。リボー一族の総意、そうなっている。何故そうなった?どうしてこのような道を選ぶ?止めようにも俺は、城の牢に囚われて何も出来ない。そして俺と共にここにいるマリータ、この娘を守る為に動くこと等出来ない。事が起きるのを待つしかない、無力な男だ・・・。このままでは一族全てが討たれるだろう、最悪・・・我が祖国イザークがグランベルに・・・。だがどうしようにも手が無いのだ、俺はここにいるしかないのだ。

 

妻が亡くなってから変わっていく一族、仕組まれた死・・・妻は何者かに殺された。ご丁寧に、ダーナの兵が使う剣がそこに残されていた。明らかに不自然、されど疑わぬ父上に一族の者。そして今回の計画、・・・グランベルへの不満から妻の仇討ち、そこまでなら俺も参加しただろう。だが虐殺を目論み、イザーク王家に知らせぬ事態に俺は疑問を持ち反発、そして今に至っている。

 

しかし分からない、武骨な俺には分からない。何故妻の死が隠蔽され、イザーク王家に伝えないのか?何故ダーナでの虐殺が決定事項なのか?分からない、分からないがマリータは妻の宝、今は亡き妻の為にもこの娘だけは守らねば。それだけは絶対に、この命に代えても・・・!

 

・・・一族がダーナに攻め入る時、その時がマリータと共に脱出する最後の・・・。一族を捨てることになるが、イザークに対して不義理になるが、俺は妻との間に産まれたマリータを守ってみせる。無力な男が出来る唯一のこと、それだけは・・・な。




エルトシャンは、アグストリアの闇が気になるようで万が一を考えています。ノディオンに所属する全ての者と共に警戒しますが、最終的にはいつものノディオン。

それが強みなのかも知れませんな!エルトシャンの手綱を握るグラーニェに期待です。



イザーク王家は現在、平穏ではあるがリボー一族がヤバい。

ロプトの魔手が既にね。

ガルザスのみまとも。彼はマリータを連れて逃げることが出来るのか?



エシャルの嫁・最終アンケート

ディアドラ:19

アイラ:19

パメラ:16

エスニャ:12

ティルテュ:11

複数:18



そろそろアンケートを終わりにしたいと思います。


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