ファイアーエムブレム~俺の系譜~   作:ユキユキさん

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今、乗っていますんで!


『なろう』も頑張るから怒らんといて!


第26話 ~海賊掃討戦《港街マディノ防衛戦・前半戦》

ー海賊ー

 

港街マディノから少し離れた森の中、一人の海賊が報告に戻ってきた。

 

「傭兵の大半は目論見通り、オーガヒル城に向けて進軍しやしたぜ! 街に残るは少数のみ、俺達の方が圧倒的に有利! 数で押し込めりゃあ、為す術もなく蹂躙出来やす!」

 

それを聞いたこの森に待機する海賊の頭が、

 

「そうかいそうかい、俺達の方が有利かい。…そいつぁいい! 他の奴等にも伝えてきな、数の暴力で全てを壊し尽くそうとなぁ!」

 

「了解しやした!」

 

頭の命令により、数人の海賊達が多方面に別れて消えた。

 

「…グフフフフ! 邪魔な首領は傭兵達に消され、街は俺達の物に! その後は傭兵達を囲んで殺っちまえば、…俺達の天下だ!」

 

下品な笑みを浮かべる海賊の頭は、待機している他の海賊達に報告へ行った者達が戻ってきた後、

 

「…野郎共! これから街を強襲する! 殺せ! 壊せ! 奪え! 犯せ! 好き放題やっちまいな! 今日よりこの地は俺達の支配地だ! その為にもさっさと邪魔者を排除しようじゃねぇか!」

 

「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」」

 

愚かな海賊達は、この地で全てが終わることをまだ知らない…。

 

 

 

 

 

ーエシャルー

 

「奴等…森から山から海から、各方面からこの街を目指して突撃してきます!」

 

港街の周囲に放っていた斥候が、海賊達の襲撃を知らせてきた。報告を聞くとかなりの数、やはり此方が本命のようだ。まぁ…奴等の動きは知っていたからね、防衛準備は終えている。向こうから攻めてくるなら好都合、単純に迎え撃つのみ。…作戦開始といこうかね!

 

 

 

 

 

俺は単身で、海賊達を待ち構えている。ここ港街マディノは城塞とまではいかないが、街全体をなかなかに巨大な塀で囲まれている。アグストリアでも有数の港街で、海賊等の襲撃も少なくない。街を守る為に、街の住民とマディノの領主とで建てたみたいだ。そんな街の玄関、正面大門にて奴等を待つ。

 

海賊達の主力は此方に来る筈、数で勝る奴等は一気に攻め入ってくると読んだ。他の門は幅が狭く、大人数で攻めるには向いていない。しかしこの正面大門は、馬車等も通る為に広く作られている。圧倒的な数で蹂躙せんとする奴等は、ここに押し寄せてくる筈なのだ。勿論他の門にも小隊規模で兵を配置している、狭い門故に守りやすい。まして街を守るはトラキア兵、狭く戦い難い場所は得意中の得意。

 

そして、海から攻め寄せてくるであろう奴等の足止めに対しても手は打ってある。街の住民達よりかき集めた要らぬ木材、壊れた舟等を浮かばせてある。これで足止めをして侵攻を遅らせ、その時に弓や魔法による攻撃が出来るよう配置はしてある。それにホリンにカナッツ君、補助のディアドラと中隊規模の兵と層が厚い。海より迫る奴等は、陸に上がれぬまま地獄に落ちるだろう。

 

各方面の門、海に面した港、そして街の玄関である正面大門。最も地獄に近く、生き残ることが出来ぬ場所。それは、俺のいる正面大門になるだろう。弱者を守る圧倒的強者であるこの俺が、生きる価値の無いゴミ共を粛正の炎で浄化してくれよう。俺は嫌いなんだよ、目の前で無抵抗のまま死に往く者を見るのが! そして、それを愉悦の表情で行う奴等を見るのが! あの時の俺ではない、…俺ではないのだ!

 

……一瞬、ほんの一瞬、俺の脳裏にある光景が浮かび上がり、そして消えた。…堂々と白昼夢を見るとは、俺もまだまだかね? 抑えようのない怒りが沸き上がったような気がするのだが、気のせいだったか? …いや、気のせいじゃない! 街を攻めんとする海賊達に怒っている! 守ってみせるぞ、この街を!

 

…暫くして、遠くから地鳴りが如く海賊達が攻めてきた。見る限りかなりの数、500人以上はいるか? …ヴォルツ達の方は手薄だな、こりゃあ…! まぁここに姿を現したってことは、他んとこも攻めてきているな。とりあえずは戦闘開始、一人も生きて帰さねぇぞコンチクショー! …なんて思いながら、よくもまぁこれ程の数が陸にて潜伏出来たと感心してみたり。…どーでもいいことっすね!

 

 

 

 

 

ーカナッツ隊ー

 

エシャル将軍が自ら集めた情報と、斥候による情報により海賊達の襲撃が確定。我らトラキア兵は街の各所にある門にて、奴等の襲撃を待っていた。今回のような行動に制限のある戦いは、我々の最も得意とするものである。

 

あのミーズの戦い以降、更に磨きのかけた防衛力を発揮する時。エシャル将軍と共に、カナッツ隊長と共に、様々な戦いを想定し訓練してきたのだ。我々の背後には他国の者とはいえ弱き民達がいる、以前の我らとは違う! …ここを抜けさせるわけにはいかぬ! エシャル将軍の信頼を裏切るわけにはいかぬのだ! 我らトラキアの強さを見せてくれよう!

 

 

 

 

 

遠方より、賊の雄叫びが響いてくる。奴等は勝利を確信しているらしく、自分達の存在を隠すことなく攻め入ってくる。なんと愚かな奴等か! 我らトラキアの恐怖をその身に刻み込み、地獄へと誘ってくれる!

 

「弓兵隊、魔兵隊、構え! 重兵隊は守備を厳となせ! 一人も門内へ、塀の内側へ入れぬなよ!」

 

エシャル将軍麾下カナッツ隊の力…、このアグストリアに響かせてくれる!

 

 

 

 

ーカナッツー

 

「船だから分からんが、大体300…ぐらいか? 思っていたより少ないな。海賊は海からが普通なんだろ?」

 

「…ホリン殿、先程ここからヴォルツ殿達が対岸に向かったんだぞ。ヴォルツ殿達の進行方向から、多く来る筈もない。逆に考えて、これ程の数が海に潜んでいたことに驚くべきだ。普通ならば、ヴォルツ殿達に見付かる筈。流石は海賊、…と言うべきか。」

 

ホリン殿のアホな発言に呆れつつ、海より侵攻してくる海賊達に感心する。海はやはり、奴等の庭なのだと。だがしかし、奴等は予想もしていなかっただろう。この港が奴等の死地になると、我らの罠であるとな。

 

当初の作戦通り、ヴォルツ殿達が船で進軍した後に用意していた物を海に流した。港に障害物があるとは、奴等も思うまい。気付くとは思うが、今更引き返すこともせずに突っ込んでくることだろう。我らを侮ってな。賊というのは目先の欲に囚われがちだ、目の前の餌に退却の文字は無いだろう。

 

「手筈通りでいくぞ、お前達! 奴等が突っ込んできた瞬間に、弓兵隊と魔兵隊は攻撃を開始! 他の者達は海賊達を陸に上げるな! 海に暫くの間…釘付けよ!」

 

奴等の目を此方に向けさせ、その隙にアレを海に…。この策が成った時、この戦いは我らの勝利となろう。

 

「皆さん、無理はいけませんからね! 負傷しましたら、すぐに私の下へ来てください!」

 

我らが女神の声に、兵達が士気を上げる。ディアドラ様が後ろに控えている、これだけでも兵達は安心して戦える。それと同時に、彼女を危険に晒すわけにはいかぬ故…躍起になる。…エシャル将軍、恐ろしいからな。隣のホリン殿も、何やら思い詰めた表情を…。何故? ……まぁいい! 今はただ戦うのみ! 我らがトラキアに勝利を! エシャル将軍に勝利を! 女神に勝利を!

 

 

 

 

 

ー海賊ー

 

岩礁に囲まれた島に潜んでいた俺達は、船でオーガヒルにへと向かう傭兵達を遠目で見ていた。

 

「オーガヒルに進軍たぁご苦労なこって! 間抜けな奴等め!」

 

傭兵達の船が、対岸のオーガヒル方面へ消えるのを確認した俺達は、

 

「おっしゃあ野郎共! マディノを蹂躙すんぞ! 陸の奴等よりも先になぁ~!」

 

傭兵達が多少はいるみたいだが、俺達の総勢は凄いぜ! 合わせて1,000は超えるんだからなぁ! オーガヒルの海賊が団結してんだからよぉ、当然だぜ! 戦いってーのは数だぜ? ぎゃははははは!!

 

 

 

 

 

港まで迫る俺達だが、

 

「奴等、海に色々と流していやがる。数の不利を足止めで補うってか? 笑わせるぜ! この程度のことなんざ日常茶飯事、構うことはねぇ! 突っ切ってやんな! 陸に上がりゃあこっちのもんよ!」

 

海に漂う障害物を押し退けながら、陸へと迫る俺達。この程度で俺達が止まると思っているのか? ヤワじゃねぇぜ、俺達はよぉ!

 

 

 

 

 

「頭ぁ! 障害物が詰まりやがって、これ以上は進めませんぜ! 他の船と噛み合いやがって、身動きが取れやせん!」

 

奴等…姑息な手を使いやがるな! だがよぉ!

 

「狼狽えるんじゃねぇよお前等! なら渡りゃあいいだろうが…、障害物をよぉ! 俺達は海賊だ! この程度の海渡りなんざ、屁でもねぇだろうが!」

 

足場を作る手間が省けたってもんだぜ! 俺を筆頭に、子分達も障害物に降りて渡り出す。止められやしねぇさ、目の前に極上の獲物があるんだからなぁ!

 

 

 

 

 

奴等は陸に上がらせまいと、矢を放ってくる。ただの矢じゃねぇ、風魔法と共に迫ってきやがる。風の勢いで矢の速さも威力も上がっている、その風で海渡りも容易じゃねぇ。陸に近付きゃ、待ち構えていやがった奴等に妨害される。だが、戦いは数だぜ! この一進一退は続かねぇ! こちとら数で勝っているんだ、押しまくって強引にでも突破してやるぜ!

 

 

 

 

 

奴等の動きが鈍ってきた、休むことの無い突撃に疲れてきやがったんだ! ぎゃははははは! ざまぁねぇわな! このままいきゃあ、俺達の勝利は確じ…、

 

「頭ぁ~!!」

 

今し方海に落ちた子分が俺を呼ぶ。

 

「んだぁ~! うるせぇぞ! さっさと上がって突っ込みやがれ! 俺達の勝利はもうす…。」

 

「油だぁ! 海に油が流されてやす!」

 

「…なんだとぉ~!!」

 

海に油…だと!? 俺は慌てて周囲を見回す、…障害物の隙間から見える海には油! …既にここら一帯にゃ油が!?

 

「やベェ…! 奴等、まさか…!!」

 

こっちに押し込んでこねぇ理由はコレか! あえて膠着状態に持っていき、俺達を海に釘付けやがった! 陸へ上がることに集中させて、油の存在を隠す。…風魔法も弓兵の援護ではなく、本命は臭いを消す為! …ってぇことは!! 俺は奴等に視線を戻す、そこには手を掲げて炎を作り出す魔道士が!

 

「や・・・止めろぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

俺の叫びも空しく炎が放たれ、全てが赤に染まった…。




次は後半戦。

近々、最終ヒロインアンケートをしますんで。

そん時はよろしくっす。

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