ーエシャルー
なんだかんだで、海賊討伐会議となりました。…え? 金髪イケメンはどうなったかって? イケメン君は、俺の仲間になりましたよ? …あの後、引き摺って宿に戻ってね。改めて話を聞いて、仲間というか弟子? にしました。
イケメン君の名前はホリン、イザーク王国ソファラの人間みたいっすよ。イザーク王国のマリクル王子に勝つ為に、修行の旅をしていたみたい。各地の闘技場で勝ち続け、マディノで初めての敗北。んで、俺の強さに惚れ込んで追っかけてきたとのこと。まぁ彼ってば強いし、俺の鍛練相手に良い人材だし、ディアドラの相手もしてくれると思うし、色々考えて迎え入れたってわけ。
それに、俺の心というか感覚? よく分からんのだけど、不安なんだよね。近々、何か起きそうな…、巻き込まれるというか…。数年の内に、よからぬ大きなことが起きる気がする。兄貴んとこもきな臭くなってきたみたいだし。
…そんなわけで、強い奴を傍に欲しくなったのだ! 俺の大切なモノを守るには、強い仲間が必要だと思うんだ。俺一人じゃ守りきれないかもしれんし、備えあれば憂いなしなのだよ! …ということで、ホリンは仲間兼弟子になったのでございます。
そういうことなんで、会議に戻りましょうか。ディアドラとホリンは、俺の傍にいます。俺はトラキア陣営なんで、二人もトラキア所属みたいになるでしょう。トラバントもディアドラのことは、マゴーネ団長達から色々聞いていると思う。ホリンも強いから、まぁ大丈夫だろう。
…客将みたいな感じになるのか、傭兵として雇うかは分からんが。本国に戻り次第、トラバントに要相談だな。俺の弟子だから、俺に丸投げになりそうだけど。俺の正式な仲間は二人だけだが、いずれは増やすつもりだ。いずれというか、現在進行形で増やすつもりだけど。そのことを考えると、俺の本拠地が欲しいところ。トラキアには、俺の家しかないからね。広い家だけど、仲間が増えたら狭くなるのは確実。…城か砦をねだったら、トラバントくれるかなぁ?
う~ん…と考えていると、何やら揺さぶられる。何事かと思ったら、隣のディアドラが俺を揺さぶっていて、
「…エシャル様、ベオウルフ様が意見を求めていますよ?」
…理解したよディアドラ。色々と自分のことを考えていたら、話が進んでいたみたい。主だった者達が、俺を見ていますな。自分が悪いんだけど、居心地悪いね!
「エシャル、なんか良い策でも思い付いたか? 真剣に考えていたみたいだけどよ。」
おぉ…! 策を考えていたのだと、勘違いしているみたいですな。馬鹿正直に別のことを考えていたなんて言ったら、白い目で見られるからね。予め考えていた策を言わねばなるまい。
「悪いな、少し考えていた。…そのお陰で、一応は纏まった。」
いかにも策を考えていましたという雰囲気を出しながら、俺は考えておいた策を口にした。
ドヤ顔で俺は言った。
「レスキュー戦法大作戦だな!」
レスキュー戦法大作戦とは、俺の魔法が鍵を握る策だ。要は、俺が中心となる策である。勿論、傭兵の皆さんの力も重要ですよ?
「…で、どんな策なんだい? 黒刃様。」
レイミアさんがそう言って、俺を見詰めてきた。美人の視線っていいよね!
「この策には、レイミアさんとこの傭兵さん達に活躍? になるか分からんけど、頑張ってもらうぜ?」
「私達が活躍…?」
とりあえず、策の内容を説明しますか。
まず、オーガヒルに点在する海賊集団。奴等の根城をそれぞれ特定、それとその周辺を調べあげる。次に美女・美少女を用意し、囮にする。それにつられた海賊達を、特定の場所に誘き寄せる。特定の場所に誘き寄せたら、囮の美人な傭兵達をレスキューで救出。その瞬間に、待ち伏せていた傭兵達が一斉攻撃。弓と魔法による先制から、剣士等による接近戦。簡単に説明したけど、これがもっとも被害の少ない策だと思う。…どうよ?
………反応無しだと!? 何故? 無反応な面々に戦慄する俺。
「…レスキューとかって、そう上手く救出出来んのか? 俺の知っているレスキューは、単体なんだが。」
レスキュー単体とかって馬鹿にしてんの? 俺を舐めんなし、そこらの魔法使いと一緒にすんなし。
「バッカお前、俺の魔法舐めんなよ? ワープで10人以上を数回送れる程の男だぜ? レスキューも余裕だよ? 黒刃様を舐めたらいかんぜ? …つーことで問題無し!」
俺は心外だーって雰囲気を出す。その雰囲気にも負けず、レイミアさんが…、
「囮といっても、無傷ではないわけさね。…途中で脱落してしまう仲間も出てくる。…私らだけ、わりに合わないんじゃないかい?」
レイミアさんの言うことは、もっともである。囮は危険だからね、しかも非武装にしてもらう予定だし。死地に飛び込むようなもんだ、しかし…!
「俺ってばリブローも使えるわけなのだよ、遠距離回復の補助付だから安心せよ。」
そこもちゃんと考えてますよ? 命懸けの囮をしてもらうわけだし、サポートは任せろ! 普通に戦うより生存率はバリ高だろうね。ついでに俺もスコルと共に、囮部隊を視界に入るように行動するつもりだし。音も無く飛ぶような隠密飛行も出来ます、シレジアで鍛え上げた技術だぜ。まぁそれでも、見付かる可能性はあるわな。そのこともふまえて、囮部隊の逃走ルートをしっかり考えなければ。
…そんな感じで話し合った俺達。俺の策について色々と、質問やら何やらをして纏めたわけで。最終的に実行されることになった。そんな中、海賊集団の根城特定、オーガヒルの地形把握、囮部隊の逃走ルートのこともある。それを俺が調べるんだと…、言い出しっぺで能力があるからってことで。めんどくせぇ…と思ったが、俺の考えたことだしね。…やるしかねぇっしょ、うん。
会議から数日間、傭兵の皆さんには守りに徹してもらった。街の方々は不安の中で生活しているんだろうが、傭兵の皆さんが頑張っている為に被害無し。海賊…、苛立っているんだろうね? 盗れない・殺れない・犯せないってね。いい感じじゃん? 作戦の成功率が上がる流れだよね? 海賊はアホだからね、苛立ってもいるから食い付きがハンパないでしょう。…ってなわけで、俺も頑張って調査しているわけよ。後、もう少しで終了っす。
…よっしゃ! 調査終了ですぞ! オーガヒルの地形やら何やらは、大体把握しました。流石に、隠し的な道とかは分からんけど。海賊はアホだけど、なかなかに賢しいからな。あるとは思うけど、まぁ問題は無いだろう。調べあげたオーガヒルの地形は図にして、色々と情報を書き込んで、最終調整でもしようかね。
…そんなわけで、主だったメンバーを集めて最終調整ってなわけです。
「…とまぁ、このように調べあげたわけだ。準備が整い次第、先ほど述べた順に撃破していく予定である。全ての集団を罠に嵌めるのは難しいとは思うが、半分ぐらいは消すことが出来るだろう。そんなわけで、各々方は最後の準備を。」
俺は自作のオーガヒル全体図を使い、みんなに説明。それぞれの部隊長に指示を出し、海賊討伐に向けて行動開始になるわけです。大体一、二時間後に出撃でいいかね? そんなことを考えながら俺は一応、各部隊を見て回るのである。
弓部隊・魔法部隊・白兵部隊…良い感じではないか。流石は歴戦の傭兵達、見ただけで確信出来るわ。…俺達の勝利がさ! 攻撃部隊は良いとして…、囮部隊はっと。
そして目にしたのが…、見目麗しい女傭兵の方々だった。非武装で一般人の格好をしている彼女達は、野に咲く花と言ったところか。可憐じゃないか! 俺っちのテンションも、自ずと上がっちゃうよ!
「…なんていうか、たまにこういうのもいいかもねぇ。私達も女なんだって、認識出来るよ! アハハハハ!」
とか言って、エプロンドレスのレイミアさんは満更でもない様子。他の方々も互いに指を指して、キャッキャと喜んでいますな! これは食い付きますよ、海賊のバカ助共は!
「エシャル殿、俺はいらないのでは…?」
そんな彼女達に混ざって、行商人風姿のホリン。自分は場違いなのでは…? といった感じだ。
「…ホリンは彼女達の主って設定だよ。女だけより、男がいるってのが現実味あるじゃん? 戦う商人ってことだから、多少は戦ってもいいぞ。やり過ぎは駄目だけどな! 追っ手をいなす役目ってことだね。色々な経験は大事だぞホリン、これも修行の一つだ。」
ホリンは釈然としない感じだが、そんなこたーどうでもいい。重要なのは海賊の食い付き度だ。まぁ俺も食い付く程の女性陣だ、海賊共も余裕で襲ってくるだろう。成功する様しか想像出来んな! わははははは!
…準備は整った、…レスキュー戦法大作戦の実行といこうじゃないか! 行くぜぇ野郎共! …ってなわけで、行動開始でやんす。因みにディアドラは、後方支援の回復役なんで安全です!
次回は一応、戦いになります。
あっさり終わりそうな予感が。
・・・にしても、最近暑いっすね?夏が嫌いな俺には辛い。