ファイアーエムブレム~俺の系譜~   作:ユキユキさん

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夢で覚醒のサーリャに愛される夢を見ました。

良いことがありそうですな♪


第20話 ~マディノ闘技場

ーエシャルー

 

血塗れの俺は、ベオウルフに文句を言われた。

 

「お前、馬鹿じゃないの? 血塗れはいいとして、登場と同時に首はねぇだろ! 流石に俺達もビビるわ! 何考えてんだよエシャルよぉ!」

 

首を投げ込まれたぐらいでピーピー言うんじゃないよ! まだ分からんけど、敵の数を減らしたんだぜ? そこは『よくやった!』と、褒め称えるべきじゃん。ちぇ~っ…! 面白くねぇの…。それに血でベタベタだしさ、ベオウルフの小言に付き合う暇は無いもんね。

 

「あぁ~…ハイハイ! どーもさーせんでしたぁ~…! つーことで、水浴びしてきまぁ~す。」

 

軽く聞き流して、この場を離れる俺。後ろでなんか喚いているけど、今は身を清める方が大事ですぞ。

 

 

 

 

 

ーレイミアー

 

「うぉいエシャル! …行っちまったよ、…ったく。ちゅーか、腹立つ態度だなぁオイ…!」

 

ベオはカリカリしているけど、…仲が良いのは雰囲気で分かる。…本当に『トラキアの黒刃』とは知り合いで、仲が良いってことが分かった。……あれがトラキアの重鎮、エシャル将軍。思っていたより若く、軽い感じの男だったけど、強者の風格があった。立ち振舞いだけでも、私では到底敵わない男。…この私が、初対面で臆するとはねぇ~…。エシャル将軍、…もっと知りたいね。

 

エシャル将軍が、水浴びの為にこの場からいなくなった。ベオはブツブツ言いながら、将軍の持ってきた首を検分する。私は今回の依頼での責任者だからね、一緒に検分しないといけない。…………これは間違いない、

 

「討伐対象のガザック海賊団の面々だね、…それと本人。手を焼いた奴等の首かい、…切り口も見事としか言いようがないねぇ。たった一人で討伐、『黒刃』の名は伊達じゃないね。」

 

コイツらに仲間が何人か殺られたわけなんだけど、代わりに殺ってくれたってことにしようかね。私の手で殺りたかったけど、仕方ないしねぇ~…。それに、まだ討伐対象の海賊が多くいる。今回の依頼は、長くなりそうだよ。…っと言っても、将軍がやらかしそうだけどね。会って間もないけど、そんな気がするよ。

 

 

 

 

 

将軍がいなくなって、暫く経った。…水浴びにしては長い、どうしたんだろうね? そう思っていたら、

 

「副長! エシャルの旦那が大将と、闘技場へ行っちまいました! 二人で『ロマンだぜ!』とか言って!」

 

「あの馬鹿二人…! 確かに今は様子見しているけどよぉ…、そりゃねぇだろ…!」

 

……ヴォルツは自由人だと分かっていたけど、将軍も相当な自由人みたいだね。将軍のお陰で、海賊の一角は崩れている。それでも、敵対している集団は10近くある。一角が崩れたってことは、アイツらも分かっている筈。報復にいつ動くか分からない今、警戒をしなければならないのに。

 

「…ベオの言うように、見極めるのは難しいね。この状況で闘技場は読めないよ、何か考えが…。」

 

「そんなもの、二人にはねぇよ! 気分で動くような二人だからな! …会議は中止、俺は二人を引き摺ってでも連れてくる!」

 

強力な助っ人ではあるけれど、クセが強いね。この先どうなるか、…不安だねぇ~。

 

 

 

 

 

ーエシャルー

 

「ヴォルツ、どっちが多く勝つか勝負と洒落こもうぜ。」

 

「男は黙って武で語るべし…か、その話…乗った!」

 

「己の力がどこまでか、男なら気になるからな!」

 

「そこに闘技場があるのなら、足を踏み入れるのが男だな。」

 

「「何はともあれ…闘技場は、男のロマン!!」」

 

 

 

 

 

 

……とか言って、俺はヴォルツと個人で参加したわけで。今んとこお互い6連勝! …だったんだけど、

 

「まさかこの俺が破れるとは…、世界広しといえ…無念。」

 

7人目で負けましたよ、ヴォルツの大将。完全に油断、スリープの剣如きを食らったみたい。ヴォルツ程の男でも、ポカはするんすね! 俺としては嬉しい限り、次勝てば俺っちの勝利ってなわけよ!

 

「ドンマイドンマイ! こんな時もあるさ! ちゅーことで、俺は勝ちにいくぜぃ! …綺麗な姉さんの店、奢って貰うぜヴォルツ!!」

 

下心全開! 俺は愛でるぞ、お姉さんを! …奢りで!! なんと甘美な響きだろうか! 俺の財布になる男、ヴォルツ。…大男は、隅っこでイジけています。油断するのが悪いのだよ、俺はしないけどね!

 

…で、7戦目の俺。相手は金髪の剣士、俺と同世代ぐらいのイケメン。あちらさんも連勝しとるみたいだが、それもここまでよ。この俺が相手なんだからな!

 

「アンタが俺の相手か。…かなりの腕を持っているようだが、俺には勝てないだろうな!」

 

金髪イケメンが、地を這うように駆けて俺に迫る。…コイツ、出来る! そう思った瞬間、俺は地を蹴り相手の速攻を避ける。そしてすぐさま地を蹴り直して、お返しと言わんばかりの速攻。イケメンは俺の一撃を、何とか受け止めたようだ。

 

「やるねぇ…イケメン君、俺の一撃を止めるとは。」

 

「…くっ! それは俺の台詞だ、かなりとは思ったが想像以上だ…!」

 

顔を歪ませて、何とか堪えている感じだ。…俺の方が上みたいだが、イケメン君もなかなか。…イザーク剣士と見た! ならばあえて互角に戦い、学ばせてもらうかな。イザーク剣術をさ! そうと決まれば…! 俺は堪えるイケメン君を蹴り、つばぜり合いから逃れる。

 

「…ぐぁっ! 騎士かと思ったら、傭兵かよ!」

 

「これでも騎士ですよ? 闘技場で騎士道精神なんざ、邪魔なだけだね!」

 

騎士道よりも、目先の勝利! 勝ちにいくのがこの俺エシャルさ!

 

 

 

 

 

ーホリンー

 

俺の剣がここまで通用しないとは…。今回の相手は強敵、…これ程の者が闘技場に参加しているとは。目の前の、対戦相手を見る。赤い双眸が俺を見ている、口元に笑みを浮かべている。窺うように…、されど鋭く剣を振るう姿。楽しそうに、楽しそうに俺へと迫る対戦相手。…まるで、王子と戦っているようだ。

 

俺んとこの王子は戦闘狂だ、高ぶると戦闘狂になる。普段は優しく聡明なのだが、剣を持ち高ぶると鬼になる。何度か挑んでみたのだが、全て半殺し。流石は剣聖オードの血、流石はマリクル王子。俺も同世代の中では抜きん出ていると思っていたのだが、やはり聖戦士の血筋には敵わない。

 

…と言っても、俺にも流れているんだけどな。まぁそれでも俺はイザークの剣士、強くなる為に修行の毎日。そして思い立って旅に出たわけだ、打倒マリクル王子! その修行の旅でアグストリアに、マディノに来て闘技場に参加したわけだが。…マリクル王子に匹敵する男と会うとは! この男に勝つことが出来たのなら、王子にも勝てる可能性が出てくる。…修行の成果を発揮するのみ、恨みは無いが覚悟してもらおうか!

 

 

 

 

 

お互い譲らない剣撃の応酬、相手が若干遅れてきている。ここぞとばかりに、剣撃の速さを上げていく。俺の速さについてこれなくなった相手の腹に、先程のお返しにと蹴りを加える。

 

「…ぐぉっ!」

 

いい感じに当たったようで、相手はヨロヨロと後ろに後退する。俺はこの隙を逃す程、盲目していない! 一気に距離を詰め、必殺の剣技を発動させる。我がソファラに伝わる秘剣、月光剣を! 俺の血が、傍系ではあるがオードの血が、身体中を駆け巡り、剣を持つ手に集中する。

 

「これで…、終わりだぁぁぁぁぁっ!!」

 

青白く輝く我が剣で、この戦いを終わらせる!

 

 

 

 

 

…会心の一撃だった筈、その筈だったのに。相手の顔は…、相手は笑みを浮かべていた。瞬時に身を翻し、俺の一撃を紙一重で避ける。会心の一撃は地を穿ち、そして…、

 

「イザーク剣術が一つ、…堪能させてもらった!」

 

その言葉で理解した、相手は手加減をしていたのだと。俺の剣で、学んでいたのだと。…俺とは桁が違う大物、王子と同じ強者…。クソ…! 悔しいぜ…。悔しさと同時に、強者と戦えたことが嬉しかった。手を抜かれていたとはいえ、俺自身も学べたのだから。惜しむなら、俺の命がここで終わるってことだろうか。………そして俺の視界は、黒く塗り潰された。

 

 

 

 

 

ーエシャルー

 

……危なかった! この一言に尽きる。もし、ヴォルツが油断で負けていなかったら、…完全に俺は、サヨナラしていただろうね。ヴォルツ…! 油断で負けてくれてありがとう!

 

それにしても、この金髪イケメン君強かったわ。強かったからこそ、俺もランクアップ出来た。しかも、月光剣を使ってきたし。俺のほぼ役に立たない前世情報にもその名はあるぜ、防御無効の必殺剣。あれを食らっていたらと思うと、…ゾッとするぜよ!

 

イザーク剣士で月光剣、そこから導かれる者は…。誰だっけ? とりあえず、オードの血はあるだろうけど。忘れちまったい! 本当に駄目ね、俺の記憶。…まぁ、ここで終わるには勿体無い。金髪君にリライブを掛けときましょう。一応加減はしたし、死にはしないよね?




エシャル、女性経験あった方が良いのかなぁ・・・と思ってみたり。

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