ファイアーエムブレム~俺の系譜~   作:ユキユキさん

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知らぬ間に、何があったのか?

お気に入りとかが、倍以上になっとるがな。


閑話 ~ヴェルダン王国《ガンドルフ》・トラキア王国《トラバント》

《ヴェルダン王国》ーガンドルフー

 

俺達ヴェルダン王国とトラキア王国、同盟から2年ぐらいになるか? 早いもんだ。食料に木材等の物資は余り気味で、グランベルやアグストリアには安く買い叩かれていたんだが、トラキア王国とは平等…対等な関係で同盟が続いている。

 

基本は外貨で、物々交換でも可能。俺達からしてみれば余り気味の物資が、石材や鉱石等と取引が出来るのはかなり有り難かった。他国から買うには高過ぎるし、自国ではたかが知れる量しか取れねぇからな。トラキア王国には感謝しかねぇわ。

 

まぁ…こんなスゲーことを纏めたのは、俺じゃなくてエシャルなんだけどな。国で問題になっていた『赤腕』を討伐、んで…波長が合ったのか義兄弟の契りを結んだわけだが…、

 

「なんつーか、旅立ったと思ったらトラキアの重鎮になっていやがる。この同盟もエシャルの発案らしいし、スゲー奴を義弟にしたもんだぜ…。しかも、天馬騎士になっているしよ。」

 

トラキア王国の危機を未然に防いで将軍に抜擢、そしてこの同盟…。只者じゃねぇとは最初から分かっていたけどよ、本当にスゲー奴だよ…エシャルは。覚えてないというか、記憶に無いというか、自分のことを知らないエシャルだが、

 

「それでも良い奴だからな、…過去がどうだろうと今は俺の義弟。最近周りが五月蝿いが、最後までエシャルと共に…ってな。」

 

エシャルのお陰で俺は充実している、俺の部下達も、城下の民達も、近隣の村人達も…。俺の城、マーファ城周辺の者達はエシャルに感謝している。万が一も考えなきゃいけねぇ、いつもエシャルが言っているしな。

 

 

 

 

 

何故、そんなことを考えなきゃならんのか? …なんつーか国が、変な方向へ進みそうな気がするんだよ。最近、変な連中をチラホラ見るようになった。エシャルがシレジアに行った辺りから、チラホラとな。親父も、弟のキンボイスとバルバロイも、マーファ城周辺以外の民も、その変な連中とつるむようになった。後、ディアドラんとこの連中も来なくなった。何かが変わっていく感覚、良い方向へ向かうのではなく、悪い方向へとだ。

 

トラキア王国の件については、俺が全てを一任されている。その筈なんだが、キンボイスとバルバロイが口出しするようになってきた。このことについて、親父は何も言わず。それどころか、あの変な連中を傍に置くようになった。そこから、親父の政がおかしくなってきた。どちらかというと民の為の政策を取っていたんだが、国の為というか軍備に偏りつつある。そのせいで弟達が口出しするようになったんだよ、鉱石の取引を増やせってな。…まさかとは思うがよ、戦争の準備じゃねぇよな?

 

ディアドラんとこの連中が来なくなった、…そう俺は言ったよな? その件で、ディアドラが独りになっちまった。エシャルがアグストリアに行くことになって、シレジアにも伝えなきゃならんってことで今はいない。向こうから、アグストリアへ行くって言っていたし。エシャルのいない日が何日か過ぎた時、里へ戻った筈のディアドラがいて、泣きじゃくっていた。理由を聞けば…、

 

「…里への立ち入りが禁止に、…追放されてしまいました。私…楽しくて、…充実していて、…掟を忘れちゃって。…だから、…掟を破ったから、…里には。…帰る場所が無くなっちゃいました。」

 

掟か…、そういえば里の連中、掟がどうのって言っていたな。その掟で帰る場所が無くなった、…独りぼっちか。

 

泣いているディアドラを見て思う、…なんで俺は忠告をしなかったのか? と。掟のことは聞いていて知っていたのに、何故俺は…。そう考えて気付いた、…ディアドラとの交流を俺は楽しんでいた。エシャルの傍にいたいが為に頑張るディアドラを、俺は応援していた。ぶっちゃけ、妹みたいに接していたという事実。俺にも責任はある、そう思った。だからこそ…、

 

「ディアドラよぉ…、掟を破ったんだからそれは仕方ねぇ。帰る場所が無くなっちまったんなら、この城に住めばいいさ。訓練の時に寝泊まりしたように、この城によぉ…。厳しいかもしれねぇが、このことはわりきれ。エシャルの傍にいたいのなら、遅かれ早かれこうなっていたと思うからな。ディアドラ…、乗り越えて強くなれ!」

 

わしゃわしゃと頭を撫でる、…ディアドラはまだ泣いている。…がこの娘は強い、きっと乗り越えられるさ。エシャルのいない今、ディアドラを守れるのは俺だけだからな。

 

 

 

 

 

…国の全部を守れるとは思っていない、俺が守れるのはマーファ城周辺の民だけ。トラキア王国から、この国に来ている者達も守らなくちゃいけねぇ。何かあってからでは遅い! 国全体に不穏な空気が流れるならば、少しでもその兆候が見られるならば…、

 

「俺のやるべきことは一つだな! バレねぇように少しずつ…ってヤツだ、やらせはしねぇからな!」

 

エシャルの義兄を名乗るなら、動いてみせろ…ガンドルフ!

 

あの秘密の集積場を使う時が来るかもな、そこに数部隊を向かわせるか。整備させねぇと、肝心な時に使えんと困るからな。トラキア王国のトラバント王にマゴーネ、そこいらにも伝えなきゃならねぇ。…覚悟をしておいてくれってな、まぁ…あちらさんも理解はしてくれんだろ。最悪を想定して、話を通しておくのも忘れんなよ俺。水面下で動くのは苦手だが、やる時ゃやるぜ! 俺はよぉ!!

 

 

 

 

 

《トラキア王国》ートラバントー

 

ヴェルダン王国と我がトラキアの同盟、それによりもたらされたモノは大きかった。様々な物資のお陰で、我が国の民達に笑顔がある、兵達の目に希望がある。…永き冬が終わり春が来た、まさにそれだ。だが、それに頼りきるのは危険だ。もし、この同盟が終わったらどうなるか? 再び、トラキアに冬が来る。それも前よりも過酷な、絶望の冬が…。

 

と、最初はそう思っていた。同盟に依存することによって陥る、悪い未来予想を…。だが、

 

「芋という食物は意外に美味い、……止められぬ。」

 

新たな食料である芋の登場、私は焼き芋にハマっている。このホクホク感、この甘み、高級菓子とは違うこの焼いた芋。まさか、我がトラキアにこのような食料があったとは…。誰も予想なんぞ出来る筈も無い、誰もが見向きもしなかった根の部分を食すなど…。

 

この芋、分かっていると思うがエシャルが発見した。トラキアを巡って現状把握、改革の為だと言ってパピヨンらと飛び回っていた。その途中で見付けた小さな高原で、エシャルが掘り起こして発見したらしい。パピヨンらも気が狂ったのでは? と、怪訝に思ったみたいだ。それもその筈、エシャルは植物の根を魔法で焼いて食したのだから。

 

「思った通り、…コイツはサツマイモの仲間だ! ンマイ!!」

 

そう興奮していたらしい。エシャルに勧められるがまま、パピヨンらも恐る恐る食せばこの美味さ。視察を取り止めて報告してきた程だ、正直驚いた。

 

エシャル曰く、トラキアの何処でも栽培出来そうとのこと。試しに幾つかの村にて、栽培させてみた。…1年後、見事な芋が出来た。民達も、この芋の美味さに驚き喜んでいた。この芋のお陰で、食料に関する依存はある程度大丈夫だろう。この芋をトラキアにもたらしたエシャルに感謝の意を込めて、芋の名は『エシャル芋』と名付けられた。自分の名を付けられた本人は、

 

「複雑なんですけど…、芋って…。悪口に聞こえるのは何故? …つーか、芋エシャル言うなし! 逆にしたら完全に悪口だろ! …このままじゃ、芋=エシャルになっちまう! 改名だ、改名を要求する!」

 

とか言っていた。いこーるというのは分からなかったが、改名は却下された。その時の間抜け顔が忘れられぬ。

 

 

 

 

 

鉱石についても、エシャルのお陰で採掘量が上がった。エシャル芋を発見した視察にて、何となく立ち寄った山の殆んどが鉱石の眠る資源の宝庫だった。金、銀、銅、鉄等の他に、宝石の原石まで見付けてくる。何故このような場所が分かるのか? エシャルに聞いてみると…、

 

「別に何も無いけど? 何となく立ち寄ってみればあったって感じ? 特別な見分け方なんざ、俺が持っている筈無いじゃん! しいて言うなら、…俺ってば運が異常に高いってことかね?」

 

と、参考にもならなかった。所謂運に恵まれた、というだけ。…神に愛されているのではなかろうか? …エシャルの機嫌を取れば、私にも運が廻ってくるだろうか? と、くだらないことを考える。……エシャルの影響を多大に受けつつあるな、私も…。エシャル化が進んでいる自分自身に、寒気がした。

 

そしてエシャルは、温泉なるモノを掘り当てた。他国の王族や貴族が持っているとされている、風呂と呼ばれる贅沢品の自然版だとエシャルは言う。風呂というモノは聞いたことはあるのだが…、イマイチ理解が出来ない。するとエシャルは、

 

「トラバントは水浴びとかするだろ? 後、桶に水を張って布で体を洗うじゃん? それの温かい版だよ、めっちゃ気持ちいいぞ! …俺が見本を見せてやるから、やってみな!」

 

なかなか理解出来ない私に、エシャルがそう言ってきた。…どうするのだ?

 

そんなわけで、私はエシャルを真似て温泉に入ってみる。人前で裸になるのは抵抗があったが、エシャルが普通に脱いだからな。そこはあまり気にせず…、

 

「……なんというこの心地よさ、…ぬぅ~ん…溶けていきそうだ…。」

 

あまりの気持ち良さに、変な声が出てしまった。温泉、良いじゃないか。…これに似た風呂とかいうモノに、他国の者達は入っていたのか。今まで知らなかったのが悔やまれる、悔やんだところで入れたかと問われれば否と答えるが。とにかくこれは良い、…良すぎるぞ。

 

この温泉という巨大な風呂は、トラキア国内各所に幾つか作られた。民や兵達にも好評で、特に仕事終わりで入るのが格別だと。こちらに顔を出したガンドルフ王子も、羨ましがっていたな。…フフフ、少し優越感を感じる。

 

…そういえば、エシャルが観光がどうだとか言っていたな。…観光とはなんだ? 聞いてみると、諜報活動の一つだと分かる。流石はエシャル、温泉に怪しき者を誘導して、ふ抜けさせることにより、情報を洗いざらい聞き出すということだな? 温泉すらも利用するとはな…。誰も抗うことなど出来ぬよ…、この温泉の魔力の前では…。

 

 

 

 

 

エシャルのお陰でトラキアは発展し続けているが、私には不満がある。エシャルが久々にシレジアから戻ってきたのだが…、

 

「いやぁ~、天馬騎士になっちまったよ。トラキア所属の天馬騎士って、レアじゃん?」

 

レアという言葉の意味は分からんが、私はエシャルに…、

 

「そこはドラゴンに乗るべきではないか? 何故ペガサスになる。…エシャル、今日はこちらにいるのだろう? 久々に話そうじゃないか、とことん話そうではないか。そこにもれなく、グングニルも付けよう。」

 

「言葉は不用、戦って語ることに異存は無いけど! 天槍は卑怯じゃん、やり過ぎじゃないかいトラバントさんよぉ~…! だったら俺も、魔法を連射するぜ? 攻撃の隙も与えんよ!!」

 

天馬騎士になりおって…、お前は竜騎士になるべきだろ! トラキアの将軍なのだから!

 

お互い満身創痍になり、この話し合いは次回持ち越しになった。だが、流石はエシャル。グングニルを使用し、手加減もしたが…、私をここまで追い込むとは。奴も本気を出していなかったが…。エシャルの本気はどんなものか? 気にはなるが、正直恐いな。いつかはこの目で見てみたいものだ、エシャルの本気ってヤツを。

 

余談ではあるが、後で妻に言われたよ…。

 

「以前のあなたとは、全然違いますね? あんなに熱くなって、取っ組み合って…。エシャル様のお陰かしら? 今のあなたはとても魅力的よ? 惚れ直したわ…。」

 

久々に顔を赤くしたと思う、…惚れ直したか。今の私は毎日が充実している、エシャルに感し…、

 

「まるでエシャル様のようね? …もし、あなたより先にエシャル様に出会っていたのなら…、ウフフフフ…。」

 

エシャルゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!

 

 

 

 

 

…エシャルがアグストリアに飛んでから幾日後、ガンドルフ王子から密書が届けられた。それを見た私は…、

 

「ヴェルダン王国に不穏な空気か…。王子には色々と便宜を図って貰っている、私も報いねばな…。」

 

以前の私なら、国を守る為に同盟を破棄してでも切り捨てたものだが、…変わったものだよ。それに、ガンドルフ王子は個人的に好ましい人物。彼に何かあればエシャルは悲しむし、私としても考えたくはない。エシャルがよく言う言葉、備えあれば憂いなし…だったか? 万が一に備え、ガンドルフ王子達を受け入れられるよう準備だけはしておこう。何も無いことが一番なんだが…、難儀なものよ。




ガンドルフとディアドラにもフラグが!?

バルバロイは、原作ガンドルフの立ち位置の予定です。




トラバントは深読みし過ぎ、素直に受け止めましょう。

トラバントのエシャル化が進行しています。彼はどうなるのか?



次回は、閑話最終。ノディオンかなぁ~・・・。

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