意見を参考にし、物語を考えてみたいと思います。
当分意見を求めていますんで、何かあったら足跡を残していってください。
感想も返さなきゃ。
ーエシャルー
あの北東砦攻略から、数ヶ月の時が経ちました。あの戦いの後、俺は『炎の英雄』と呼ばれて人気者なわけです。大いに調子に乗りましたよ、えぇ。波に乗らなきゃいかんでしょ、将軍達とも仲良しっす。ハンニバル将軍、パピヨンさん、マゴーネ隊長、カナッツ君。特にこの4人とはマブダチっすよ!
ハンニバル将軍は、愛国心が強く、兵のことも良く考える好人物。故に北東砦の戦いを終えて、被害がほぼ無く国を守れたことが嬉しいみたい。何かあれば力になると、言ってくれました。まぁヤバそうになったら、お言葉に甘えようかと思います。因みにハンニバル将軍、此度の戦いで『トラキアの盾』とか呼ばれているみたいです。挟撃の時に、マンスター騎士団の背水の突撃を体一つで防いだみたいっす。凄いですね!
パピヨンさんは、最初に世話んなった人だからね。今も色々と世話になっとります。生活する為のことを、手配してくれたのは彼ですので。トラキアで一番、頭が上がらない人ですわ。
マゴーネ隊長は、第5竜騎隊を率いてる人ですな。賊の討伐やらの小さな任務しか最近なくて、今回のような戦いを待っていたみたい。久々の戦で、手柄を立てることが出来た。エシャル殿のお陰だと、お礼を言われました。そこから仲良く、飲みに行ったりしとりますね。
カナッツ君は敵将を討ち取った功績により、若くして小隊長になったようで。強くなることに貪欲で、俺も暇なんで鍛えてあげてます。そのお陰で、メキメキと剣の腕を上げてます。将来楽しみな、指揮官候補ってなわけです。
そんな感じで色んな人と付き合ってます。後、トラちゃんとは色々と話をしましたよ。主にトラキアのこととかで。最近は戦争はおろか、小競り合いも無く傭兵稼業も成り立たないようで。国全体の元気があまりよろしくない。外貨をどう稼ぐか、頭を悩ましています。とりあえず、色々と提案はしますけど。
そんな付き合いで関係深くなってきた時、トラちゃんが言いました。
「エシャルは逃亡者、…自分でそう言っていたな? そのことについてなのだが、お前は指名手配などされていない。…逃亡者ではないのだ。」
トラちゃんが、何を言っているのか分からなかった。俺が指名手配されてない? 逃亡者ではない? どういうこと? 俺のモヤの掛かる記憶では、俺は何かから逃げ出した筈なんだが…。
俺は僻地に追われて、そこで何年か過ごして、突如現れた軍隊に攻められて、命からがら逃げた…、その筈なのに。
「グランベル王国の公式発表では、ヴェルトマー公爵家に籍を置いていたエシャルと言う者は、賊の手により城と共に炎の中へ消えた。後の調査によって、エシャルの死亡が確認された…とな。故にお前は逃亡者、追われる身ではない。それどころか、存在しない者なのだ。」
……そんな、俺が死んでいる? バカな! …では、今の俺はなんなんだ? 俺は生きている、現に生きているではないか。
あの日、何があった? 俺は何故攻められた? 何故追われる身だと思った? 俺の逃亡者としての生活はなんだったんだ? 俺は一体なんなんだ? ぐぅ…、モヤが消えるどころか濃くなりやがる。分からない、俺の過去が…。自我が目覚める前のことが…! 分からない、分からないが…。
ートラバントー
ミーズ北東砦攻略戦にて、エシャルに助力を頼んだ。作戦自体もエシャルが発案し、実行された戦いは私の思う以上の戦果を上げた。我がトラキア軍は、大小を含めて30名にも満たない被害だけ。対するコノート・マンスター連合軍は、3名を残して全滅。その3名も、武器等の装備を外した状態で放逐した。
エシャルが言うには、逃すことで相手にこちらの情報を流す。逃すのは、エシャルの存在を知らぬ者。即ち、メティオによる攻撃がなされたことを知らぬ者が望ましい。理由は簡単で、トラキア軍の精兵による大攻勢を強調する為。私もこの考えに賛同したわけだが…、ものの見事に相手は勘違いしてくれた。我がトラキア軍は決して弱くはないが、これ程の戦果を上げるかと問われれば、否と正直に答えるだろう。全てはエシャルのお陰、ミーズは、トラキアは、エシャルのお陰でこの難局を乗りきった。
諜報の為に放っていた部下によると、この攻略戦の大敗によって侵略する力が無くなったとのこと。特にマンスター王国は、虎の子の騎士団の全滅に騒然となったみたいだ。ククク…、そして言った言葉がエシャルの策の成功を語っている。『トラキアの下に弱卒無し!』、これで我がトラキアは当分安泰と言えるだろう。
あの戦いの後、パピヨンに命じてエシャルの住居を用意させた。英雄殿を歓待しなければ、民も兵も納得しないだろうしな。僅かな時間でここまで、ここまで好かれる者などそういないだろう。それを考えると、エシャルは相当稀有な人物だと言える。
それにこれからのトラキアについて、真剣に考えてくれる。人物像としては、かなりの好感を持てる。世界的に戦争が少なく、傭兵稼業もままならないと相談してみた。外貨を稼ぐ手段は、傭兵稼業に頼りきりだったからな。この状況が続くと、貧困で国が立ち往かなくなる。戦いで勝利しても、貧困の問題がある。悩ましいとはこのことだ。
するとエシャルは、
「俺がヴェルダン王国、というかマーファ城城主のガンドルフ王子と仲が良いのは知っているな? そこで提案があるのだが…。」
エシャルの話では、ヴェルダン王国は自然の資源に事欠かない国のようだ。そんなヴェルダン王国で、唯一自国で賄いきれない資源があると言う。…それは石材、木材は数えるのが馬鹿らしいぐらいにある。しかし石材だけは常に品薄で、同盟を結んでいる国から割高で購入しているとのこと。
そこで、その石材をトラキアからヴェルダン王国に売るのはどうだろうと提案してきた。外貨の代わりに、トラキアで不足している食糧・木材等と物々交換もありなのでは…と。ヴェルダン王国との交渉が上手くいかなくとも、個人的にマーファ城城主のガンドルフ王子となら、高確率でこの提案を快諾してくれるだろうと。
…正直、この提案はトラキアにとってかなり魅力的だ。上手くいけば、定期的に食糧・木材が入手出来、国内待機の部隊も暇を弄ぶことが無くなる。それに民達も希望を持って、生活や仕事が出来る。土地柄、暗くなりがちな我が国に、光明が差し込むだろう。故に私は、この提案に対し首を縦に振る以外にないと思った。
そのことをエシャルに伝えると、
「因みに、成功する可能性が高いだけで、絶対ということは無いからな。そこ重要だぞ? ダメでも怒んなよ?」
と念を押してきた。私はその姿が必死で可笑しく、笑って『分かっている。』と言った。その後エシャルは、
「ちょいとヴェルダンに行って、話をしてくる。…まぁ成功を祈っててくれ。」
と言って、ワープでこの場から消えた。なんとも身軽な男だと、私はまた可笑しくなった。
暫くして、何やら荷物を抱えてエシャルが戻ってきた。
「とりあえず、話は通してきた。バトゥ王と話すって言っていたし、結果はもう暫く待てだって。兄貴的には、個人的にでも取引がしたいとも言っていた。因みにコレお土産ね、取引物の見本ともいうけど。」
そう言って、机の上に見本を広げる。…どれもトラキアでは、入手することが困難な贅沢品。ヴェルダン王国では、これが普通なのかという嫉妬。そしてこれが、日常的に入手出来るかもしれないという希望。
…エシャルが現れてから、次々と何かが起こり変わっていく。悪い方ではなく、良い方に…だ。伝えるか否か、悩んでいたことを伝えよう。突然だが、そう思った。…これはたぶん、エシャルに対して心を許したということだろう。だが、これを言ったらエシャルはどうなる? 興味が勝ってしまうのは、私の性格が悪いからであろう。
そしてその夜、エシャルを私室へと呼び出し伝えた。
「エシャルは逃亡者、…自分でそう言っていたな? そのことについてなのだが、お前は指名手配などされていない。…逃亡者ではないのだ。」
エシャル、お前はどんな顔を私に見せる?
「グランベル王国の公式発表では、ヴェルトマー公爵家に籍を置いていたエシャルと言う者は、賊の手により城と共に炎の中へ消えた。後の調査によって、エシャルの死亡が確認された…とな。故にお前は逃亡者、追われる身ではない。それどころか、存在しない者なのだ。」
どんな反応を、私に見せる? 私は目を細めて、エシャルを見据えた。
ーエシャルー
驚愕の事実、俺は一体なんなのか?考えても分からない、分からないのなら…!
「気にしても仕方がないよね? 今ここにいて、トラバントの前にいる。それが全てなわけだし、…まぁその内分かる日が来るだろ。そん時考えればいいや、うん。それよりも…逃亡者じゃないんなら、気が楽ではあるよね? でも死んだことになっているんだけど、そこんとこどうしようか? …兄貴は知っていたんだろうか? …いや、グランベル嫌いだから知りもしないんだろうなぁ。」
とりあえず、あまり気にしないようにしました。考えても意味無いし、その内分かるっしょ。わははははは!
「ククク…、お前はそんな人間か。そうかそうか…ククク…。」
トラちゃんが笑っとるがな!? 俺、変なこと言ったかね? …解せぬ。
次回はたぶん、シレジアへと旅立ちます。
では、また!