デジモンアドベンチャー0   作:守谷

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……お久しぶりです。言い訳はしません。
取りあえず何話分かはタメが出来たので2話分投稿します。

休載中に下さった感想に関しての返信は後ほどゆっくり返答したいと思います。




061 圧倒

 遂に真の姿を現したヴェノムヴァンデモンに初めに向かって行ったのは、やはりというべきか、ウォーグレイモンとメタルガルルモンの二体の究極体だった。

 二体はそれぞれ左右から挟むように、進化して手にした速さと飛行能力でヴェノムヴァンデモンに接近する。

 それを目にしたヴェノムヴァンデモンは、接近する二体に対し、200メートルを超える巨体とは思えない速さで長い両手を振るい、それを阻止する。

 

 

「ウォーグレイモン!! 分かってるとは思うが、奴の本体は腹部の顔だ!

そこを狙え!」

 

「お前達のスピードで奴を翻弄するんだ!!」

 

「「分かった!!」」

 

 

 太一とヤマトの指示に二体は力強くそう返すと、再びヴェノムヴァンデモンに向かって行く。

 それに対しヴェノムヴァンデモンは、先程と同じ様に両手を振るってそれを阻止しようとしたが、それは叶わなかった。

――何故ならウォーグレイモンとメタルガルルモンが突如速さを増したからだ。

 

 

「ナンダト!?」

 

「――――何故かは分からないけど、これまでに無いくらい力が溢れてくる――!」

 

「ああー―これなら絶対に負けない!!」

 

 

 突然の変化にヴェノムヴァンデモンは勿論、ウォーグレイモン達自身も驚愕していたが、

悪い変化では無いと瞬時に判断したのか、それ以上考える素振りは見せず接近を続け、

ヴェノムヴァンデモンの本体前まで来ると、それぞれその速さを乗せた渾身の一撃を本体に叩きこむ。

 

 

「ウォォォォ……ッッ!」

 

 

 重い一撃を受けたヴェノムヴァンデモンは、呻き声を上げながらも追撃を喰らわそうとする二体に、

腹部の本体から『カオスフレイム』を吐き出すが、

ウォーグレイモン達はそれを上空へ飛び上がる事で回避する。

 

……が、その回避先にはヴェノムヴァンデモンの振り下ろされた腕があり、

二体はそれをまともに受け、そのまま地面に叩きつけられそうになるが、

なんと両者とも空中で静止し、それぞれの手を力技で跳ね除けた。

 

 

 

「すごい! あの時の戦いよりもずっとウォーグレイモン達が押してる!」

 

「あの時は、初進化だったし、それから経験も積んでるしね!

……でもなんだかいつもよりメタルガルルモン達が強くなってる気がする」

 

 

 3年前の戦いの時に比べ、二体だけで有利に戦っている現状にヒカリは純粋に喜び、

太一を始めとする選ばれし子供達の何人かは、喜びながらも多少違和感を覚えているようだった。

 ……自分達に有利な変化でも楽観視せずに違和感を覚えるなんて流石だと思いながらも、僕はその理由を説明した。

 

 

「君達光の存在……選ばれし子供とそのパートナーデジモンは、この世界では想いの強さが力となって現れる」

 

「想いの強さが力に……ですか?」

 

「はい。この世界ではパートナーデジモン自身は勿論の事、

僕達選ばれし子供の想いが強ければ強い程、パートナーデジモンが強化されます。

――それこそ成熟期でも究極体と渡り合えるようになるほどに」

 

 

 僕の言葉に選ばれし子供達は驚愕の表情を浮かべた。

……驚愕するのは当然だろう。

選ばれし子供達視点では偶然辿り着いた筈のこの世界が、

実は自分達にのみ力を与えてくれる世界だなんて都合のいい話、驚かない方が無理がある。

……いや、もしかすると半数以上は半信半疑かも知れない。

 

 

「皆さんが信じられないのも無理もないです。ですが真実です。

だからこそ僕は、この場所を最後の戦いの舞台に選びました」

 

「……その為に守谷君は、ブラックウォ…………いえ、今僕達が優先すべきは、ヴァンデモンを倒す事、そうですね、太一さん?」

 

 

 「……ああ、そうだな」

 

 

 僕の言葉に光子郎は、小声で何か口ずさんだかと思うと、次は釘を刺すような確認の言葉を太一に投げかけた。

そんな光子郎の言葉に太一は、俯きながらそう返すと、視線をウォーグレイモン達の方へと戻した。

 

 

「ホルスモン!」

 

「了解ですミヤコさん!――『テンペストウィング!!』」

 

 

 京の言葉に答えるように放たれたホルスモンの攻撃は、普段とは比べ物にならない規模の風の竜巻となりヴェノムヴァンデモンに襲い掛かる。

 ウォーグレイモンとメタルガルルモンの対応に追われていたヴェノムヴァンデモンは直前までそれに気付かずまともに受け、苦悶の声を上げた。

――アーマー体であるホルスモンの攻撃が、究極体であるヴェノムヴァンデモンに対してだ。

 

 

「……どうやら本当に異常なレベルでパワーアップしているみたいですね」

 

「そうみたいですなコウシロウはん。

なら早くワテ等もウォーグレイモン達の元に向かった方がええんとちゃいます?」

 

 

「……いえ、ウォーグレイモン達のサポートは、ヴァンデモンと相性が良いホーリーエンジェモンとエンジェウーモン。そして純粋に地力のあるブラキモン達に任せて、

僕達はアルケニモン達が場を荒らさない様に行動しましょう」

 

 

 光子郎の言葉に選ばれし子供達は頷き、そしてそれぞれの敵の元へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本格的に戦闘が始まってからしばらく経ったが、戦況は既に完全に選ばれし子供達側へと傾いていた。

アルケニモンとマミーモンは既にダウンしており、ヴェノムヴァンデモン自身も既にボロボロだ。

……ウォーグレイモン達にも疲れは見えるが、ここまで来たら押しきれるだろう。

 

 

「そろそろ、か」

 

 

 ……僕自身、戦いが有利になるようこの場所に来る事を最優先で行動していたが、

まさかここまで上手く話が運ぶとは思わなかった。

ここまで圧倒出来ているのは完全にヴァンデモンが原作と違い

ベリアルヴァンデモンに進化出来なかった事に尽きるだろう。

……まさか最後の最後に原作改変に助けられるとは思わなかった。

…………まあこの戦いが終わっても僕がやるべきことはまだまだ残ってるけどね。

 

 

『グレートトルネード!!』

 

「グ、グォォォーーー!!」

 

 

 ウォーグレイモンの必殺技をまともに受けたヴェノムヴァンデモンは後方へ吹き飛び、遂に膝を突いた。

 アルケニモンとマミーモンは既にダウンし、カブテリモンを含んだ成熟期4体と完全体3体。そして究極体2体がヴェノムヴァンデモンを取り囲んでおり、ヴェノムヴァンデモン自身も息が絶え絶えだった。

 

――――恐らく次の攻撃で勝負は決まるだろう。

 

 

「チ、チキショウが……」

 

「……ヴァンデモン。オマエに同情するつもりは無いが、地の利は完全にワタシ達にあったようだな」

 

 

 エンジェウーモンは僅かにヴェノムヴァンデモンを憐れみながらも弓を引いた。

それと同じくウォーグレイモン達も自身の一番強力な遠距離攻撃を放つべく構えを取る。

 

 

「……あの世でモリヤとチビモンのD3を壊した事を後悔するんだな!

喰らえ――――『ガイアフォース!!』」

 

『コキュートスブレス!!』

 

『ホーリーアロー!!』

 

『ブラキオバブル!!』

 

『ソウルバニッシュ!!』

 

『メガブラスター!!』

 

『メテオウィング!!』

 

『ハープーンバルカン!!』

 

『テンペストウィング!!』

 

 

 9体のパートナーデジモンの攻撃が同時に放たれた。

それに対してヴェノムヴァンデモンは膝を突いたままで避ける事が出来ない。

 

 

「お、おのれ!! オレ様がこんなところでぇー!!!!!!」

 

「お、及か……ヴァンデモン様ーー!!」

 

 

 アルケニモンの悲鳴も空しくヴェノムヴァンデモンは断末魔を上げながらその全ての必殺技を受け、爆風を巻き上げた。


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