デジモンアドベンチャー0   作:守谷

60 / 65
投稿が遅くなってしまい申し訳ございません。
大輔主人公の外伝を書こうかなとふと思って、手を付けようとした結果、両方とも手が付けられないというバカみたいな事になってしまいました。
……やはり外伝作品なんて簡単に手を付けていいものでは無いですね。

そして更新が止まっている中メールをくださった方、本当にありがとうございます。
もうこの作品に興味を失っている可能性があるので、返信はしないことにしましたが、本当に嬉しかったです。本当に本当に嬉しかったです。


058 集結

 ブラックウォーグレイモンとの戦いから二日後の朝、ミミを除く、太一達二代目と三代目の選ばれし子供達とそのパートナーデジモン達は光が丘へと向かっていた。

 

 目的は勿論、アルケニモン達……いや、その裏に潜むこの騒動の元凶との決着を着ける為に。

 

 

 

「――皆さん、本当にいいんですね?」

 

 

 光が丘に向かう途中、ふと光子郎は立ち止まり、最終確認と言わんばかりに全員にそう投げかけた。

 

 

「皆さんも既に分かってると思いますが、未だにアルケニモン達の目的は定かではありません。

ですが、この前の言動を聞く限りどうやら目的を達する寸前なのは間違いなさそうです」

 

「……今まで散々逃げ回っておきながら、いきなり光が丘に来いっていう点から考えてその可能性が高いだろうな」

 

 

 太一の返答に光子郎は力強く頷く。

 

 

「……そして光が丘には間違いなくアルケニモン達と、この騒動の元凶となる存在……究極体が待ち構えているでしょう。」

 

 

 光子郎の"究極体"という言葉に選ばれし子供達の大半が表情を僅かに歪ませた。

今までの情報から考えて元凶となる存在が究極体という事は誰もが確信している。

……そして、敵が究極体であるならそれに対抗出来るのは現状で、ホーリーエンジェモンとエンジェウーモンとブラキモンの3体だけであることも当然理解していた。

 

 ――――それでも、そうだとしても選ばれし子供達はここに集まっていた。

 

 力の有無では無い。罪悪感でもない。彼等はただ、自分達がやりたいことを成す為に。

 

 そして――――1人で何もかもを背負おうとするバカな仲間(守谷天城)を救う為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 選ばれし子供達が光が丘に着くと、そこにはまだアルケニモン達の姿は無かった。

……だが、見通しの良い位置で何かを待つように佇む仮面を付けた守谷とチビモンの姿があった。

 

 

「……ヤマト」

 

「……ああ、わかってるよ」

 

 

 選ばれし子供達は念の為、辺りを警戒しながら守谷達に近づくと、チビモンは直ぐに此方に気付いた反応を見せたが、守谷の方は反応を見せず、ただ何処かに視線を向けていた。

 

 そして互いの距離が5メートル位になった辺りで選ばれし子供達は歩みを止めた。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 自分達がここまで接近しても反応を見せない守谷に、選ばれし子供達は何を話せばいいのか分からず、沈黙が続いたが、ふと守谷が視線を向けた。

 

 

「……ここには来ないかもしれないと思っていました」

 

「……アルケニモン達が何かを仕出かそうとしている場所に俺達が来ない訳ないだろう」

 

 

 ヤマトの返答に、守谷は確かにと小さく頷いた。

 

 

「――とにかくお前もここに居るって言うなら俺達と一緒に居ろ。D3は奴らに取られたままなんだろ?」

 

「……ブラックウォーグレイモンにあんな事した僕にまだそんな態度が取れるんですね」

 

 

 呆れたと言わんばかりに僅かに両手を上げる守谷に、ヒカリは悲しみを含んだ表情を浮かべながら一歩近づいた。

 

 

「……ブラックウォーグレイモンは貴方を少しも恨んでなかった。

それどころか、最期に守谷君を頼んだって言ってたの。」

 

 

「……そうか」

 

 

「守谷君……貴方にとってブラックウォーグレイモンはどんな存在だったの?」

 

 

 

 ヒカリは勿論の事、選ばれし子供達も守谷に聞きたい事は山ほどあった。

それでも、それを理解していてもヒカリはこれだけは先に聞いておきたかった。

自分達では決して築けない、歪ながらも自分達に劣らない絆を結んでいた守谷に。

 

 ……正直、聞いた本人であるヒカリ自身も答えが返って来るとは思っていなかったが、

予想外にも守谷は鼻で笑いながらも答えを返した。

 

 

「僕にとってはチビモンを除けば、唯一色んな意味で背中を任せられる存在……だったことは確かだな」

 

「……私達には背中は任せられないの?」

 

「――――僕にそんな資格はないさ」

 

 

 守谷は小さくそう返すと、突然歩きだし、少し離れた木の下の物陰からリュックを取り出し、再び選ばれし子供達の元に戻った。

そして、リュックからーーチンロンモンのデジコアを取り出すと、自分の仮面を取り外しながら選ばれし子供達ーーヤマトと太一にデジコアを差し出した。

 

 

「ーーこれを」

 

 

差し出されたデジコアに二人は僅かに驚きながらも、ヤマトがそれを受け取ると、守谷は安堵の息を付きながらも、真剣な眼差しを選ばれし子供達に向けた。

 

 

「……最後の最後で僕達が戦えないという状況になってしまいましたが、

ゲンナイさんの機転や、火田君の超進化という想定外の追い風もあり、状況は決して悪くないです。

この戦力ならきっと……いえ、必ず奴に勝てます」

 

「奴、ですか? やはり守谷君は、この騒動の黒幕の正体を知っているんですね?」

 

 

 光子郎の問いに、守谷は一瞬目を逸らしながらもコクリと頷いた。

 

 

「……そう、ですね。ここまで来た以上、もう無理に隠す必要はないですね。

ですが約束してください。ここで正体を知ったとしても、僕が合図を出すまでは、絶対に何もしないと」

 

 

「……分かった約束する。皆もそれでいいな?」

 

 

 太一の言葉に、選ばれし子供達は渋々ながらも頷いた。

それを確認した守谷は、ゆっくりと口を開いた。

 

――――この騒動の全ての元凶の正体はヴァンデモンだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら全員お揃いの様だな!」

 

 

 選ばれし子供達が集まってから約10分後、彼等の前に、明らかに歓喜の表情を隠しきれていない人間の大人――及川とアルケニモン、そしてマミーモンが姿を現した。

 

 

「「…………」」

 

 

 及川がヴァンデモンに利用されているだけだと守谷に待ち時間の間に知らされている選ばれし子供達はその姿に何とも言えない表情を浮かべたが、

守谷との約束もある為、それを言葉にする事はしない。だからこそ、及川の言葉には守谷が答えた。

 

 

「……及川さん。一応確認しますが、もう目的が達成出来るんですね?」

 

「――ああ、そうだ! 今日ようやく俺の念願が達成される!! ようやく、ようやくだ!!

ようやく俺は――――デジタルワールドに行く事が出来るんだ!!!」

 

 

 及川の漏らした念願に守谷を除く選ばれし子供達は驚愕の表情を浮かべた。

その姿に及川は怒りの表情を向ける。

 

 

「何がおかしい? 大人の俺がデジタルワールドに行きたいと言って何が悪い!? そもそもお前達――――

 

「……及川さん、小さい頃からデジタルワールドに行きたいと思っていた貴方の気持ちを彼等が理解出来るはずがありませんよ。彼等は『選ばれし子供』なんですから。

…………それより早く、行きましょうよ――『デジタルワールド』に」

 

「――ああ、そうだな!!」

 

 

 守谷のデジタルワールドという言葉で我に返った及川は、歓喜の表情を浮かべながら自身のノートパソコンを取り出した。

 

 

「今現状デジタルワールドに残っているダークタワーの力と俺が集めた人間の――――人間の? 何を言っているんだ俺は? 俺はダークタワー以外には何も……」

 

 

「……及川さん、そんな疑問はこの際どうでもいいでしょう。

デジタルワールドには、貴方が普段アルケニモン達を送る際に開いているゲートをダークタワーの力で歪ませれば行ける筈です」

 

「あ、ああ。そうだな。この際細かい事なんてどうでもいい。

ここをこうして、こうすれば……!」

 

 

 及川はそう言葉に漏らしながら最後に力強くキーを押すと、目の前に巨大なゲートが出現した。

 

 

「うそ!? デジタルワールドへのゲートは、ブラックウォーグレイモンが――――

 

 

 予想外の展開に思わず、選ばれし子供の一人が声を上げるが、その言葉を及川はまるで聞いていない。

 

 

「――や、やった! 開いたぞ!!」

 

 

 

 目の前に開いた巨大なゲートに及川は身を乗り出す様に飛び込んだ。

その後をアルケニモンとマミーモンは、急いで追いかけた。

 

 

「僕達も行きましょう――最後の戦いに」

 

 

 そう言ってゲートに入って行った守谷に選ばれし子供達は続いた。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。