今年もどうかよろしくお願いします!!
……本当は去年の年末に何話か投稿しようと考えていましたが、誘惑に負け、デジモンストーリーの新作をやってしまい投稿出来ませんでした……
正直今作はあまり期待していませんでしたが、実際にプレイすると普通に面白かったです。
「……まさかアルケニモン達を操っていたのが人間とは思いませんでしたよ」
姿を見せた黒幕に僕は冷静を装いながらそう返す。
そんな僕の態度を黒幕――及川悠紀夫は鼻で笑った。
「本気でそう思っているのなら少しは驚いた素振りを見せろ」
苛立った顔でそう話す及川。その素振りは少なくとも人間と思えるものだった。
……どうやら原作通り、基本は及川自身が体の権限を持っている様だ。
…………この状況ではそれは有難い。
が、今までの事件の事、及川自身の事を考えるなら……及川の意識は残って居なかった方が良かったのかもしれない。
「それで貴方は態々選ばれし子供である僕の前に姿を現して何のつもりですか?」
「……選ばれし子供……ふん。ただ第三者に選ばれただけでのうのうとデジタルワールドへ行き来して、遊んでいるだけのお前達が選ばれた存在とは笑わせる。
お前達だけじゃない! お前達を選んだ者達もだ!
自分達の世界の危機に子供だけを選んで召喚するような奴らがデジタルワールドを管理しているという事を俺は許せない……」
「お……ボス! 落ち着いて下さい!!」
徐々にヒートアップして来た及川をアルケニモンは必死になだめる。
及川はそんなアルケニモンに罵声を浴びせるが、そのお蔭か少しは落ち着きを取り戻した。
……このタイミングでヴァンデモンに変わられ、やられない様にする為に及川の心を揺さぶる単語を使ったけど、どうやら効果があり過ぎたようだ。これからはもう少し言葉を選ばなければ……
「……はぁ。で、お前はさっき俺になんて尋ねた?」
「……黒幕の貴方がこのタイミングで姿を現した理由をお聞きしました。
…………出来れば五体満足で家に帰りたいんですが」
「安心しろ。俺だって子供を痛めつける趣味は無い。
……そんな事をしたらアイツに合せる顔が無いからな。
お前には全てが終わるまで捕まって貰いたいだけだ――――他の人間達の様にな」
「……他の人間達の様に?」
及川の言葉に違和感を覚えた僕は思わずそう尋ねた。
「そうだ。お前達選ばれし子供達は気付いていなかっただろうが、最近ここらで起きている誘拐騒動は俺達の仕業だ」
「…………誘拐? 全員無事?」
「俺の目的を果たすためにはどうしても必要でな。だが、安心しろ。命は奪っていない」
及川は真剣な表情でそう話していた。……その表情からはとても嘘を付いている様には見えなかった。
……が、僕は及川が人間を攫って連れて行っている場所を知っている。
その場所は……どう考えてもそれほど多くの正常な人間が集まれるようなスペースでは無かった。
……僕は思い付いた考えが合っているのか確認すべく及川に尋ねた。
「……一つ尋ねてもいいですか?」
「聞くだけ聞いてみろ。答えるかは内容次第だ」
「……では。貴方は目的の為に人間が必要だと言いました。なら――――貴方の目的の為に人間が必要な理由を教えてください」
僕のあまりに目的に関係しすぎる質問にアルケニモンとマミーモンは鼻で笑った。
「バカだね。そんな質問答える訳無いだろう」
「そうだそうだ。オレ達だって知らされてない情報だぞ。それをオマエなんかに言う筈が無いだろう!」
二体の嘲笑うような声を無視し、僕は真剣な表情で及川を見つめた。
対して及川も、初めはアルケニモン達と同じような反応を見せていた。が、突如頭を抱えだした。
「あれ? どうしてだ? どうして俺は人間達を集めているんだ? 俺の目的の為にはそんなものは必要無い筈だ。それなのに何故―――――」
及川が自分の行動に疑問の言葉を漏らし始めたその時、突如及川が悲鳴のような声を上げた。その姿はまるで雷が直撃したような反応だった。
突然の奇行にアルケニモン達は驚きながらも及川の方に近寄ったが、それを及川自身が振り払った。
その姿は先程までの奇行が嘘のように落ち着いていた。
……どうやら及川の中に潜む真の黒幕――ヴァンデモンにとって都合が悪い事はこうやって誤魔化しているようだ。
「……俺の目的を敵であるお前に話す訳が無いだろう。
いいから大人しく俺達に付いてこい。お前さえいなければ選ばれし子供達は雑魚同然だ」
落ち着いた及川は先程の僕の質問にそう返すと、アルケニモン達に指示を出て僕の両手を左右から抑え込んだ。
……このままじゃ不味い。このまま連れていかれたらチンロンモンのデジコアがヴァンデモン達の元に渡ってしまう。それだけは何が合っても防がなければならない。
…………仕方が無い。出来れば無暗に原作を乱すような事をしたくは無かったが状況が状況だ。
僕はこの状況を打破するために口を開いた。
「……一つだけ弁解させて頂いても構いませんか」
「弁解だと?」
アルケニモンとマミーモンに両手を拘束されたまま僕は及川にそう言い放った。
連れて行かれる事に対する抵抗では無く弁解をしようとしている僕に及川達は怪しむ様な反応を見せたが、最終的には聞いて貰えることになった。
……良かった。が、これが最初で最後のチャンスだ。
そう感じながら僕は口を開いた。
「貴方達は一つ勘違いをしています」
「勘違い、だと?」
「はい。僕は――――貴方達の敵になった覚えはありませんよ」
「―――――はぁ?」
僕の言葉に及川達の誰か……もしくは全員がそんな言葉を漏らした。
そして次の瞬間、この中で一番僕と関わりのあるアルケニモンが声を荒げて反論して来た。
「バカ言ってんじゃないよ! アンタは今まで散々ワタシ達の邪魔をしてきただろうに!!」
「そ、そうだそうだ! 何度も何度も他の選ばれし子供達と協力してダークタワーやダークタワーデジモンを壊してきただろうが!!」
「それについては申し訳ございません。僕にも立場と言うモノがあったので。
……ですが、同時に感謝もされていいと思っています」
「感謝だって?」
「はい。僕が手を出したせいで現状デジタルワールドに建っているダークタワーの数は減ってしまいましたが、逆を言えばそのお蔭でここまで計画を遅らす事が出来た。アナタが力を取り戻す為に行動出来るようになったこのタイミングまで。そうとは思えませんか? 及川さん……いえ―――――吸血鬼の王よ」
僕がそう口にした瞬間、及川の雰囲気が明らかに変わった。
「……おい、オマエ達。トラックの中で待っていろ」
「え、何故で「――――聞こえなかったのか?」……はい」
及川の二度目の命令を耳にしたアルケニモンは、掴んだ僕の手を放し、マミーモンを連れてトラックの運転席に戻って行った。
それを確認すると及川……いやヴァンデモンは警戒するような視線で話しかけてきた。
「……何故分かった?」
「……何故と聞かれると答えにくい質問なんですが、敢えて答えるとしたら……ただ知っていただけですよ僕は」
「……知っていた、だと?」
「はい。――――今から約三年前の1999年8月3日。選ばれし子供達に倒された貴方は、実体を失ってなお生存し、その際に近くに居たデジタルワールドに強い憧れを持つ及川悠紀夫の心の隙間に入り込み、密かに復活の機会を待っていたという事をです」
「――――――――」
僕の言葉を聞いた及川悠紀夫の姿のヴァンデモンは驚愕を浮かべたような表情を浮かべた。
まさか自分の生存が始めから誰かにばれていたとは思っても居なかったのだろう。
……が、ヴァンデモンが驚くのも当然だろう。何故ならこの情報は本来なら誰一人知り得る筈のない情報なのだから。
「……仮にそれが本当だとして、ならお前は何故その情報を誰かに話さなかった?」
強烈な殺気を出しながらヴァンデモンはそう口にした。
……ヴァンデモンからしたら理解出来ないのだろう。始めから自分の生存を知っていたのに何の行動も起こさなかった選ばれし子供である僕に。
……僕が行動しなかった理由は、始めは原作通りに話を進める為。途中からはヴァンデモンを完全に消滅させるためなのだが当然それを口にするわけにはいかない。
僕は嘘を見破られない様に目を瞑り、腕を組みながら答えた。
「先程も言いませんでしたか? 僕は貴方達の敵になったつもりは無いと」
「……お前は新たに選ばれた選ばれし子供だろうが。ならオレとは敵対する関係の筈だ」
「確かに僕は、新たな選ばれし子供の一人に選ばれ、今まで行動してきました。
ですが僕はこちら側に就いたつもりはありませんよ? ……むしろ僕はそちら側に近いと思って貰ってもいいと思っています」
「戯言を……!」
「貴方がそう思うのも無理もないかもしれません。が、僕はそれを証明出来ます。
――――考えても見てください。僕は今まで一度だって貴方の目的の邪魔をしたことがありますか?」
「オマエは散々っ!…………いや、そういう事か」
「……はい。僕が今まで散々ダークタワーを破壊し続けたのは、貴方の力が戻って居ないのにデジタルワールドに行こうとする及川悠紀夫の行動を食い止める為でした。
ダークタワー製造機と、キメラモンを倒したのは貴方を通じてアルケニモンから指示があったからです。
完全体ダークタワーデジモンを率先して倒し続けたのは、デジタルワールド側に僕という手札が残っていると知らせる為でした。
選ばれし子供達全員が脅威に対処出来ないとデジタルワールドに判断されたら何らかの勢力が介入する可能性が合ったので。
……後は、デジタルワールドでのダークタワーデジモンはアルケニモン達による暴走だと考えていたのも理由の一つですね。選ばれし子供達を憎んでる貴方がそんな風に選ばれし子供達を消そうとするとは思っていなかったので」
……ここまで何とか違和感なく嘘を続けられているが、ヴァンデモンの表情は未だに晴れなかった。
が、敵意は先程よりも薄くなっている所から少なくとも敵ではないと思われ始めている様だ。
……出任せの言葉の筈なのに違和感なくヴァンデモンに仲間と思われ始めた自分に少し悲しくなりながらも僕はヴァンデモンの言葉を待った。
沈黙が十数秒ほど場を支配した後、ヴァンデモンは試すような目で尋ねた。
「なら―――――お前の目的は何だ?」
「―――――僕の目的は…………」
side選ばれし子供
ゲンナイ達ホメオスタシスと力を合わせどうにかすべての国のデジモン騒動を解決出来た選ばれし子供達は、日本へと帰っていた。時刻は既に0時に近い時間だった。
今回の騒動で、世界中を飛び回り、そして世界中を歩き回った選ばれし子供達はそれぞれが疲れを見せたような表情を浮かべていたが、日本に帰っても誰一人自宅へ帰ろうとしなかった。
理由は……集合場所に守谷が居なかったからだ。
「……守谷君って先にここに居る筈ですよね?」
「……はい。その筈なんですが」
痺れを切らした京の言葉に光子郎はそう答えながらも、十数分前から続けている守谷のディーターミナルへのメールの送信を行うが返事は一度も帰って来ることはなかった。
守谷のディーターミナルのアドレスを知るヤマトと空も同じようにメールを送ったが返事は無い。
もしかすると何かあったのではと誰かが口にすると、太一達と一緒に行動していたブイモンが目に見えて動揺し始め、今すぐ走り出そうとした。
そんな闇雲に行動しようとするブイモンをアグモン達が必死に止めていると、遠くの方から足音が聞こえて来た。
0時に近い真夜中の足音に選ばれし子供達は少し警戒しながらその足音の方を見てみると、そこには守谷の姿があった。
「アマキー!」
守谷の姿を目にすると同時に走り出したブイモンに全員は小さく笑いながらも守谷の無事を喜んだ。
対して守谷は、しゃがみ込み、ブイモンの頭を小さくなでると、再びこちらに向かって歩き出した。
……その表情は誰が見ても浮かないモノだった。
「……皆さん。疲れているのに遅くなってしまってすいません」
「馬鹿野郎。お前の方がよっぽど疲れてるだろうが……それで――何かあったのか?」
謝罪の言葉と共に頭を下げた守谷に太一はそう返し、尋ねると守谷は――先程よりも深く頭を下げた。
「…………すいません。先程アルケニモン達と遭遇してしまい、D3とディーターミナルを奪われてしまいました」