一つの話を加えるか加えないかを本当に迷っていて投稿できませんでした……
申し訳ございません。
迷っていた話は最終的にカットする事にしました。
二つの強力なエネルギーの衝突点を中心にそれらは爆発し、視界を包み隠すほどの爆煙と爆風が生まれ、それは少し離れた位置に居たはずの僕達の元まで来た。
あまりの爆風に僕の体は一瞬宙に浮いたが、隣にいたアグモンが腕を掴んでくれたおかげで何とか吹き飛ばされずに済んだ。
「ありがとうアグモン」
僕はアグモンに一言お礼を伝えると、未だ視界を覆い隠す爆煙の中必死に目を凝らし、ブラックウォーグレイモンの姿を確認しようとした。
恐らく今の攻撃で決着は付いたと思う。が、正直やり過ぎたかもしれない。
……最悪消滅している可能性もあるかも知れない。
僕は必死に目を凝らしてブラックウォーグレイモンの姿を探す。
煙が晴れ始め、回りが見え始めた僕は、大の字で地面に倒れているブラックウォーグレイモンの姿を目にした。
ブラックウォーグレイモンは視線を上空に向けながら黄昏ているような様子だった。
……良かった。消滅はしていない様だ。
「…………」
僕は煙が晴れると同時に僕の隣に飛んできたウイングドラモンとアグモンと共にブラックウォーグレイモンの元へ歩いて行く。
……決着は付いたと思う。だけどそれを判断するのは僕達では無くブラックウォーグレイモンだ。
だからもしもブラックウォーグレイモンがまだ戦う気だというなら戦わなければならないだろう。
……もうこっちには作戦なんて何一つ残ってないんだけどね。
ブラックウォーグレイモンの元まで来た僕達は話しかける事が出来ず、無言でブラックウォーグレイモンを見ていた。
……何て声を掛ければいいか分からなかった。
下手をすればこの会話で戦いの続行の有無が決まるかと考えると僕はより言葉を紡げなくなってしまっていた。
するとそれを見かねたのかは分からないが、ブラックウォーグレイモンが視線を空に向けたまま話しかけてきた。
「――――あの灼熱のブレス、今まで全力で放ってなかったのか?」
「……いえ、ウイングドラモンは今回の戦いで一切手を抜いていません。流石に究極体という格上相手にそんなことは出来ませんから。
ですが、あのブレスに限っては、爆発範囲や連射という応用した使い方をして本来の使い方は最後の時まで隠していました。
……そうしないと貴方が全力のガイアフォースを放ってくれないと思いましたので」
「そうか。なら最後のあれがお前達の奥の手というやつか」
「はい……癇に障りましたか?」
「フン、一対一での戦いで起こった事なら例えどんなことが起ころうがあれこれ言うつもりは無い。
――――そしてお前達が立っていてオレが倒れている現状から勝敗は明白だな」
「それはつまり―――――!」
「オレの負けだ」
視線を此方に向けそう宣言したブラックウォーグレイモン。
それを耳にした僕は安堵で思わずその場に座り込んでしまった。
それと同時にウイングドラモンもへたりと座り込み、チビモンへ退化した。
僕等の突然の行動にアグモンは心配そうに僕等の名前を呼んだが、それに返事を返す気力は今の僕達にはなかった。
……良かった。本当に勝てて良かった。
そんな風に暫く座り込んでいると、ブラックウォーグレイモンから意外な事を尋ねられた。
「それで勝負に負けてオレの命はお前のモノとなったが、オレはその来る日までの行動を縛られた訳じゃないだろう?」
「勿論その通りなんですが……他に行きたい場所でもあるんですか?」
「行きたい場所は無い。ただオレはこの目で確かめたいだけだ。この広いデジタルワールドでオレは本当に存在してはならない存在なのかを」
「……そう、ですか」
原作と違い、
……そして一つ聞きたい事があったがそれを聞く事は僕には出来なかった。
――――もしも仮に自分の存在が認められる世界が見つかったらどうするのかと。
「――――さて」
ブラックウォーグレイモンは一言そう漏らすと、ゆっくりと立ち上がった。
「オレはさっき言った通り、少しばかり旅に出る。
オレが必要になりそうな頃には戻ってきていると思うが、それまでにオレが必要になったら――これを握って強く念じろ」
ブラックウォーグレイモンは自分の体に手を突っ込み、何かを折る様な音と共に黒い破片を取り出し、僕達に差し出した。突然の奇行に僕達は驚愕の声を上げたが、ブラックウォーグレイモンはそれらを無視して受け取るように促した。
「これは……ダークタワーの破片?」
アグモンの言葉にブラックウォーグレイモンはそうだと頷いた。
「これはオレというダークタワーデジモンを形成する核の欠片だ」
「……よく分からないけど、これを握ればブラックウォーグレイモンがこの世界に戻って来てくれるんですね?」
「そういう事だ。
後一応言っておくが、さっきも言った通りそれはオレの核の欠片だ。
仮にそれが壊されたとしてもオレが消滅する事は無いとは思うが、念の為壊すのは避けろよ?」
「……分かりました。大事に取り扱います」
そう言いながら僕はそれをブラックウォーグレイモンから受け取った。
そしてブラックウォーグレイモンは先程から何か伝えたそうにしているアグモンに視線を向けた。
「……まだ話があるのか?」
「…………ねぇ、キミは本当にいいの? せっかく心を持って生まれる事が出来たのに、目的を持って行動できるようになったのに、自分の人生に時間制限を付けるような約束をしたりして。
もしかしたら……もしかしたら本当に死んじゃうのかもしれないんだよ?」
「互いが同意の上に付いた話に部外者が口を挟むな。
オレはこいつ等に負けた。敗者は勝者に従うのが道理だ」
「だけど――!!」
「それに限りあるからこそ輝ける
お前には理解出来ないモノかもしれないがな……」
ブラックウォーグレイモンの言葉にアグモンは返す事が出来ずに下を向いて黙り込んだ。
それを確認したブラックウォーグレイモンは、一瞬僕に視線を向けると、空へ飛び上がった。
……本当に傷付いた体のまま旅に出るつもりなのか。
――――なら、旅立つ前に確認しなければならない。
僕は先程ブラックウォーグレイモンから受け取った核の一部を握りながら心の中でブラックウォーグレイモンを呼びかけた。
すると空に向かって飛び上がっていたブラックウォーグレイモンが突然その場に止まり、振り返るとギロリとした視線を僕に向けて来た。
……どうやらこれで本当にブラックウォーグレイモンに伝わっている様だ。
僕はその事に安堵の溜息を付きながらブラックウォーグレイモンに謝罪の意味をかねて頭を下げる。
それを確認したブラックウォーグレイモンは再び前を向き、更なる上空へと飛び立った。
そして上空に小さい黒いゲートの様なモノを開けると、その中に消えていった。
「……ねぇ、モリヤは本当にブラックウォーグレイモンを……」
「…………出来る限りは僕もそうならない様に行動するつもりだけど、最悪そうなってしまう可能性も十分ある。…………ごめん」
空を見上げながら言い難そうに尋ねてきたアグモン。
僕はそれに曖昧にもそう答え、逃げるように歩き出した。
その後、はじまりの町に戻った僕達は、予想外にも特訓もしないでただ僕達の帰りを待っていたタケル達と遭遇した。
どうやらテントモン達から話を聞いていた様だ。
……そう言えば口止めするのを忘れていた。
僕達の姿を見たタケル達は初めは心配したと言う優しい言葉を。
次に色々無茶をし過ぎと厳しい言葉を掛けられた。
どうやら昨日京達にした話を聞いていたようで、特にデジタルワールドで寝泊まりしている件についてはかなり怒られた。
タケル達が怒るのも無理はないと言う考えと、ブラックウォーグレイモンが原作通りに行動してくれるという奇跡が起きて普段よりも心に余裕があった僕はそれらに反論する事無く謝罪して、当分はしないと約束した。
しばらくして言いたい事を言い終えて満足したのか、僕が今日からデジタルワールドで寝泊まりするのは止めると言う言葉を聞いて満足したのか分からないが、それで…と突然タケルが話を切り替えた。
「それで……今日のブラックウォーグレイモンとの話し合いはどうなったの?」
「――――ハッキリ言って考えられる限り最高の結果になった」
そう切り出して僕はブラックウォーグレイモンが仲間の様な関係になってくれたことを伝えた。
……今考えるとこの時の僕は、少しばかり浮かれたような声をしていたかもしれない。
因みにどんな交渉をしたかと言う質問には、アグモンの交渉と、軽い手合せの結果だと返した。
「――――とにかく、ブラックウォーグレイモンはもう敵じゃなくなった。
アルケニモン達も恐らくこれ以上は究極体は作らないだろう。今回の事でダークタワーで究極体を作るという事に大きなデメリットがあると知っただろうからな。
これで奴らはかなり動きづらくなった筈だ。少なくとも数か月は行動を起こさないだろう。
……逆に動き出したら最後の決戦と考えてもいいかもしれない」
「最後の決戦……ならそれまでにどれだけ僕達が力を付けられるかが勝負だね!」
最後の決戦と聞いて意気込む者も居れば、安全な時期が来たと安堵する者、最後の決戦が遠くないと聞いて僅かに表情を歪ませる者と選ばれし子供達はそれぞれ違った反応を見せた。
「……それで守谷君は……」
「―――――そうだな。最近は少しだけ無理をしていたから少しだけ休む事にする」
ヒカリの言葉に僕はそう返した。
今回の予想外の出来事のお蔭で色々と余裕が出来た。
これで殆ど原作通りに話を誘導してヴァンデモンを確実に倒せるかもしれない可能性がかなり上がった。
……少ない可能性でデーモンが現れた時の対処法を考えなければならないが、ブラックウォーグレイモンが共に戦ってくれるならやりようは僅かながらある。そうなってしまった場合、原作のようにヴァンデモンを倒せる確率が激減してしまうが、そうだとしてもデーモンとやりあえる可能性が上がった事は大きな前進と言えるだろう。
そう考える事が出来たお蔭か、僕は休むと言う選択肢を取る事にした。
仕方が無いとはいえ、少しばかり無理をし過ぎと言う自覚は自分でも少しあったしね。
――――だがこの時の僕は知らなかった。
この時僕は休むべきでは無かったという事を。
ここで休むという事は、今まで目を背けていたモノを見てしまう余裕を作ってしまう事だということを。