――――ディアボロモンとの戦いから約3年後の休日の夕暮れ時。
僕は、日課のランニングをしていた。
あの戦いの後、この世界の未来に不安を感じた僕は、取りあえず自分の体を鍛える事にした。
鍛えると言っても、やっているのは腕立て等の簡単なトレーニングと、
朝と夕方の走り込みのみ。
これだけしかやらない理由は、鍛えてもデジモンには決して敵わないと理解しているからだ。
だが敵わないと分かっていても何もしないのは嫌だった。
なので、こうして足を重点的に鍛えることにしたのだ。
足が速ければ、色々と役に立つ可能性が有るからね。
ランニングを終えた僕は家に戻ると、シャワーを浴びて汗を流した。
シャワーを浴び終えると、お爺ちゃんが用意してくれた晩御飯を一緒に食べた。
その後部屋に戻った僕はふとカレンダーに目を向けた。
「……明日は始業式。大体の学校はこの日に始業式が行われる。
これで僕は五年生になるわけか」
転生者である僕に学年が上がる事に関心などほぼない。
だが転生者であるからこそ明日は何よりも大事な日だった。
――――2002年4月のお台場小学校の始業式。
それはデジモンアドベンチャー02の物語がスタートする日を意味していた。
二年前のディアボロモンの戦いの後も僕は、選ばれし子供達に接触する事はしなかった。
だから原作に変化はないと信じたい。
だが些細な差かもしれないが、既にオメガモンが誕生しないままディアボロモンを倒すという、
原作と異なる展開になってしまっている。
「……きっと大丈夫。問題ない筈だ」
自ら大丈夫と言葉に出して湧き出てくる不安を無理やり抑え込んだ僕は、
まだ早い時間ではあるが、ベッドに入る事にした。
だが様々な感情が入り乱れていたからか、
実際に眠りに付けたのはそれから数時間後だった。
翌日の昼前頃の放課後、僕は学校の教室に一人で居た。今日は始業式という事もあり、授業は無く、始業式も含めて2~3時間程で学校は終わった。
僕のクラスメイトは学校が終わった後、早く遊ぶためなのかすぐさま教室を飛び出した。
なのでここには僕しかいなかった。
「…………そろそろ大輔達がデジタルワールドに旅立つ時間かな」
今日の放課後、太一が勇気のデジメンタルに触れた事により、
3つの光『D3』がデジメンタルから飛び出し、本宮大輔、井ノ上京、火田伊織の3人が
新たな選ばれし子供としてデジタルワールドに選ばれる。
そして大輔はデジタルワールドに向かい、勇気のデジメンタルに触れる事でデジメンタルの封印が解け、そこからブイモンが飛び出し、大輔のパートナーデジモンとなる。
そこをイービルリングによって操られたデジモンに襲われ、ヒカリがピンチとなり、
ブイモンは初のアーマー進化する。
戦いの後、大輔は太一からゴーグルを受け取り、世代交代をする。
――――これが今日起きるはずの原作の大体の流れだ。
「……家に居ても落ち着かないからここに残ったけど、そろそろ帰るか」
ここに残ってもしょうがないと判断した僕は立ち上がり、ランドセルに手を伸ばした。
――――が、ランドセルに触れるよりも先に突如窓から飛んできた光る何かが僕の手に収まった。
「――――はぁ?」
僕の手の中には『青色』のD3が握られていた。