デジモンアドベンチャー0   作:守谷

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 あけましておめでとうございます!
今年もどうぞよろしくお願いします!!


 今回からある意味最終章扱いの章に入ります。
ここからは、より原作と比べてキャラの性格がおかしいと思われる場面や台詞が、
増えると思います。


030 ダークタワーデジモン

 僕とブイモンが、

タケル達と一緒にデジタルワールドのとある町の復興作業をしている時だった。

ふと、京が大きな荷物を運ぶためにホークモンをアクィラモンに進化させようとしたが、

何故か進化させる事が出来なかった。

その後、試しにパタモン、アルマジモン、

そしてブイモンも成熟期に進化しようとしたが出来なかった。

タケル達はその事に疑問を覚えながらも取りあえずは様子を見ようという事になり、

その問題を後回しにし、

成熟期に進化する代わりにアーマー進化体で復旧作業をすることにした。

 

 

「……アマキ、これって」

 

「……うん、アイツ等の仕業だ」

 

 

 タケル達に聞こえない位距離が離れた所でブイモンが口にした言葉に僕は肯定の言葉を続けた。

この現象は間違いなくダークタワーによるものだ。

一度は機能を失ったダークタワーに再び進化を封じる力が備わった。

それはつまり――――ついにアルケニモン達が動き始めたという事だ。

 

 

「……ブイモン。これから長い長い闘いの日々が続く事になるけど……大丈夫かい?」

 

 

 僕の確認の質問にブイモンは当然と言わんばかりの返事を返した。

ブイモンには謎の女の事をある程度説明している。

説明した内容は、あの女は人間に化けたデジモンで、

ダークタワーを使ってデジモンを作り出せるという事だけだが、現状それ以上の情報は必要ないだろう。

 

 その後、僕達はタケル達の元に戻り、伊織と共に地下で復興作業を行っていると、

突然サンダーボールモンが襲い掛かって来た。

サンダーボールモンの動きがかなり早い事は知っていたので、存在を確認した瞬間、

ブイモンを進化させようとしてみると、普通に進化させる事が出来た。

という事はこいつは十中八九ダークタワーデジモンだろう。

念の為にイービルリング等がはめられていないか確認したが、はめられてはいなかった。

ならこいつは倒すべき敵だ。

……仮に、仮にコイツがダークタワーデジモンでは無いとしても、

ここまで明確な敵意を持って攻撃して来ている以上攻撃しないつもりは無いけどね。

 

念の為、エクスブイモンにサンダーボールモンを倒しきるのではなく、

半殺し位の気持ちで戦ってほしいと伝えると、あのデジモンは操られていないからと、

エクスブイモンに攻撃を止めるように叫び続ける伊織を連れて地上に戻った。

 

 地上に戻ると、エクスブイモン達の戦いの余波で何かが起きたと察したタケル達が

僕達の元へ集まって来た。

そんなタケル達に僕は簡潔に状況を説明した。

 

 

「僕と火田くんが地下で復興作業をしていたら偽サンダーボールモンが襲って来た。

偽サンダーボールモンは、今はエクスブイモンと戦っている。

後数分もあれば倒せるだろう」

 

「偽って? ってそれより倒すって……イービルリングを壊すって事ですよね?」

 

「いや、あいつにはそんなモノははめられていなかった」

 

「じゃあ倒すって――――殺すって事?」

 

「はい―――――ですが、これ以上僕に何か言うよりも前に、あのサンダーボールモンを見てください」

 

 

 僕の言葉に京達は疑問気な表情を僕に向けながらも、

地上から飛び出してなお戦い続けるエクスブイモンとサンダーボールモンの方を見た。

状況は完全にエクスブイモンが優勢で、サンダーボールモンに反撃の隙を全く与えずに攻撃を続けていた。

そんな攻撃を受け続けているサンダーボールモンの体はとうに限界なのか所々体の『内側』が見えていた。

 

 

「あのサンダーボールモン何か変だ!

エクスブイモンに殴られる度に体が割れていって……中の黒い部分が出て来てる。

あの黒い部分は何なんだ?」

 

 タケルの疑問に京達も分からないと言わんばかりに首を傾げていたが、

僕はその黒い部分を見てあのサンダーボールモンがダークタワーデジモンだという事が確定したので、

その事を説明すべく意味深に呟いた。

 

 

「やはりあのサンダーボールモンは偽物だったか」

 

 

僕がそう呟くと、予想通りにもヒカリがそれに対して尋ねてきた。

 

 

「あのサンダーボールモンは偽者ってどういう事?」

 

「言葉の通りあのサンダーボールモンは偽物だ。ダークタワーで作られた、な」

 

「「「ダークタワーで作られた!?」」」

 

「ああ。あの黒い部分が何よりの証拠だろう。

本物のサンダーボールモンの体の中があんな風になってる筈が無いしな」

 

「……ダークタワーを使ってこんな事をする奴なんて……まさか!」

 

 

 現状でこんな事をしそうな存在など一人しか居ない。

その正体にタケル達は僕が言うまでも無く察した。

 

 

「……あの謎の女が動き出したと言う事だな。

――――エクスブイモン! そいつがダークタワーで作られたデジモンだという事が分かった以上、

これ以上戦いを長引かせる必要は無い。止めだ!」

 

 

 僕の言葉にエクスブイモンは軽い返事で返すと、

弱り切ったとはいえ、たった一撃の右ストレートで偽サンダーボールモンを粉砕した。

 

 

「す、すごい」

 

 

 成熟期とは思えない圧倒的な強さを見せたエクスブイモンに思わず誰かが呟いた。

……確かに僕の目から見てもエクスブイモンの強さはかなりのモノだった。

その強さは、恐らくここに居る僕を除く選ばれし子供の成熟期体全員と戦っても勝てると思える程に。

……だが、こんなに強くなったエクスブイモンでさえ、

恐らく完全体のダークタワーデジモンに勝つ事は出来ないだろう。

成熟期と完全体にはそれ程の差があるのだ。

……まあ食い止めるぐらいなら十分可能なレベルだとは思うけど。

 

 そんな事を考えていると、エクスブイモンがこちらに戻って来た。

戻ってくると同時にブイモンに退化して僕の前まで来たので、

僕はそんなブイモンの頭を撫でながら労いの言葉をかける。

そしてブイモンが離れると、今度はタケル達の方を向いて忠告の言葉を口にした。

 

 

「これから先、イービルリングがはめられてなく、

今みたいに意思の疎通が出来ないデジモンが現れ、襲ってきたら、

そいつは十中八九ダークタワーデジモンだろう。

その時は、今のエクスブイモンみたいに全力で倒せ」

 

 

 僕の忠告にタケル達は頷くのを確認すると、僕達はタケル達の前から去った。

考えたい事があったから。

 

……アルケニモン達が動き始めたという事は、黒幕のヴァンデモンが本格的に活動し始めたという事だろう。

それはつまり02最後の章の幕開けという事だ。

……これからは何体もの完全体以上のデジモンと戦う事になるだろう。

だが現状、完全体に進化させる事が出来る選ばれし子供は僕一人だけだ。

正直現状は原作よりも遥かに厳しい。

……そろそろハッキリ決めた方が良いだろう。

 

 タケル達がジョグレス進化させる事が出来ると信じて行動するか、

ジョグレスは無理と考え、微かな希望を信じて完全体に進化出来るようになってもらうか、

それとも……単独で完全体に進化出来る選ばれし子供は僕だけだと考えて行動するかを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――そして遂に決断の時が来てしまった。

今、僕の居る場所から数十メートル離れた岩場でダークタワーデジモン『ギガドラモン』と戦う選ばれし子供達の姿があった。そこに居るのは、京、伊織、タケル、ヒカリと、そのパートナーデジモンであるホルスモン、アンキロモン、エンジェモン、ネフェルティモンの4体だ。

ホルスモン達は4体で協力しながら戦っていたが、終始ギガドラモンに押されっぱなしだった。

……だがそれも無理はないだろう。何故ならギガドラモンは『完全体』なのだから。

 

 

「アマキ! このままじゃホルスモン達がやられちゃうよ!」

 

「――――分かってる!!」

 

 

 無言で戦いを見守る僕を急かす様にブイモンが僕の服を引っ張りながらそう叫ぶ。

そんなブイモンに僕は大声でそう言葉を漏らした。

 タケル達がピンチなのはもちろん分かっている。

このまま戦いが長引けばいずれやられるのはよく分かっている。

……だが、選ばれし子供達とギガドラモンの戦いは、まだ戦いと呼べる程度には均衡している。

だからこそ……時間がまだあるからこそ僕は未だに悩んでいた。

ここで京達の誰かがジョグレス進化するのを待つか、ブイモンをウイングドラモンに進化させ、ギガドラモンを倒し、

タケル達に完全体に進化出来ると言う可能性をここで示すかどうかを。

……ここで僕達がギガドラモンを倒してしまったら、きっとこの先ジョグレス進化をこの目で見る事は出来ないだろう。だが、だからといって現状で京達がジョグレス進化を成功させる可能性は0に等しい。

それ程重要な京と伊織の成長イベントを僕は奪ってしまったのだ。

 

ジョグレス進化を目指すか、完全体への進化を信じ、今すぐ助けに向かうか。

……二つに一つ。僕が取るべき行動は―――――――

 

――――僕が答えを決断しようとしている時、ギガドラモン達の戦いに変化が起きた。

ギガドラモンの攻撃を躱しきれなかったホルスモンとアンキロモンが攻撃をまともに受け、その場に倒れ込んだのだ。

だが、まだ進化を解除するには至っていない様で、足をふらつかせながらもゆっくり立ち上がった。

ホルスモンとアンキロモンは、ギガドラモンの攻撃をその身に受けながらも、

その目はまだ諦めの感情が浮かび上がって居なかった。

京と伊織は、そんな二体の想いを察して必死に応援の声を上げた。

がんばれ!と、負けるな!と。

だが、必死にパートナー達の勝利を信じる二人とは違い、タケルとヒカリは何かを決意したのか、

お互いの顔を見合わせ、一度深くと頷くと、京と伊織の前に立った。

 

 

「――――――――」

 

 タケル達が何やら話し出した。

ここからではタケル達が京達に何を言っているかは分からない。

が、その行動から察するのは簡単だった。

………そしてタケル達に何かを言われた京達は、怒っては居たが、

完全にタケル達の押しに負けているようだった。

こうなったらもう僕が取るべき選択は決まってしまったも同然だろう。

 

 

「………………行くよ、ブイモン」

 

「――――! おう!!」

 

 

 僕はブイモンをエクスブイモンに進化させると、

タケル達の元へ全速力で向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

sideタケル

 

 

「――――京さん、伊織君、ここは僕達に任せて先に逃げるんだ」

 

 

 突然二人の前に立ち、こんな事を言った僕に二人は一瞬キョトンとした表情をしたが、

直ぐに正気に戻り、困惑を含む声で言葉を返してきた。

 

 

「タケルさん。なに、を、言ってるんですか?」

 

「……言葉の通りだよ、伊織君。

僕達で時間を稼ぐから今の内にアンキロモン達を連れて逃げてって言ったんだ」

 

「………はは、冗談キツイわよタケル君! ヒカリちゃんもそう思うでしょ?」

 

「……私もタケル君と同じ意見です」

 

 

 申し訳なさそうにそう返すヒカリちゃんに京さんは一瞬下を向くと、

怒りの表情を浮かべながら顔を上げた。

 

 

「二人とも何言ってるの!! ホルスモン達4体で戦っても勝ててないのにあたし達に逃げろなんて!!

そんな事をしたらタケル君達が……」

 

「……このまま戦ってもあのデジモンには勝てないですよ。

相手は完全体なんです。このまま戦いを続ければ確実に全滅です」 

 

「だったら全員で逃げればいいじゃない!!」

 

「……こんな岩場で全員が同時にギガドラモンから逃げ切れると思いますか?

大丈夫です。京さん達が逃げ切れたら頃合いを見て僕達も逃げますから」

 

「でも……だからって僕達だけが先に逃げるなんて……

そうだ! だったら守谷さんが助けに来てくれるまで待ちましょう!

守谷さんのエクスブイモンは、かなりの強さです。

きっと状況を打破してくれるはずです!!」

 

「伊織君、確かに守谷君とエクスブイモンは強い。

でも成熟期と完全体の差は想像しているよりずっと大きいの」

 

「――――ならどうしてあたしと伊織なの?

タケル君とヒカリちゃんが残ってどうしてあたし達が逃げるの!?」

 

「「それは――――――――」」

 

「――――――――逃げる必要は無い」

 

 

 僕とヒカリちゃんが二人に答えを返そうとした時だった、

突然どこからかそんな声が聞こえて来た。

この声は――――守谷君の声だ。

僕がそう判断したとほぼ同時にギガドラモンの怒りの声が聞こえた。

その方を見てみるとそこには先程まで居なかったエクスブイモンから、距離を離し、

咆哮を上げてるギガドラモンの姿があった。

……エンジェモン達4体で戦ってもギガドラモンはそんな行動を取らなかったのに……

だけど、ギガドラモンはダメージを受けている様子では無かった。

……やっぱりエクスブイモンでも駄目か。

僕がそう思っていると、守谷君が僕達の前に姿を現した。

 

 

「……遅くなってすまないな」

 

「ううん、それはいいけど…………」

 

 

 ギガドラモンの方を見ながらそう謝罪した守谷君。

どうやら守谷君はギガドラモンと戦うつもりのようだ。

だけど…………

 

 

「…………守谷君、お願いがあるんだ」

 

「なんだ?」

 

「京さんと伊織君達を連れてここから逃げて欲しい。

ギガドラモンは僕とヒカリちゃん達で食い止めるからその間に」

 

「…………」

 

 

 僕の言葉に守谷君は答えなかった。聞こえていない筈はない。

そんな言葉聞きたくもないという意思表示なんだろうか?

僕は守谷君に納得して貰うべく言葉を続ける。

 

 

「相手はあのキメラモンと一緒で完全体なんだ。

ついさっきまでエンジェモン達4体で戦ったけど全く歯が立たなかった。

……エクスブイモンが加わっても結果は一緒だと思う」

 

「そうだろうな」

 

「だから京さん達を連れて――「一つ確認してもいいか?」

 

 

 僕の言葉を遮るように守谷君は言葉を重ね、僕の価値を計るかのような目で僕を見てきた。

その眼つきに一歩後ずさりながらも僕は、守谷君の言葉を無言の頷きで返した。

 

 

「今のお前達はあのギガドラモンに――――『完全体』に勝てないと言うんだな?」

 

 

 その質問に僕は悔しさで顔を歪ませながらも再び無言の頷きを返した。

その返答に守谷君は、そうかと一言言葉を漏らすと、

先程僕とヒカリちゃんが京さん達にやったように、僕達の前に背を向ける様に立った。

 

 

「お前達はもう手を出すな。ここから先の戦いは――――僕達だけで片付ける」

 

 

 守谷君の突然の宣言に僕達は驚愕の声を上げた。

 

 

「守谷君まで何言ってるの!? 相手は完全体よ! ホルスモン達4体でも勝てなかったのに、

エクスブイモンだけで敵う筈が無いじゃない!!」

 

「そうですよ! だから皆で逃げる方法を考えましょう。

守谷さんとエクスブイモンが加わった今ならきっとなんとかなる筈です!」

 

「そうだな。エクスブイモンでもギガドラモンには勝てないだろうな」

 

 

 まるで他人事化の様に守谷君は二人の言葉にそう返すと、ポケットからD3を取り出した。

そして、それにと言いながらこちらを一瞬だけ振り返った。

 

 

「さっき言った筈だ。『逃げる必要は無い』と」

 

 

 守谷君がそう言った瞬間、守谷君のD3から光が飛び出した。

そしてその光は真っ直ぐエクスブイモンの方へ飛んで行く。

 

 

「まさかアレは――――進化の光!?」

 

 

 ヒカリちゃんの呟きに僕達は再び驚愕の表情を浮かべずには居られなかった。

何故なら僕達は知っているからだ。完全体に進化するのに必要なのはタグと紋章。

または何らかのバックアップが必要だという事を。

だけど今この世界には使用できる紋章は存在しない筈。

更にあの進化の光は純粋にD3から発生したモノだ。

何らかのバックアップを受けた様子は無かった。

それなのに――――僕達のあり得ないという考えを否定するように、

光が晴れたその場所には、エクスブイモンでは無く、見た事も無い全く別のデジモンが存在していた。

 

 

「行け、ウイングドラモン!」

 

 

 守谷君の言葉と共にエクスブイモンが完全体に進化したデジモン、

『ウイングドラモン』がギガドラモンの元へ飛び立つ。

その速さは今まで見たどのデジモンよりもずっと早かった。

そして――――その後の戦いはまさに圧倒的だった。

ウイングドラモンは終始ギガドラモンを圧倒し、結局一度の攻撃も受けないままギガドラモンを倒したのだ。

 

 

「つ……強すぎる!」

 

 

 その光景に僕等の誰かが思わずそう呟いた。

僕もその意見に同意せざず負えなかった。

……いくらエクスブイモンの時から強かったと言っても今回の戦いはあまりに異常だ。

相手が格下なら理解できる。

でも相手のギガドラモンは、ウイングドラモンと同じ『完全体』だ。

…………同じ完全体でここまで差が出るものなのか?

 

 そんな事を考えていると、戦いを終えたウイングドラモンが守谷君の元へ戻ってきた。

そして守谷君は、そのウイングドラモンの背中に無言のまま乗ろうとしていた。

そんな守谷君の足を僕は咄嗟に掴んだ。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 

「……なんだ?」

 

「どうして完全体に進化出来るの?

今この世界には完全体に進化する為の紋章は存在しないのに……」

 

「うん。私達の紋章は、デジタルワールドの復興の為に使ったからもうない筈だし。

……もしかして新しい紋章を作って貰ったの?」

 

 

 僕とヒカリちゃんの言葉に守谷君は当然の様に答えた。

 

 

「いや、僕は紋章もタグも持っていない。勿論新しく用意して貰った訳でも無い。

ただ、それら無しにブイモンを進化させているだけだ」

 

「紋章とタグ無しでだって? そんなのは「あり得ないのか?」

 

 

 最後まで言い切る前に守谷君は僕のセリフに言葉を重ねてきた。

 

 

「ならお前達は紋章とタグが無ければ絶対に進化出来ないと言い切れるのか?

選ばれし子供のパートナーデジモンは、

パートナーの紋章とタグが無ければ絶対に完全体になれないと心の底からそう考えてるのか?」

 

「……それは…………」

 

 

 絶対にあり得ない、と僕は返せなかった。

僕達は今まで完全体に単独で進化するには紋章とタグが必要だと思っていたし、

それを疑うことも無かった。何故なら前回の冒険でそうだったのだから。

だけど今守谷君に指摘されて……完全体に進化させるのを見せられて始めてその考えに疑問を覚えた。

選ばれし子供のパートナーデジモンが完全体に進化するのには絶対に紋章とタグが必要なのかということに。

 

 

「少なくとも僕は出来た。紋章もタグも無しにブイモンを進化させることが出来た。

――――なら理論上お前達も」

 

「……紋章とタグ無しに進化させれるって事?」

 

 

 ヒカリちゃんの言葉に守谷君は、理論上なと返した。

……確かに守谷君が出来た以上僕達も出来る可能性は十分ある。

そうなったら完全体相手でも互角に戦えるようになる!

 

 

「……それでお前達はこれから完全体への進化を目指すのか?」

 

 

 僕達の表情から考えていることを読み取った守谷君はそう尋ねてきた。

僕とヒカリちゃんは勿論と強く言葉を返した。

守谷君はその返答にそうかと返すと、今度こそウイングドラモンの背中に乗った。

そして冷たい表情で僕達に言い放った。

 

 

「――――ならこれから先、お前達はダークタワーを攻撃するな。

敵がダークタワーで完全体デジモンを作れると判明した以上、お前達は戦力外だ。

これからはダークタワーは僕達だけで破壊する」

 

 

 守谷君の宣言に僕達は驚愕の声を上げた。

 

 

「守谷君達だけでダークタワーを壊すって……冗談だよね?」

 

 

 乾いた笑い声を上げながら守谷君にそう返したけど、

守谷君は一切表情を動かさずに冷たい視線のまま僕の目を見ていた。

……冗談ではないってことだ。

 

 

「状況を良く考えろ。

現状敵の完全体に対抗できるのは僕達だけだ。

なら、敵と戦うのが僕達だけになるのは必然だろう」

 

「でも僕達だって成熟期とは戦えるし、完全体相手でも足止め「ならハッキリ言ってやろう」

 

 

 守谷君は僕の言葉にそう重ねると、今まで見た中で一番冷たい目で静かに言い放った。

 

 

「現状4体で普通の完全体一体もロクに倒せないお前達は――――足手まといだ」

 

 

 足手まとい。

残酷に言い放たれた真実に僕達の誰もが俯かずには居られなかった。

 

 確かに僕達はダークタワーで作られた完全体に勝てなかった。

……いや、ギガドラモンとの戦いは、

勝てる筈もない戦いを必死に耐えてただけの戦いとも呼べないモノだったかもしれない。

だから守谷君に足手まといと言われるのは仕方が無いのだろう。

 

 だけど、僕の心の中は、その真実を叩きつけられた事による悲しみより、

足手まといと言われたことに対する悔しさでいっぱいだった。

 

 そんな僕の心情を知ってか知らずか、守谷君は、

僕達が俯いている間にその場から去って行った。


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