デジモンアドベンチャー0   作:守谷

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 初めは前編と後編で終わるはずだったんですが、
予想以上に長くなってしまったので、中編を入れる事にしました。

 今回でミミが登場しますが……話し方やキャラが全然再現出来ていないかもしれません。
ミミのセリフは難しいと思っていましたがまさかここまでとは……
個人的に、アルマジモン、テントモンの次に位難しいです。


026 アメリカ旅行 中編

「――――ここがニューヨーク……当然だけど外人ばかりだね!」

 

 

 飛行機での旅を終え、ニューヨークに着いたタケルは早々に荷物を受け取り、

ぬいぐるみのふりをしているパタモンに興奮気味にそう話しかけていた。

 

 

「もうタケルくん! はしゃぐ気持ちは分かるけど逸れないでよ。

入口でミミさんが待ってるんだから」

 

 

 自分だけ先へ先へと進んで行くタケルに小走りでようやく追いついたヒカリは、

腰に手を当てながらタケルにそう注意した。

注意を受けたタケルは、ごめんごめんと謝ってはいるが、恐らく反省はあまりしていないだろう。

 

 

「全く……。――――ごめんね、守谷君。ニューヨークに来て早々こんな事になって」

 

「別に構わないよ」

 

 

 ニューヨークに来て早々走る羽目になった事に謝ってきたヒカリに僕はそう返した。

それより……結局タケル達とニューヨークに来ることになったか。

 

 ミミからこの日の飛行機に乗る為の書類一式を手渡されそうになったあの後、

僕は勿論それを受け取ろうとしなかったが、タケルに、

受け取らないとミミさんがどんな事をするかわからないと言われたので、

渋々ながらそれを受け取った。

……ミミと接触するのは出来る限り避けたいが、それよりもミミに敵対される方が厄介だろう。

それに正当な方法でニューヨークに行けるならそれに越したことはない。

向こうでパスポートを提示しろとか言われたら一発で終わりだしね。

それを受け取った僕は、その後、急いでおじいちゃんに事情を話し、

パスポートなどの発行を済ませ、その結果この場所に居た。

 

 ……ちなみに、今はまだ夏休みに入ったばかりの7月下旬。

そしてミミから書類を受け取り、パスポートなどの準備をし始めたのが7月中旬ごろ。

……結果的に、正統な手段でニューヨークに来れた事は感謝していたが、

余りに急な話だったので準備が本当に大変だった。

 

 

「ねぇ、アマキ。ここに前話してたデジモンが?」

 

 

 僕の腕の中で人形のふりをしているチビモンが、

周りに居るヒカリ達に聞こえない程度の小さな声で話しかけてきた。

 

 

「……居ると決まった訳じゃ無いけど、個人的にその可能性は高いと思ってる。

だからチビモンも何か変な気配を感じたらすぐ知らせて欲しい」

 

「了解!」

 

「何話してるの?」

 

「何でもない。それより早く太刀川さんの所へ行こう。あまり待たせるのは申し訳ない」

 

 

 突然僕達の所まで来たタケルにそう返すと、ヒカリもそれに賛同し、

そのまま真っ直ぐミミの元へ向かう事にした。

そして歩き出してから数分後、ゲートから出た僕達は、

ミミを見つけるべく辺りを見回していると、

おーい、と声を上げながらこちらに走って来る女性の姿があった。

この声は――――ミミの声だ。

 

 

「「ミミさん!」」

 

「やっほー! タケルくん、ヒカリちゃん! 久しぶり! 元気だった?」

 

「はい、ミミさんも元気そうで何よりです」

 

「私は何時だって元気よ! パタモンもテイルモンも久しぶり!」

 

 

 ミミの言葉にテイルモンとパタモンも小さく手を振る。

今は二体とも人形のふりをしてるからそう動くわけにはいかないだろうからね。

 

 対して僕は少しだけタケル達と距離を置いていた。

……ミミがどういう人物かは知っているが、

流石に初対面の僕がミミたちの会話に入るのは気が引ける。

暫くそうしていると、一通り話したい事を話し終えたミミが僕の存在に気が付き近づいてきた。

 

 

「えっと、貴方がタケルくん達が言ってた、京ちゃんや伊織君と同じ、新しいデジヴァイスを持ってる選ばれし子供?」

 

「はい。守谷天城と言います。今回は往復の航空券を用意して頂き本当にありがとうございます」

 

「いいのいいの気にしないで。ちょうど余ってただけだから。

――――あ、私は太刀川ミミ! 気軽にミミって呼んで。よろしくね、天城くん!」

 

 

 そう言いながら伸ばしてきた右手を僕は少し遅れながらも右手で掴み、握手した。

……想像以上に明るい人だと思った。しかも、もう僕の事を名前で呼んでいる。

正直に言うと、距離感に困る相手だ。

……いや、こうなる事はミミに会う事が決まってた時から覚悟していた事。

戸惑いは出来る限り表情に出さないようにしなければ。

 

 ……僕は正直に言うとミミとは会いたくなかった。

理由は、光子郎の時と同じで、ミミも警戒すべき選ばれし子供の一人だからだ。

……いや、人間的に言えばミミは選ばれし子供達の中で最も警戒している存在だった。

その理由は簡単で、ミミが僕と真逆と言える性格をしているからだ。

天真爛漫で喜怒哀楽が激しい。これだけで僕と真逆だどいうのに、それに加え、

表裏も無く、人気者だ。

更に自分の気持ちを隠したりしない為、他の人が言いづらい事までじゃんじゃん言える図太さも備えている。

だからこそ僕はミミと接触したくなかった。

太一達が気を使って聞いてこない事も、ミミならあっさりと聞いてくるかもしれないから。

 

 

「じゃあニューヨーク観光始めましょうか!

みんな! しっかり付いて来てね!」

 

 

 僕が考え込んでる内に、チビモンとの自己紹介を終えたミミは、

僕等をぐるりと見回すと、右手を大きく上げながら屈託の無い笑顔でそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、それで……じゃーん! ここが私がよく来るお店なの!」

 

「へ、へぇー、そうなんですか!」

 

 

 ミミの言葉にオーバーリアクションで返すタケル。

 

 空港を出てから数時間後、途中に昼休憩を挟んで、

今なおミミに観光案内をして貰っているのだが、

案内してもらう場所が段々観光地ではない場所になっているのは全員がうすうす気付いていた。

……まあ実際にニューヨークに住んでいる人からしたら、ニューヨークの観光地なんて、

相当有名な場所じゃない限りピンとこないから仕方ないだろう。

実際、有名所はちゃんと始めのほうに案内して貰えたし。

……それより、僕と違って毎回律儀にオーバーリアクションを返すタケルとヒカリに

少なからず罪悪感を覚えたが、僕はそういう反応を見せるキャラじゃないので許して欲しい。

 

 

「…………」

 

 

 ミミが店の事をタケルとヒカリに説明している間、僕はひっそりと辺りを見回す。

理由はウォレスを見つける為。

今日は、おそらく映画でウォレスがニューヨークに来ていた日。

もしもこの世界でも映画と同じように事件が起きるというならウォレスはここに居る筈だ。

そう思って先程からちょくちょく周りを見ているが、ウォレスが見つからないのは勿論、

街でデジモンが暴れている様子も無い。

 

 

「…………」

 

 

 そもそも映画で起きた初めの異変が、

ミミ達二代目の選ばれし子供達が消えたという事を改めて思い出したので、

ミミを凝視するが――――特に回りに異変は感じられたなかった。

 

 

「ん? どうしたの天城くん? ミミの事ジッと見たりして。

――――さてはミミに見とれてたでしょ!」

 

 

「ち、違いますよ。ちょっと太刀川さんに聞きたい事があって」

 

 

 ミミを見ていた事を知られてしまい、からかわれそうになったので、

話題を変えるべくそうミミに返したが、ミミはふん、とワザとらしくと首を横に向けた。

 

 

「ミミって呼んでくれなきゃ何も答えない」

 

「えっと、女性を名前呼びするのには抵抗が……」

 

 

 その言葉にもミミは聞く耳持たないといった様子で首を横に向けたままだった。

……仕方が無い。

 

 

「えっと…………ミミさん?」

 

「はぁーいー!! どうしたの天城君?」

 

「…………」

 

 

 ミミの余りの変わり身の早さに溜息を付きそうになったがぐっと堪えた。

 

 

「ここ最近のニューヨークの治安ってどうですか?」

 

「治安? て、どういうこと?」

 

「えっと、チンピラが暴れたり、暴動が起きたり――――行方不明者が多発してたりしてないですか?」

 

「うーん……そういう話は全然聞かないわ。ニューヨークって世界的にも治安がいい方みたいだし。

それがどうしたの?」

 

「いえ、ちょっと気になっただけです。もしも治安が良くないなら注意しないとなーと思っただけです」

 

 

 ウェンディモンは、映画の1シーンで、

列車の乗員をほぼ全員連れ去るという荒業を行っていたので、

もしも行方不明者が出ているなら……と思ったのだが、

どうやらそう言った事件は現時点では起きていない様だ。

それが、まだ起きていないだけなのか、それともそもそも起きない事なのか……

まだ判断はつきそうにない。

 

 

「じゃあ私からも質問! 天城君ってぶっちゃけ何歳なの?」

 

「11歳の遅生まれです」

 

 

 隠す事でもないと思ったのでサラッと返すと、予想外にも横から二人が何とも言えない表情を浮かべていた。

 

 

「京さんに敬語を使ってて、僕達に使ってないから、同じ年だとは思ってたけど……

改めてそうだと言われると凄い違和感があるね」

 

「私も」

 

「ミミ的には、雰囲気的に同じ年か年上かなって思ってたけど、タケルくん達と同じ年なんだ。

まあ身長はタケルくんより少し小さいくらいだしそんなものなのかな?」

 

 

 そんな雑談も交わしながら僕達は観光を続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――どう、チビモン?」

 

「うーん……変な気配は感じないよ」

 

 

 深夜0時ごろの夜の街の中、僕とチビモンは人気が無い場所を歩き回っていた。

あの後、適当な店で夕食を済ませた僕達は、ミミとヒカリと別れ、寝泊りするホテルに行った。

どうやらヒカリはミミの家に泊まるようだ。

ホテルに行った僕達はそこでタケルとパタモンと別れた。

その後、僕とチビモンは少ししてからホテルを飛び出し、こうして街を歩き回っていた。

理由は、ウェンディモンの存在を確認する為だ。

 

 

「アマキ、やっぱりアマキの言うデジモンは居ないんじゃ……」

 

「…………そうかも知れないね」

 

 

 今日は、恐らく映画でタケル達がニューヨークに来ていた日。

映画で正確な日時を言っていた訳では無いので確証はないが、その可能性は高いと思う。

いや、やはりキメラモンが早々に現れ、倒されたことで日付がズレたのだろうか?

…………どれだけ考えても、結局の所それを確認する術はない。

そもそもウェンディモンが存在するかも分からない以上、それを確認する術は、

ウェンディモンそのものの存在を確認するか、そのパートナーであるウォレスに会うかしかない。

それならやはり明日はウォレスと会える可能性があるあの場所に行くしかないか。

 そんな事を考えているとチビモンが大きな欠伸をした。

……もうこんな時間か。

 

 

 

 僕は眠そうなチビモンを連れ、ホテルに帰り、そして眠りについた。

 

 

 

 

 

 

sideヒカリ

 

 

「――――へぇー、そんな事になってたんだ。」

 

 

 タケルくん達と別れた後、私とテイルモンはミミさんの家にお邪魔させて貰った。

前々からニューヨークに来たらミミさんの家に泊まる事になっていた。

ミミさんの家に着くと、そこには誰も居なくて、その事を聞いてみるとどうやら今日は二人とも帰って来ないらしい。

その後は、お風呂や洗面台を借りたりして寝る準備を済ませミミさんの部屋に行くと、

その部屋には大きなベッドが一つと、床に敷いてある布団があった。

私達が部屋に来たのに気が付いたミミさんは、私達にベッドを使うように言って来て、

私達も始めは断ったけど、最終的には有難く使わせてもらう事にした。

 

 

「ヒカリちゃん、もう眠たかったりする?」

 

 

 ベッドに腰掛けながら荷物を整理しているとミミさんがそんな風に話しかけてきた。

 

 

「いえ、まだ眠たくは無いですね」

 

「ほんと? じゃあさ、じゃあさ、話そうよ!

私がデジタルワールドに行った日から起きた事とか」

 

 

 ミミさんが一番最近デジタルワールドに来たのは、確かキメラモンを倒してから数日後のゴールデンウィーク中。

私達が気分転換にピクニックに行こうと学校のパソコンルームに忍び込んだ日に

ミミさんも学校に潜り込んでて、その後、一緒にデジタルワールドに行った日。

確かにあの後から色んなことがあった。

それに、あの時は確か、守谷君が入院してたからあまり詳しくは説明しなかったんだっけ?

……一先ず私は守谷君以外の話をミミさんに話した。

 

 

「――――へぇー、そんな事になってたんだ。

……でもどうして京ちゃんや伊織君は、純真と誠実のデジメンタルを使えなかったんだろう?」

 

「それがワタシ達にもさっぱりなんだ。

二つのデジメンタルを使う事が出来るのはモリヤが証明してるんだが……」

 

 

 ミミさんの疑問にテイルモンはそう返した。

京さんと伊織君は、デジメンタルを使えなくても引き抜く事は出来た。

それはつまり使う資格があるという事。それなのにどうしてアーマー進化は出来ないんだろう?

そう考えていると、顎に手を当て考えていたミミさんがふと質問を投げかけて来た。

 

 

「その理由って天城くんもわからないの?

ほら、天城君って光子郎君に似てなんか色々知ってそうな顔してるし」

 

 

 その言葉に私達は思わず視線を下に向けた。

突然下を向いた私達にミミさんは何か言ってはいけない事を言ってしまったのかと戸惑っていた。

ミミさんがそんな様子になっても言葉を返せなかった私に変わってテイルモンが話し出した。

 

 

「ワタシ達もモリヤなら何か知ってるかと思ってるんだが……

何も聞けていないんだ」

 

「どうして? テイルモン達もそう思ってるなら聞いてみたらいいじゃん」

 

「アイツは私達と関わりたがらないんだ」

 

「関わりたがらないってどういう事?」

 

「それは――――――――」

 

 

 そうしてテイルモンはこれまでの守谷君の行動をミミさんに話した。

初めは変な仮面を被って私達に正体を隠していた事。

キメラモンを倒す作戦を私達に話した後、直ぐにその場を去った事。

自分が選ばれし子供に選ばれた時期を偽っている事。

キメラモンを倒した後もチビモンと二人でダークタワーを壊し回っていた事。

守谷君が私達と距離を取ろうとしていると思った理由を思い付く限りテイルモンは話した。

 

 テイルモンの言葉を聞いたミミは頭を傾げながら言葉を漏らした。

 

 

「どうして天城君はヒカリちゃん達から距離を取ろうとしてるのかな?」

 

「光子郎さんいわく、私達に心配をかけない為じゃないかって言ってましたけど実際はどうかわかりません」

 

「うーん。でもそうだとしても、今ヒカリちゃん達にそうやって心配かけてるじゃない?

その事を天城君も気付いてると思うからやっぱりそうじゃないと思うの」

 

「……ならミミさんはどうしてだと思いますか?」

 

「うーーーん、そうね……………」

 

 

 ミミさんは両腕を組んで、暫く難しい顔をして考え込んでいたけど、

突然何か思いついたのか、高いテンションで話し出した。

 

 

「男が誰かに何かを隠したがるのって大抵は後ろめたいことがあるからだと思うの!

……ほら、男子って色々あるみたいだし。

だから天城君も何かヒカリちゃん達に言いづらい後ろめたい事を抱えてるんじゃないかな!!

いや、もしかしたらヒカリちゃん達の誰かに一目ぼれして照れて近づけないとかじゃ―――――ー」

 

 

 そう言って一人でどんどんテンションが上がっていくミミさんの姿に

私達は思わずガクリと肩を落とした。

 

 

「え、違うかな?

う~ん……じゃあさ、じゃあさ、天城君は誰かを頼るのが苦手なんじゃないかな?

ほら始めの頃の丈先輩みたいにさ!

……あ、ヒカリちゃんは始めの頃の丈先輩を知らないんだっけ」

 

「はい。私が丈さんに会ったのはヴァンデモンが東京に来た時なので。

……でもその考え、合ってるかもしれませんね」

 

 

 誰かを頼るのが苦手かもしれないと言うミミさんの言葉は何故か私の胸に深く突き刺さった。

私自身もそうかもしれないと思ったからかもしれない。

でも、もしかしたら守谷君もそうなのかもしれない。

何時も一人で行動するのも誰かを頼る方法が分からないから。

だからどうしても自分だけで解決できないこと以外は誰かを巻き込もうとしない。

それがどんなに辛い事でも。

……そんな守谷君に私達が出来る事はないのかな?

 

 そんな事を考えていると何故かミミさんがニヤついた表情で此方を見ていた。

 

 

「ミミさん、どうかしましたか?」

 

「うんん、なんでもない。

それより、天城君って明日の昼から別行動だったっけ?」

 

「はい。そう言ってましたよ」

 

 

 守谷君が私達と一緒にニューヨークに行くと言った日に守谷君はこう言っていた。

『一緒に行くのはいいが、僕にも用はある。

三泊四日の内の、初日と二日目の昼まででいいなら一緒に行動しよう』と。

勿論守谷君にも用事があるのは分かっていたので私とタケルくんはそれを承諾した。

 

 

「その用事ってどんなのか聞いてる?」

 

「えっと、電車に乗って何処かに行くという事しか聞いてませんね」

 

「ふ~ん。そうなんだ。

――――ヒカリちゃん、私いいこと考えちゃった」

 

 

 そう言うミミさんの表情はとても悪い顔をしていた。

 

 


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