デジモンアドベンチャー0   作:守谷

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 誰も望んでいないかもしれませんが、アメリカ旅行編の前編です。
この編を書く事にしたのは一度ミミを登場させたかったからですね。


 後tri第三章見に行ってきました!
色々と予想外の展開が続いて驚きました。

 特にヘラクルカブテリモンの「みなはん」のセリフにぐっときました。



025 アメリカ旅行 前編

 キメラモンとの戦いから3ヶ月近くたった7月上旬の休日の朝、

僕は日課のランニングをしていた。

 

 キメラモンを倒してから謎の女……アルケニモン達は宣言通り一切姿を見せなくなった。

そのお蔭か、ダークタワーがある場所でも通常進化が出来るようになったので、以前よりはずっと楽に壊せるようになった。

だが、どれだけダークタワーを破壊しても次の日にはある程度立て直されている所から見るに、

しっかり行動はしているようだ。

……次にアルケニモン達が再び姿を現すのは恐らくダークタワーからデジモンを作り出せるようになってからだろう。

つまり原作で言う9月頃だということだ。

……勿論この世界は原作とは違う世界なので、多少時期がずれるかも知れないので

これはあくまで基準として考えておく。

 

 

「……もうすぐ夏休み」

 

 

 それは原作で言う、キメラモンが倒された時期だ。

だがこの世界では。それは一乗寺賢が居ないせいなのか大幅に早まり、4月下旬ごろに終わっている。

だからそれに関しては問題は無い。

……ただ、僕にはそれ以外に一つ心配な出来事があった。

それは僕達の世界に存在した、デジモンアドベンチャー02の映画、

『デジモンアドベンチャー02 デジモンハリケーン上陸!!・超絶進化!! 黄金のデジメンタル 』

の存在だ。

この映画は原作の02で言う夏休みに起きた出来事を映像化した作品で、

僕自身も何度か見た事ある映画だ。

……それはともかく、僕はその映画で登場するデジモン、チョコモン……いや、『ウェンディモン』を僕は警戒していた。

ウェンディモン自体は所詮は成熟期デジモンなので、正直に言ってブイモンの相手では無い。

……だが、映画ではウェンディモンはパートナーの力を借りずに完全体、

――――そして究極体に進化したのだ。

 

 

「……アンティラモンはともかく、究極体のケルビモンに進化されたら勝ち目はない」

 

 

 僕達の完全体以上の戦力は、未だブイモンが完全体に進化した、ウイングドラモンと、

アグモンが完全体に進化したメタルグレイモンの二体だけだった。

キメラモンとの戦いから僕も色々と努力し、

今はブイモンを完全体に長時間保てるのは勿論、同時にアグモンも完全体に進化させる事が出来るようになった。

……二体同時進化は正直体にかなり負担が来るが、そんな事を言っている場合では無い。

少なくとも僕は後二体は同時に進化させられる様になりたいのだ。

だから前以上に体を鍛えていた。

……まあそもそも、

今はアグモンとブイモン以外に進化させられそうなデジモンが居ないんだけどね。

 

 それと、一応京も伊織も、パートナーを成熟期に進化させられるようにはなったが、

ジョグレス進化にまでは至っていない。

……ジョグレス進化に必要なホーリーリングは、

僕が退院後に、数日かけて要塞があった場所を探しても見つからなかった事から

恐らく既にゲンナイ達が回収しているのだろう。

それでも出来ない理由は、ジョグレスするデジモン自体に問題があるのか、

そのパートナーである京達に問題があるのか。

……それともゲンナイ達がホーリーリングを回収していなくて

そもそもジョグレス進化出来ないのかは分からない。

だが恐らくは京達に問題があると思われる。

――――いや、問題が起きてしまったのだ。

 

 何度考えても頭が痛くなる話だが、現時点で京と伊織は原作と同じように、

第二のデジメンタル、『純真のデジメンタル』と『誠実のデジメンタル』を所持しているが

『使用は』出来なかった。

そう、この世界が原作の世界と違うせいで、時期がズレ、京と伊織が精神的に成長するイベントが

無くなってしまい、その結果、京と伊織はそれらのデジメンタルを使う事が出来なかった。

 

 一応この二つのデジメンタルが使えない事に関してはそれ程問題ではないが、

原作と違い、そのデジメンタルを使えない京と伊織が原作と同じようにジョグレス進化出来るかが問題だ。

……京達がジョグレス進化出来ない場合の事を考えた方が良いかもね

 

 そんな事を考えながら僕は普段以上に走り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝のランニングから数時間後の昼過ぎのデジタルワールドで、

僕は久々に遭遇した京達と共にダークタワーを幾つか倒し終えると、

京が少し休憩しようと提案し、皆もそれに賛同したので少し休憩する事にした。

 

 休憩に入ると同時に元気に雑談し始めた京達から

少し距離を取るように寝転がって空を見上げていると、突然タケルが声を掛けてきた。

 

 

「ねえ、守谷君って夏休みの予定とかあるの?」

 

 

 突然話題を振られたことに少なからず驚きながらも質問に答えるべく、

僕は体を起こしてタケルの方を向いた。

 

 

「夏休みの予定?」

 

「うん! 守谷君には予定があるのかなーっと思って。

……あ、デジタルワールドに関係する予定があるとかは無しでね」

 

 

「夏休みの予定……」

 

 

 僕が返そうと思っていた答えはタケルにあらかじめ封じられてしまったので、

僕は改めて腕を組んで考えた。

 

 僕の夏休みは、デジタルワールドに関する事以外の予定は無いに等しかった。

それもそうだろう。なんせ、もしかするとこの期間は、僕達に用意された最後の準備期間となる可能性もあるのだから。

これから先の事を考えると遊んでいる暇なんて無かった。

……まあブイモンの気分転換に何処かに出かけたりはするかもしれないけどね。

 

……とにかく僕は、これから先の事を考えると、遊んでいる暇なんて無い。

だけど、そう返すのも気が引ける。

そんな答えを返してしまったらまたタケル達に心配されるだろうから。

……ならどう返すべきか。暫く考えているとある事を思いついた。

 

 

「……アメリカに行く予定はある」

 

「え!? アメリカに?」

 

 

 僕の返答があまりに予想外だったのかタケルは一歩後ずさりながらそう返してきた。

……僕がアメリカに行く予定があるというのは嘘では無い。

 

 少なくともこの世界に劇場版の敵デジモン、ウェンディモンが存在するかは一度確認するつもりだった。

流石に無視できる存在では無いからね。……だがそれに関して一つ大きな問題があった。

それは劇場版の戦いが起きた時期が夏休み中という事しか分からないという事だ。

……勿論この世界は原作の世界とは違うのだから、仮にウェンディモンが存在しても、

劇場版と違う時期に騒動を起こす可能性が有るという事は分かっているが、

だからと言って無策に調査するのは避けたかった。

……そんな僕が今タケルにアメリカに行くと言った理由は……

 

 

「え!? 守谷君も(・・・)アメリカに行く予定があるの?」

 

 

 僕とタケルの会話を聞いていたヒカリが、驚いた表情をしながら近づいてきた。

……どうやらこの世界のタケルとヒカリも劇場版の様にアメリカに行く予定があるようだ。

僕がタケル達にこの事を伝えた理由はそれを確認する為だった。

……後で僕から選ばれし子供達に何処かに出かける予定があるのか尋ねても話して貰えない可能性が高い。

だからこそ僕はタケルが訪ねてきたタイミングでアメリカに行く予定があると伝えた。

タケルとヒカリの性格から考えて、一緒に行こうと誘わないとしても、

自分達も行く予定があるとは言うと思ったからね。

……さて、まだこの段階では劇場版の事件が起きるかどうかは分からないが、

少なくとも行く日は聞いておかなければ。

 

 

「ああ。まだ時期はまだ決まってないけどね。……二人もアメリカに行く予定があるのか?」

 

「うん。前にミミさん……えっと、太一さん達の時の選ばれし子供の一人が、

日本に来た時に、航空券二人分までなら用意できるから遊びに来ないって誘われたんだ」

 

「それで誰が行くことにしようかなって話し合おうとしたら、

京さんと伊織君が自分達は良いから二人で行ってって。遠慮なんていらないのに……」

 

「流石に出会ったばかりなのにそんなもの受け取るのはね」

 

「そうですよ。それに僕は出来るならあまり飛行機には乗りたくないので」

 

 

 ヒカリにその場に座ったままそう伝える京と伊織。

その表情に全くの曇りが無い所から本心からの言葉なんだろう。

……まあ僕でも出会って数か月の友人からそんなモノを受け取るのは気が引ける。

 

 

「それで僕達はこの日に行こうと思ってるんだけど……

もし行先が決まってないなら守谷君も一緒にニューヨークに行かない?」

 

 

 ポケットからスケジュール表を取り出して僕に見せながらそう言うタケル。

 

 

「それいい考え! ……ねえ守谷君、どうかな?」

 

 

 ヒカリもタケルの意見に賛同し、僕にそう問いかける。

まさか一緒に行こうと誘われるとは思っていなかったので、少なからず僕は驚いていた。

……だが、僕の返答は二人に言われずとも決まっていた。

 

 

「……悪いけど、遠慮しとくよ」

 

「……やっぱり行先とか決まってた?」

 

「いや、僕の行く予定の場所もニューヨークだ。

だけど二人の様に正当な方法で行く予定じゃないんだ」

 

「正当な方法じゃないって……どういう事?」

 

 

 ヒカリ達の疑問に答えるべく、僕は腰に付けたD3を手に持つ。

 

 

「このD3を使って、デジタルワールドからアメリカのニューヨークに繋がるゲートを開けて行くつもりだ」

 

「そんな事が出来るの!?」

 

「ああ。まあ一つのエリアに開ける国のゲートは一つだから、

他のエリアに行ってアメリカ行のゲートを繋げる必要があるけどね」

 

 

 これは原作で大輔達が行っていた方法だ。だからこの世界でも出来る筈。

一応アメリカに行くのは、これを確認する為でもあった。

……これが出来なければ本当に色々考えなければならなくなる。

 

 

「でもゲートが開いている場所ってかなり限られてるんじゃ……」

 

「D3の力を使えばネットワークが繋がっているモニターがある場所なら大抵何処でも開く事は出来る。

君達だって実は、パソコンルームからだけじゃなく、

家のパソコンからだってデジタルワールドに行ける筈だ」

 

 

 その言葉にタケル達は驚愕の表情を浮かべた。

 

 

「なら、いつでも365日、好きなタイミングでデジタルワールドに行けるって事?」

 

「それなら色々便利になりますし、

空いた時間にダークタワーを倒す事も出来ますね!」

 

「…………だが、言っておいては何だが、君達はこれからも普段通りパソコンルームから

デジタルワールドに来るようにしてほしい」

 

「どうしてですか? 家のパソコンから来れるならそうした方が効率がいいと思うんですが」

 

「家から行くのは親に見つかるというデメリットがある。

デジタルワールドに行く瞬間を見られるのは論外として、

家に居たはずなのに居なくなったとかで家族を心配させる原因にもなるからな。

それにデジタルワールドに一人で行った瞬間に謎の女達に襲われる可能性もある。

だからこそ泉さんも出来るだろうと思いながらも君達に話さなかったんだろう」

 

 

 その言葉にタケル達は納得し、渋々ながら同意してくれた。

 

 

「……ってそれよりも、守谷君、それって不法入国になるんじゃ……」

 

「……デジタルワールドの為、世界の為に戦っているのだから、

これくらいの我儘は許して貰えると勝手に思っている。別に悪事を働くつもりもないしな」

 

 

 その言葉に対して正義感の強い伊織は止めた方が良いと言ってきたが、

それなら力づくで止めるかと尋ねるとそこまでは……と、言って口を閉ざした。

……これ以上色々聞かれるのを避ける為、僕はその場から立ち上がり、

タケル達に背を向けた。

 

 

「と言う事だから、君達と一緒にアメリカに行くというのは無しだ。

……もう昼前だし、僕達は家に帰る事にする。またな」

 

 

 僕はそう言ってタケル達の静止を聞かずにブイモンと共に家へ帰った。

――――後に僕は、タケル達に一緒にアメリカに行くつもりは無いともっと強く言わなかったことを後悔する事になった。

 

 

 それから10日後くらいの放課後、

数少ない僕のディーターミナルのアドレスを知っているヤマトから来たメールに従って、指示された場所に来ていた。

僕のアドレスを知っているのは全部で3人。僕とキメラモンの秘密を共有しているヤマトと空。

そして僕が気絶している間に勝手にディーターミナルを調べてアドレスを手に入れた光子郎の三人だ。

 

 指定の場所でしばらく待っていると、タケルとヒカリがペガスモンとネフェルティモンの背中に乗ってやって来た。

……どうやらヤマトは来ていない様だ。

という事は、タケルがヤマトに頼んで、僕をここに呼び出したという事だろう。

 

 

「ごめん、待たせちゃったかな?」

 

「いや。……それより何か用か?

石田さんのメールにはこの時間この場所に来るようにしか書いてなかったんだが」

 

「えっと……それが…………」

 

 

 タケルは少し言いずらそうな表情をしながらポケットから封筒の様な物を取り出した。

 

 

「……これは?」

 

「…………ミミさんからの守谷君への封筒。

中には僕達と同じニューヨーク行きの飛行機に乗る為の用紙が入ってる」

 

「――――はぁ?」

 

 

 僕は今までしたこと無いような程の呆れ顔をタケル達に向けた。

そんな僕の表情にタケルとヒカリは乾いた笑いを向ける事しか出来なかった。

 

 


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