デジモンアドベンチャー0   作:守谷

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この回と次の回は飛ばすか迷いましたが、
書く事にしました。


023 四聖獣の力

 次に目を覚ますと、僕はまたもや病院のベッドの上に居た。

 目を覚ました僕は前以上にグルグルに包帯を巻かれている右手を見て

小さく溜息を付いていると、

病室の前を通りかかったナースの人が僕が目を覚ました事に気が付き、近づいて来た。

 その後、主治医と思われる人などもやって来て怪我の原因など色々聞かれたが、

僕はそれらの質問をあまり覚えていないなどと言って誤魔化し、今の自分の状況を尋ねた。

 ……どうやら右手の骨折以外はそれ程大したことが無い様で、一週間ほど入院したら

退院出来るそうだ。それと話を聞いて驚いたのだが、僕は一日程眠ったままだったらしい。

 ……他のデジモンを進化させる事がそれ程体に負担がかかるという事だろうか?

 

 その後おじいちゃんに連絡したり、改めて検査などを終えた後病室に戻ってみると、

そこにはヤマトと空、……そして空に抱かれるコロモンの姿があった。

 

 

「元気そうだな」

 

「怪我も思った程では無かったので」

 

 

 ……と、言っても体調はそれ程良くないので、ヤマト達に一言断りを入れ、

ベッドに腰を下ろした。

 

 

「……キメラモンの事は太一達には黙っておいたぞ」

 

 

 暫くお互いに黙り込んでいると、突然ヤマトがそう言って話を切り出してきた。

 突然僕が気になっていた事を話されたことに少なからず驚いたが、

なによりも黙って居てくれたという事に僕は心から感謝した。

 

 

「――――ありがとうございます!」

 

「礼ならコロモンに言っておけ。

コロモンの言葉が無かったら多分話してたからな」

 

 

 ヤマトの言葉に僕は、空に抱かれているコロモンの方を向くと、ありがとうと深く頭を下げた。

 ……それにしても一体何と言ってくれたんだろう?

 

 

「それよりも……今日俺達が来たのは、光子郎達に話すキメラモンの戦いに関する内容のまとめが主な理由だ」

 

 

 ヤマトの言葉に僕は成る程と小さく返した。

 ……確かにそれをしておかないと、実際質問された時にボロが出て、

 せっかく吐いてもらった嘘がばれてしまう可能性が高いからね。

 実際僕は、今ヤマトに話を聞くまで、キメラモンの事を話したのかさえ知らなかったのだから。

もしこの状況で光子郎達に質問されていたら危なかった。

 

 

「それと、昨日お前が途中で寝たせいで聞きそびれた、

チンロンモンというデジモン達に関する事についても話して貰おうか。

何故そのデジモンの事も黙っていた方がいいんだ?

封じられている場所も分かってるなら今すぐにでも助けた方が良いだろう」

 

 

 ヤマトの言葉に空もそれに同意するように意見を言ってきた。

 二人の言葉に僕は考えを話すべきか少しだけ迷ったが、

この状況で隠し通すほどの情報では無いと判断し話す事にした。

 ……出来る限り二人には不信感は持ってほしくないからね。

 

 

「……確か、チンロンモン達四聖獣のデジモンは、この世界を安定させるべく存在しているデジモンだという事までは話しましたね?」

 

 

 僕の質問にヤマト達は頷いた。

 

 

「ならその続きから話します。

四聖獣と呼ばれる4体のデジモンは、

前話したようにデジタルワールドの安定を保つ力、

そして他のデジモンを完全体――――究極体に進化させるほどの規格外の力を持っています。

……いえ、正確に言わせて貰うと――――持っている筈なんです(・・・・・・・・・・・)

 

「どういうことだ?」

 

「……僕がデジタルワールドを本格的に調査し始めて気が付いた事なんですが、

コロモン達のデジタルワールドは現状を保たれているだけなんですよ」

 

「―――――言っている意味がよく分からないな。

四聖獣とか言うデジモンの力は、デジタルワールドを安定させる力なんだろ?

それなら現状を保っていているのが普通じゃないのか?」

 

「……少し違いますね。

四聖獣の力は、デジタルワールドをいい方に安定させる力を持っている筈なんです。

ですが今コロモン達のデジタルワールドは現状が保たれているだけなんです。

枯れた木も、荒れた大地も、滲んだ海も、汚れた空も……

全てが自然に回復しないまま何年も変わらずに維持されているんですよ。

……石田さん達が普段通る様な場所は、

デジタルワールドの安定を望む者達が筆頭になって復旧されていますが、

彼等が関わっていない場所は、改善される事なく廃れたままです。

……もっと分かりやすく言うと――――

石田さん達選ばれし子供達が3年前に戦闘で荒らしてしまった土地は、

安定を望む者達が修復していない限り、草木も生えずに3年前のまま残って居るということです」

 

 

 これは、僕とブイモンが完全体に進化する為に特訓する場所を探し回っている時に気が付いた事だった。

 ……今思えばこの時だったかもしれない。

 この世界が僕の知る原作の世界と違っていると意識し始めたのは。

 

 ヤマト達が僕の言葉に驚愕したような表情を見せた所で僕は話を続けた。

 

 

「……もしも四聖獣が僕の知る様な力を持っているならこんな事は起きない筈なんです。

ですが、実際にはこのような現象が起きてしまっています。

仮にダークタワーのせいで力が落ちてそうなってしまっているとしても、

それはあくまで最近の話。

3年前の大地の傷跡がそのまま残っているのとは関係は無いです」

 

「……ならお前の考え通り、四聖獣達は何らかの理由で力を発揮出来ていないという事か?」

 

 

 ヤマトの質問に僕は、おそらく、と頷く。

 

 

「少なくとも現状を維持するだけの力しか発揮できていないと思われます。

もしくは――――そもそも四聖獣にそれ程の力が無いのかもしれませんね」

 

 

 もしも本当にそうだとしたら……ハッキリ言ってこの先の戦いは厳しいモノになると言わざるを得ない。

 四聖獣が、僕の知る原作の四聖獣より遥かに劣っているとしたら、必然的に他のデジモンを進化させる力にも期待できなくなる。

 それが意味するのは、少なくとも黒幕――――べリアルヴァンデモンとの戦いに100%勝てなくなるということだ。

 そうなってしまったらヴァンデモンに取り憑かれている人間、及川ごと倒すしか方法が無くなる。

 ……それは出来る限り避けたい。

 理由は、人を殺すのに少なからず抵抗があるのは勿論、現実世界で再びヴァンデモンを倒したくないからだ。

 ヴァンデモンは一度……いや、二度太一達に倒されている。それなのにヴァンデモンはまだ完全には消滅していない。

 ……恐らく現実世界でヴァンデモンを完全に倒す事は不可能なのだろう。

 だからこそ、僕はある程度ヴァンデモンの計画通りに動き、ヴァンデモンを復活させ、

デジタルワールドに連れて行く必要があると考えているのだ。

 

 

「……実際に四聖獣がどういう状況なのかは僕にもまだ分かりません。

だからこそ、僕は四聖獣の呪縛を無暗に解きたくはないんです。

四聖獣達は力こそ封じられていますが、決してつらい目に合っている訳では無い筈なので。

それならこの状況を利用して、四聖獣に休んで貰うというのも悪い考えではないとは思いませんか?」

 

「……まあ確かに今の所は四聖獣達が力が封じられていてもあまり支障が無いみたいだもんね」

 

「……休んで貰うのも手段の一つか。

分かった。ここはお前の言う通り、四聖獣の呪縛を解くのは一先ずやめておこう。

後、現状何もしない以上、四聖獣の事を太一達に話して余計な心配をかけたくないから、

この話も話さないでおく」

 

「――――そうして貰えると本当に助かります」

 

 

 ヤマト達に何度目か分からない感謝の言葉を伝えると、

次は、太一達に話すキメラモンとの戦いの詳細について話し合った。

 

 

 

 


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