デジモンアドベンチャー0   作:守谷

24 / 65
 またもや投稿が遅れて申し訳ございません。


022 決着

 咆哮を上げながらこちらに飛びかかってきたキメラモンを

メタルグレイモンは少し上空に飛ぶ事で回避すると、

隙だらけとなったキメラモンの背中に自らの尻尾を振り下ろした。

――――が、キメラモンはその攻撃が直接見えていないのにも関わらず、

二本あるデビモンの腕を曲げ、見えているかのようにその二本の手でメタルグレイモンの尻尾攻撃を防いだ。

そして今度は自分の番と言わんばかりにキメラモンはスカルグレイモンの腕をメタルグレイモンに突き出す。

その攻撃をメタルグレイモンはサイボーグ化した左腕で防御し、

カウンターを喰らわそうとするが――――ー

 

 

「……っ!」

 

 

 その場に留まる事が出来ずにメタルグレイモンは僅かに後方に吹き飛ばされた。

突然の衝撃に僕達もメタルグレイモンから振り落とされそうになったが……なんとか持ちこたえた。

 

 

「……凄い攻撃だ。攻撃を受けた左手がまだ少し震えてる」

 

 

 ピリピリと震える自分の左手を見ながらメタルグレイモンはそう呟くと、

キメラモンの方に改めて視線を向ける。

 

 

「ガードしてこれ程の衝撃。もしも直接受けたとしたら……」

 

「……多分スカルグレイモンの腕だったからこれ程の衝撃を出せたと思う。

だから次からはスカルグレイモンの腕の攻撃だけは最優先で避けるように動こう」

 

 

 先程チビモンがウイングドラモンの状態で戦った際に、

デビモンの腕、クワガーモンの腕で何度か攻撃されていたが、

それ程ダメージを負った様子では無かった。

つまり4本ある腕の内、

スカルグレイモンの腕以外による攻撃はそれ程大したものでは無いだろう。

なら僕達はスカルグレイモンの腕による攻撃に注意して行動すれば問題ない。

今の動きを見るからに、スカルグレイモンの腕による攻撃は余り早くないので、

警戒して動けば回避するのは難しくない。

……それにしても腕によってダメージが違うとは……

それぞれの腕を動かす筋肉までコピー元のデジモンに左右されるという事なのか?

 

 そんな僕の思考など全く気に留めずにキメラモンは再びこちらに突っ込んできた。

……不意打ちでギガデストロイヤーを当てたはずなのに微塵もそんな素振りをみせない。

 

 

 

「……ッ! やっぱり羽が生えてると言ってもこの姿での空中戦は苦手だ」

 

「……確かにメタルグレイモンは空中戦が得意とは言えないデジモンかも知れない。

だけど相手がキメラモンの場合は地上戦に持ち込むのは危険だ。

なんせあのガルルモンの足が使用されてるから地上での速さは相当なモノだろう。

それならまだエンジェモンとエアドラモンという特段空中戦に特化していない

デジモンの翼を使用しているこの空中戦の方が遥かにマシだよ」

 

 

 接近して来て何度もこちらにデビモンの腕を振るうキメラモンの攻撃をガードしながら

そんな愚痴を吐いたメタルグレイモンに僕はそう返す。

 確かに空中戦は分が悪い。だけど地上戦はもっと分が悪い。

なら僕達はまだ分が悪いで済む空中戦で戦うしかない。

 

 メタルグレイモンはキメラモンの攻撃を防ぎながら納得したような返事を返すと、

キメラモンがスカルグレイモンの腕を振るおうとした一瞬の隙に、

右腕で思いっきりキメラモンを殴りつけた。

スカルグレイモンの腕を振るおうと僅かに体重を後ろに傾けていたキメラモンは

その攻撃を踏ん張る事が出来ずに後ろに吹き飛んだ。

 ……あれ程のラッシュを受けていたというのに

一瞬の隙にキメラモンを吹き飛ばせるほどの力を込めれたとは……

どうやらメタルグレイモンは、ウイングドラモンに比べ、速さは劣るものの、頑丈さ、

力のコントロール力に関しては、遥か上をいっているようだ。

これなら多少キメラモンの攻撃をまともに受けても動きに支障は出ないだろう。

 

 ……それにしても、いくらメタルグレイモンがウイングドラモンに比べ、速さが劣るにしても、

隙が大きいスカルグレイモンの腕をこう何度も使うとは……

もしかするとキメラモンも、戦いを早く終わらそうと焦っているのかも知れないな。

 

 吹き飛んだキメラモンは、直ぐに体制を整えると、意地になって居るのか、再び接近して来た。

一息つく暇も無くメタルグレイモンは再びキメラモンの連続攻撃を必死に耐え、

隙が出た瞬間だけ攻撃を返す。

――――そんなやり取りが何度も何度も続く。

両手では数えきれないほどこのやり取りを繰り返したが、

流石のメタルグレイモンもダメージを無視できなくなったのか、

キメラモンを再び吹き飛ばした際、後ろに軽く飛び、初めてキメラモンから距離をとった。

 

 

「モリヤ! このままキメラモンの隙を付いてこうして攻撃するだけじゃこっちが先にやられる」

 

「分かってる。

……だけど今僕達が使える手札は、通常攻撃を除けば、

左手の爪による『スラッシュ系の攻撃』と、左手のアームを飛ばす『トライデントアーム』、

口から炎を放つ『オーヴァフレイム』、

そして現状の状態で、後…………一回しか打てないであろう『ギガデストロイヤー』しかない。

そしてその中でキメラモンに止めをさせるであろう技はギガデストロイヤーだけだ」

 

 

 だが、今の状態でギガデストロイヤーを放ったら。恐らくメタルグレイモンの進化は解けてしまうだろう。

 

……正直今でも気を抜けば眠ってしまいそうになるくらいの疲労感を感じているのだから。

だからギガデストロイヤーを外すわけにはいかない。耐えられるわけにはいかないのだ。

 

 そんな思考をしていると体勢を整えたキメラモンが再びこちらに向かって来ようと、

羽を大きく羽ばたかせた。

が、突如その大きな動作を辞め、その場に留まれる程度の羽根の動きに切り替えた。

 

 

「アマキ! もしかして――――ー」

 

「――――やっとダメージが出始めたみたいだね」

 

 

 チビモンに続くように僕も僅かに口元をニヤつかせた。

ウイングドラモンとの戦いでの傷、不意打ちでのギガデストロイヤー、

そしてここまでのメタルグレイモンのダメージが

ようやくキメラモンの動きに支障が出るくらいに露わになり始めた。

このペースなら、このまま今のペースを続ける事が出来たのなら

ギガデストロイヤーを当てずとも倒せるかもしれない。

……だがそれは無理な話だ。

ハッキリ言ってしまえば、このペースで戦いを続けても、

キメラモンでは無く先に僕達が倒れるだろうという確信が僕にはあった。

それなら――――ここで勝負を仕掛けるべきか。

 

 

「メタルグレイモン! キメラモンの周りを飛んで、かく乱するんだ!

そして―――――」

 

「―――――わかった」

 

 

 僕の作戦を聞いたメタルグレイモンは、

キメラモンから一定の距離を保ちながら、円を描くように飛び始めた。

キメラモンもそれを追おうと羽を羽ばたかせようとしたが、

思ったよりもダメージがあったのか、その場から動かずに必殺技を放つ戦法に変えて来た。

 

 

「メタルグレイモン――――!」

 

「分かってる!」

 

 

 メタルグレイモンは次々と自分に向かって来る必殺技を上下に移動しながら攻撃を躱していく。

何発も、何発も、何発も―――――。

 

 そして――――いままで一定のペースで放っていたキメラモンの必殺技の波が疲れのせいか、

一瞬止んだその時、メタルグレイモンは突如キメラモンに向かって真っすぐ飛んだ。

 

 突然の行動にキメラモンは驚愕したような表情を見せたが、

メタルグレイモンと自分との距離がかなり離れている事から、

このまま直進して来たら先に自分の攻撃が当たると本能で察知したのか、

避けるような動きを見せないまま、

今まで放っていた空気砲の様な必殺技とは明らかに違う必殺技

『ヒートバイパー』をメタルグレイモンに放った。

 

 

「――――!」

 

 

 真っ直ぐメタルグレイモンに向かって来るキメラモンの必殺技に、

メタルグレイモンは避けるような素振りを見せずに――――そのまま命中した。

 

 必殺技が命中したことで、辺りにモクモクと、ドス黒い煙が巻き上がる。

自身の必殺技がまともに命中したことでキメラモンが警戒を僅かに解いたその時、

黒煙の中からメタルグレイモンが先程までのスピードを落とさないまま飛び出た。

 

 ――――そう、僕達の目的は、初めからこうしてキメラモンの意表を突く事だった。

こちらの最大火力であるギガデストロイヤーをまともに放っても、避けられるか、

ガードされるかは目に見えている。

しかも、キメラモン自身、自分に止めを刺し得る攻撃が

あの時不意打ちで放ったギガデストロイヤーだけだと

本能で悟っていたのか、それを放たせないために、必要以上に接近し、

ギガデストロイヤーを放つ暇を与えない様に行動していた。

これ程警戒されていたら、防御されるどころか命中する事すら難しかった。

だからこそこうしてキメラモンの意表を突く必要があった。

……その為にメタルグレイモンにワザとキメラモンの攻撃を受けて貰ったが……

正直想像以上にダメージを受けてしまった。

ここで一度でも動きを止めてしまったらメタルグレイモンは動けなくなってしまうだろう。

――――だからここで決めるしかない!

 

 意表を突かれたキメラモンが、全速力でその場から離れようとしたが、それよりも早く、

ワイヤー状になっているメタルグレイモンの左手のアームがキメラモンに向かって飛び、

キメラモンを縛って行動を阻害した。

 

 ……いくらキメラモンの動きがメタルグレイモンよりずっと早いと言っても、

初見の上、疲れ切ったキメラモンになら当てられる。

 

 メタルグレイモンはキメラモンの方に全力で飛びながら、キメラモンを縛っている

左手のアームを縛った状態のまま戻し、

そのアームが戻る反動で更に自身のスピードを加速させる。

そしてキメラモンとの距離が10m程になった時、胸のハッチを開けた。

 

 

「――――!」

 

「この距離ならガードの上からでも十分なダメージを与えれるだろ?」

 

 

 覚悟を決めたような表情でメタルグレイモンはそう言い放つと、

僕とメタルグレイモンは、込められるだけの力を全て込め、

ハッチからミサイルを放った。

 

 

「「これで終わりだ!『ギガデストロイヤー!!』」」

 

 

 互いの距離が5m程しかない距離で放った必殺技は、

キメラモンが防御するよりも早く命中し、爆発した。

キメラモンはその攻撃に耐える事が出来ず、うめき声を上げながら消滅した。

 

 

「―――――ッッ!!」

 

 

 キメラモンに命中したミサイルが生み出した余波は、当然すぐ近くに居る僕達にも及ぶ。

僕とメタルグレイモン――――いやグレイモンは、

残ったエネルギーを全て防御に込め、その爆風に備えた。

が――――既に想いのエネルギーが殆ど残って居なかった上に、距離が距離なので、

その爆風に耐える事が出来ずに、その場から大きく吹き飛ばされ、僕は気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後目を覚ますと、僕は再びヤマトの背中に背負われていた。

 

 

「目が覚めたのか」

 

 

 現状がどうなっているかを確認すべく、頭を左右に揺らしながら周りを見ていると、

僕が目を覚ましたのに気が付いたヤマトが声を掛けてきた。

 

 

「はい。……すいません。また背負わせる羽目になってしまって」

 

 

 僕の謝罪の言葉にヤマトは気にするなと一言返すと、

現状を把握していない僕の為に状況を説明してくれた。

 

 どうやら僕はキメラモンを至近距離でのギガデストロイヤーで倒した後、

その爆風で空中で気絶してしまったが、地面に激突する前にグレイモンが守ってくれたらしい。

その後、駆けつけたヤマト達が僕達を回収して――――今に至るようだ。

 

 

「そうだったんですか。コロモン、助けてくれてありがと――――ッ!」

 

 

 空に背負われているコロモンに僕は感謝の言葉を伝えたが、

言い終わると同時に鈍い痛みが全身を走った。

 

 

「大丈夫か?」

 

 

 僕の異変に気が付いたヤマトが立ち止まりそう声を掛けてくれた。

その行動に回りに居る空達も何事だと言わんばかりに集まって来た。

そんなヤマト達に僕は大丈夫だと返事を返そうとしたが、

正直あまり大丈夫だと言える状態では無かったので正直に話す事にした。

 

 

「キメラモンを倒した事を改めて実感したせいか、

それまで抑えてきた疲労と痛みが一気に襲い掛かって来てます。

……申し訳ないですが、このまま病院まで連れて行って貰っても構いませんか?」

 

「勿論そのつもりだ。

見た所、その右手の怪我も悪化してそうだしな。

――――というか、光子郎達に連絡して迎えに来て貰った方がいいな」

 

「確かにそうね。分かった、私がメールで頼んどくね」

 

 

 空がそう言ってディーターミナルを取り出し、太一達にメールを送ろうとしたので、

僕は慌てて止めた。

 

 

「待ってください!

……八神先輩達と合流する前に、皆さんにお願いがあります。聞いて貰えますか?」

 

「……言ってみろ」

 

「はい。

――――今回、僕がチビモンを……コロモンを完全体に進化させた事、

そして、チンロンモンと言うこの世界を守護するデジモンが居る事を

他の選ばれし子供達に黙ってて貰えないでしょうか」

 

 

 ヤマトに背負われながらも僕は、深々と頭を下げ、そうお願いした。

……出来るなら今日ヤマト達が見た光景は誰にも話さないで貰いたいのだ。

 

 

「どうして話してはいけないの?」

 

 

 僕のお願いにヤマトよりも早く反応を返したのは空だった。

空は心底疑問を浮かべたような表情で僕にそう尋ねてきた。

……疑問を浮かべるのは当然だろう。

だが僕はどうしても他の選ばれし子供達には知られたくなかった。

 

 

「理由は色々ありますが……一番の理由は、他の選ばれし子供達――――

4人の新たな選ばれし子供達の成長に悪影響が出るからです」

 

「悪影響?」

 

「はい。

…………実はこのD3には石田さん達がまだ知らない機能が一つ存在しています。

その名は『ジョグレス』。

D3を持つ者同士の心が一つになった時に初めて使用出来る機能で、

その二人のパートナーデジモンを合体させる事で上の形態へと進化させる事が出来る力です」

 

「デジモン同士の合体だと?」

 

 

 僕の説明にヤマト達は驚愕したような表情でそう返してきた。

……この世界ではディアボロモン戦でメタルガルルモン達が

オメガモンに進化しなかったので、ヤマト達はそんな進化がある事は知らないのだろう。

……というか、ジョグレス進化には少なくとも一度はホーリーリングのエネルギーが必要だから、

正確には今はジョグレス進化出来ない可能性が高いが……それは話す必要はないだろう。

 

 

「はい。

この力を使えば、例え紋章の力が無くとも、

成熟期二体で完全体に進化する事が可能になります」

 

「……それが本当なら、どうしてお前はそれを俺達に話さなかった?

お前達が紋章無しに完全体に進化出来る事を話さなかったのはさっきの説明からまだ理解出来る。

だが――――」

 

「……今話した所でジョグレス進化は出来ないと確信しているから、ですね。

ジョグレス進化は、合体と言ってもあくまでそれ自体は進化の様なモノ。

仮に心が通い合っても、ダークタワーがある場所では使用出来ません。

……というかそもそもジョグレスの元となる成熟期に進化出来ないですね。

それにD3を持つ選ばれし子供のパートナーデジモンの内の二体の

パタモン、テイルモンはともかく、成熟期に進化したことが無い

ホークモンとアルマジモンがいきなり完全体にジョグレス進化は出来ないでしょう」

 

「なら今日お前達がやったように、

ダークタワーを破壊してから、エンジェモンとテイルモンでジョグレス進化するというのは?」

 

「ジョグレス進化の条件は二人の心が通じ合う事ですが、

少なからず相性も存在してます。

……僕の推測からすると、選ばれし子供達自身を含め、

パタモンとアルマジモン、テイルモンとホークモンの組み合わせが、

ジョグレス進化出来る組み合わせと思われます」

 

 

 ……まあこれは僕の推測では無く、僕の知る原作で実際あった組み合わせだけどね。

この世界は僕の知る原作の世界では無いが、この関係は原作と同じだと思う。

 

 

「性別が同じ方が心も通わせやすいってことかしら?」

 

「それもありますが、一番の要因は性格ですね。

僕から見るに、D3を持つ4人を組み合わせるとしたらこの組み合わせがしっくりきました」

 

「……確かに俺もその組み合わせがしっくりくるな」

 

 

 ヤマトの呟きに空達も同意するように頷いた。

……どうやら4人の関係は原作と同じように良好のようだ。

 

 

「……話がズレましたが、以上の事から今回の事を黙って居て欲しいんです」

 

「……今日の事を話せば、タケルとヒカリちゃんは

パタモン達を完全体に進化させようと行動するようになる。

そうなれば、完全体に進化させた事が無い京ちゃんと伊織に

少なからず壁が出来てしまい、

その結果、お前の言うジョグレス進化が出来なくなってしまう、か」

 

「今までは完全体に進化するのにはタグと紋章が必要と思ってたから

そんな事はしなかったけど……。

タグと紋章を使わずに完全体に進化させたどころか

アグモンまで完全体に進化させる事が出来たと知ったら、

自分達もパートナーを完全体にくらいなら……と思って行動しちゃうかもしれないわね。

……私だったらそう思って行動しちゃうと思う」

 

「……どうして僕が紋章とタグ無しに進化させる事が出来たかははっきりとは分かりません。

ですが、僕に出来た以上、理論上は石田さん達も可能な筈です。

ですが、今それを誰かに――――4人のD3を持つ選ばれし子供に知られる訳にはいかないんです。

この先の戦いには恐らく……いえ、絶対にジョグレス体の完全体の力が必要になる筈ですから」

 

 

 ……原作と同じなら、この先完全体クラスのデジモンと戦う事になる。

そうなった時に完全体に進化出来るのが僕達だけでは心許ない。

……いずれ究極体と戦う事にもなるだろうから戦力は出来る限り欲しいのだから。

 

 今日の事を黙って貰うべく、僕は今一度心からヤマト達にお願いの言葉を伝えようとした時だった。

遂に限界が来たのか、僕の意識は再びゆっくりと落ちようとした。

まだヤマト達を説得できていないのに―――!

意識を保とうと目に力を入れそれに抗おうとするが、そんな抵抗もむなしく僕の意識は再び失われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

sideヤマト

 

 

「おい、どうした?」

 

 

 話し合いの途中で突如黙り込んだ守谷に疑問を覚えた俺は、そう声を掛けたが、返事は帰って来なかった。

 

 

「モリヤ! どうしたの!?」

 

「……どうやら眠ったみたい。よっぽど疲れてたのね」

 

 

 顔を覗き込んでそれを確認した空は、心配そうにしているチビモンに優しくそう返すと、

俺の背中で眠る守谷に痛々しい視線を向けた。

 

 

「……こんなになるまで守谷君は戦ったのね」

 

「……ああ。

俺達も足止めでキメラモンと戦ったが、正直それ程の傷は負っていない。

……きっと守谷は、チビモンを庇いながら何分も必死に逃げ回ったんだろうな」

 

 

 完全体への進化が解け、幼年期になったチビモンがキメラモンの攻撃から逃れられる筈が無い。

なら考えれる答えは一つだろう。

守谷はチビモンを持ち上げながらキメラモンの攻撃を躱し続けたのだろう。

例えキメラモンが遊んでいたのだとしても、

それでもあの砂漠で攻撃を躱し続けたのは誇れることだと思う。

 

 

「……やっぱり私、今日の事は皆に話した方が良いと思うの」

 

 

 空が考えがまとまったと言わんばかりの表情を俺に向けた。

 

 

「守谷君が紋章無しで完全体に進化出来た以上、理論上私達も出来る筈でしょ?

それなら、例え時間をかけてでも皆で完全体に進化出来る様に行動すべきだと思うの。

……私達全員が完全体に進化出来る様になったら、きっと守谷君への負担が減ると思うから」

 

 

 空の考えに俺は、無言で下を向いた。

……正直に言うと、俺も空の意見には賛成だった。

俺達が完全体に進化出来る様になれば戦力が+8になる。

……京ちゃんと伊織は今は出来ないかもしれないが、

いずれは単独で完全体に進化出来るようになる筈だ。

そうなれば戦力が更に+2となる。守谷の想定の+3を大きく上回る。

……だが、仮に進化出来なかった場合、

完全体に進化出来るのが守谷だけになってしまう。

そうなってしまえば守谷への負担を減らす為の行動が、

逆に守谷への負担を大きく増やすことになってしまう。

それだけは絶対に避けなければならない。

……だが、前線で戦えるという可能性を知ったのに

何もしないでD3を持つ新選ばれし子供達だけに戦いを任せるのはどうなんだろう?

 

 

「……僕は守谷の考えに賛成かな」

 

 

 そんな事を考えていると予想外にもコロモンからそんな言葉が漏れた。

 

 

「さっきメタルグレイモンに進化している時、

今までになったどの時のメタルグレイモンよりずっと強い力を感じたんだ。

でもそれでもキメラモンと力差は殆どなかった。

……もしかしたら守谷の言うこれから先っていうのは、

普通の完全体じゃ歯が立たないくらいの戦いになるのかもしれない」

 

「今まで感じた事が無いくらいの力、か」

 

 

 アグモンの言う通りなら、俺達が仮に単独でキメラモンクラスのデジモンと戦うなら、

紋章を使ってた時以上の完全体に紋章とタグ無しで進化させなければならない。

……紋章とタグ無しに進化する事が出来ない現状で、

更にその時を上回る力を俺達が発揮するにはどれ位の時間がかかるのだろうか?

要塞を作り出す謎の女という敵が居るのに、そんなに時間をかける事が出来るのだろうか?

……ハッキリ言って難しいだろう。

 

 

「――――おーい! ヤマトーーー!!」

 

 

 そんな事を考えていると、突然上空から俺を呼ぶ声が聞こえて来た。

見上げてみると、そこにはカブテリモンの背中に乗りながらこちらに手を振る太一の姿があり、

その周りにもパタモンとテイルモン、ホークモンがアーマー進化したアーマー体の姿があった。

どうやらそれぞれの背中にそれぞれのパートナー+aを乗せている様だ。

 

 俺は空に連絡したのかを問うべく視線を向けると、

空は知らないといった様子で首を横に振っていた。

ならどうしてと考えている内にカブテリモン達が俺達の前に降りて来た。

 

 

「何時まで経っても帰って来ないから心配で来たが

どうやら全員無事…………とは言えないな」

 

 

 俺と空が無事だったのに安心した表情を見せた太一だったが、

俺の背中に背負われている守谷の存在、傷付いたパートナーデジモン達に気が付くと、

緩めた表情を直ぐ締め直した。

 

 

「…………キメラモンのせいか?」

 

「……ああ」

 

 

 流石にこの怪我を誤魔化す事は難しいので正直に話す。

するとその話を隣で聞いていた光子郎が会話に入って来た。

 

 

「……守谷君の話していた計画はやはり嘘だったんですか?」

 

 

 光子郎の質問に俺は一瞬だけ硬直した。

何故なら、今日見た事を話すか話さないかまだ決まっていないのだから。

……さて、話すべきか話さぬべきか――――

 

 ふと、空に視線を向けると、空は考えたのち、無言で頷いた。

――判断は任せる、という事だろう。

それなら俺は――――

 

 

「……半分は嘘で、半分は本当だった」

 

「どういう事ですか?」

 

「俺達がコイツの元に着いた時、既にボロボロだった上、

キメラモンがまだ消滅していなかった。

どうやら要塞を破壊したことで、キメラモンのエネルギー供給を止める事が出来たが、

キメラモン自身にまだエネルギーが残っていたみたいで、消えずに存在していたらしい。

その後、こいつを背負いながら逃げ回っていたらエネルギーが切れたのか勝手に消滅した」

 

「……キメラモンは既に一体のデジモンとして存在していると思っていましたが、

そうではなかったという事ですね」

 

「ああ」

 

 

 取りあえず光子郎にそう説明し納得させると、丈の元に守谷を連れて行き

怪我の具合を見て貰った。

……結果、腕のヒビが骨折に悪化している様だった。

それ以外にもかなりの怪我があったようなので、

状況説明を避ける様に守谷を病院に連れて行くように話を進めた。

 

 ……後で質問された時にボロが出ないようにしないとな。

カブテリモンの背中に乗りながら俺はそんな事を考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




 やはり戦闘描写が酷いですね。
それに加え、キメラモンを必要以上に強化してしまったせいで
キメラモン編がかなり長くなってしまいました。

 次回からはまたながーーい話がメインになると思うので、
早く投稿が……と、言いたい所ですが、
いつもそう言って全然投稿出来ていないので、
そういう無駄に期待させるような事は言わない方がいいですね。

 次回からも原作をなぞる様な話が続くとは思いますが、
楽しんで頂けると光栄です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。