デジモンアドベンチャー0   作:守谷

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第一章 第1節
001 原作開始~ヴァンデモン編


神の転生から早くも8年の年月が経過していた。

8歳児となった僕は布団から飛び出してカーテンに手を掛け、ゆっくりと開く。

心地よい朝日の日差しが僕を包み込んだ。

 

神の転生後僕は神の宣言通り光が丘に住む家庭の子として生まれた。

転生直後は、自我が無く、自分が何者だったのかを理解できるようになったのは二歳頃だった。……その当初は色々混乱した。

8歳児となった今では流石に転生に関して慌てる事も無く、

なんの支障もなく生きていた。

流石に転生前の体と比べたら身長、体力、歩幅等と

支障が全くないといえば嘘になるが。

 

 ちなみに僕は光が丘爆弾テロ事件を『目撃していない』

理由は簡単だ。自分と言う異端分子が原作に関わり、原作の物語が変わってしまう事を恐れたからだ。

 

それと、僕は今の所原作キャラとは接触はしていなかった。

理由は先程と一緒で、

自分が居る事でデジモンアドベンチャーの物語が変わる事を恐れているから。

僕は生涯彼らと関わるつもりは無い。

その為に光が丘爆弾テロ事件の後、

引っ越しする際お台場にでは無く別の場所に引っ越しした。

そのお蔭もあって、選ばれし子供達とすれ違う事さえなかった。

何か異変を感じない限りは、僕はこの調子で第二の人生を過ごしていくつもりだ。

 

 

「今日も早いな、天城(あまき)」

 

 

 僕が朝日を見ながらこれまでの思い出に思い浸って居ると、

僕を起こしに来たお爺ちゃんが話しかけてきた。

 

 

「うん。おはようお爺ちゃん」

 

「おはよう。

だが、夏休みなんだから少しは気を抜いてもいいんだが……

まあいい。朝ごはんの準備は出来てるから顔を洗ったら来るといい」

 

 

お爺ちゃんはそう言うと僕の部屋から出て行った。

 

因みに僕はお爺ちゃんと二人暮らしをしている。

理由は……簡単に言えば両親が屑だったって話だ。

 

 あまりお爺ちゃんを待たせる訳にはいかないと思い、

僕は顔を洗いに洗面台に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝食後、自分の部屋に戻った僕は机の引き出しからあるモノを取り出した。

 

 

「……今日の日付は7月31日。という事は、やっぱり明日か」

 

 

前世のデジモンに関する事を全て記したメモ帳を見ながら記憶を再確認する。

このメモ帳は転生後に、初めてお爺ちゃんに買ってもらった物だ。

どんなに気を付けても人の記憶は薄れていくもの。

それを防ぐために僕はメモ帳に自分のデジモンの記憶を書き記す事にした。

……こうして書き記す事で第三者に見られるという不安要素もあるが、

それに対しても一応であるが対策してある。

このメモ帳に記してある文字は全て僕が考えた僕だけの言語で記していた。

これなら仮にこのメモ帳を見られても簡単に内容を把握されることは無いだろう。

 

……原作キャラに関わらない様にする為、出来る限り家に引きこもり、

その暇を潰す為に考えたこの言語も少しは考えた甲斐もあるって話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八月一日の朝、

僕は普段よりも早起きして外に居た。

場所はデジモンアドベンチャーの主人公である八神太一が住むマンションの近くだ。

その物陰から僕はそわそわしながら太一が出てくるのを待った。

 

僕がここに居る理由は、原作通り太一が一人でサマーキャンプに出発するか確認するためだ。

太一達とは全く接触していない為、彼が原作通りサマーキャンプに行くことに関しては余り心配していなかった。

心配していたのは、太一の妹であるヒカリに関してだ。

彼女は原作では風邪を引いたためにサマーキャンプに行く事は無かった。

だが僕が転生した事によって何らかのズレが発生し、彼女の風邪の日数がずれていたりしたら……

と考えると夜も眠れなかった。

 

僕が不安であたふたしているとマンションのホールの方から人影が見えた。

――――特徴的な髪型に青く決まったパンダナ。

その上にピシッと被せる様に掛けているゴーグル。

その姿は間違いなく八神太一だっだ。

 しかも、ホームから出てきたのは太一ただ一人。

何度見てもヒカリの姿は見えなかった。

 

 

「……良かった」

 

 

僕は安心でへたへたとその場に座り込んだ。

どうやら物語は原作通りに進んでいる様だ。

ここまで来たら後は、少なくともヴァンデモンが倒されるまで選ばれし子供達に接触しなければもう大きく物語が変わる事は無いだろう。

つまり後3日間の辛抱だ。

たった3日間余計な行動をしなければいいだけだ。

そして今回の事で僕は自分がこの世界に存在する事によって発生しているズレは今の所無いものと考えていいと判断した。

――――よし、これからもこの調子で頑張ろう。

 

 

 

 

あれから2日経過し8月3日となった僕は、バケモン達に連れられ、

東京ビッグサイトに来ていた。

集められたのは勿論僕だけでは無く、隠れられた者を除く、この辺りに住む全ての人間だ

バケモン……いやヴァンデモンの目的は8人目の選ばれし子供を見つけ出し殺す事。

その為に子供を集め、こうして一列に並ばせて8人目を探していた。

大人は別の場所に集められている為、ここには子供とデジモンしかない。

 

その為恐怖で泣き出す子供が続出していた。

僕の後ろのすぐ近くの女の子も何をされるか分からない恐怖に泣き出したが、

この近くには原作キャラである太刀川ミミが居る。

ここで行動して原作に支障が起きるリスクを避ける為、

僕は黙って下を向いたまま列に並んでいた。

 

 

しばらくすると上空からピコデビモンが飛んできて、ヴァンデモンの元に来た。

……どうやら原作通りヒカリが捕まったようだ。

という事はこの後は……と考えていると突如眠気僕を襲った。

どうやらピコデビモンが催眠ガスを放ったようだ。

僕は抵抗する事無くそのまま眠気に身を委ねた。

 

 

しばらくすると僕を含むここで眠っていた人間達が一斉に目を覚ました。

どうやら原作通り選ばれし子供達がヴァンデモンを倒したようだ。

その事に僕は安堵の息を付くとふと外に目を向けると、

その上空に大きなゲートが出現していた。

 どうやら選ばれし子供達が再びデジタルワールドに旅立つようだ。

 

 

「……がんばれ選ばれし子供達」

 

 

 全てを知っているのに何も行動しない僕は小さな声で選ばれし子供達にエールを送った。

 


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