デジモンアドベンチャー0   作:守谷

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016 守谷天城の嘘 side光子郎

 守谷君の作戦に協力する事になり、それに関する詳しい内容の話し合いが終わると、

守谷君とチビモンは、晩御飯の時間だからという理由で足早にこの場を後にしました。

 

 ……今回の作戦以外の話をするの避けたかったのだろうか?

 

 そんな守谷君の行動を見た僕達の話の内容が、守谷君関連になるのは自然の流れだった。

 

 

「アイツ、出来る限り俺達と関わりを持ちたくないって感じだな」

 

 

 ヤマトさんの意見に僕も同意した。

 

 

「そうですね。

そもそも仮面を付けて、顔を隠していたのも

僕達と出来る限り関わりを持つことを避ける為にやっていたのかもしれませんね」

 

 

 そう断言出来るだけの自信は無いが、十中八九そうだろうなとは考えられた。

 

 

 

「なんであたし達と同じ選ばれし子供なのにそんな風にするのかな?」

 

「……前に守谷さんが言ってた、自分にはやらなければならない事があるという事が

関係あると思うんですが…そもそも自分一人でやらなければならない事とはなんでしょうか?」

 

 

 京君と伊織君の言葉に僕達も考えましたが、その答えは出ませんでした。

 

 

「そもそも守谷君はいつ選ばれし子供に選ばれたのかな?」

 

 

 ヒカリさんのふとした疑問にタケル君も同意した。

 

 

「確かにそうだね。彼はあまりに色々知り過ぎている。

モノクロモンとの戦いの時には既に情報を集めていたとか言っていたけど……

一体いつから行動していたんだろう?」

 

 

 二人の疑問に僕は、先程守谷君と話している時に得た情報を話すか迷ったが、

最終的には話した方が良いと考え、二人に割り込むように話し出した。

……しかし、

その後の白い世界に吸い込まれた経緯の話は取りあえずは話さない事にした。

 

 

「その話は皆さんが来る前に、守谷君に直接聞きましたよ」

 

「本当か光子郎?」

 

「はい。どうやら守谷君は今から二年前の三月頃にD3を手に入れたと言ってました」

 

「二年前の春休み頃か。……待てよ、

――――光子郎、その時期は」

 

「はい。ディアボロモンとの戦いがあった時期です。

そして守谷君は、その日にD3を手に入れたと言ってました。

入手までの流れを簡潔に説明すると、

どうやら守谷君はその日その戦いをパソコンで観覧していたらしいです。

そしてその戦いが終わり、

その場から立ち上がろうとした時に目の前にD3が現れたと言ってました」

 

「そのタイミングで選ばれし子供に選ばれたという事か」

 

 

 ヤマトさんの言葉に空さんとヒカリさん、

タケルくんは納得したような表情をしました。

……だけど、そんな中、京君だけは何故か難しい顔をしていた。

 

 

「どうしましたか京君?」

 

「……泉先輩、あたしもその戦いパソコンで見ていたかもしれないんです」

 

「京君、それは本当ですか?」

 

「はい。それでディアボロモンって、

その、黒くて腕が伸びて、少し怖い顔をした変なデジモンの事ですよね?」

 

「そうですね。確かにそんな見た目をしていました」

 

「だったらアタシみてました! 応援メールも送ったんですよ!

……というか、今考えたらあれと戦ってたのって泉先輩達だったんですね。」

 

 

 京君の言葉から察するに、

京君が見た映像はディアボロモンとの戦いの映像で間違いは無いでしょう。

 

 

「……それで京君の時は、戦いの後D3は現れなかったんですね?」

 

「そうですね。あたしの時はそんな現象はなかったです」

 

 

 思わぬ出所の情報に戸惑ったが、

そのお蔭で僕は守谷君の話を聞いていた感じたある疑問に100%の確信を持てた。

やはり守谷君は嘘を付いていた。

 

 

 

「……皆さん、一つ聞いてもらってもいいですか?」

 

「何だよ改まって?」

 

「僕が守谷君から聞いて、

先程皆さんに話した守谷君がD3を手に入れた経緯なんですが……

僕はこれは嘘ではないかと疑って……いえ、確信しています」

 

「……どういう事なの光子郎くん」

 

 

 空さんの言葉に同意するように全員が困惑の表情で僕を見ている。

僕は理解しやすいように話を頭で組み立てながら話し出した。

 

 

「まずは、守谷君がD3を手に入れた経緯は先程説明しましたよね?」

 

「ええ、ディアボロモンとの戦いを見た後現れたって」

 

「はい。守谷君は確かにそう言いました。そして僕はそれが嘘だと言いましたが、

この話だけでは実際その瞬間を目にしていない以上、

僕達にはそれが正しいのか間違っているのかは分かりません。

……ですが、京君の話と、ある情報を加える事でそれが間違いだと判断できるんです」

 

 

 ……そう、あの日見たある光景を直接目にしている太一さんとヒカリさん、

タケルくんと僕なら。

 

 

「京君、伊織君、そもそも君達がそのD3を手に入れた経緯を知っているかい?」

 

「うん……そう言えば知らないですね」

 

「僕もわかりません。突然手の中に飛んできた光が晴れると

そこにこのD3があった、という事しか理解していませんでした」

 

「成る程。なら説明すると、

あの時、モノクロモンに襲われていた太一さんは洞穴で勇気のデジメンタルを見つけ、

それを持ち上げようと触れてみると、その瞬間『赤と黄色、青』の3つの光が飛び出し、

その内の二つが京君と伊織君の元に辿り着き、D3へと姿を変えたんですよ」

 

「へーそうだったんですか!

……でもそれが守谷君の話が嘘だというを証明する事に関係があるんですか?」

 

「大いにあります」

 

 

 京君は気付いていないかもしれないが……既に僕が言いたい事に気が付いた人達は、

驚愕の表情を浮かべて此方をみていた。

 

 

「……勇気のデジメンタルから飛び出した赤と、黄色の光は、

それぞれ京君、伊織君の元に行き、その色のD3へと姿を変えました。

――――それならもう一つの青い光、青いD3は何処に行ったんでしょうか?」

 

 

 そこまで言うと気が付いたのか、

京君も伊織君も皆さん同様驚愕の表情を浮かべていた。

 

 

「僕が思うに、

もう一つの光は――――守谷君の元に行ったのではないかと考えています。

それを証明するように守谷君のD3の色は――――青。

それに守谷君が気絶している際、彼のD3を調べた事があるんですよ。

その結果は、京さんと伊織君と全く同じ作りのモノでした」

 

「光子郎さん、でもそれが意味するのは―――――」

 

「……守谷君がデジタルワールドで行動するようになったのは、

僕達と同時期ということになりますね」

 

 

 僕の言葉に全員が息を呑んだ。

……無理もない。守谷君が様々な情報を知っているのは、

自分達よりもずっと前から行動しているからだと思っていた。

だけど実際は、自分達とほぼ同時期から行動していたのかも知れないと言っているんだ。

驚かない方が無理な話だろう。

 

「……ヒカリや、タケルと同じように前から持っていたデジヴァイスが、

あの光によって姿を変えたと言う考えは?」

 

「……ヒカリさんやタケルくんの場合は、

自分達の紋章が刻まれたデジメンタルに近づく事でひとりでに姿を変えました。

その事から、あの光によって元から持っていたデジヴァイスがD3に姿を変えたという

のは考えづらいですね」

 

 

 僕の返答に太一さんは再び黙り込んだ。

 

 

「……それに初めて守谷君と遭遇した際、守谷君は勇気のデジメンタルを使っていました。

守谷君の性格から考えて、仮に他のデジメンタルを所持していたのなら必ず

勇気のデジメンタル以外のデジメンタルを使用してアーマー進化していたでしょう。

あの状態で勇気のデジメンタルを使用してしまっては、

太一さんが洞窟を出た後すぐに洞窟に入って勇気のデジメンタルを

引き抜いたという事がばれてしまうので。

ですが、守谷君はそれをしなかった。仮面をつけてまで僕達と関わりを持とうとしなかった彼が。

つまり……」

 

「……他に進化する手段が無かったから仕方が無く勇気のデジメンタルを使用したという事だな。

少なくともアイツは友情のデジメンタルを使えるのに、持ち合わせていなかった。

その理由は、そもそも友情のデジメンタルの隠された場所がわからなかったのか、

……それともアイツがデジタルワールドに来たばかりでそんな時間が無かったのか」

 

「僕は後者だと思います。

守谷君の情報網は、常日頃からデジタルワールドを調査しているテントモン達でも

存在自体知らなかった要塞を見つける程広いので」

 

「……仮に、仮に本当に光子郎さんの言う通り、守谷君が私達と同時期に

デジタルワールドに来れるようになっていたとしたら、

どうして守谷君は私達が知らない様な事を色々知ってるんですか?」

 

 

 ヒカリさんの疑問に僕は、推測ですがと強調して、自分の考えを話した。

 

 

「恐らく協力者が居て、その人に色々聞いたんでしょう。

……その人と常日頃から連絡を取っているのか、

それとも一度話しただけなのかはわかりませんけどね」

 

 

 僕達で言う、ゲンナイさんの様な協力者が居るのだろう。

……流石にそう考えないと、彼の情報の多さを説明する事が出来ない。

 

 

「もしかすると……」

 

 

 太一さんの呟きに僕を含めた全員が太一さんの方に視線を向けた。

 

 

「もしかすると、アイツは京ちゃんと伊織と同じタイミングで選ばれし子供になったのに、

俺達以上に選ばれし子供として行動しているかも知れないんだな」

 

「……僕達が思う以上に深刻な問題を抱えているのかもしれませんね。

もしかすると仮面を付けてまで僕達から距離を取ろうとしたのは、

僕達を巻き込まない様にする為だったのかもしれません」

 

「――――くそ! 明日会ったら俺がアイツに言ってやる。

一人で抱え込まずに俺達に相談しろってな」

 

 

 ヤマトさんの言葉に太一さん達全員が頷いた。

……だけど僕はそれには同意できなかった。

 

 

「それは止めた方が良いです。

僕達が彼にそんな事を言ってしまえば、

自分が嘘を付いたという事がバレたと分かってしまいます。

そうなってしまえば、彼の性格から考えて明日の戦い以降、

僕達の前に姿を現さなくなってしまう可能性が有ります。

それこそ、今回のキメラモンの様な大きな問題を前にしても」

 

 

 守谷君は僕達に京君と伊織君と同じタイミングで選ばれし子供になったという事を

隠すため、嘘を付いた。

話してしまえば、僕達が今まで以上に接触しようとしてくると分かっていたから。

……仮に彼が悪者だったとしたなら、それで同情を誘って僕達を利用すればいい話だ。

だが守谷君はそれをしなかった。

それはつまり守谷君が僕達を自分の問題に巻き込みたくなかったからだと考えられる。

……そんな彼に、君が物凄い問題を抱えている事を知った。

だから色々話してくれと言ったら、きっと彼は今まで以上に僕達と関わりを持たない様になってしまう。

 

 ……ヒカリさんやタケルくんと同じ年齢の子供にそんな思いをさせてしまっている現状に正直何とも言えない悔しさがあるが、

今の僕達に彼の問題を知る術も解決する策も無かった。

 


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