デジモンアドベンチャー0   作:守谷

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015 説得

「「「おじゃましまーす」」」

 

 

 インターホンの音が聞こえ、光子郎が扉に向かってから数秒後位に聞き覚えのある声が、

玄関に響き渡った。

……どうやら選ばれし子供達が来たようだ。

 

 

「あ! ほんとに守谷君が来てる!」

 

「……どうも」

 

 

 一番初めに光子郎の部屋に入って来た京は僕を見ながらそんな言葉を漏らしながら、

部屋に入って来た。

その後も続々と選ばれし子供達が部屋に入って来た。

 

 光子郎の家に来たのは……、京、伊織、タケル、ヒカリとそのパートナーデジモンと、

太一と、ヤマトと、空だった。

それぞれが空いてる場所に座ると、

またもやヒカリが僕の包帯のグルグルにまかれた右手を見ながら声を掛けてきた。

 

 

「その……怪我は大丈夫なの?」

 

「昨日も言ったけど、全然問題ないよ。痛みも感じない。

いつまでも君が引きずる様な怪我じゃないよ」

 

 

 僕は右腕を軽く上げ、痛みが無い事をヒカリにアピールした。

……その際に右手に痛みが走ったが、顔に出ない様に我慢した。

 

 光子郎が太一達の元にコップを配り終わると、

皆の様に座布団の上では無く、椅子の上に座った。

……恐らく後で、パソコンの画面を見せる際に、全員が見える様にする為だろう。

 

 

「……まずは、こいつが光子郎の家に来ることになった経緯を教えてくれないか?」

 

 

 ヤマトの質問に光子郎はそうですね、と一言置くと、ゆっくりと話し始めた。

 

 

「簡単に言ってしまうと、守谷君が来るかもしれないとデジタルワールドで

ブイモンを張り込んで居たら、そこに守谷君がやってきて、その後謎の女と……」

 

「いやいや待て、お前、ブイモンを張り込むために今日学校を休んだのか?」

 

「はい。守谷君なら退院後、直ぐにデジタルワールドに来るんではないかと思ったので」

 

 

 光子郎の返事に太一は、呆れたような表情を見せながらも、

光子郎の行動自体には一切文句は言わなかった。

 

 

「続けますよ?

ブイモンに会いに来た守谷君と遭遇した後、

今デジタルワールドがどうなっているかを守谷君に説明している最中に、

あの謎の女が現れ、僕達にキメラモンや要塞が暴走し、

もう自分達には必要なくなったから壊してもいいと言い残し、姿を消しました。

その後、僕とテントモンが守谷君を誘った結果、その誘いに乗ってくれたので、

ここに居ると言う訳です」

 

 

「……あの謎の女と遭遇したのか。無茶はしてないだろうな?」

 

「大丈夫です。今回は本当に彼女に戦闘の意志が無かったようなので」

 

 

 ヤマトの質問に光子郎がそう答えると、

空がそれは良かったと、胸をなで下ろしていた。

 

 

「それで、デジタルワールドの現状なんですが……」

 

 

 光子郎は言いにくそうにしながらもデジタルワールドの現状を

パソコンで分かりやすくまとめた資料を見せながら全員に説明した。

光子郎の話を聞いて驚くものは居なかったが、その表情には悲しげな表情が浮かんでいた。

……恐らく自分達が予想していたよりも酷い現実に思う所があるのだろう。

 

 

「……それなら一刻も早くキメラモンや要塞を止めないとな」

 

 

 太一の決意の言葉に全員が頷いた。

 

 

「だけど、要塞はともかく、あのキメラモンをどうやって止めればいいの?」

 

「京ちゃんの言う通りだ。

俺達は一度キメラモンに手も足も出ずに負けてるんだ。

何も考えずに戦いを挑めば、あの敗北を繰り返すだけだ」

 

 

 ヤマトの言葉に僕を除く全員が俯いた。

特に、京と伊織を除く選ばれし子供達は二人以上に悔しげな表情を浮かべていた。

……完全体に進化出来ればと考えているんだろう。

だがそれは無理だろうと彼等は理解している。

何故なら自分達には既に紋章の力が殆ど残っていないのだから進化は出来ない、と。

 

 

 

「光子郎さん、いいですか?」

 

 

 これ以上話を続けて、何からの作戦を思いつかれるのも困るので、

僕は光子郎に、今このタイミングで僕の話をしてもいいかという意味で尋ねた。

すると理解してくれたのか、光子郎はそうですねと、一言漏らすと、

突然僕が口を開いたことに戸惑うヤマト達に説明すべく言葉を発した。

 

 

「実は、今日守谷君がここに来てくれたのには理由があるんですよ」

 

「理由ですか?」

 

 

 伊織の全員の気持ちを代弁した言葉に光子郎は、はいと返す。

 

 

「詳しい話は僕もまだ聞いていないので分からないんですが、

今回のキメラモンと要塞に関しての話があるそうです」

 

 

 光子郎はそう言うと、自身の膝の上において開いていたノートパソコンを閉じ、

他の選ばれし子供と同じように僕に真っ直ぐな視線を向けた。

 

……内心緊張しながらも、僕はそれを見せない様に必死に隠しながら、

話し出した。

 

 

「今日僕が泉さんの家にお邪魔した理由は、

貴方達選ばれし子供達に手伝って貰いたい作戦があったからです」

 

「……その作戦って言うのは、キメラモンとあの要塞を止める作戦か?」

 

 

 太一の先読みに、はいと肯定の言葉を返す。

 

 

「キメラモンも、あの要塞も、

このまま放っておけばデジタルワールドが大変な事になるのは目に見えてます。

なので、出来る限り早急に破壊すべく、対策を考えた結果、ある作戦を思いつきました。

……しかし、これは僕一人では実行できるような作戦ではありませんでした」

 

「成る程。だから俺達に協力してほしいと」

 

「その通りです」

 

「……協力するかしないかはその作戦を聞いた後だ」

 

「……それで構いません。

僕自身、この時点で信じて貰えると思える程、信用されてない事は分かっているので」

 

 

……正直に言って、彼等にとって僕は、どちらかと言えば信用できる、と言える存在だろう。

まあ、それはさて置いて、ここからが本題だ。

 

 

「僕が考えた作戦は、キメラモンと、要塞の同時攻略です。

キメラモン討伐と、要塞破壊の二グループに分かれ、同時に対象を破壊する。

それがこの作戦の主な内容です」

 

「どうして、同時に破壊する必要があるんだ?

安全に行くなら、片方ずつ破壊した方がいいだろう」

 

 

 僕の言葉に太一は全く間髪を容れずに返してきた。

……まあそうだろう。

普通の者ならこの作戦がどれ程無謀なモノなのかは直ぐに理解できるだろう。

どちらも手に余る様な強敵相手に二手に分かれて戦おうと言っているのだ。

どう考えてもバカげた作戦だ。そんな作戦に疑問を覚えない程選ばれし子供達は馬鹿じゃない。

 

 ……だが、僕はどうしてもこの2つを同時に攻略したかった。

理由は本当に勝手な話だが、僕とブイモンがキメラモンと戦っている姿を見られたくないからだ。

……太一に殴られたその次の日から、自分の中で、ある直感が働いていた。

――――今の僕ならブイモンを完全体に進化させる事が出来ると言う直感を。

……この自信がどこから湧いてくるのかは分からない。

何故、前は無理だったのに、今なら出来る気がするのかは分からない。

だが、感じるのだ。今なら出来ると。

これは――――暗黒の海に繋がる時空の歪みを察知した時に似ている感覚だった。

 

 ……だが、仮に完全体に進化出来るとして、

その光景を選ばれし子供達に見られる訳にはいかなかった。

そんな光景を見せれば、当然選ばれし子供達は、

自分達も紋章やタグ無しに進化出来ると思ってしまうだろう。

僕自身、完全体に進化させる条件が分かっていないのにそれは危険だ。

それに、もしそうなってしまえば、きっと京とヒカリは、伊織とタケルは、

ジョグレス進化出来なくなってしまう。

 ジョグレス進化は、互いの事を理解した上で、二人の心を一つにして初めて成功する進化だ。

どちらか一方でも、そんな事しないでも守谷みたいに完全体に進化出来れば等と、

頭の隅でも考えてしまったら、ジョグレス進化が成功しなくなる。

 

 

「普通ならそうした方がいいんでしょうが、今回は話が違います。

……どちらか一方を無暗に破壊してしまったら

もう片方がとんでもない事になってしまう可能性が有るんですよ」

 

 

 ……だからこそ、僕は、嘘を付いてでもこの作戦を実行させなければならない。

 

 

「……どういう事だ?」

 

「……僕達が破壊しようとしているキメラモンと、要塞にはある共通点があります。

それはどちらもある場所からエネルギーを取り出して動いているという事です。

そしてその場所とは―――――『暗黒の海』」

 

「暗黒の海――――それは確か前にヒカリちゃんとタケルが行ったという世界の事だな?」

 

「はい。暗黒の海には未だ解明出来ていない謎が存在します。

キメラモンとあの要塞は、その謎のひとつの、どうやって生まれているか分からない謎のエネルギ

 

ーを暗黒の海から取り出し、己に吸収しているんですよ。

正確には、要塞が暗黒の海から直接エネルギーを取り出し、キメラモンはその取り出されたエネル

 

ギーのいくつかを自身に吸収していると言う訳です」

 

 

僕は嘘がばれない様に気を付けながらそう話した。

……要塞が暗黒の海からエネルギーを取り出しているという事は本当だが、

キメラモンがそれに便乗するようにエネルギーを取り出していると言うのは真っ赤な嘘だ。

既にキメラモンは、完全なデジモンとして生み出されていて、

外部からの援助を受けていない筈だからね。

 嘘を付くときは、真実を語りながら嘘を少し混ぜるのが効果的だろう。

 

 

「要塞とキメラモンが暗黒の海からエネルギーを取り出しているという事は分かったが、

それでも何故片方ずつ破壊してはならないんだ?」

 

 

 太一の当然の疑問に、他の選ばれし子供達もそうだそうだと言わんばかりの表情を見せた。

僕は太一の疑問に答えるべく話を続けた。

 

 

「要塞を無暗に破壊してしまうと、暗黒の海から取り出しているエネルギーの制御が効かなくなり、

爆発してしまう可能性があるんです。……それもかなりの広範囲を巻き込むような爆発を」

 

「ば、爆発!?」

 

「はい。そもそもあの要塞はとても不安定な存在です。

エネルギーを制御する核となるアイテムが無いまま使用され、

その状態で暗黒の海のエネルギーを取り出しているんです。

……正直に言うと、あの要塞は放っておいても爆発するでしょうね。

 それにあの要塞は、先程も言ったようにキメラモンの分のエネルギーも一緒に取り出している場所です。

そんな場所を破壊しようとして、仮に知能が低いとしても、キメラモンがその行動を放っておくと思いますか?

……下手をすればあの要塞の中でキメラモンと戦う事になってしまいます。

そうなったとして、貴方達はキメラモンとまともな戦いになると思いますか?」

 

 

 僕の質問に、一度キメラモンと戦った事がある者達は下を向いた。

そしてその者達の中でも最もキメラモンの強さを理解しているであろうヤマトが、

悔しそうに小さな声で無理だなと呟いた。

 

 

「……俺達がキメラモンと戦った際に最も厄介だと思ったのが、

キメラモンの攻撃の種類の多さだ。

特に、奴の空気砲みたいな技は殆ど見えない上に、放つまでの間隔が早く、攻撃範囲も広い。

……あんな技を狭い場所で使われたらあっという間に全滅するだろうな」

 

「だからと言ってキメラモンを先に倒すのもやめた方が良いですよ。

……キメラモンを倒した事でキメラモンに流れ込んでいる分の暗黒の海のエネルギーが、

要塞に流れてしまいます。只でさえ不安定な要塞にそんなエネルギーが流れてしまったら

どうなるかは……言わなくとも分かりますよね?」

 

「――――爆発、するんだね?」

 

「その通り」

 

 

 代表して答えたタケルに僕はそう返す。

……太一達の様子を見る限りどうやら僕がキメラモン関連で嘘を付いているという事はばれていない様だ。

 僕の作戦を実行させるように誘導するなら今しかないと考えた僕は更に畳みかけた。

 

 

「その上、要塞にある暗黒の海からエネルギーを取り出す装置を破壊するには

強力な攻撃が必要です。それこそ完全体クラスの攻撃が。

だからこそ大半の人数を此方に固め、一斉攻撃をしてその装置を破壊して貰いたいんです。

……以上の事から、僕は複数人による同時攻略の作戦を立てるしか無かったんです.

それとも貴方達はこの話を聞いた上で、まだ僕の考えに納得できませんか?」

 

「……いや、お前が同時攻略の作戦を立てた理由はわかった」

 

 

 太一は僕の目を真っ直ぐ見ながらそう答えた。

 

 

「……だが、そうだとしてお前に一つ聞きたい事がある」

 

「なんでしょうか?」

 

「――――仮に俺達とお前でキメラモンと要塞を攻略するとして、

その編成はどうなってるんだ?」

 

「……僕の考えた作戦では――――八神先輩達全員で要塞攻略に向かって貰い、

僕とブイモンでキメラモンの足止めをする。

そう言う編成になっています」

 

 

 ハッキリと太一の目を見ながらそう言い放つ。

……さて、ここからが問題だ。僕はどうにかしてこの編成を押し通さなければならない。

 内心そんな事を思っていると、僕の言葉にタケルがふざけるなと大声を上げた。

 

 

「何だよこの編成は! 誰がどう見てもおかしい編成じゃないか!」

 

「そうだとしてもこれが最も安全で、成功率が高い作戦だ」

 

「そんな訳ある筈が無いじゃない! キメラモン相手にたった一人で挑むなんて……」

 

「そうです。守谷さんはキメラモンと戦っていないからそんな事が言えるんですよ。

キメラモンはとても一人で勝てるようなデジモンではありませんでした!」

 

 

 タケルに続き、京、伊織も反対の意見を必死な形相で僕にぶつけた。

本気で僕を心配しているからこその反対だろう。

 

 ……だけど、そんな心配をしてくれる君達だからこそ、

僕はこの世界の為に必死に行動出来るんだろうね。

 

 

「なら逆に聞くが、僕に加え、君達の誰かが加わったとして、

本当に状況が良くなると思っているのか?」

 

「どういう事?」

 

 

 ヒカリの質問に僕は答えた。

 

 

「君達がキメラモンに短期間で負けた大きな理由は、相手が完全体だったという事を除けば、

さっき石田さんが言った通り、見えない空気砲の様な攻撃を避けなかった事が原因だ。

そして、その攻撃を避ける事が出来なかった理由は、

キメラモンが誰に向かって攻撃を放つか考えなければならなかったからだ。

今キメラモンが、自分に攻撃を放とうとしているのか、

それとも別の誰かに攻撃しようとしているのか……相手が格上なうえ、

見えない攻撃を放つ相手にそんな事を考えるのは危険だ。

それなら初めから一人で挑んで、キメラモンの攻撃方向が常にわかるようにした方が良いと思わないか?」

 

 

 僕の意見にヒカリは、でも……と、言葉を返そうとするが、

返す言葉が見つからなかったのか、そのまま黙り込んでしまった。

 

 

「……それに例え数が増えたとして、仮にその中の一人が被弾したら、

君達はキメラモンから視線を逸らし、そっちを見るだろう。

そしてその隙に攻撃され、そいつも被弾する……負の連鎖の始まりだ」

 

 仮にキメラモンから視線を逸らさなかったとしても、確実に戦いに支障が出るだろう。

選ばれし子供達は仲間思いなのだから。

 

 

「……それに、僕の説明が悪かったから勘違いしているかもしれないが、

別に僕はキメラモンに勝とうとしている訳では無い。

あくまで君達が要塞を破壊するまでの時間稼ぎをするつもりだ。

要塞が破壊され、暗黒の海のエネルギーが補給されなくなれば、

放っておいてもキメラモンは消滅するだろうからね」

 

 

 太一達にはあくまで時間稼ぎと主張する。

だが、そこまで言っても誰も納得したような表情は見せてくれなかった。

……仕方が無い、アレをみせるか。

僕は自分のポケットからD3を取り出した。

 

 

「それに僕のD3には、君達のとは違って、別の機能が存在する」

 

「別の機能、ですか?」

 

 

 光子郎の言葉に、はいと返す。

 

 

「僕のD3には暗黒の海へと繋がるゲートを開く力があるんですよ」

 

 

 その言葉に全員が驚愕の表情を見せた。

その中でも何人かの目つきが一瞬鋭くなったのを僕はあえてスルーし、

タケルの方を見ながら説明を始めた。

 

 

「以前、君と暗黒の海へ行った事があるだろう。

その時僕は言った筈だ、『暗黒の海に来る用事があった』と」

 

「……確かにそんな事を言ってたね」

 

「その用事が、暗黒の海に行き、暗黒の海に繋がるゲートを開けるようにすることだったんだ」

 

「――――! あの時、暗黒の海で何かやってたのは――――ー」

 

「暗黒の海にD3を浸し、暗黒の海へと繋がるゲートを開く機能を得る事が

僕の目的だったんだよ。

そしてこの力があれば、いざという時、あの世界に逃げる事が出来るだろう」

 

 

 あの時の不可解な行動の理由が分かったヒカリは成る程と言った表情を見せたが、

その隣のタケルは更に困惑したような表情を見せた。

 

 

「待ってよ、なら君はあの時からこういう危険な状況を想定してたっていう事?」

 

「ああ」

 

 

 その言葉に再び全員が驚愕したような表情を見せた。

 

 

「……お前は、いつからあの要塞の事を知っていたんだ?」

 

 

 ヤマトの疑問に僕は考えながら答えた。

 

 

「……彼等がD3を手に入れるより前、ですね」

 

「…………俺達にその事を話し、要塞を破壊すると言う考えは無かったのか?

いくらでも話す機会はあった筈だ。

それにそのタイミングなら要塞が完成していなかった上、

キメラモンもまだ作られてなかっただろう」

 

「話してしまったら、貴方達が要塞を破壊しに行くと思ったからです。

要塞が未完成の頃は、ある意味今以上に暗黒のエネルギーが不安定だったので

それだけは避けたかったんです。そして現状破壊出来ない以上、

余計な情報を与えて不安を与えたくなかったと言う気持ちもありました。

……まあキメラモンの様なデジモンが作られていたのは想定外でしたが」

 

 このタイミングでキメラモンが作られたのは本当に想定外だった。

原作では後3ヶ月後くらいに誕生するデジモンだったからね。

これに関しては完全に僕の判断ミスだ。

 

 選ばれし子供達の返答を待っていると、光子郎達が太一の方を向いた。

最終判断は太一に任せるようだ。

その視線を受け、太一は再び僕に何かを話そうとしたが、

僕はそれを遮るように先に太一に話し出した。

 

 

「……八神先輩にビンタされた後、色々考えました。

自分は何の為に戦っていたのか。その為に今まで何を犠牲にしてきたのか。

そして改めて自分が戦う理由を見つける事が出来ました。

――――今の僕はあの時の僕とは違います。

もう自暴自棄に命を掛けるような事はしません。

だからこの作戦に協力して下さい」

 

 

 今日一番の真剣な目で太一の目を見つめる。

 

 

「……キメラモン相手に無謀な戦いをしないと誓えるか?」

 

「……勝てる見込みの無い戦いはしない主義なので」

 

 

 しばらく無言の空気が光子郎の部屋を支配した。

僕と太一はお互いに目を逸らさず、真っ直ぐ見つめていた。

 

 そうしていると太一は、大きな溜息を付いた。

 

 

「分かった、協力する。お前の考えた作戦通りにな」

 

「――――ありがとうございます!!」

 

「ただし絶対に無茶はするな。危なくなったらすぐ逃げろ。

無理してでもキメラモンを止める必要は無い。それは勇気なんかじゃなく、

只の無謀な行動だ。勇気の意味を決してはき違えるなよ」

 

「はい!」

 

 

 太一達に向かってお礼を言いながら頭を深く下げる。

これでキメラモンと要塞を同時攻略する準備は整った。

 

――――決戦は明日。

勝敗は、僕が完全体に進化させる事が出来るかにかかっている。

だが、何度も言うがそれに対しての不安は無かった。

今の僕ならブイモンを完全体に進化させる事が出来る。そんな直感が働いていた。

 




原作の太一なら許可は出さないでしょうね。
そんな気がします。

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