デジモンアドベンチャー0   作:守谷

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ちょっと長くなったので二話に分ける事にしました。

……やっぱり共に行動するキャラが増えるとかきにくくなりますね



014 招待

 アルケニモンが去った後、これからどうするべきかと考えていると、

タイミングを見計らっていたのか、テントモンが光子郎の家に来ないかと提案してきた。

テントモンの言葉に、光子郎もそれはいいですね、是非そうしてくださいと話しかけてきた。

 

 光子郎達の提案に僕は、少し考えさせてくださいと言葉を返して考え込んだ。

 

 ……確かに僕の考えたキメラモンと基地を同時期に破壊する計画を実行するには

選ばれし子供達の力が必要だ。だが、だからと言って光子郎の家に行くのは正しいのか?

光子郎の家に行けば、確実に後から他の選ばれし子供達も集まって来るだろう。

そうなってしまえば逃げ場は無くなってしまう。

 

 だが、仮に他の選ばれし子供達との接触を避け、光子郎だけに計画を話しても、

きっと他の選ばれし子供達は納得せずに計画外の行動を起こすだろう。

……残念ながらこの計画は選ばれし子供達がそういう行動を起こしてもおかしくない計画だ。

だからこそ、他の選ばれし子供達にも直接計画を話した方が良い。

だけど、出来れば他の選ばれし子供達とは…………。

 

 考えがまとまら無い事に内心イライラしながら、ふとブイモンの方に視線を向けた。

そこにはテントモンに家に来ればおいしい食べ物が沢山あると言われ、

物凄くテンションの上がっているブイモンの姿があった。

……どうやらブイモンは行く気満々のようだ。

 

 そんなブイモンの姿に少し肩を落とした。

――――だが、そんなブイモンの姿を見てふと思った。

僕はブイモンに酷い仕打ちをしているのではないかと。

 

 僕の頼みで、他の選ばれし子供達のパートナーデジモンとの接触を避けながらデジタルワールド

 

を探索したり、彼等と遭遇しない為に家に住まわせたり、出来るかも分からない完全体への進化を

 

練習させたりした。

その上、僕は自分の事を何もブイモンに話していない。

ブイモンが知っているのは、表面上の守谷天城だけなのだ。

それらはパートナーデジモンにどうなのか?

……少なくとも『本宮大輔のブイモン』よりは幸せでは無い筈だ。

いや、寧ろ不幸とも言えるかも知れない。

 

 

「……わかりました。お邪魔させていただきます」

 

 

 光子郎とテントモンにそう返した僕は、ブイモンの元に歩いて行き、左手で頭を撫でる。

……どちらにしろ、計画を実行するには選ばれし子供達と一度話をしなければならないのだ。

それが光子郎一人か、全員か、ただそれだけの違い。

僕にとって、それ程違いが無いのなら、僕以外にとっていい選択肢を選べばいい。

この選択肢は、選ばれし子供達にとってもいいものであるだろうし、

ブイモンにとってもいいものであるだろう。

 ブイモンが、選ばれし子供達のパートナーデジモンと仲良くなるチャンスなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 光子郎の家に招かれた僕達は、それぞれの過ごし方で時間を潰していた。

チビモンは、テントモンと会話しながらお菓子をパクパク食べて過ごし、

僕は、パソコンで何らかの作業をする光子郎を見ながら、

キメラモン達に対する作戦内容をどう話すべきかと考えていた。

 

 

「――――太一さん達にはメールで知らせておきました。

学校が終わったらすぐにここに向かうそうです」

 

 どうやらメールを選ばれし子供達に送っていたらしい光子郎は、

作業を終えると、パソコンをそっと閉じながら僕の方を向いてきた。

 光子郎の言葉に対して僕はそうですかと返すと、壁にかけてある時計に目を向けた。

……この時間なら恐らく二時間後くらいには全員来るだろう。

…………うん? 太一さん達?

 

 

「八神さ……八神先輩も来るんですか?」

 

「はい、来られますよ。……何か不都合でもありましたか?」

 

「いえ、ただ部活動とかは大丈夫なのかと思っただけです」

 

「それなら大丈夫みたいです。

明日から大型連休に入るので、部活動も普段に比べそれ程本格的に行っていないようです」

 

「……そう言えば明日からゴールデンウィークでしたね。

すっかり忘れてました」

 

 

 学校をサボり気味な上、行ってもデジモンの事ばかり考えていて、

他の生徒の話とかを聞いていなかったのですっかり忘れていた。

……まあ特に予定の無い僕には大型連休など関係はないけどね。

 

 

「…………そう言えば、守谷君はいつ頃そのD3を手に入れたんですか?」

 

 

 突然光子郎がそんな質問を投げかけて来た。

僕がD3を手に入れたのは、京や伊織たちと同じ4月上旬の始業式の日だ。

だがそれを正直に話すのは……止めた方が良いだろう。

光子郎達にとって僕は、様々な事を知っているであろうと思われる謎の選ばれし子供。

そんな謎の選ばれし子供が、京や伊織と同じ日にD3を手に入れましたと言えば、

なら何故そんな短期間でこんなにもデジモンの事を知っていると思われてしまうだろう。

……転生の事を話さないと決めている僕にとってこの手の疑いは持たれたくない。

 

 

「そうですね……確か2年前の春休み頃、ですね」

 

「2000年の3月頃という事ですか?」

 

「はい。その日は特にやる事が無くて、

家でパソコンを使って何か面白い事は無いかと探してました。

すると何やら凄い勢いで書き込まれている掲示板があって、

それを開いてみると、あるURLが貼られていて、それを更に開くと……

そこには白いクモみたいなモンスターと、オレンジの恐竜の様なモンスターと、

青い昆虫の様なモンスターが戦っている映像が映し出されていたんですよ」

 

 

「……二年前のディアボロモンとの戦いですね」

 

「はい。……その時の僕は、デジモンの存在なんて知らなかったので、

この生き物たちがどんな存在なのかは理解出来ませんでしたが、

ただその戦いに魅入られてました。

そして最終的にアグモン達が進化して敵を倒してその場を去った後、

僕もそのURLを閉じてその場から立ち上がろうとしたんですよ。

すると…………その時、突然目の前にこのD3が現れました。

突然の出来事に戸惑いながらもD3を手に取ってみると、

今度はパソコンに変な渦の様な画面が映し出されて、僕はその中に吸い込まれたんですよ」

 

 ……勿論実際はこんな事は起きていない。

だが、僕がデジモンの事を知っている理由を前世で知ったと言う理由以外で説明するには

嘘を付く以外の方法は無い。

僕が矛盾が生まれない様に注意しながら、作り話を続けた。

 

 

「吸い込まれた先は真っ白な世界でした。

何もない世界でしたが、そこには一体のデジモンが存在しました。

僕はそのデジモンに、僕が新たな選ばれし子供に選ばれたという事、

近い将来デジタルワールドという世界に危機が訪れるという事を教えられ、

その時に、僕にデジタルワールドを救う為の救世主になってほしいとお願いしてきました。

世界を救うヒーロー的な存在に憧れていた僕はそれを快く受け入れました。

そして月日は流れ今に至ると言う事です」

 

 

 光子郎が訪ねてきたのはD3をいつ手に入れたかと言う事だったが、

いずれそれならどうして自分が選ばれし子供と言う存在だと知っていて、

尚且つ選ばれし子供として戦う事に使命感を覚えているのかと絶対に質問して来るので、

ここで光子郎に話しておくことにした。……内容は完全に嘘っぱちだけどね。

 

 

「…………成る程。守谷君はそのタイミングでD3を手に入れ、

尚且つ色々な知識を得たと言う事なんですね?」

 

「はい」

 

「成る程」

 

 

 光子郎は一言そう漏らすと、自分の前にあるコップを手に取り、水分補給をした後、

それではもう一つだけ質問ですと話を続けてきた。

 

 

「今日守谷君がここに来てくれた理由は何ですか?」

 

「理由、ですか?」

 

「はい。ここに来るという事は、

少なからず僕達に様々な質問をされるという事は目に見えてます。

顔を仮面で隠し、目的を話さなかった守谷君にとって、それは出来る限り避けないといけない行為の筈です。

それなのに貴方はここに来た。

それはここに来なければならない理由、もしくは

僕達に何か話したい事があるからじゃないですか?」

 

 

 ……どうやら光子郎には完全にばれている様だ。

僕が同じ選ばれし子供から誘われたからという理由で来るような人間じゃないという事を。

 

 

「……その通りです。

僕がここに来た理由は、泉さん達選ばれし子供達に協力してもらいたい事があったからです」

 

「キメラモンやダークタワーを作り出す要塞に関してですか?」

 

「はい。この二つの存在はデジタルワールドを危険にさらす存在です。

一刻も早く処理しなければならない問題ですので」

 

「成る程。それならその話は、今では無く、太一さん達が来てから尋ねる事にします」

 

「そうして貰えると助かります」

 

 

 その後は太一達が来るまで、他愛のない話をしたり、光子郎の母親が乱入してきて、

色々騒動が起こったりして、

体感よりもかなり早い時間で太一達がもうすぐ来るような時間になった。

 

 


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