デジモンアドベンチャー0   作:守谷

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どうも。昔デジモンアドベンチャー-というタイトルで二次小説を書いていた者です。
今回こそは完結させるように頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。




序章
000 序章


 僕は何処にでも居る平凡な人間だった。

人より何か出来る訳でも無く、人より大きく劣っている所も無い。

未来を考えず、ただ毎日を平凡に過ごして生きていた。

 

そんな僕が唯一他人より優れていると思っているモノは絶対に他人に自慢できない事。

――――デジモンの知識だった。

 

 

「……ここは?」

 

 

気が付くと僕は知らない場所に居た。

床も空も真っ白い場所で、見渡す限り何もない世界だった。

 

 

「――――目を覚ましたようだな」

 

 

僕が状況を理解できずに混乱していると何処からか声が聞こえてきた。

その直後その声の主はまるで初めからその場所に居たかと思える程に違和感なく僕の眼の前に存在していた。

 

 

「我は第106の神。

多くの世界の過去、未来、現在を観測する存在だ。

お前をここに呼んだ張本人でもある」

 

 

全身白いローブを着こんだ2m程の男にそう言われた僕は一瞬その言葉を疑ったが、

全身から溢れ出る威圧感がそれを許さなかった。

本能的にこの男が神なのだと僕は判断ぜざるをえなかった。

 

 

「……貴方が神だという事は理解出来ました。

それで神様が僕にどのような用があるんでしょうか?」

 

 

 そう言うと神はふむと小さく言葉を漏らし、自身の髭を擦りながら淡々と話した。

 

 

「今からお前には転生をして貰う」

 

「転生……ですか?」

 

「うむ。

行先はお前達の世界で言う、デジモンアドベンチャーの世界だ。

時期は高石タケルと八神ヒカリと同じ年齢になるように転生させる。

生まれる場所もそうだな……光が丘にしておこう」

 

「ちょ、ちょっと待ってください」

 

 

淡々とまるで転生する事が決まっているかのように物事を話す神に僕は思わず口を挟んでしまった。

 

 

「あの……転生する事を断る事は出来ないんでしょうか?」

 

 

僕が口にしたのは転生を拒む言葉だった。

僕はデジモンが大好きだが、別にデジモン世界に行きたいとは思っていない。

少しの間だけならいいかもしれないが、タケルとヒカリと同じ年齢になって原作に関わるなんて畏れ多い。

僕はあくまで僕が知っているデジモンアドベンチャーが好きなのだ。

僕という不純物を入れて物語に支障が起きてしまったら正直、死んでも死にきれない。

 

 

「それは不可能だ。

お前が向こうの世界に行く事は決まっている。

それに既にお前の居た世界にお前の居場所は無い」

 

「……どういう事ですか?」

 

「既にお前に居た世界にお前が存在した形跡は残ってはいない。

お前の友も家族も世界も誰一人お前が存在したことを覚えては無い」

 

 

その言葉に僕の頭は真っ白になった。

今まで生きてきた自分の歩みが、人生が何一つ僕の世界に残っていないと言われたのだ。

全く現状を理解できない僕は神に何故そうなったのかと尋ねた。

 

 

「我がそうしたからだ」

 

 

僕は何も考えずただ目の前の存在に殴りかかった。

 

 

「――――」

 

 

 だがそれが叶う事は無かった。

神に殴りかかろうとした瞬間その右腕が根元から吹き飛んだからだ。

 

突然の出来事に僕の時は一瞬止まるが、

その直後に襲い掛かってきた痛みに今までの人生で出した事のない悲痛の声を上げながら

その場に倒れこんだ。

 

 

「デジモンアドベンチャーの世界の事を知り、

なおかつ世界から存在が無くなっても支障が無い。

そんなお前だからこそ選ばれたのだ」

 

 

僕の悲痛の声を物ともせず神は淡々と話を続けた。

 

 

「そもそも私が転生させる事にした理由はお前達の世界にある。

創作とはいえ、お前達の世界は、別次元に本当に存在するデジモンの世界を考え付き、形にした。

全く干渉もしたことのない世界の筈なのにデジモンや人間の名前まで一致しているのだ。

これは神すらも驚愕を隠せない奇跡だ」

 

「――――」

 

「だが、その世界とお前達の創作のデジタルワールドでは一つ大きな違いがあった。

それはまるで理想と現実かの様に真逆の大きな違いが。

もしかすると実際に存在するデジタルワールドの意志をお前達の世界は無意識に察知して、

その願いを形にしたのがデジモンアドベンチャーなのかもしれないな」

 

「――――」

 

「そんな奇跡を見せつけられて黙って居られる程、我は中立の神では無い。

だから我はデジタルワールドにチャンスを与える事にした。

理想を現実に出来る可能性を。

そんなデジタルワールドの救世主として選ばれたのがお前なのだ」

 

「――――僕、が、救世主、だと?」

 

 

少しだけ、ほんの少しだけ痛みに慣れた僕は悲痛の声を必死に抑え込みながら、

倒れこんだ姿勢のまま神を見上げた。

神の話は正直、気持ち半分くらいしか聞き取れてはいなかった。

 

 

「そうだ。

だが、別にお前の行動を縛るつもりは無い。

我がするのはお前を向こうに送るという行為だけ。

向こうに行ってどういう風に行動するのかはお前が決めろ。

そしてこれ以降向こうの世界に関わる事は未来永劫無いだろう。

今回の事は本当に気まぐれだ。

お前を送るという事がデジタルワールドに対して行う唯一の助け舟だ」

 

 

神がそう言い終えると突如僕の体が光を放ちながら分解される様に消え始めた。

 

 

「だがお前に対しては話は別だ。

我自身、何の選択権も無くお前を向こうの世界に送る事に少なからず罪悪感はある。

例えお前の居た世界に全く必要ではない存在だとしても。

だからお前に一つ力を与えよう。我が肩書きに相応しい力を」

 

その力とは一体?

そう口にしようとしたが既に僕の口から言葉を発する事は出来なかった。

そうして間もなく僕の意志はこの場所から消え去った。


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