七夜雪彦の暗殺教室   作:桐島楓

10 / 16
 感想など貰えると励みになりますのでぜひお願いします


しおりの時間

 修学旅行二日目。

 

 E組4班は殺せんせー暗殺のためのコースの確認をしながら京都を回っていた。

 

「ここなら狙撃にむいてるかもな」

「狙撃手の人に見えるかな」

「変な修学旅行になったね」

「そうだね」

「でもさ、冷静に考えると普段も変な学校生活だよね」

「た、確かに―――」

 

 班員で会話をしながら回っている姿は、内容さえ無視すれば至って普通の修学旅行生のものだった。

 

「でも、せっかくなら普通に回りたかったよなあ」

 

 杉野の意見ももっともだ。京都は世界的にも有名な観光スポットだ。景色の良さ、名物品の多さなど、楽しむことのできる要素は事欠かない。しかし、同時に暗殺用スポットを探したがために、普通以上に京都について調べられたのだが。

 まあ、これはこれで楽しもう。と言おうとした雪彦だがポケットのスマホのバイブ音に気づき中断した。ディスプレイに表示されたのは父親の史彦だ。それも、緊急時用の番号だ。

 

「―――ごめん、ちょっと電話にでる」

「うん、わかった」

 

 渚たちにそう言い少しだけ離れて電話に出た。

 

「もしもし?」

『雪彦か? すまないな、修学旅行中に―――』

「別にいいけど、どうしたの?」

『少し問題が起きてな。悪いが少し一人になってくれないか』

 

 僅かな情報漏れを警戒している様子の史彦に雪彦は表情を少し険しくした。

 

「わかった、少し待ってて」

 

 一度電話を保留にしてから橋の上で待っている渚たちのもとへ向かう。

 

「ごめん、ちょっと緊急の電話で長くなりそうだから先に行ってて」

「え? 待ってるから大丈夫だよ」

「いや、気にしないで。ルートは覚えてるから終わったらすぐに追いかけるからさ」

「いいの?」

「ああ」

 

 そう言い渚たちを先に行かせてから雪彦は橋の下に降りた。

 

「―――大丈夫」

『ああ、すまない。最近周囲に変な奴はいないか?』

「変な奴って―――殺し屋なら結構ウロウロしてるけど?」

 

 椚ヶ丘市には殺せんせーを暗殺するために世界各国のプロの殺し屋がよく出入りしているのだ。

 

『そういえばそうだったな……単刀直入に言ったほうがいいか。実はな、俺に恨みを持ってる奴がいるんだ』

「だろうね」

 

 即答した。史彦は暗殺者である。むしろ恨みを買わないほうがおかしい。

 

『その恨みを持ってる連中の中でも特に危険な男がいるんだが―――そいつが日本に姿を現したらしい』

「―――それで俺を狙ってる。そういうこと?」

『ああ、本当にすまないと思ってる』

「わかった。周囲を出来るだけ警戒するよ」

『ああ、俺も伝手を使って出来るだけ対処する。詳細は烏間も知ってるから後で確認してみてくれ。―――旅行中に悪かったな、できるだけ楽しんでくれ』

「分かった。お土産は八ツ橋でいいかな?」

『―――粒あんで頼む』

「了解」

 

 通話を終了した二人が、普通の親子らしい会話は最後の数秒だけだな、と同時に思い、苦笑していたのだがそれを知る者はいない。

 

「さて―――」

 

 周囲を警戒しながら旅行を楽しもうと、雪彦は渚たちのあと追った。

 

 

 電話を終えた雪彦が渚たちに急いで合流しようと急いで後を追うと4班の男子たちが倒れて、三人を奥田が開放している姿が見えた。

 

「っ!? 何があった!?」

 

 まさかさっきの電話で聞いた奴の仕業か? と一瞬考えた雪彦だが。

 

「ゆ、雪彦くん! それが―――」

 

 高校生たちに待ち伏せをされ、三人は気絶させられ。神崎と茅野が拉致されたという説明を受けた。犯人はナンバーを隠した車―――おそらくは盗難車を使って逃走したらしい。雪彦は三人の容態を見て、ひとまず命の危険まではないと判断した。

 

「ごめんなさい、私怖くて、ずっと隠れていたんです」

「それが正常な判断だから気にしないで」

「―――地元の高校生でしょうか?」

 

 奥田の質問に対して雪彦は少し考えるとそれを否定した。

 

「……いや、地元の人間の可能性は低いかな。人通りの少ないこの通り。元々面識のある人間がここを通るの知っていて待ち伏せするならともかく、来るかどうかも分からない旅行者を狙うために待ち伏せしてるとは思えない。ここに来ることを事前に知っていた可能性が高いね。となると神崎がなくしたメモ帳もあいつらに新幹線でスられたか。奥田、昨日新幹線で飲み物買いに行ったとき、誰かに話しかけられたり、ぶつかったりしなかったか?」

「ど、どうしてですか?」

 

 昨日、神崎が日程をメモした手帳を落としたと言っていた。しかし、今の状況と合わせれば、几帳面な神崎が落としたというよりも、盗まれたと考える方が繋がると考えたのだ。

 そして盗まれたなら場所はどこか? 新幹線に乗る前、新幹線を降りた後はずっとグループ行動だった。宿泊する旅館はE組以外の宿泊客がいない状態だ。雪彦も目の前で何かをスられたのを見逃すほど甘くはない。自分から離れたタイミングはその時しかなかったからだ。

 

「あ、そ、そうです! 確かあの人たち新幹線で!」

 

 奥田はその時怖くて目を瞑ってしまったが、声や体格が同じだったことを思い出した。

 

「なら、俺たちと同じ地域の連中かな。駅で高校生連中見かけたし。後はしおりにある場所を……車も隠せる場所で、声が聞こえない場所となると―――おそらく」

 

 修学旅行のしおりの『拉致実行犯潜伏対策マップ』を確認し、その場所を頭に叩き込むとそれを鞄にしまい、メガネを外す。動くのにメガネは邪魔だからだ。

 

「皆の介抱をお願い、あと殺せんせーに連絡もお願い」

「え? 雪彦くんは?」

「俺は先に行く」

「先にって―――ええ?」

 

 そう言い雪彦は屋根に飛び乗った。曲がり角や障害のない屋根伝いに行けば直線の最短ルートで行けるからだ。罠や野生動物が群生する、山の中を遊び場兼修練の場にしていた雪彦にとって屋根はむしろ安定した足場だった。

 

(急がないと―――)

 

 その眼は何時もの穏やかな眼差しではなく、鋭く、そして青く輝いていた。

 

(場合によっては……)

 

 上着のポケットに手を当て獲物を確認した。

 

 

 マップで確認した、廃工場のような場所に付き、車が止められているのを確認すると雪彦は二階の窓へ行き中を伺いながら耳をすませた。

 

「お前らには俺たちの相手をしてもらったらちゃんと帰してやるよ。また来てもらうことになるけどな」

 

 そう声が聞こえた瞬間、まだ間に合うと、窓ガラスを割って雪彦は中に突入した。二階の足場から獣のような動きで一階まで飛び降りる。

 物音がして不良の一人が振り向くと、既に雪彦が懐まで潜り込んでいた。

 

「寝てろ」

 

 

 ―――閃鞘・一風

 

 

 首を掴み半回転させ背中から叩き落とし気絶させた。

 

「ぐえっ!?」

「なんとか間に合ったか! 二人とも大丈夫?」

「雪彦くん!?」

「どうしてここが」

 

 二人は助けに来てくれたことに対する喜びと同時になぜ場所がわかったのか困惑の声を上げる。

 

「殺せんせーのしおりだよ」

 

 ナイフを取り出した雪彦は二人の手を縛っているロープを切り二人を自由にする。神崎と茅野の前に立ち雪彦はほっと一息つく。二人も雪彦がやってきたことで少しだけだが安心することができた。

 

「な、てめえ! 何者だ!?」

「同級生だけど」

 

 不良たちのリーダー格であるリュウキはそう威嚇しながら言うが雪彦はナイフをしまいながらしれっと答えた。

 

「―――! くそっ、ふざけやがって!!」

「ふざける? ふざけてるのはお前たちだよ―――」

 

 リュウキたちと雪彦の視線が交錯する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――その瞬間、リュウキたちの首が切り落とされた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――っはァ!?」

 

 一瞬飛んでいた意識を取り戻したリュウキたちは膝をつき首に手を当てる。

 

「つ――付いてる?」

「ああ、まだね」

 

 雪彦は酷薄に嗤う。一見普段と同じに見えるが、雪彦は非常に頭に来ていた。端的に言うとキれている。口調も普段より冷酷さを感じさせる冷たさと殺気が宿っていた。

 今まで暗殺とは無縁だった渚ですら殺気で相手を怯ませるほどだ。それを幼い時から訓練し研ぎ澄まし続けた雪彦の殺気であれば、戦闘慣れしていない相手であれば殺されたと錯覚し、死ぬ瞬間をビジョンとして幻視してしまうほどだった。その殺気に当てられ三人ほど気絶してしまった。

「て、てめえ!」

「それにむしろ感謝して欲しいね。さっきの奴にしても、本当は頭から叩き落として、砕けた頭蓋骨の破片と衝撃で脳みそをぐちゃぐちゃにするのが本当の使い方なんだ」

 

 リュウキたちはその雪彦にただならぬ迫力を感じ一歩後ずさった。

 

「ま、彼女たちにこれ以上の危害を加えていたら―――全員散らすつもりだったし、悪運は強いね」

 

 散らす―――この場でその言葉の意味が分からない者は雪彦の後ろにいて、殺気を受けていない二人を除いていないだろう。すなわち、命を散らすということであると。

 

「エリートが見下しやがって!! バカ高校の不良と思って舐めやがって!!」

「エリート? つくづく無能だね、あんた。肩書きに拘ってるのは自分じゃないのか? 上っ面しか見てない奴がE組(俺たち)を語るな」

「―――てめえがどんなやつか知らねえがな、こっちはツレを十人も呼んでんだぜ! てめえらが見たこともねえよな不良をな!!」

「それが?」

「え?」

「ああ、そうか。組まれると手こずるから今の内に戦力は減らしておけと言いたいわけか」

 

 戦力を減らす―――その意味もリュウキ達は理解してしまった。

 

(さてどうするか)

 

 雪彦は殺す気は今のところない。もし神崎と茅野がリュウキ達が言うところの相手をさせられた後だったら全員切り刻んで殺していた可能性は十分あるが―――まあ『もし』の話なんてしたところであまり意味はないだろう。

 十人来るという話も嘘か本当か判断はできなかった。が、仮に来ても負けることはないだろうというのが雪彦の考えだった。一応雪彦は正面戦闘の訓練も受けている。その中には多対一を想定したものもあった。というより、護身術として教えられたこともあって、全体的に見ると暗殺用の技よりも実は正面戦闘用の技の方が精度が高いのだ。もっとも一番得意なのは暗殺技の八穿の方で一番気に入ってはいるのだが。

 その十人一人あたりの強さを目の前のリュウキを二倍程度で想定した上で、まだ雪彦は負けるとは思っていない。全員が烏間レベルだったら流石に無理だが、あのレベルの強さの不良がゴロゴロいたら日本は今頃世紀末である。なので流石にそれはないだろうと判断して何パターンもシミュレーションしていく。まあ、仮に烏間レベルが十人来ても防戦に徹して殺せんせーが来るまで時間を稼ぐくらいならなんとか―――辛うじてできるかもしれないのだが。

 そんな風に考えていると、扉が開いた。

 

「来たか!」

 

 リュウキ達が歓喜の声を上げ、雪彦も身構えるが―――入ってきたのは渚たちだった。

 

「班員が何者かに拉致された時の対処方。犯人の手がかりがない場合まず会話の内容や訛りから地元民であるかそうでないか判断する。地元民でなくさらに学生服を着ている場合→1244ページ。考えられるの相手も修学旅行にきてオイタをする輩です」

 

 渚が殺せんせーの修学旅行しおりを読み上げる。

 

「皆!」

「土地勘のないその輩は拉致したあと遠くへは逃げない。近場で人目につかない場所へ連れ行くでしょう。その場合→付録134ページへ。先生がマッハ20で下見した拉致実行犯潜伏対策マップが役立つでしょう」

「凄いやこの修学旅行のしおり」

「やっぱり渚は持ってきてたか」

「うん、雪彦くんも」

「ああ、持ってきた。凄いよなこれ」

「やっぱ、修学旅行のしおりは持っとくべきだねえ」

「読んでも意外と面白いよ」

「雪彦これ全部読んだの?」

「ああ、もちろんだカルマ」

 

 そんな風に話していると

 

『ねえよそんなしおり!!』

 

 気絶している不良を除いて全員が叫んだ。カルマは気絶している不良数名を見たあと。

 

「ていうか、雪彦。俺の分も残してくれてあったんだ」

「はは、別に残したわけじゃないけどね」

 

 雪彦には普通に話していたカルマだが―――

 

「で、どうすんのお兄さんたち? これだけのことしてくれたんだ、残りの修学旅行はずっと入院だよ?」

 

 不良たちには怒りを込めた表情と声でそう言う。

 

「でも、鬼籍に入るよりはマシだよな? まだ六銭使いたくないだろう?」

 

 雪彦は後ろからそう言い。前門にカルマ、後門に雪彦という状態。

 

「くっそ! あいつら何してんだよ!?」

「あいつら?」

「あと十人の社会不適合者が来るんだってさ」

 

 雪彦がそう言い終わると同時に再び扉が開いた。

 

「来たか! 覚悟しろよてめえら、あと十人はマジでやべえ、不良中の不良だ」

「いいえ」

 

 雪彦たちE組にとって馴染みのある声が聞こえてきた。

 

「不良も社会不適合者もいません。全員先生が手入れしましたから!」

「殺せんせー!」

 

 殺せんせーは何故か黒子の恰好をしながら手入れした不良を触手にぶら下げていた。

 

「つか十人じゃなくて四人だね、数も数えられないの?」

 

 雪彦はやっぱりただの脅しだったかと重い、人の嘘を見抜く練習もしなければと思っていた。

 

「遅くなって済みません。この場所は君たちに任せて他の場所からしらみつぶしに探していたので」

「なに? その黒子みたいな顔隠しは?」

 

 渚の疑問はもっともである。

 

「暴力沙汰ですので、この顔が暴力教師と覚えられるのが怖いのです」

 

 暴力教師どころか月を破壊し、地球も壊すと予告している生物とは思えない発言だった。

 

「渚くんと雪彦くんがしおりを持っていたから迅速に先生に連絡して対処できたのです。これを機にみなさんもちゃんと持ちましょう」

 

 そう言って持ってないメンバーにしおりを配り始めた。あの分厚いしおりを何処に入れていたのかは不思議であるが、殺せんせー自体が突っ込みどころ満載なので気にしてはいけない。

 

「先公だと!?」

「ふざけんな!」

「舐めた恰好しやがって!」

 

 不良たちは殺せんせーに殴りかかった。が、雪彦に手も足も出なかった連中が、その雪彦が不意打ちしても殺しきれない相手に適うわけなどなく。殺せんせーはそれを一瞬で倒した。

 

「ふざけるな? それは先生の台詞です」

(何された? 速すぎて見えなかった)

 

 リュウキは理解した。

 さっきの雪彦にも得体の知れなさを感じたが、こっちはそれ以上の化物だと。

 

「ハエが止まるようなスピードと汚い手で、うちの生徒に触れるなど、ふざけるんじゃない」

「っけ、エリート高は先公まで特別性かよ―――てめえも肩書きで見下してんだろ!!」

 

 そう言うと後ろへ走り出した。

 

「動くんじゃねえ! 動いたらこの女が―――っ!?」

「どうなるんだ?」

 

 リュウキが有希子を人質にしようと手を伸ばすが、後ろに雪彦がいることを失念していた。有希子に手が届く前に雪彦がリュウキの腕をひねり、ポケットから取り出したナイフの刃をリュウキの首に軽く押し付けた。

 ひやりとした感触にリュウキは動けなくなる。

 

(くそ―――っ!?)

 

 視線だけ動かし雪彦の青い瞳を見て、リュウキは後悔した―――。

 

(や、やべえ―――コイツ―――俺の命なんてなんとも思ってねえ!)

 

 リュウキは不良だ。それも犯罪慣れしている。世間一般的に言うところの危険な人物に会ったこともある。が、その中でも今の雪彦は別格だ。それこそ他人の命なんて雑草程度にしか考えていない、と分かってしまった。

 震えるリュウキの手からナイフが滑り落ち、雪彦はひねっていた手を離した。

 

「先ほど君はエリートと言いましたが、エリートではありません。彼らは確かに名門校の生徒ですが、学校内では落ちこぼれと呼ばれ、そのクラスは差別の対象となっています。ですが、それでも彼らは前向きに取り組んでいます。君達のように他人を水の底に引き釣り込むような真似はしません。学校や肩書きなど関係ない。ドブ川に住もうが、清流に住もうが、前に泳げば魚は美しく育つのです。……さあ、私の生徒達よ。彼らを手入れしてやりましょう。修学旅行の基礎知識を体に教え込んでやるのです」

 

 殺せんせーの言葉を合図にそれぞれが鈍器(しおり)を手に持つ。そして躊躇なく振り下ろした。

 

(―――狙う相手……間違えたかも)

 

 その思考を最後にリュウキ達は意識を失った。

 

「どんな環境でも魚はまっすぐ泳げば美しく育つか……ほんと、いい先生だな」

 

 地球爆破を考えてなければ最高の教師だ。静かにメガネを掛けながら雪彦は本気でそう思った。

 

「ん? 連中のスマホか―――え?」

 

 雪彦が足元のスマホを拾うと表示されていた写真と有希子を見比べる。有希子は少し恥ずかしそうにしている。カエデの方はハラハラしているが。

 

「もしかして―――有鬼子?」

「字が違うよ」

「そこ突っ込んじゃダメだよ有希子ちゃん!! ていうか知り合いだったの!?」

 

 茅野がツッコミを入れているが雪彦はそれどころではなく硬直している。有鬼子とは雪彦がゲームセンターで知り合った少女の名前―――厳密にいえばゲーム内で使っていた名前だった。同じゲームをやって徐々に話すようになっていったのだが、夏の終わりごろから姿を見なくなっていた。ちなみに、前の学校の同級生である大河と殴り合いに発展した理由にも少し絡んでいるのだがそれは置いておく―――ぶっちゃけると速水の時と同じような理由だ。

 神崎は少し悲しそうに

 

「薄々そうじゃないかとは思ってたけど―――雪彦くん本気で気づいてなかった?」

「―――声は似てるなと思ってはいたけど」

 

 似てるも何も本人である。ついでに言うのなら有希子という名前に思うところはあったのだ。しかし、リアルの名前をゲームで使う人はあまり多くないし、偶然だろうと考えていたのだ。

 

「むしろなんで今まで気づかなかったのさ!?」

「俺が聞きたいよ!?」

 

 ショックで雪彦は再び落ち込んだ。髪の色と雰囲気が違うだけで友人に気がつかなったのだ。

 そして雪彦は神崎の前で正座して、頭を下げた。最近流行の土下座である。

 

「本当にすみませんでした! 許してください! なんでもするから!!」

 

 と、雪彦が言ったところ。

 

「え? 今なんでもって―――お、怒ってないから大丈夫だよ!」

 

 といった感じのやり取りがあり、一応雪彦は許してもらえた。

 

「どういう状況?」

 

 珍しくカルマも含めてそんな様子を呆然と眺めて渚が呟いた。なお殺せんせーのみメモ帳にメモを取っていた。

 

(これぞ生徒の恋愛! 良い小説のネタになります)

 

 ゲスかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。朝食の席で―――。

 

 

「ねえ雪彦くん、これ・・・」

 

 雪彦は渚に差し出された新聞を読む。見出しには

 

『謎の人影! 現代に蘇った忍者が京都の空を駆ける!』

 

 と出ていた。写真はピンぼけしていて分かりにくいが、屋根から屋根へと飛び移る途中の人影―――間違いなく雪彦だ。

 

「・・・・・・・・・」

 

 渚はどうしよう、といった表情で雪彦を見る。しかし

 

「忍者か、本物なら会ってみたいけど、偽物だね、忍んでないし。忍者好きな外国人観光客かな?」

「これ君だよ!」

「え? 俺って忍者だったの?」

「そうじゃなくて!」

 

 旅行先でも朝から渚の突っ込みは絶好調だった。

 

 

 

 




 雪彦がキレてる間の口調が威圧的になるようにしたつもりです。
 なんというかバトル展開書くといまいち暗殺教室っぽさが無いような気がしましたが、どうでしょう。またしばらくバトル的な要素はないので許してください。


 雪彦の持ってるナイフは以下からご想像ください。その内固定するかもしれませんが、今のところどれとでも取れるように書いてるつもりなので……。
 ※アンケートではありません

①七夜と言ったら七ッ夜でしょう、JK(飛び出しナイフ)

②空の境界コラボあったし式のナイフもいいのでは(和風の鞘付きナイフ)

③ジャックのナイフでもいいんじゃないかな?(洋風ナイフ)

④その他

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。