雪ノ下陽乃が、よく眠れますように   作:my茸

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どうもお久しぶりです。

受験勉強に苦しむ学生が久しぶりに投稿できました。
超スロー投稿ですね。
申し訳ありません。

…7月7日?もちろん祝いましたとも。

何をとは言わなくてもわかりますよね?

その時書いた絵を貼っておきます。

【挿絵表示】



3話/その時彼は、彼女は。

「だからさ…比企谷くん。これから、よろしくね?」

 

時間が時間だからか、それとも人影が少ないからなのか、2人で歩く音がいつもより大きく聞こえる。

目の前の彼は、少し笑みを浮かべると、溜め息をついた。

 

「やだって言っても無駄なんですよね?」

 

無駄無駄。石化面付けちゃいたいくらい無駄。

 

「…よろしくね?」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

「…やっと帰ってこれた」

 

大学徒歩30分の距離にあるアパートの一室で溜め息をつく。

あの後陽乃さんとは駅前で別れ、それぞれの家に戻った。

"家"か…あの千葉のマイホームではなく、この一室を家と呼ぶようになったのはいつからだろうか。

まあ4年間も過ごせばそう思っても仕方がないだろう。

こうして家離れをして大人になって行くんだなぁ…

つまり何が言いたいかというと、

家離れはしても、小町離れはしませんってことだな。

 

ふと、昔言われたある言葉が頭に浮かんだ。

「お兄ちゃんは普段からどうしようもないこと言うけど、調子悪い時はさらにどうしようもないこと言うんだよ」

 

何故今思い出す?

少なくとも今は別に調子が悪いわけではない筈だ。

ならば何かをそれだけ気にしているということ。

一体何を気にしているのか。

理由はわかっている。…陽乃さんだ。

今日久々に再会した陽乃さんは、話しやすかった。

俺の捻くれた言葉に本当に楽しそうに笑っていた。

何より一緒にいて気を張らずに済んだ。

別に悪い事じゃない。

 

だが、

思い出せ。

 

比企谷八幡にとって雪ノ下陽乃とは、

 

そんな人物だったか?

 

 

 

いや、違う。

比企谷八幡にとって雪ノ下陽乃とは雪ノ下雪乃の姉であり、リア充の王ことリア王であり、魔王だ。

今日感じたような人物ではない。

 

では、今日会ったのは本当に「雪ノ下陽乃」か?

その問いは難しい。

雪ノ下陽乃という人物は、常に強固な強化外骨格を身に付けている。

俺は雪ノ下陽乃の内側を知る人間ではない。

そんな人間が彼女の中身を勝手に想像し、決めつける?

なんと傲慢なことか。

俺が犯す大罪は怠惰だけで十分だ。

目指せ精霊王ハーレクイン。

 

だが、そんな俺でも1つ言えることがある。

以前小町が俺の真似をして言っていたことを思い出したのだ。

なんか俺さっきから小町ばっかだな。今度電話しよ。

…じゃなかった。こう言っていた。

 

「 往々にして個性個性言ってる奴に限って個性がねぇんだ。だいたいちょっとやそっとで変わるものが個性なわけあるかよ」

 

…やだ汚い言葉使い。親の顔が見たいわ。

まぁそれは置いといて。

陽乃さんは変わっていた。

少なくとも、俺の知っている陽乃さんとは違っていた。

だとすると。

俺の持論(cv:小町)の言に従うなら。

…ちょっとやそっとじゃないことが陽乃さんには起きているのか。

それは…なんだ?

結婚の話は以前からあった筈だ。

だからそれが主な理由ではないと思われる。

……………。

…考えても仕方がない。

陽乃さんが、変わるほどの出来事。

きっとそれは、

俺には想像もつかない事なのだろう(・・・・・・・・・・・・・・・・)

だから考えない。

俺は省エネを決意したんだ。

誰の言葉だったか。

 

「やらなくてもいいことは、やらない。

やらなきゃいけないことは、手短に」

 

***

 

 

「…ふう、やっと帰ってこれたなぁ」

 

千葉の実家…実家って言うのも変な気分ね。

千葉の私の部屋と同じくらいの大きさの部屋。

リビングのライトではなく、リビングの隅に置いてある照明の電気を入れる。

ぼんやりとした薄紅色の光が顔を照らす。

実は2週間くらい前にはここに着いていたから、もう家具やらなんやらは揃っている。

お気に入りはソファー。

柔らかすぎず、固すぎない、この固さが癖になるのよね。

そのソファーに横になる。

千葉にいた時は帰ったままの格好でこんな事はしなかったんだけど。

なんかいっかな〜って思っちゃってる私がいる。

おおらかな気分になってる。

これが北海道の空気なのかな…さすが北海道、でっかいどう!

違った、酔ってるだけかも。

こんなに飲んじゃうなんて。

自分の酒量は把握している。

飲み過ぎた事なんてない。

やっぱり緊張してたのかな。

私の知らない場所、人達だったから。

 

きっと、「雪ノ下」陽乃ならこんな事はなんともない。

 

でも、

 

…「私」はもう違うのよ。

 

 

私は、もう強くなんてないのだから。

 

 

ただ、私が「雪ノ下」陽乃であったという事実が私を逃さない。

 

だから、(陽乃)は救いを求めながら、救いを拒むのだ。

 

欲しいのは支えであって、救いではない。

救ってもらうような、弱い人間にはなりたくない。

そんなプライドが、助けの手を拒む。

面倒くさい女よね。うん、自覚してる。

だから…

 

「君は…」

 

「私を支えてくれるかな」

 

薄暗い部屋の中、これから関わっていくであろう年下の男の子に思いを馳せる。

 

***

 

 

さて、メールを送ろう。

 

 

いつ遊びに行こうかな。

 

なんで書き出せばいいのか。

 

前みたいに強引にいこうか。

 

いやこの文はないな。

 

やっぱり素直に誘おう。

 

よしこの文なら大丈夫。

 

 

「送信」

 

 

***

 

 

そのボタンをタップした後、比企谷八幡は呟いた。

 

「『やらなきゃいけないことは、手短に』だからな」




どうも、平塚だ。今回は私が担当らしい。
まったく、若手には仕事が回ってくるから大変だな。
若手には。
おっと、カンペか?

カンペ「裏情報ですが、この話の中でも平塚先生は結婚してはいません」

とのことだ。…ん?確かこの話は比企谷が大学院生1年目の話だよな?

ということは…くっ!頭が痛い!考えてはいけないのか。

カンペ持ちの人「痛い痛い痛い痛い!こめかみが!こめかみが!」

まあそれはいい。

カンペ「いいんですか?本当にそれでいいんですか?」

抹殺のォ!ラストブリットォ!!!!

カンペ「O(:3 )~」

コホン!
さて、陽乃がおかしい、と。
比企谷はそう思った訳だが、元来人というものは常に変化し続けるものだ。
それが良い変化か悪い変化かは分かりはしないがな。

比企谷がなにをするつもりか知らないが、
以前と違う陽乃にどう接するか、メールの内容も少し気にかかるな。


メール…最近使っていないな…。
ぐすっ。
結婚したい…。






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