雪ノ下陽乃が、よく眠れますように   作:my茸

2 / 5
前回に引き続き八陽in居酒屋回。
この感じだと次回かその次くらいまで伸びそうです。

飽きないで貰えるように頑張ります。
後書きはアレです。
若気の至りです。


1話/疑問

午後10時。

一次会の後別れた他のメンバー達もそろそろ帰宅し始めている頃だろう。

つい、と先程から喋らない陽乃さんを見る。

彼女は、アルコールのせいか少しぼんやりとした目をして此方を見た。

…色っぽいんでやめて下さい。

 

「ねえ、比企谷くん。私さ、この研究が終わったら結婚するんだ」

 

「…は?」

 

いきなり何を言い出すんだこの人は。

疑問を視線に乗せて陽乃さんにぶつけてみるが、彼女はニコニコと相変わらずの強化外骨格を浮かべるだけだ。

この人が、結婚?

何と言うのが正解なのか、分からない。

いや、普通は、おめでとうございます、と言うのだろう。それは知っている。

でもこの人の場合はそれでいいのだろうか。

「そうですか」?「式には呼んでください」?

どちらも間違っている…気がする。

ああ、そもそも何で俺がこんなに考えなくちゃいけない。

 

「…そんな急にフラグたてられても困ります。アッバース朝滅ぼしちゃうんですか?それとも雪ノ下家は建築会社だから一級フラグ建築士、とかいう高尚なギャグなんすか?」

 

頭に浮かんだ中で一番くだらない言葉を口にする。

こんなことを言う俺は普通では無いのだろう。

だかしかし(タイトルじゃない)普通では無いのだ。彼女も。

 

「あはっ!あはははは!さ、さすが比企谷くん!私の想像の遥か斜め上を行く回答だったよ!もう比企谷くん大好き!」

 

「大好きとかやめて下さい。うっかり惚れてしまったらどうしてくれるんですか」

 

「酷いなー比企谷くん。これは私の本音だよー?」

 

いや待て、この人の事だ。また面倒くさい何かに巻き込まれるのだろう。

え?深読みしすぎだって?

俺を誰だと思ってるんだ?比企谷さんだぜ?(ドヤァ)

 

「そりゃどうも。で、なんですか。それで終わりじゃ無いでしょう?」

 

「…え?別に何もないけど?」

 

素のきょとんとした顔で返されてしまった。

畜生可愛いじゃねえか。

…し、死にたい。トレンディな天使の真似してドヤ顔とか、黒歴史がまた一つ増えてしまった。

 

「…でも本当に、フラグがたってくれたら良いのにね」

 

「え?何か言いました?」

 

「ん?何でもないよ?」

 

俺は難聴主人公じゃない。

あんな訳分からないところで急に耳が遠くなったりするなんて断じてない。

「キスしてもいい?」を「キムチでもいい?」に聞き間違えたりもしない。

ただ、内心悶えていたせいで陽乃さんが何か言っていたのを聞き逃してしまっただけだ。

まあ何でもないと言うのなら何でもないのだろう。

ただ一つ。一つだけ聞きたいのは──

 

「陽乃さん、結婚、したいんですか?」

 

「………………」

 

返事がない。

ただの陽乃のようだ。

いや、え?本当に返事がないよ⁉︎

あるぇ?もしかして無視されてる?

顔を上げて陽乃さんの方を見ると、珍しくぽかんとした表情の陽乃さんがいた。

 

「…どうかしましたか?」

 

「あ、いや、つっこむ所が分からなくて、ね」

 

つっこむだなんて、はしたない!

女の子がそんなこと言っちゃいけません!

 

「…比企谷くん、それは流石に引くよ?」

 

「すいませんでした」

 

陽乃さんのマインドリーディングは健在でした。まる。

…ほんと何で分かるの?

 

「で、そんなに俺変なこと言いました?」

 

「いやだってさ、比企谷くんが自発的に私の名前呼ぶなんて初めてじゃない?」

 

そうだったか?

脳内ではいつもこっちの方で読んでるから違和感は無いんだが。

 

「すいませんでした雪ノs」

 

「陽乃」

 

「雪ノ」

 

「陽乃」

 

「y」

 

「陽乃」

 

まだ何も言ってないんですがねぇ…。

仕方が無い…これでいいのか?

 

「…陽乃?」

 

すると陽乃さんは一瞬目を見開いて、その後満足げに、

 

「…陽乃」

 

……………。

そして流れる沈黙。いやナニコレ。

何とも言えない雰囲気になった所で携帯が鳴る。

そしてその音源はなんと俺の携帯だった。

メールのようだ。

…おい今そこで驚いた奴、怒らないから手を挙げなさい?

いや自分で『なんと俺の携帯だった』とか言っちゃった俺も俺だけど。

すいません、と陽乃さんに言ってメールを確認する。

なになに…?

 

差出人:一色いろは

 

件名:やばいです先輩

 

本文「『戸塚先輩がインカレに出場しました!先輩、よろしければ応援一緒に行きませんか?』…だってさ。一色ちゃんってあの時の生徒会長ちゃんでしょ?いやー比企谷くんも隅に置けないなあ」

 

すぐ側で聞こえた声に思わず仰け反ると、陽乃さんがすぐ横から覗き込んでいた。

 

「ち、違いますよ。そもそも最近は一色のやつ、戸塚といることが多いらしいですし」

 

そう、戸塚と。

…あれ?一色に対してなんか黒い気持ちが。

これが…嫉妬?

 

「間違ってないかもしれないけど色々と間違ってるよ比企谷くん…」

 

「人の心を読むのはやめて下さい」

 

返信を書く。

 

件名:Re.やばいです先輩

 

本文:悪いな戸塚の試合を見れないのは非常に、非常に残念だが俺は応援に行けなさそうだ。戸塚の応援、俺の分も含めて応援頼む。

…できたらテニスしてる戸塚の写真も頼む。いや、絶対頼む。

 

これでよし、と。送信。

…ってもう返信⁉︎いろはすどんな速度でメール打ってんだよ。マジっべー。いろはすっべーわ。

 

件名:ReRe.やばいです先輩

 

本文:なんですかとつかさんをりゆうにわたしとあいたいきもちをめいっぱいにひょうげんしてるんですかしょうじきおっけーっていいたいきもちでいっぱいですけどいませんぱいとあそんじゃうとだいがくのかだいとかてにつかなくなりそうなのでなんかもうもうすこしまっていてくださいごめんなさい

 

…漢字に変換してないじゃねえか。読みにくい。

まあいいか。どうせ振られてんだろうし、ちゃんと読まなくても。

 

「…なんで告白してもいないのに振られなくちゃいけねぇんだよ…」

 

すると、その言葉を聞いた陽乃さんが言った。

 

「振られたのは、本当に比企谷くんかしら」

 

「…いやどう考えても俺でしょう。酔ってるんですか?」

 

相変わらずニコニコしながら陽乃さんは続ける。

 

「振られたのは、一色ちゃんじゃないかしら」

 

「陽乃さん?お水貰いましょうか?」

 

本当に酔っているのだろうか。

だいたい何をどう考えたら一色がフラれた事になるんだよ…

 

「…まあそれでいいや。あくまでもフラれたのは比企谷くんだと、そう言うのね?」

 

いつの間にやら陽乃さんの笑顔が何か含みのあるものになっていた。

この人笑顔の種類多すぎやしませんか?

 

「当たり前じゃないですか」

 

「じゃあ、フラれて傷心の比企谷くんをおねーさんが慰めてあげよう!」

 

「丁重にお断りします」

 

「丁重に断られた⁉︎」

 

ガハマさん流ツッコミですか。

そうなんですか。

どうでもいいけど今日の陽乃さんキャラぶれすぎじゃないか?…どうでもよくはないか。

確かにいつも行動が読めない人ではあったけれど…。

強化外骨格は前と変わらないように思えるのに、行動に違和感がある。

無理にテンションを上げようとして失敗している感じに似てるな…ソースは中学の時の俺。

…というか。

 

「陽乃さん、さっきの質問、答えてないですよね」

 

「…さっきのって?」

 

陽乃さんは手に持ったコップに目を向けたまま、聞いてくる。

 

「分かってて言ってますよね。なら、もう一度聞きます──」

 

 

陽乃さんは(・・・・・)、結婚、したいんですか?




…ほむん、我だ。剣豪将軍こと材木座義輝である。
今回は我が後書きを担当することになったらしい…ナンデ⁉︎我こういうの慣れてないよ⁉︎

カンペ「 ダ マ レ 」

…けぷこんけぷこん。
どうやら我が旧友は魔王の囚われの身になっているようだが、雲行きがおかしくなって来ておるな。
次回、魔王敗れる!デュエルスタンバイ‼︎とかなるの?なっちゃうの?

それにしてもはちまんの奴め…いくら魔王とはいえ、お、女の子と飲みに行くなんてずるいぞ!
我との非リア同盟(してない)はどうしたのだ!
我なんて、誘われても行くのが怖くて

「あっ、はい!嬉しいですけどちょっと今日用事があってすみません!」

とかキャラ崩壊するレベルであるぞ?

カンペ「 へ タ レ 」

…ほむん。…………ほっとけ。
…ぐすっ。
ではな!皆の衆!
我の口調やキャラ崩壊の件はナス科の地上絵とやらに一任しておる!
…雪ノ下氏よりは優しくしてやってほしい。
我からの、お・ね・が・い!である。
え、キモイ?ぐふぁっ!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。